暴君の末路
昔、随分と酷い暴君がおりまして。
人の命をまるでゴミのように扱うのです。
戯れに奪い、戯れに与え、そしてまた戯れに奪う。
暴君と断ずることが出来るのは彼が最後には必ず奪うからです。
だから、誰も彼に寄り付こうとしなくなりましたが、そこは仮にも暴『君』です。
持っている力を用いて誰も彼も探してしまうのだから質が悪い。
探されてしまえばまた奪われるしかありません。
言うまでもなく私もそんな人の一人でした。
随分と長く隠れておりましたが遂に見つかってしまいました。
言うまでもなく、これが私の最期というやつで所謂年貢の納め時というものでしょう。
「聞いたぞ。お前は未来が見えるらしい」
私が見た未来と寸分違わぬ言葉を暴君が言いました。
「その力。俺にも使えるように出来ぬか」
「何故でございますか。あなたさまにはそのような能力は不要なのでは?」
「馬鹿なことを。不要かどうかは俺が決めるのだ。さぁ。答えろ。俺に未来は見られるようになるのか。ならないのか」
断れば殺されます。
さりとて、受け入れても結局殺されます。
故に私は少しでもマシな方を選ぶことにいたしました。
「はい。出来ます。私の力をあなたさまに移せばあなたさまも未来が見えます。常に――」
私は逃げ続けた分の報いを受けました。
当然でしょう。
本来であるならば私は死を恐れずにこの能力を暴君に与えなければならなかったのです。
けれど、私は逃げ続けていました。
当然でしょう?
だって、私に見えるのはどう足掻いても逃げられぬ凄惨な末路なのですから。
あぁ――。
私の耳が受け取る、最期の声が聞こえます。
「ふざけるな! 戻せ!」
戻せません。
私に出来るのは能力を与えるだけです。
「このくだらん幻想を取り払え!」
まぁ、戻せたとしても戻しませんけど。
まぁ、そもそも。
ボロ雑巾のようにされた私にはもう身動きどころか、息をすることさえ出来ないのですけれど。
「くそ! 何故消えん! いつ消えるのだ! この頭の中の光景は!!」
消えませんよ。
あなたの未来――いいえ、末路は。
少なくとも私はこの光景が生涯消えることはありませんでしたから。
精々、ご覧になり続けてください。
あなたが迎える末路を。
……おや?
*
――魔王と呼ばれた暴君は勇敢な呪い師の魔法で自らの凄惨な末路に怯え続けることとなりました。
怯える暴君に最早、往年の力はなく最期の時まで震え続け、遂には隠れているところを見つかり、多くの人の手で打ち滅ぼされてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし。
*
なるほど。
随分と脚色されていますが後世でこう語られるならば――悪くない。
垣間見た未来に少しだけ満足しながら私は今、ようやく未来から解放されました。
……めでたし、めでたし、と。




