表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

The Sad Cafe

作者: 黒楓

今日はシリアスです(^-^;





 そのカフェは川沿いの……柳並木の路を挟んだ反対側にあった。


 これが桜並木なら、春には窓際にはお客がひっきりなしだったんだろうけど……

 どうにも今日日(きょうび)の連中には柳並木の風流を解する者は()()()居ないらしい。

  かく言う私だって、その一人なのだけど……柳の木を眺めながらでは“パナマ・ゲイシャ(コーヒー)”のフローラルな香りとパッションフルーツのようなフルーティな酸味と甘みは、全くもってミスマッチ!

 いや、ゲイシャの語意が“芸者”ならそうでは無いかもだが……残念ながら『ゲイシャ』とはエチオピアの……とある村の名前らしい。

 この“ゲイシャ種(コーヒー豆)”をパナマのコーヒー農園がエチオピアから輸入したのが、その始まりとか。

 とまあ、こんな蘊蓄は垂れて(本来は『傾けて』が正しいらしいが)も仕方の無い事なのだが……ジャコウネコの()()()()()から取り出された豆『コピ・ルアク』の例がコーヒーにはあるのだから……大目に見て欲しい。

 これはダジャレが過ぎますかね?


  さて、今は晩秋。


 窓から見える枝垂れ柳の並木は金色のベールとなり、川面に映る()()()()()()の夕日の煌めきは、そこはかとしか見えない。


  そう、川は流れている筈なのに……

 それはまるで……


  暮れゆく人生の事なんて全く気付かず、ただ目の前の……

 “じきに消えてしまうであろう”キラキラ金色のベールに心を預けている自分の様だ。

 金色のベールを成している葉は風に吹かれて舞い落ち、降る雨に流され……やがて川の流れに還る。

 私はきっと……それを往生際悪くみっともなく嘆くのだろう。

 詮無きことなのに! 

 やらずには居られないのだろう。


  ため息が……せっかくのパナマ・ゲイシャの芳香をうやむやにしてしまう。

  『ひと時の夢を買おう』と叩いた()()()()()小銭を無駄にし、唇に乗っかっている雫宝を冷やしてしまう愚かしい私こそが実相なのだ。


  その現実に……私の指はコーヒーカップの持ち手に通されたまま凍り付き、それに呼応するかの様に、時がカップの中身を冷ましてゆく。


  気が付くと……枝垂れ柳が織りなすベールが、気の早いクリスマスツリーみたく、青や赤に明滅している。

 ああ、通りの信号を映しているのだ。

 川だけ無く、クルマや人も流れて行く。

 なのに私は……つるべ落としの秋の陽さえ追いかけてはいない。


  ふいに……

 Eaglesの『The Sad Cafe』が聴きたくなった。


 


                         <了>



Eagles - The Sad Cafe (Official Audio) のようつべのURLは下記となります。


https://www.youtube.com/watch?v=MxW6sIiSsaQ&list=RDMxW6sIiSsaQ&start_radio=1



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やはり音楽が入ると、よりドラマチックになりますよね。 たまに土曜日の11時からFM東京で放送されている「世界にひとつだけの本」を聞くのですが、とてもいいです。 イーグルスのThe Sad Cafeって…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ