第2話 脳になったボクは、どうやら装置の中にいるっぽい
脳みそになったボクは、
なんか、でっかい試験管みたいな装置の中にいるっぽい。
中はポカリみたいな液体で満たされてて、
金魚の水槽の“ぷくぷく”みたいなやつから、
絶えず泡がボコボコ上がってきてる。
ボク(脳みそ)は、その中で、
ふわ〜っと浮いたり、沈んだり。
たまにシュワっと気泡が弾けて、
「おぉ〜〜〜ッ!」って感じで、脳がクールで爽やかにリフレッシュ!!!
おっ!これ、マジ最高。めっちゃ気持ちいい!!!
ちなみに、隣の装置で、パブロフの脳も浮いたり沈んだり、プニプニしてる。
そんな感じで、のんびり優雅に過ごしていると、ポロンのヤツが登場した!!
ポロンは、余裕たっぷりに満点(満面)の笑顔で言った。
「ふふふ、ボクの親友・はじめ君。楽しんでますか? ピポッ」
……ピポッがマジでウザい!!
「なにしてくれてんだ!!ここから出せ!!出しやがれ!!」
ポロンは、ちょっと困った顔で、肩をすくめた。
「まあまあ、落ち着いて下さい。もうしばらくの辛抱ですから〜!」
辛抱ですから〜”だと!ボクは今や、脳みそ
気泡の中でプルプル震えながら、だんだんムカついてきた!
「おまっ!勝手にボクらの脳みそを晒しやがって!!
なんでなんで、こんなことした!!ちゃんと説明しろ!!」
ポロンは、きょとんとした顔で言った。
「だって、友達だからですよ!」
「はああ!?なんで“友達”が“脳みそ晒す”方向に行くんだ!!マジ意味分からんなんですけど!」
ポロンは胸を張って言う。
「友達になったからには、ボクの仕事を手伝ってもらう必要があるわけで!
そのためには、強靭な肉体が必要な訳で……」
「さらに、訳分からん事ゆーなー!!」
「そういうとこだぞ!お前がボッチなのは!!」
その瞬間――
ポロンの動きがピタッと止まり、
ウルウルと大粒の涙が瞳に浮かんだ。
これは、効いてる!!無限天才のボクは、こういう時は、速攻で追い討ちをかけるのだ!
「ボーーッチ!!ボーーッチ!!ボチ!ボーーッチ!!」
ボクの“ボッチコール”が、
ポロンの心にリズム良くジャブのように突き刺さっていく!
「ボーーッチ!!ボーーッチ!!ボチ!ボーーッチ!!!」
ポロンの涙は、徐々に咽び泣きに変わり、袖のタイツ生地では、拭えないほどびしょびしょになっていく!
ボクは、さらに連打を浴びせる!!
「ボッチ!ボッチ!ボッチボッチボーッチーー!!」
ついにポロンは、ウォンウォンと号泣しながら地面にはいつくばった!!
ちょっとかわいそうだが、“脳みそ“にされたウラミだ!!!
ーーーーー
しばらくして、ようやくポロンは泣き止んで、
鼻をズルズル言わせながら、しょぼくれた声で喋り始めた!
「……じ、じつはボク……宇宙の秩序を守るお仕事をしてるんです。ピポ」
「は?」
「ほら、宇宙の平和とか、バランスとか、そういうのです!
悪い事をするヤツを取り締まったり、使命手配犯を探したり、まあ、いろいろ大変なんですよ!」
なんか、急に“それっぽい”こと言い出して草!!
「でも……ひとりじゃ荷が重くて……だからボク、相棒(友達)を探しにこの地球に来たんです!」
「なるほど!それで、この無限天才を見つけた訳か!」
脳みそのボクは、プルプルしながらドヤ脳(顔)で言った。
「そです!ついにボクは見つけたんです!!無限天才のあなたを!!ピポっ」
「……!!!」
こいつマジ!.......めっちゃめちゃ、見る目があるッ!!!
「あなたこそが!ボクの親友にして、この地球で最も偉大なボクちゃんなのです!多分!」
「多分じゃない!!もっとくれ!!」
「はじめ君こそ!この地球の、SS級!超最強!キラキラカードなんです!!ピポっ!」
「それーーーーっ!!ほんまそれ、ボクそれーーーーーーッ!!!」
ボクは、脳プルプル震わしながら全力同意した!!!
「更に、おかわり!はよっ!!」
ポロンはついに、手拍子を入れながら、ボクを讃える歌を歌いはじめた!
「そおだ♩恐れない〜で!かぁしこい君は!あーあ!はーじめくーん!てーんさいだー!」
なんか聞いた事のある歌だけど、気分が上がってきた!!
「ぃい!!よおっっっし!!」
「ポロン君、よく聞きなさい!」
「無限天才のボクちゃんが、お前の仕事を、特別に手伝ってあげます!」
「ありがたく思いなさい!」
ポロンは、はっとなり、歌うのをやめた!
ポロンは、脳みそのボクに、
「ははーーーーっ!」
と言って、その場に、深々とひれ伏した!!!
そんな事をしているうちに、ボクはまた眠くなって来て意識を失った。
ーーーー
そして、目が覚めると、ボクは自分の部屋のベッドにいた。
身体も……ちゃんとある!!
「あれ?今までのって……夢だったの?」
横でスヤスヤ寝てるパブロフを、そっと撫でながら思い出す。
マジでオモロい夢やった……あの宇宙人ポロンとか、脳みそとか……。
すると、パブロフが「ふわぁ〜」っと大きなアクビをして、目を覚ました。
「うーん……おはよう、はじめ君!ピポっ☆」
……え?
しゃ、しゃべった!?ピポっ!?!?!?!?
ボクは反射的に飛び起きて、ベッドから転げ落ちた!!
「ど、どうしたパブロフ!!今のはなんだ!!ピポってなんだ!!」
するとパブロフが、キラッキラした目で言った。
「そうでつ!ボクです!親友のポロンでつ!」
「ぎゃーーーーーーー!!!!!」




