第1話 なんか宇宙人ぽいヤツが、友達になりたそうにこっちを見ているんだが
第1話 なんか宇宙人ぽいヤツが、友達になりたそうにこっちを見ているんだが
ボク、マジ!ちょー無限天才!
12才、“はじめ君”です!
ボクぐらいになると、フレンチブルの“パブロフ”の世話もちゃんとするし、
スマホのパズルゲームなんか、超プロ級にうまいんよ!
あの、王さまが出てくるタダゲーの
めっちゃ長い広告のヤツ
あれなんか、もうステージ500以上はクリアしたった!
そんな無限天才のボクが、いつものようにパブロフとお散歩してると!
いきなり、目の前にへんなカッコしたやつ出てきた!
そいつは、ボクより背が低くて、なんか全身黄色のタイツみたいなのを着てる!
胸からおヘソのあたりには、ドーンと下手くそな漢字で“宇宙”って書いてある。
それで、顔の部分だけタイツがくりぬかれてて、そこから丸いほっぺと、ぱっちりした目のかわいい顔がひょっこり出てる。
さらに頭のてっぺんには、アンテナみたいな棒が一本立ってて、先っちょにはピカピカ光るスーパーボールみたいのがくっついとる。
そいつは、ボクの目の前に立って、なんか「話しかけて!」って顔で見てたので、とりあえず聞いてみた。
「……だれ!?」
すると、そいつはにっこり笑って、言った。
「わたしは、遠い宇宙からはるばるやって来た友達、ポロンです。ピポっ」
“ピポ”がマジウザい!
「え?なんで、はるばるやって来たの?」
と、聞いてみた。
ポロンの顔は、急に真っ赤っかになって言った。
「君に会うためです!!ピポっ」
なんで、わざわざ遠い宇宙から?と思ったけど、良く考えたらボクは、無限天才だった!でも一応聞いてみた。
「なんで、ボクに会いにきたの?」
ポロンはちょっと肩を落とし、地面を右足のつま先で削りながら、なんか寂しそうに言った。
「ボクは、ぼっちで友達がいません。どこの星に行っても、誰とも仲良くなれませんでした。そして……友達を求めてさまよって、さまよって、さまよって、さまよって、ついにこの星に辿りついたのです。ピポ...」
めっちゃ!さまよっとるやん!
と思って聞いていたら、ポロンが急に顔を真っ赤にして、もじもじし始めた。
「ど、どしたん?」
とボクが聞くと、ポロンは指先をいじりながら、上目使いでちらっとボクを見上げて、
何か言いかけて、また黙り込んだ。
「どしたん自分、顔真っ赤じゃん。」
「あのですねー.......」もじっ....
さすがに、ちょっとイラッとしたので、
「はよ!!!!」と言った。
するとポロンはビクッとして、目をぎゅっとつぶり、決心したように叫んだ!
「ぼ、ぼぼぼぼ、ボクとその、トミョ、トモ、友達になって下さあぁい!!!」
そう言って、腰を九十度に折り曲げて、ピンと手を差し出す!
その必死な感じが、なんかおもろい。
本当は、すぐに「いいよ」って言ってあげても良かったんだけど、
ちょっと焦らしてみたくなった。
ボクは困ったような顔をつくって、「どっしよっかな〜〜っ。」
と言って、横目でちらっと見たら、ポロンは「アワアワ」しながら、目をうるうるさせている。
……うん、ちょっと、そういうのが見たかったボクは、たぶん悪い子です。
ボクは、腕を組んで、真剣に考えているフリをする....。
そして、そのあと、決心がついたような顔をつくって言った。
「よおぉーっし! ここは、ボクの唯一の友達、パブロフ君に決めてもらおう!!!」
「そうだ!決めてもらおう、そうしよう。」
パブロフはいつものようにヨダレと鼻水を垂らしながら、無関心に「ハァハァ」言っている。
ボクはその顔をガシッと掴んで、無理やりポロンの方へ向けた。
「パブロフ君!! ボケッとしてばかりではダメでーーっす!よく見なさい、あの子です」
「真剣に考えて答えてあげてください!」
「あの子を友達にしても良いですか!!?」
ポロンは祈るようなポーズで手を組んで、何回もおじきをしながら、追い詰められた顔で、パブロフを見つめる。
ボクは、コレだよコレ、この感じ!と思った。
そして、
パブロフは、ボーーっとして「ハァハァ」してたけど、急にキリッとした顔になり、自信ありげに「わんっ!!」とひと声!
(今だ!!)
ボクは自分の身体を大きく見せながら、大げさに指をバッと突き出して叫んだ。
「ぃい!!よおっっっし!!」
「 ポロン君!君は今日から、ボクの友達だっ!!」
ポロンは顔をパァーッと輝かせ、
「いぃやったあぁーーーー!!!!」
と言って、満点(満面)の笑顔でバンザイをし、ぴょんぴょんと跳ねた。
うんうん。なんかちょっと、ボクも嬉しい。
ぼくも、ポロンがメチャクチャ喜んでるのを見て、ちょっとだけ涙が出そうになった。
ーその矢先だった!!ー
ポロンのやつめ!いきなり手をタコみたいにぐにゃぐにゃ〜っと伸ばして、
ちょっと照れた感じで、「それじゃあ、ちょっと失礼してっと!」
とか言いながら、ぼくの頭の眉から上を、どんぶりのフタみたいに、パカッと開けやがった!
そして、中から、ボクの大事な脳みそをにゅるっと取り出した!!
脳みそになったぼくは、怒りでゼリーのようにプルプル震えながら、
「な、なんてことしやがる!!」と叫んだ!!!
でもポロンは、そんなぼくの抗議なんか全然聞いちゃいない。
「ヨイショっと!」
とか言って、今度はパブロフの脳みそまで、同じように取り出した。
パブロフの脳も、ぼくと一緒で、ゼリーのようにプルプルと震えながら、「ワンワン」吠えている。
あと、面白かったのは、脳を抜かれたボクとパブロフの身体が、パイロットのいないロボのように、その場に姿勢良く、立っていたところだ!
あれは、めっちゃわろた!!!
そんな光景を脳になったボクの目線から、プルプル見ていると、なんだかほわーーーーーんと、眠くなってきて..........「おやすみなさい.....」となった。
がくっん.....




