第3話:笑顔のランチタイム①
翌朝も、ルカはベッドでくつろぎながら、灯里の準備が終わるのを待っていた。
ふと本棚に目が留まる。
「これが灯里と瀬戸くんが好きな漫画か……昨日はチラ見だったけど、ちゃんと読んでみるか」
ルカは漫画を手に取り、ページをめくり始める。
◇ ◇ ◇
<< トキメキ☆モンスター >>
ーー私、白石美桜。高校1年生。恋愛経験ゼロだけど、少女漫画みたいなドキドキの恋に憧れてる。
ちょっと意地悪なクラスの王子様・颯真くん。
優しい幼なじみ・悠翔。
ドキドキと安心の間で、私の心はぐらぐらです!
ーー「……ほら、ちゃんと俺だけ見てろ。迷子になるなよ」
トゥンク…。
◇ ◇ ◇
ルカは漫画をパタンと閉じた。
「……これ、何が面白いんだ……全く理解できない……」
ため息をつき、眉をひそめて目を細める。
何を考えてこんなことを言ってるのか、そして灯里たちもどうしてこんなことで盛り上がれるのか……疑問が次々と浮かび、頭の中でぐるぐると考え込む。
(考えれば考えるほど分からなくなるな……)
などと思っていると、目の前に灯里が立っていた。
「なんでよ!めちゃめちゃ面白いでしょ!」
頬を膨らませ、腕を組みながら、少し不機嫌そうにしている。
「どの辺りが?」
ルカが素直に疑問をぶつけると、灯里は少し赤くなって言葉を探す。
「だって……胸がキュッてなって、ドキドキして……その……」
話すうちに余計恥ずかしくなり、言葉に詰まる。
その様子を見て、ルカは思わずニヤリと笑う。灯里の照れ顔が可笑しくてたまらないようだ。
「へぇ……灯里って、そういうの好きなんだ?」
「そういうのって何よ!?」
「“ベタベタ、王道胸キュン狙い”ってこと。覚えとくよ」
「もー!学校行くよ!」
灯里はさらに恥ずかしくなり、慌てて話を切り上げてルカから顔を逸らす。
それでもルカとの掛け合いがなんだか“いつものノリ”になってきた気がして、前を向いたまま、ルカに気づかれないよう、そっとクスッと笑った。
◇ ◇ ◇
教室に入ると、陽真がニコニコしながら話しかけてきた。
「おはよ〜」
「あ、おはよう」
少しドキドキしながらも、前より落ち着いて返せて、自分でもちょっとびっくりする。
「英語の課題やってきた?」
「うん、難しかったよね」
「ねー、あれ一日でやれとか鬼すぎ」
思ったより笑顔で会話ができた。前ならガチガチでぎこちなくなっていたのに。
(だんだん男の子と話すのも緊張しなくなってきたかも。これって、もしかしてルカのおかげ?)
そう考えた瞬間、自分でも苦笑する。
(……あんな雑なやり方で慣れるとかどうなの私……! ちょっと悔しいんだけど……!)
(あのめちゃくちゃさ、案外とアリってこと?)