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海を登る物語


日八日夜八夜


※※※


この作品には災害(洪水)・自死に関する描写が含まれます。こうした内容に敏感な方は、閲覧にご注意下さい。



海が立ち上がってこちらを見ている。




 わたしは迎えの舟を待っていたのに。




 海は静止したまま黙ってわたしを見ている。


 村の皆は連れていったのに。


 ただじっと、静止したままで。




 海の足元で、わたしは海を見上げた。




「どうして突っ立ったままなの? なんでじっとしてるの? なんでわたしを呑み込まなかったの? どうしてひとりだけ残したの? 皆、連れていったのに。ねえ! なんで黙ったままなの?」




 海は黙ったままで、空だけが灰色に変わった。


 海鳥がどこか遠くの方でやかましくわめいている。




 海は黙っている。だから苛ついて足元の水からあげられて痙攣けいれんしている魚を投げた。




 投げた。




 三投目を振りかぶったときに、わたしに舟に乗るよう促した影に取り押さえられて陸の方に引きずっていかれた。




 懇々こんこんとなにかを諭さとされたが、影の言葉は聞こえない。




 舟のこともいっているようだ。


 村の残骸から取り出した棒のようなものでぬかるんだ地面に絵を描いている。






 海がどかなければ、舟など来ないじゃないの!!





 理不尽さに癇癪かんしゃくを起こして、こんどは影に向かって辺りのものを投げつける。


 投げつけたものは、影を透過(とうか)して、影はただしょんぼりと悲しそうにしていた。



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