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序章 閑話 3月6日 無量会との邂逅

これでようやく、序章が完全に終わったことになります。

閑話なので視点が久郎から、舞に変わっています。

―――side 舞―――


「ふ~ん、なるほどね。やっぱり今年のヒーローは、レベルが高いようね」


 舞が、一人つぶやいた。


 場所はよねのみや公園。

 ヒーロー試験実技の朝に、巨大バグが出現したところである。


「5人中4人までが、異常性を指摘。まあ、最後の一人はそういうことが苦手みたいだけれども、あの剣の腕前だけで最高評価を下すのに十分でしょう」


 手元には、4人分のメモが握られていた。

 どれも、指し示していることは一つである。


 バグには、共通する特性がある。

 それは「理不尽なこと、虐げられるなどの強い怨念が渦巻くところで発生することが多い」ということだ。


 よねのみや公園は、神社に隣接している場所であり、一般的にはもっとも安全な場所であるといえる。

 神聖な場所にバグが発生したという例は、内部の腐敗がひどかったなど極めて例外的な場合にのみ起きるからだ。


「なのに、ここでバグが出てきたということは、何からの細工が予想される……まあ、どこまで詳細に記載しているかは、個性があって面白いけれどね」


 あれだけの事態が発生した後でありながら、最も詳細にそのことを記載していたのは、久郎のレポートであった。

 レポート用紙数枚にわたって異常性が示され、どのような細工が行われている可能性が高いかまで記載されている。

 下手をすれば、そのまま小論文として使えそうなレベルだ。


「漣は神職という立場から、異常性を示す。明は直感的におかしいと指摘。みかんは確率的にありえないとグラフ付きで示す……全員大幅に加点されるのは、間違いないわね」


 なお、結希に関しては指摘の文章は提出されていなかった。

 彼自身が気づかなかったのか、それとも久郎が気づくであろうことから、あえて重複させる必要を感じなかったのかは不明である。


「久郎の勘に従えば……多分、この辺りね。私も多分、このあたりだと思うけれども……ビンゴ。さすがヒーロー法務検定1級ね。頭の良さでは、5人の中でも飛びぬけているかも」


 そこに施されていた呪術は……非常におぞましいものであった。

 受験の合格を願うものが集う以上、どうしても「合格できなかったもの」が一定割合存在する。

 その恨みや悔しさをベースとして、神社というフィルターを通すことでより増幅し、結果としてあれほど巨大なバグを生み出すことに成功させるというものであったのだ。

 丑の刻まいりなどの比ではない、れっきとした「犯罪行為」である。


「まだ痕跡が残っていたのが、災いしたわね……さて、誰がやったのか分析しないと」


 当然このような呪術は発動後、すぐに消えるように設定されている。

 だが、よほど隠蔽工作が得意なものでない限り、どうしてもある程度の「痕跡」が残ってしまうのだ。

 警察官などでは呪術に対する知識が不足していることから、専門の部署を立ち上げようとする動きはあるものの、現状においてもっともこの手のことに詳しいのは、冬花舞ということになる。

 それが、彼女自ら動いた最大の理由だ。


「分析は、必要ありません。私たちがやりました」


 いきなり、声をかけられる。

 生き物らしい反応がないまま、突然の出来事であったため、舞の反応が一瞬遅れる。

 とりあえず防御魔法を発動させ、周囲を確認すると……4人に囲まれるという状況であった。


「うわあ。私が気づかないなんて……ヒーロー組合にこんな凄腕集団、いたっけ?」


 舞が思わず、口にする。

 実際、ヒーロー組合は暗部も抱えているため、ある程度の実力者は存在するのだろうが……その言葉に対し、この集団は怒りを覚えたようだ。

 そのうちのリーダーであろう女性が、舞に思いをぶつける。


「あんな者たちと、一緒にしないでください。我々は「無量会(むりょうかい)」。御鏡(みかがみ)様の意を受けて、この状況を作り、運命の歯車を進めたのです」

「無量会ね……名前からすると、宗教団体のようだけれども……ある意味組合よりも厄介かもしれないわね」


 舞の言葉通り、狂信者と呼ばれる者たちは、何をするかわからないという怖さがある。

 また、信じている神の教義が、世間一般の常識や良識と同じであるという保証はどこにもない。


「とりあえず、質問いいかしら。なぜこんなことをしたの? あなたたちは運命の歯車を進めたと言っていたけれども、こちらはそれだけではわからないから」


 今はまだ、話が通じる範囲内であるだろうと判断し、舞が質問を投げかける。

 割と宗教関係の者たちは、自分たちの行為に誇りと自信を持っているため、問いかけにはきちんと答えてくれる可能性があるというのも理由の一つだ。


「運命の歯車は、そのままの意味です、ここでめあ()があなたたちに出会ったこと、それこそが運命の始まりであり、終わりの始まりでもあるのですから」


 誇らしげに、最初に話しかけてきた者が答える。


「なるほど、私たちとめあちゃんを出合わせるために、わざとこのような事態を引き起こしたということなのね」


 終わりの始まりとは、かなり物騒な言葉であるが、あえてそこには触れない。

 また、ほかにも理由がありそうだと感じているが、そちらも今は口に出さない。

 どこに地雷があるのかわからない状況では、慎重に行動するのが最適であろう。

 加えて、自分の探査魔法に引っかからなかったということもあり、たとえある程度自分の実力に自信を持っていたとしてもなお、相手の実力に対して油断できない状況であるからだ。


「続けて質問。御鏡様が、あなたたちの指導者ということで合っているの?」

「一応、無量会の盟主を務めております。もっとも私たちは、御剣(みつるぎ)様の命も受けて行動しておりますが」


 どうやら、幹部の一人に御剣様という者も存在しているようである。

 予想よりもはるかに、大規模な組織であるようだ。


「御鏡様に、御剣様ね。ということは、御珠(みたま)様という者も存在しているということかしら?」


 舞が質問を行う。

 鏡、剣とくれば、珠が存在するというのは、日本人であればだれでも抱くであろう予想であるからだ。

 その質問に対し、相手は相好を崩す。


「さすが冬花を名乗るもの。ご明察の通り、御珠様も存在しております。もっとも今のところは、前線に立つおつもりは無いようですが」

「前線に立つつもりは無い……推測でしかないけれども、その人が動いてしまうと、ゲームにならなくなってしまうという理由から、ではないかしら?」


 更なる質問に、相手は真顔に戻る。


「どうやら、貴方様を見くびっていたようですね。謝罪いたします。そして、これ以上の言葉のやり取りは無意味であると判断いたします」


 相手が、戦闘態勢に移行する。


「あちゃ~。これはNGワードだったか。まあ、味方でないことは最初から分かっていたし、仕方ないか」


 舞の方も、本格的に戦闘態勢に移行する。

 腰に下げていたクリスナイフを手に取り、いつでも魔法が使える状態となった。


 ちなみに、機体には変身していない。

 リミッターによって、攻撃できない状態になる可能性があるため、対人戦で機体を用いるのは悪手であるからだ。


「とりあえず……「ダウンバースト」!」


 舞が先手を取る。

 ダメージを与えず、相手の動きを大きく制約する魔法を使うことで、相手の対策を見て次の魔法を選択することにしたようだ。


 相手は散開するものの、そのうちの一人が巻き込まれる。

 斥候らしく、あまり力には自信がないようであり、そのまま地面に縫い留められることになった。


「やはり、厄介ですね……二人とも、よろしいですか?」


 相手の方の二人が、それに肯く。

 そして、舞に向けて突撃する体制をとった。


「距離を詰められると厄介だから……「プレッシャー・ゲイル」!」


 二方向に同時に放つという離れ業を行う舞。

 二人のうち一人が、それを受けて吹き飛ばされるものの……もう一人は風の塊を認識したようで、体を極限まで低くすることで回避し、そのまま舞に向けて突っ込んでいく。


「まずっ! 「トルネード」!」


 自分の体、ギリギリのところを中心部として発動させる。

 それによって吹き飛ばされた者が、空中で爆発した。


「自爆特攻!? 冗談でしょう!」


 舞が思わず、叫び声をあげる。

 さすがの彼女も、バグであればともかく、人間との命のやり取りには慣れていないため、この攻撃にはかなり精神的に揺さぶられたようだ。


「それでは、またいつかお会いしましょう……「コンバチオン・フランメ」!」


 リーダーの女性の体が、炎に包まれる。

 そのまま舞に向けて、突撃してきた。


「残念ながら、それは悪手ね。「アクア・カーテン」!」


 舞が、目の前に水の壁を召還する。

 リーダーの女性はその壁にもろにぶつかることになり……燃えカスとなって、その場に崩れ落ちた。


「確かに私は風属性の魔法使いだけれども、他の属性も得意だから」


 ちなみに、この世界の属性の相性は、次のような形になっている。


 水属性→火属性→風属性→水属性。

 光属性と闇属性は、互いに有利属性となるため、力の差がより大きな要素となる。


 土属性は、闇属性及び物理属性の要素を帯びるため、そちらに吸収されている。


 風属性の舞に対し、火属性の攻撃という考えは間違っていなかった。

 ただ、舞は他の属性の魔法も並みの魔法使いより、圧倒的に上手であり、水属性も平然と使いこなすことができる腕前を有していた。

 そのことに気づかなかった、あるいは気づいていたとしてもあえて攻撃を選んだのが、彼女の敗因であろう。


「そして、予想通りならば……やっぱり。この者たちは全員、ただの人形ね」


 燃えカスは、木が焦げる独特のにおいを発していた。

 表面は人間に近い素材も使っていたようであるが、明らかに「生き物ではない」と判断できる要素である。

 使い捨ての道具としては、この上なく使い勝手の良い代物であろう。


「生命感知に反応がないはずね。ただ、これだけの人形を使い捨てにできる組織が絡んでいるとなると、それはそれで厄介だけれども」


 人形遣いというのは、ゲームではさほど強力な相手とされていないが、現実に存在するとなれば極めて厄介な相手となる。

 何しろ向こうは、使い捨てでいくらでも兵力を補充できるのであるからだ。


「あと、久郎が壊したチェーンの代金は、民法の緊急避難(きんきゅうひなん)に該当するって伝えておかないと。行政書士の資格を持っているのに、こういうところで抜けているのだから」


 戦いが終わり、大きく伸びをする舞。

 これが、彼女と無量会の最初の出会いであった。

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