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序章 第17話 3月6日 号外と夕食

時間帯が早いため、飯テロにはならないと思います。

なるだけの描写力を身につけられるよう、頑張ります。

 しばらく眠って、ようやく少しだけ回復した。

 まだ少し、頭がぼーっとしているところはあるが、下の方で物音がしてしたため、それに反応して目が覚めたようだ。


「両親が、帰ってきたのかな?」


 さすがにこの状況で、不法侵入者との戦いは勘弁願いたい。

 耳を澄ますと、両親の声であったため一安心する。


「さて、下に降りるとするか。結希とも情報共有をしておかないといけないからな」


 俺は、結希の部屋のドアをノックした。


「結希、起きているか? 両親が帰ってきたようだぞ」

「あ、久郎も起きたのか。僕も下に降りようっと」


 二人で、下の階に行く。

 リビング兼ダイニングには、両親が揃っていた。


「お疲れ。とんでもない一日だったみたいね」


 母のミフユが、こちらを労ってくれた。

 実際、異常なほどに密度の高い一日であったと思う。


「おっ、降りて来たか。号外が凄まじすぎて、もはや普通の夕刊になっているぞ」


 こちらは、父の広大(こうだい)

 確かに、起きたことの数を考えると……マスメディアはさぞ、大変だったろう。

 その点に関しては、同情するしかない。


「号外、どんなことが書かれているのだろう……僕にも見せてくれないかな?」


 結希が父に頼む。

 快諾し、こちらに渡してくれたため、紙面に目を通すことにした。


 一面トップは、よねのみや公園に巨大バグが発生したことだ。

 そして次の面で、今回の実技試験における不正行為について述べられている。


 その次からは……試験の様子、及びある程度の個人データが記載されていた。


「鋭い一念、盾をも貫く……なかなかカッコいい表現になっているではないか」

「うん。ただ、この写真が出回ったのは、少し不本意だけれども」


 選ばれた写真は、守先生が結希の肩に手を置いているものだ。

 ちょうど髪が下りた状態になっているため、少女にしか見えない。


 個人データとして、性別が男性であること、金メッキ全国大会剣術部門「()」優勝であることが記載されていた。

 ちなみに「純」の文字を使っているのは、優勝者が軒並み不正で勝利を剥奪されたため、純粋な意味では優勝しているという皮肉が込められている。


「俺の方は……天才が見せた、執念の一撃か。思ったよりも悪くない表現で、ホッとしたぞ」


 酷評も予想していたのだが、舞先生の説明もあり、また試合の規則にも違反していないことからこういう描写になったようだ。

 ちなみに「天才」というのは、行政書士試験合格を中学2年、14歳で合格したためであろう。

 同じ年にもう一人、14歳で合格した者が出たということで、大騒ぎになったことがある。


 ちなみに、俺の持っている資格は以下のとおりである。


 行政書士、ヒーロー法務検定1級、基本情報処理技術者、簿記2級、ビジネス実務法務検定2級、MOS Associate、FP3級。

 ある程度は「あいつ」の知識を活用させてもらったものの、試験中は一切力を借りていないため、自分の力で取ったと自信をもって言うことができる。

 とはいえ、天才と呼ばれているが、せいぜい才児止まりだと自分では感じている。


「そういえば……えいっ!」


 結希が、頭にげんこつを叩き込んできた。


「眠気覚ましになったでしょう? 言ったよね。後で一発殴るけれどもって」


 どうやら、巨大バグ出現前に言ったことを、実行したようである。

 これだけさまざまな出来事があったにもかかわらず、覚えていたことに驚いてしまった。


「あと、久郎がまたやらかしていたよ。拳銃の中身を全部訓練用にしてあって、バグ相手にペイントが飛び散ることになっていたから」

「それは仕方がないだろう! 試験の時に実弾が出るよりは、よほどましな状態のはずだ!」


 一応、抗議する。

 後で説教確定と、その時は言われていたが……せめてもの抵抗という感じだ。


「まあ、久郎は以前、コンソールを忘れるというやらかしを行っているからな。それを考えれば、許容範囲内ではあるだろう。もちろん、次に同じようなことがあったら、プロ意識が足りないと非難させてもらうが」


 どうやら今回に限っては、広大からはお咎めなしのようだ。

 まあ、コンソールを忘れた件に関しては、恐らく一生言われ続けるのだろうが……。


(あきら)も、凄いことが書いてあるね。神速の域に達した戦い。複数相手に4秒38の記録は、今後永久に更新されないであろう……確かに」


 結希が読み上げた記録は、目を疑うような代物であった。


 ダウンであれば、カウントが入るためもっと長くなるのだろうが……場外に吹き飛び、明らかに場外のラインを超えた時点を基準としているため、こんなことになったようだ。

 そもそも単体の最短記録が8秒台であるため、そちらの方で判定しても半分近くにするという、異常な状態としか言いようがない。


 個人データとしては、トウキョウから引っ越したこと、金メッキ全国大会格闘戦、近接総合でともに「()」優勝者というものが記載されていた。

 格闘だけでもとんでもないのだが、近接総合で実質的優勝者……結希の方の近接総合は一回戦敗退であるため、この時点での実力では彼女の方が上、ということになる。


(れん)は……戦場の支配者、かつ天使。生かすも殺すも彼女の思うがままに、か……これはちょっと、な」


 俺が読み上げたこれは、かなり誤解を招きそうな描写であった。

 もっとも、あの激痛治療を傍から見ていると、こういう感想になるのかもしれない。

 これを見て苦笑しているのか、それとも意に介していないのか……クールな彼女の場合、今一つ読めないところがある。


「みかんは、うわあ……」


 結希が思わず、頭を抱えてしまっていた。

 気になったため、横から覗いてみると……?


「5対1、かつ相手が実戦装備でも赤子の手をひねるかのよう。彼女にとっては単なるおもちゃでしかない、か。表現内容を比較しても、最強クラスだな」


 実技試験における、今までの最高が4対1であった。

 範囲攻撃を得意とするタイプのヒーローで、申告によってある程度配置などを決めた状態で行い、何とか勝利をおさめたという形である。


 それと比較してみると、更に1機追加された状態で、相手は分散しておりどこから攻撃されるのか不明、加えてリミッターをかけていない機体を相手としている状況で、無傷の勝利、というのはある意味「凄すぎて」評価しきれないという状態のようだ。

 もちろん、ヒーローの専用機である第参世代の機体と、候補生のディシブル改であれば十分あり得る状況ではあるのだが……。


「いずれにせよ、頼りになる候補生ぞろいのようだな。逆に同時や後に受けたほかの候補生が、哀れになってしまうが」


 広大の言うとおり、これらの前には多少いい成績を出したとしても、霞んでしまうであろう。

 本当に、運がなかったとしか言いようがない。

 まあ、俺たちの場合半分くらいは「巻き込まれた」という要素があるため、文句を言われても相手が違うとしか言いようがないのだが。


「あと、このような特殊な状況になったことについて、学校側が現在調査中であることも書いてあったよ」


 さて、どこまでヒーロー組合の尻尾きりに対抗できるか、見ものである。


「とりあえず、号外は読み終わったけれども……そろそろ夕食にしない? おなかが空いてきちゃった」


 結希が、腹に手を当てる。

 俺の方も昼食後、かなり動いたこともあり、胃が空腹を訴えている。


「そうね。ちょうど今、できたところよ」


 母がダイニングテーブルに、料理を並べ始めた。

 俺と結希も、皿やコップ、箸を出すなどの手伝いをする。


 今日の夕食のメインは、鮭のバター焼き、タルタルソース添えだ。

 鮭を牛乳に漬け込んで臭みをとり、ペーパータオルで拭き取って塩コショウ。

 ローズマリーを入れたオリーブオイルでソテーし、火が通ったらバターを入れ、風味をつける。

 最後にお好みで、タルタルソースをかけて食べるというものだ。


 ちなみにこれは結希と俺、二人とも大好物だったりする。

 バターで焼いたものをそのまま食べるだけだと、少しパサついたような食感が残るのだが……そこにタルタルソースが加わることで油分が補われ、更にコクとうまみが増し、臭みも完全に消えて、非常に美味しくなる。

 たんぱく質もしっかりとれるため、栄養面でも優れた料理と言えるだろう。


 ちなみに広大は、カシスソーダを飲んでいた。

 カルーアミルクは、合格発表の時に楽しむ予定らしい。

 まあ、今の時点で「当確」と判断しても、問題なさそうであるが。


「「ご馳走様でした!」」


 二人の声が、ほぼ同時に響く。

 俺はかなり食事が早い方だと思うのだが、結希も負けないくらいに早い。

 結果として、両親が食べている途中で食事を終えることになる。


「ちゃんと、食洗器に入れておいてね。油を使っているから、先にペーパータオルで拭くことも忘れずに」


 母の指示に従い、食器を並べていく。

 洗浄、及び乾燥を簡単に行えるこれは、我が家の必需品だ。


「さてと。僕はもう少し、剣の訓練をするつもりだけれども、久郎はどうする?」

「俺は、ゲームをやるつもりだ。昨日は話すだけで、クエストはやっていなかったからな」


 恐らく近い時間帯で、マオやニカもログインするであろう。

 今日くらいは羽目を外しても、許されると思う。


「それじゃあね。お風呂が湧いたら、呼ばれると思うからそのつもりで」


 VRMMOが進化しており、ほとんど「没入」しているような状態であることは以前述べたとおりだ。

 しかし、用事があるときにいきなり肩を叩かれるというのは、非常に怖い。

 アダルト系のVRをやっていた場合は、なおさらであると思われる。


 そのため、部屋の入口にボタンを設置しており、それが押された時はアイコンの表示で確認でき、そのまま着けているマイクを通して、会話ができるようにしてあるのだ。


「しかし、あの近接戦闘能力はあくまでも遊びに過ぎなかったという事か。みかん、恐るべし」


 恐らく俺の全力と比較しても、そん色ないレベルであろう。

 加えてあの、白と黒の玉を利用した攻撃は非常に厄介であり……ゲームの中よりも現実の方が強いという、稀有な存在のようだ。

 俺も負けていられない、と思いつつ、VR空間に向かうことにした。

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