序章 第9話 3月6日 ヒーロー因子測定
先に入れておきたいエピソードがあったため、挿入いたします。
8月31日修正 文→ミフユ
母親の名前を間違えておりました。
ヒーローについては以前説明したが、その力は個人差が大きい。
それを確認するための検査が「ヒーロー因子測定」である。
ヒーロー因子のレベルは、ほぼヒーローとしての素質と比例する。
バグの再生能力相殺の限度がこれで決まるということもあるが、更に「物理現象をある程度意のままに操る力」も、ヒーロー因子に含まれているからだ。
このレベルが高い者は、力を意のままに操ることができ……巨大バグとの戦闘で、舞が「フレスベルグ」という大技を使ったにもかかわらず、一切効果範囲外に影響を及ぼすことがなかったことも、これが理由である。
この測定では「現在の因子の発動レベル」と、「将来の因子の成長可能性」がそれぞれ値で示されることになる。
ちなみに、その値の名付け方は、以下の通りだ。
C :LV1
UC :LV2
R :LV3
HR :LV4
SR :LV5
SP :LV6
UR :LV7
LE:LV8
「どう見ても、ゲームのガチャだよね……」
結希の言葉の通り、ブラウザゲームのレアリティに近い名付けになっている。
「まあ、分かりやすくはあるがな。明らかにこれを決めたのは、ゲーマーだろうな」
俺はそう答えた。
一般的にはSSRという区分が存在するようだが、2文字で統一するためにあえて、その部分は変えてあるのではないかと思われる。
「おっ、お前たちも来たのか。私たちで最後のようだから、さっと済ませないとな」
保健室に入ると、明が俺たちに声をかけてきた。
どうやらまだ、この場にいる者たちは測定していないようであった。
「いったい、誰からやるのかにゃ? みかんはいつでもいいにゃ」
ほわほわとした感じで、みかんがそれに合わせる。
巨大バグとの死闘の後であるが、精神的には普段の調子を取り戻しているようであり、一安心だ。
「では、私から済ませてしまいましょう」
漣が手を挙げて、測定機のレバーを握る。
ちなみに測定器の形は、体組成計を思い浮かべてくれればほぼ同じと考えて良いだろう。
「測定しました。現在値がLV3、潜在能力が……LV7?!」
係の人が、驚いて声を上げる。
潜在能力がLV7というのは、伸びしろとしても非常に大きい。
ちなみに「現在値」で最高値を保持しているのは、俺たちの父「神崎広大」であり、LVは7。
恐らく舞も同レベルであることを考えれば、伸びしろの大きさがある程度伝わるであろう。
「にゃ。それでは、行くにゃ~!!」
食い気味に、みかんが測定機に上る。
少し漣が押される形になってしまったが、少し苦笑しただけで済ませたことから、これは「いつものこと」なのであろう。
「測定結果は……現在値LV3、潜在能力が同じくLV7!」
「にゃ。もう少し上を目指せると思ったのだけどにゃ~」
漣に続き、みかんも全く同じ値をたたき出した。
ちなみに現在値のLV3というのは、ヒーロー科に入学する段階で出す値としては極めて優秀であり、既に「即戦力レベル」であることを示している。
「となると、私がやってから残りの二人、という形がよさそうだな」
明が測定機に乗る。
果たして結果は……。
「現在値LV4、潜在能力LV7!!」
「にゃ~~!! 悔しいにゃ~!!」
相当すさまじい値をたたき出した。
現在値のLV4は、ヒーロー科で修業を積み、卒業したヒーロー並みの値である。
「うわぁ。僕、この後に乗りたくないな……」
結希がしり込みしてしまうが、当然であろう。
俺もかなり、ビビっている。
「まあ、どちらかがやらなければならないのだからな。先に俺がやれば、少しは気が楽になるだろう」
俺が測定機に乗り、レバーを握ることにした。
ちなみに「ハッキング」などにより、測定値をいじることもできるのだろうが……この場でやることではないため、自重することにする。
「測定値は……えっ、 すみません。もう一度測定してもよろしいでしょうか?」
係員が、目を見開いた後にそう告げてきた。
表情からすると、悪い結果ではないのだろうが。
承諾し、もう一度レバーを握る。
「……測定完了しました。現在値LV4、潜在能力……LV8。最高値です!」
「「「「え~~!!!」」」」
その場にいた全員から、驚きの声が上がった。
潜在能力で示された「LV8」レジェンドリーは、今までの測定で「最高の数値」をベースとして設定されたものである。
あくまでも「伸びしろ」とはいえ、その値に並ぶことになるとは思いもしなかっただけに、周りの驚きは非常に共感できる。
むしろ俺自身が、一番驚いているくらいだ。
「さすが広大、ミフユの息子ですね! サラブレッドということですか……」
係の人が、感心したような口調で言葉を漏らした。
実は血が繋がっていない、というのは更なる混乱を招くため、この場では口にしない方が吉であろう。
「泣きたくなってきた……この流れで、最後に測定するの……?」
「まあ、あくまでも検査というだけだからな。気楽にやればいい」
泣き言を止められ、しぶしぶという感じで測定機に乗る結希。
果たしてその結果は……?
「?!?!」
係の人の顔が、激変する。
目を見開いているのは俺の時と同じであるが、むしろ「信じられない」という感覚が表情だけで伝わってくる。
一体、何があったのやら。
「すみません。機器の調子が悪いのかもしれないので、簡易確認だけやらせてください」
係の人が、慌てて調整キットのカバンに手を伸ばす。
これは……尋常ではないことが起きたということで確定だろう。
「え、一体何があったの? 待たされるのは嫌なんだけれども……」
「まあ、間違いなくとんでもない値が出たのだろうな。俺の時ですら、機器の故障は疑わなかったのだから」
結希をなだめながら、調整が終わるのを待つ。
「すみません。もう一度他の方々も、測定してもらってよろしいでしょうか? 機器が正常に動作していることを、確認したいので……ご協力をお願いいたします。」
その言葉に従い、俺たちは再度測定を行う。
結果は最初の時と同じ値であり、これで機器の故障という可能性はかなり低くなったはずだ。
「お待たせしました。結希さん、測定をお願いします」
恐る恐る、結希がレバーに手を伸ばす。
さて、どんな結果が返ってくるのやら……。
「……測定結果が一応出ました。現在値LV5、潜在能力は「測定不能」です」
「「「「測定不能?」」」」
先ほどと同じように、全員の声が被ってしまった。
そもそも現在LVが5という時点で「一線級のヒーロー」に相当する値なのだが、後者の衝撃に比べれば微々たるものとしか言いようがない。
「LEの値を何度も超え、測定上限を示しておりました。無理にこれ以上測定しようとしたら、恐らく機器が壊れてしまうと思われるため、測定不能とせざるを得ませんでした」
こういった機器には、ある程度の「余裕」を持たせて作られるのが一般的である。
その「余裕」の範囲を超えていたというのであるから……いかにこの事態が「異常」であるかが、分かるであろう。
「なんだか、怖いよ……」
結希はあまり、浮かない顔をしていた。
自分自身で制御できるところではないため、不安を感じているのかもしれない。
「測定不能をたたき出すなんて、まるで俺TUEEE系小説の主人公ではないか。むしろ誇るべきことだと思うぞ」
結希を慰めるために、あえておどけた拍子で声をかけた。
やはり「物語的」には、結希の方が主人公であり、俺はわき役なのだろうな、と実感させられる。
「現在値5ってのも、シャレにならねえな。機会があったらぜひ、戦わせてもらえないか?」
明が声をかける。
強敵と戦う事が、好きなのだろうか?
「うん。機会があったら、ね」
結希が何とか、それに応えた。
「さて、そろそろ実技試験だな。機体に乗り込んで、準備するぞ!」
「「「おう!」」」
俺たちは保健室を後にした。
漣の戦いはこの後すぐであるため、先に観覧できる場所に行き、戦い方を確認しておきたい。
結希も同じ考えだったようで、俺の後ろについてきた。
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