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夏の残暑がおさまり、過ごしやすい季節になった10月。


俺は時計を見て今日の晩飯の事を考える。それにしても風の音がうるさい。


築50年の雑居ビルは少し強い風を受けガタガタと窓が揺れた。


ここは五反田遊遊街から数分の場所。俺の職場が入っている雑居ビルだ。


その3階に事務所を構えるスペースセキュリティ。目の前にいるのは所長の徳永六郎。通称徳さんである。


 もうすぐ18時


 定時だ。


18時過ぎても

会社にいるのはナンセンスだ…早く帰りたい。

そうやって俺は何度も心の中で呟く。

俺の心の叫びが伝わった様に、徳さんは書類から目を上げカレンダーに意識を移し、俺の顔を見た。


「あぁ、今日は第一週目か。涼み嬢ちゃんとデートの日だな。」


徳さん何度も言うがこれはデートではない。


涼みが月に一度自分へのご褒美で 好きな物を値段問わず食べる。


それに付き合っているだけで断じてデートではない。

しかも毎回涼みのおごりだ。正直何度も断ったが向こうは受け入れなかった。


真面目というか義理堅いというか。


独り言のように、いや、…微かに徳さんに聞こえるように、


今日は高級韓国料理が呼んでいる……。



だが無理だ。今日の俺はやばい。

朝から腹をくだしていて土石流のようだ。


  史上稀に見る災害級。


しかし俺はこんな事に負けてはいられない、こんな時こそあれだ!と思いとっておきの儀式を行った。


 『神様おねがいシリーズ』


 第7章


密室でおならはしません。


牛丼屋では紅生姜を6コ以上使いません。


 ピーマンは残さず食べます。


 響也の女を馬鹿にしません。


犬を見ても負け犬が!って言いません。


苦渋の決断だったが、これらを引き換えに神様にお腹を治してほしいと祈った。


結果は…治った!神は本当にいる。


    俺の信仰は


    ブードゥー教だ。


 日本の神様ごめんなさい。


しかし腹痛の原因は何だったんだろう…食中毒だろうか?衛生には特に気を付けているんだが。


    食中毒三原則。


      付けない。

      増やさない。

      やっつける。


これは守ってるはずだ。

わからない。

もしかして何かの呪いのたぐいなのか。


 そうして徳さんの方を見ると 徳さんはちょっと考えて…うんと頷く。


「じゃあ今日は解散! 帰っていいぞーー俺も帰るぞー。家で母ちゃんが待ってるからな。

愛しい母ちゃん急いで帰るぞー。」


 そんなこんなで我がスペースセキュリティは閉店を迎えようとしていた。

まぁ他の奴らは働いているが。



俺は帰る支度をしてジャケットを羽織る。今日もいつもと同じ服装だ。


マクレガー社のスイングトップ

デニムは517のブーツカット

レッドウイングのエンジニアブーツ。このエンジニアは内側にナイフ入れがある。勿論ナイフなんて入れないが、俺のミジンコみたいなこだわりだ。


年甲斐もなくそんな格好と言われるが、何故かこの組み合わせがしっくりくる。



さて帰ろうかな。


 コンコン、、、  コンコン、、、入り口からノックが聞こえ誰か来たようだ。


 ……うちの事務所に訪ねてくる人間は何かの集金か客のどっちかだ。


集金だとヤクルトか。先日、飛び込みの訪問営業がきた。新発売があるとの事で試しに飲んでみたら、飲んだ瞬間力がみなぎってきた!!


 いや。それはない。


『 史上最強の密度!!

 乳酸菌の多重影分身!!」


謳い文句がすごい。意味は良く分からんが凄いというのは分かった。


飛び込み営業の熱意にも負けた。興奮して鼻血をだしていてその鼻血を見てヤクルトを買う事にした。


取り敢えず300個購入。しかしあまりにも美味しく、昨日1日で239個飲んでしまった。


お腹がタプタプで気持ち悪い。


何となく、何となくだが、腹痛の原因がわかってきた気がするが……………いや、終わった事だから忘れよう。


 話を戻そう。


残念ながら今の俺は仕事モードが終わって帰る気満々だ。何人たりとも俺を止める事は出来ない。


基本、事務所待機組の時間は9時〜18時と決っている。国で決めた働き方改革をきちんと守るつもりだ。


ちゃんと36協定にもサインしてるし。帰宅の一択しかない。


帰ろうとする俺に徳さんが声をかける。


「いやお客さんだから、一応対応しないとな。まあとりあえず話を聞こうや。」


 俺の帰る気満々モードは3秒で撃沈された。

 はぁ。徳さんがそう言うなら仕方ない。俺はしぶしぶ椅子に座る。徳さんは来客の対応に向かった。


 ガチャリ。


 ドアを開けるとそこには、若くきれいな女。見た目は20代半ばくらい。

身長は160後半だろう。すらっとした長い手足に、黒のロングヘアー、薄いピンクの口紅をつけてサングラスをかけている。

服装は白いシャツに黒いスキニーパンツ。


 薄いカーディガンを肩にかけている。

 何故着ないで肩にかけている。


俺の心情としては着るか着ないかどちらかにしてほしい。


再度目を向ける。

スタイリッシュな印象を受けるな。モデルかな?と思うくらいだ。その美しい立ち姿に思わず見とれてしまう。


しかし、この女どこかで見た事あるような……。んーーー。モデル…最近女優としても売り出している。……確か名前は…… 高峰……


 彼女はにこやかに微笑んだ。


「はじめまして、高峯杏里と申します。


高峯杏里。最近テレビに引っ張りだこのモデル兼女優。


カリスマ的存在。

下の世代からはリーダー的存在らしい。それを聞いて俺は憤りを感じた。カリスマとリーダーという言葉を安易に使ってほしくない。


俺の中でカリスマの言えば

機動戦士ガンダムのギレン・ザビ。


リーダー的と言えば、某週刊少年雑誌で連載していたたけしだ。あれで小学生だから驚きがとまらない。


 まぁその件は良しとしよう。



 突然の訪問失礼します。スペースセキュリティの徳永さんにお願いがあってきました。」 



この高峯杏里の訪問が、10数年前の事件。俺の無くした記憶。全てが噛み合い。歯車の様に動き出すなんてこのときは微塵も思わなかった。


【そして…復讐の始まりが…】





お願いという事は仕事の依頼か……ふぅー。残業確定だな。俺は半ば諦めモードになりながら女を見る。

確かに綺麗な女だな。


 品がある。

 華がある

 だが心は作り物だな。

 何となくだが…そんな気がする。



徳さんが女を案内する。

「どうぞ〜こちらに座ってください。」


おい、どっから声が出ているんだ?徳さんあんたさっきまでと別人だ。

インチキ訪問販売の営業スマイルのそれだ。しかも声が1オクターブ下がってイケボになってる。やるな、徳さん。


「ありがとうございます。失礼いたします。」  


 女優の高峯杏里。

 声まで綺麗だ。天は二物を与えるんだな。


 まぁ、俺はというと。



  「お茶どうぞ。」


たまに慣れない事をしてみる。

いつもお茶を淹れてくれる響夜は休んでいる。


何でも六股がバレて修羅場らしい。徳さん曰くそれはしょうがないとの事。落ち着くまでゆっくり休めばいい。


イヤ普通に駄目だろう。

そんなんで仕事休んでいいのか、響夜が正しくて俺が間違ってるのか?


最近世間の常識がわからなくなった。響夜という名前、何となく偽名っぽい。ホストの源氏名みたいだ。そう、偽名である。本名は太朗。


この名前は祖父母がつけたらしい。


本人曰く、

「太郎って名前?ダサくねえ?」


爺さんが聞いたら多分地獄行きだろう。


確か……今日から出勤って言っていたような……



ついでに言うと、いつも居る京子も現在休みだ。


有給休暇を一ヶ月とってる。

何でも飼っていた犬が老衰で死んだらしい。お通夜、葬式、そして悲しみのあまり疲労困憊らしい。

本当は四十九日までと言ったが、流石にそれは駄目だと徳さんが言ったらしい。


犬や猫を飼っている人は、家族と同等の愛情があると聞いたことがある。


ちなみに俺は犬が大嫌いだ…理由は……………。


 まぁその事についてはあまりよく思い出せない。


京子の事は徳さんに聞いた。

徳さんは気付いて無いが、飼っていたのは…。


いや。飼ってない。

あいつは動物なんて飼ってない。死んで悲しんでる?

あいつがこよなく愛しているのは人形だ。ただの人形だ。


幼児の教育教材についている人形だ。名前はしまじろう


何がいいのかわからん。

トラの模様が入った至って普通のぬいぐるみだ。


美的感覚がおかしい。

特にいつも尻尾の匂いをかいでいる。

只の変態だ。

尻尾を触りすぎて大変な事になつまている。始めは太くて一本の尻尾だったが 余りにも触りすぎて糸がほつれバラバランスになって、尾が9本になっている。


完全に妖怪の九尾状態だ。

しかも毎日カバンに入れてある。しかしたまたまカバンから尻尾が出てきたので、冗談で響也がしまじろうの尻尾をカバンからだしてぶん回して遊んで

いた。


正直俺はそれを見て激震が走った。


そして響夜は2週間の入院を余儀なくされた。


あと、いつも居るビビ。

ビビ、アンダルシア。

こいつはよく分からんからスルーだ。


あと、数人従業員がいるが、みんな何してるか不明だ。

そんな事はどうでもいい、

とりあえずお茶を出すか。


こんな有名人にTパックのお茶で申し訳ないが、ここは我慢してもらおう。


 高峯杏里はお茶を一口飲み、…………。


「とても水分を欲していたので喉は潤い、体に染み渡ります」


さすが女優をやっているだけあって演技と言葉のチョイスがうまい。


こんなにまずいお茶を飲んでも素晴らしい返しをする。

俺だったらコントの様に相手の顔に吹き出して机をひっくり返している。


「すみません、突然押しかけてしまって。」


「あ、いえ、お気になさらず。今日はずっと暇でちょうど話し相手が欲しいと思っていましたので、こんなきれいな子が来てわしは神様に感謝しとるよ。」


 徳さんさっきまで母ちゃんがどうとか言ってたのにな。



「それで依頼という事でいいですか?」


一応仕事の真面目モードになる徳さん。


「以前仕事の対談で知り合った蟹江さんからこちらの事を聞きました。

何か困った事があったら尋ねるようにと。


それと、他からもこちらの事は少し聞きました。」




うちを紹介したっては、、、、まぁ色々勘ぐるときりがないな。


高峯杏里が何か疑問があるように徳さんに話しかける。


まずこちらの職場なんですが、なぜスペースなんですか?



その問いに徳さんは笑いながら答える。


「有名な実業家の蟹江高広。通称カニエモン。


そのカニエモンの宇宙関連のダミー会社。税金対策がうちの会社。


そんな事知らない人間に言っていいのか!徳さん!


仕事内容はセキュリティ。まぁガードマンみたいなもんじゃな。しかしこれがなかなか忙しくて従業員数人しかおらんから毎日てんてこまいよ。」


 徳さんががそう説明してると高峯杏里はひとつひとつうなずき、目を大きく広げ真面目に聞いている。


演技なのか素なのか分からないが真面目な子だな。こんなどうでもいい話をしっかり聞いている。


どうも女優というのが頭にあるから、全部演技に見えるな。


まぁそんな事は依頼には関係無いからどうでもいい。

一緒に行動するわけでもないしな。そんな事を考えてると、高峯杏里が話し出す。


「一応蟹江さんには尋ねる旨を連絡しておきました。こちらに連絡はきましたか?」


「いいや本人からは来てないな。」


 

と話していると電話が鳴った。ちょっと失礼と言い徳さんが電話を取る。


あの感じはボスの蟹江だな。

徳さんが電話を切ってこちらに戻ってくる。

 「ボスからだ。」



「全て任せるとよ。…」


それにしても今の電話のタイミング、この場にいるか、もしくはどこかで見ているじゃないかと思うくらい完璧だ。


実際は盗聴器位はありそうだな。まぁあったとしてもどうってことない。


それが俺たちの関係だからな。

それにこっちは給与をもらっている身なんで文句なんて言えない。


 個人情報やプライバシーなんてこの世界じゃ筒抜けだからな。




しかし蟹江は本当に只者じゃないな。事業を始めた際は小さな会社だったと聞く。そこから色々手を伸ばし今に至る。


  最初はイベント会社。


その際 自社で働く人間を自分の足で全国周りスカウトしに行ったという。


蟹江は企画 立案 実行 全て自分でやる。

イベント成功の要素は多々あるが やはり花が必要だ。綺麗所を集めるだけでは駄目だ。


蟹江曰く、立っているなら人形と一緒だ。それならマネキンでいい。

極端な思考だがプロ根性が半端ない。

その意識がある為 本当に蟹江に選ばれたのは数人らしい。


まぁ蟹江に着いて行くのは神経がすり減り過ぎて大変だろう。


 おっと…話がずれてしまった。


「徳さんどうする?依頼受けるのか?」


 「……そうだな、受けるか?。最近あまり大きな案件もないしいいんじゃないか。」


まぁそうだな。そういえば最近暇だな。暇と言うより身体をはる仕事が比較的少ないな。それにきちんとした蟹江からの正規ルートの依頼だからな。


そんな事を考えてると、徳さんが席を立ちおれに着席を促した。


うむ。バトンタッチか。それじゃそそろそろ仕事モードにはいるかな。


そう思いながら俺も椅子に座り話始める。


仕方ない。本当は帰りたいが仕事ならしょうがない。


まず簡単にさわりだけ聞いて今日はお引き取り願おう。


「株式会社スペースセキュリティの葛城です…。」


 高峯杏里の前に名刺を置く。


 (この人が噂の葛城さん!)


 噂程度だけど男女問わず色々な事を言っていた。


 『奇人変人』


 『尊敬と畏怖』


 『頭のネジが17本切れてる?』


 『心を見透かされる』


 『目で殺される』


 『お笑い芸人』


 『彼氏にしたい』


 『抱かれたい……』


 (それはないわ!!)


【【そして最強のボディガード。】】


 確かにかっこいい。


 私は仕事柄モデルや俳優さんを見慣れている。


 でも。


それとは違う何かがあるのかしら?

でもトゲトゲしているし、心ココにあらずというか。


前情報のせいで、まともに眼を見れない。


それに徳永さんの方が話しやすそう。

そう思い葛城さんから徳永さんに視線を移し、徳永さんを待つ。



…………………………………………………………………………。




 うん?。何だ、、、この沈黙は………


 まずい、俺の嫌々モードが顔に出てしまったか!


 ポーカーフェイスをよそったんだが、流石今やときめく演技派女優に見抜かれてしまった。


何故か俺ではなく徳さん見ている。


よく分からないがまぁいいか。高峯杏里が俺ではなく徳さん指名なら俺は早々と帰るとしよう。


断じて不貞腐れている訳では無い。


 『よし!』 


これで気兼ねなく帰れるぞ。


俺は苦笑いと申し訳ないような何とも言えない顔で席を立とうとしたが、徳さんに肩を掴まれ席にとどまった。


【お前が話を聞け!】



と聞こえてきそうな無言の圧力!徳さん目が怖い。眼力が…目で物を言うとはこの事だな。


しかし目の前の女。

高峯杏里は俺のことを少し胡散臭い目?


観察するようで見てるのが分かる

そう思われても仕方ないな。

俺は何も肩書もないし、外見とか…怪しいかな?


イヤ、外見はいい線いってると思う。

歳は40近いが、痩せ型で身長もあり脱いだら筋肉もちゃんとある。


イメージとしてミケランジェロのダビデだ。自画自賛。


年収は、、、そこそこ貰っていると思う。

そして歌も上手い。何と言っても声がいい。


ものまねも得意だ。


ギレン・ザビの演説をやらせたらピカイチだ。


オフ会でガンダムファンはみんな泣いていた。


(ちょっとまて?) 俺は何考えてるんだ。お見合いじゃないんだから。


 とにかく相手さんがそういう気持ちならしょうがない。


 それにさっきから俺の携帯に何件もメールが…………。俺の寿命が削ぎ落とされている気分だ。


 高級韓国料理が俺を呼んでいる。多分そんな色々なオーラが俺から出てしまっているんだろう。


 残念ながら、俺にとって人気モデルより食欲と命の方がポイント高い。


俺はため息をつき、頭を掻く。徳さんは黙って俺達のやりとりを見ていた。


「さて、仕事の話をする前にお嬢さん。

高峯杏里さんの誤解があるかもしれないんでそれを解決するかね。」


 徳さんが今までの優しく朗らかな印象からい厳しく冷たい声にかわった。


「スペースセキュリティは芸能界、財政界といった特殊な人間達の問題を今まで何件も解決してきた。もちろんそれは簡単な事ではない。だが、この葛城はひまわりスペース企画の社員として数々の事件を腕一本で解決してきた。


見た目通り、葛城はインチキ詐欺師のようだが、お嬢さんのような人を何人も救ってきた実績があるんだ。

どうかここは俺を信じてくれないか。高嶺さん」



「……はい、…………分かりました。」



「葛城さんに失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。」


俺を避けているような態度だ。納得出来てないな。


 女優で取り繕うのがうまいと思いきや、意外と感情が表に出やすい。素の感じだととっつきにくい印象かな。


 あくまでも予想だが。


 俺は頭の引き出しから高峯杏里の情報を整理する。


 今やときめくモデル。家は金持ち。確か財閥系だったかな。高峰家は全国の孤児院に対して援助バックアップをしているという美談を聞いたことがある。善意でやっているのか、自己満なのかわからないがやっていることは素直に尊敬できるな。


 嫌だな。まず疑いから入り、何事にも勘ぐるこの性格は、本心なのか仕事病なのかいまいち分らん。


まだ依頼は聞いてないが、さてどんな問題が飛び出してくるかな。



 高峯杏里は姿勢を正し、俺を軽くにらみつけるようにこちらを見ている。


 俺は嫌そうに席つき 俺はコホンと咳払いをし、

 高峯杏里の目をじっと見つめる。


「それじゃ依頼内容についてだが?」


 徳さんが先を促す。

「はい、それでは依頼内に容についてですが。」

 高峯杏里は一度目をつぶり声を絞り出すように。


「まず一つ目が」


うん?1つ目?何個もあるのか?


まぁいい聞いてみるか。


護衛の仕事をお願いします。


護衛か。


すると徳さんが、

「護衛と言うのはストーカーか何かか?」

「いえ、違います。相手は分かっています。」

「分かっている?」

「それなら警察の方がいいんじゃないか。」



「分かっているというか、相手は同じ俳優です。その相手と言うのが、名前は

チョ、マテヨさんです。」


チョ,マテヨ、今最も人気があるアジアの俳優。昔から日本が好きで、年の大半をこちらで過ごすため日本語はペラペラ。


確か、去年の年間最高視聴率を叩き出したドラマ、「我が者顔の全て」


ストーリーはこうだ。


幼馴染の仲間達。少年、少女から大人になっていき、皆大人の仲間入りをする。その中で、ダブル主人公である高峰杏里とチョ,マテヨはお互い惹かれ合うが中々結ばれない。身分や環境、友人の嫉妬や妬み。障害が多すぎて二人は徐々にに離れていく。大きな問題の一つが、高峰杏里扮する女のコが、一度最愛の彼氏を事故で亡くしている。

その為、人を愛する事を放棄している。

そして最終回、橋の上で再開した二人はお互いの幸せを想い、別々に生きて行こうと語り合う。

涙を流しながら去っていく高峰杏里。

しかし、チョ,マテヨが、流行語にもなった言葉を叫ぶ。


「ちょっ……待てよ!」


 ………………………


「待てよーー!!!!!」


そして高峰杏里が振り返り、チョ,マテヨに抱きつく。

しかし高峰杏里は


「また、愛する人を失うのは嫌!」


「だから、だから、人を人を好きになりたくない!!」


その言葉を聞いたチョ,マテヨは、何を思ったか走ってきた車の前に飛び出す!!

そして、「僕は死にましぇん!!」

……………………………。


……………………………。


……………………………。


二人は結ばれた。

最後にエンドロールが流れ、チョマテヨが高峰杏里にプレゼントを買って、家に向かっている最中。

敵対するグループの後輩に突然刺されてしまう。しかし、タバコを吸いながら歩きだしてドラマは終わる。


刺したとき、ナイフの刃は水平に横向きだった。となると、余程のことがない限り肋骨で止まらず、臓器に損傷を与えて、ショック死か出血多量で死ぬだろう。普通は歩けないだろう……

まぁドラマだからな。


「それで、その俳優から何かを受けていると?」


「いえ、言い寄られているんですが、とにかく、、、強引というか、しつこいというか、、、」


それで、こちらにどうしてほしいと?

来週末にアニメ映画の試写会、舞台挨拶があります。それに私とチョ,マテヨさんとあともう一人の3人が集まります。映画の吹き替えだったので今までは全員別撮りでした。でも今回は顔を合わせるのでとても困っています。

そこで、葛城さんに護衛をお願いしたいんです。


「護衛をするのはいいんじゃが、関係者以外立入禁止じゃろう。」



「そこで、葛城さんには臨時のマネージャーになってもらってボディーガードをお願いしたいと思います」


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