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今時のやり方―③―

 翌日、翔子のマンションから出社したネクライトは一日中脳内にもやもやを抱えたまま仕事に追われていた。

(・・・まさかあんな事になるとは・・・くそっ!!!)

表情もさることながら普段も感情を表に表す仕草が極端に少ない為、現在の彼がどのような事を考えているかなど叔父ですらわからない。

「ネクライト。今日は息子と遊びに行く約束があるんだが、後は任せて大丈夫かね?」

「ええ。もちろんです。追斗君によろしくお伝えください。」

「こらこら!ここではツイカと言うんだ!僅かな気の緩みこそが今までの敗因と知れ!」

組織の頂点が息子を優先しておいてどの口が・・・と心の中で悪態をつくも根暗な性格ゆえそれを公言した事は一度もない。そもそも今の彼が再びプリピュアと対決出来ているのも叔父である燃滓投冶もえかすとうじのお蔭なのだ。

それを考えれば一瞬浮かんだ不満など刹那で霧散する。いや、この場合そんなどうでも良い事以上に彼を悩ませている件があるからこそ一瞬で不満が消え去ったのだろう。


昨夜、真宝使翔子を送った時、何故自分はしっかりと性行為に及ばなかったのか。


隙だらけで意識も混濁していてまさに据え膳食わぬは男の恥状態だった。これに手を付けないのは男の機能が働かないのか趣味嗜好から大きく外れているのか、強大な精神力を持って耐え忍んだかのどれかだろう。

究極の三択にネクライト自ら選んだ答えが精神力で抑えつける、なのだが今にもなって激しい後悔が脳内を満たしていく。


(抱けばよかった抱けばよかった抱けばよかったおっぱいが柔らかかったおっぱいが柔らかかったお尻もお腹もぷりぷりだったぷりぷりだったぷりぷりだからプリピュアなのか?なるほどそうか・・・)


キスから始まりお互いが衣服を脱がし合う程流れには一点の淀みもなかった。過程に問題はなかったはずだ。なのに彼が行為を止めたのには2つほど理由があった。

1つ目が彼女からの懇願だった。

「・・・ネクライト。私とセックスするのなら結婚してね?」

泥酔して舌も頭も回っていなかったにも関わらずその寸前だけはしっかりと言葉にして己の意志を伝えてきたのだ。だがこれを反故にした方が彼の目的は達成出来る。とりあえず頷きはしたもののこの口約束を守るつもりは毛頭なかった。

そして2つ目の理由がこの瞬間、彼女を抱く事が己の目的遂行に繋がるかどうかという疑問であった。


ネクライト、本名燃滓暗人もえかすくらうどは初代プリピュアによって倒されたホープレスエンペラーの息子である。

当時自分の父が敵対組織の長だとも知らずにただのうのうと暮らしていた彼は彼女らによって突如父を奪われたのだ。その事実に気が付いたのは大学卒業後、新たな組織の長として叔父が選ばれた時であった。

真宝使翔子らからすれば平和の為などと宣うだろうが父を奪われた彼は激しい憎悪と復讐心に囚われる。

それを買われて『ダイエンジョウ』への就職が決まり、最初は戦闘要員として修練に励んでいたのだが体を動かす事が不得手な暗人はそのテストで合格出来なかった。

仕方なく叔父である閣下の補佐としての役職に就くも今回の組織運営で多大な出資をしてくれた五菱財閥の会長が幹部候補に是非と真宝使翔子を推してきた事で彼の狂喜は最高潮に達する。

すぐに彼女を調べ上げて絶対に落とせるというタイミングを見出した後は早かった。泥酔状態の下へ赴くとその自己顕示欲へ甘い言葉を刷り込んでいく。

蓋を開ければ1時間もかからずに話はまとまり、翔子も多少の罪悪感こそ見え隠れしていたがしっかりとその役割を楽しんでいるようだ。


これでいい。ここまではこれでよかった。


後は自身の後輩プリピュアを翔子自らの手で打ち倒してもらえればまずは復讐劇第一幕が完成だ。過去の自身をその手で痛めつけるのはさぞ良心が痛むだろう。

第二幕として彼女自身の貞操を一番無残な方法で奪う。言葉にすると強姦といえばわかりやすい。

これには自身が関わるつもりはなく素面の状態で拉致した後ごろつき達に相手をさせる。ありきたりだが最も有効な方法だろうと考えていたのに昨日はそれを奪うチャンスが目の前に零れ落ちて来た。


悩んだ。非ッ常に悩んだ。男の本能と理性が第三次世界大戦を起こしていた。いきり立った息子は刺し違えてでもといった覚悟を見せてはこちらに脈打って突貫の合図を催促していた。


悩んだ挙句いくら泥酔状態の彼女の処女を奪った所で一体どれほどのダメージを与えられるだろうか、という結論からその日は収まらない刀をそのままに無理矢理狸寝入りをかましていたのだが。

(・・・考えればセックスした後こっそり帰ればよかったんだ・・・そうすれば美味しい思いも出来たし復讐への道筋も残せたのに!!)

彼は根暗な性格上今まで異性と付き合った経験はない。故に子づくり経験も0なのだ。それでも今はネットが発展しているお蔭で知識だけはある。

やっと巡って来た初体験のチャンス。それを復讐の為にと押し留まったはいいものの今後そんな状況がいつやってくるのかわからないのに自分は何てミスを犯したんだと何度も何度も後悔していた。


復讐心に再度炎を灯すべく過去を思い返そうとしても脳裏を支配しているのはその柔らかい体と強烈な甘い雌の匂い。


この日、全く仕事にならないと悟ったネクライトは叔父が帰った5分後には自身も帰宅し、下半身を慰めた後早々に就寝した。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

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