最終決戦―④―
「・・・流石に一筋縄ではいかない感じ?」
「だと思うよ~?そもそも皆は薬を使って無理矢理変身してるじゃない?やっぱり昔みたいにはいかないんじゃないかな~。」
そこを突かれるとぐうの音も出ない。14年前にその役割を終えていたのを日本の危機にかこつけて未練を解消した部分も確かにあるのだ。
「でも今までも散々無理を押し通して来たじゃない?何より大切な思い出を汚される訳にはいかないでしょ?」
かといってこちらも引き下がるなど有り得ない。今度こそ本当の、自分達『プリピュア』の最終決戦なのだから。信じている人達の為にも絶対に勝利を掴まねばならないのだから。
「そうだね~でも私にはあまり良い思い出がないんだよね~。」
「・・・は?」
洗脳のせいで記憶すら失っているのか。『ダークピュアイエロー』の口から信じられない言葉が出て来たので皆も唖然としていたが彼女は小悪魔的な笑みを浮かべながら話を続けて来た。
「だって当時は私ほとんど役に立ててなかったしぃ?もちろん一緒に戦える喜びもあったけど~それ以上に辛かったんだ~・・・・・そう、辛かったのよ。」
突然喋り方と声色が変わるとまたも力を吸収しているのか、周囲の囚われた元プリピュア達から苦悶の表情と悲鳴が聞こえてくる。
そして更なる変貌を遂げると『ピュアイエロー』の面影をほとんど失った『ダークピュアイエロー』が洗脳からか深層心理からか、本性を表してこちらを嘲笑してきた。
「だって昔の私は何も無かったし何も出来なかったもの。臆病で引っ込み思案で、皆と友達だったっていう理由だけで『ピュアイエロー』になって戦ってたけど役に立ったと思えた事は一度も無かった。ずっと、ずっと足手まといだった。」
「そんな事は無い!!あなたは唯一の回復技を使って皆を何度も救ってくれたじゃない?!」
洗脳下に置かれているのは間違いなさそうだが彼女の口から聞かされる言葉には確かな真実と本心を感じる。それを感じた『ピュアブルー』もしっかり答えるが全く納得していないようだ。
「そうね。回復技・・・癒しくらいしかやる事が無かったのよね。攻撃する技が弱すぎて、それしか無いと勘違いしてホステスになってみたけど世の中の汚れと人間の醜さがより惨めな気持ちを強くさせていったわ。」
これも過去の呪縛が大きく影響しているのだろう。皆と戦い、強大な敵対組織を打ち破って平和と希望を取り戻した誇りを全員と共有出来ているとばかり思っていたがそうではなかったらしい。
「だから、今度こそ私が、私の力で、私のやりたいように活躍するの。敵対する者や邪悪な者を全てを打ち倒す。この、新しい『プリピュア』の力を使ってね?!」
そう強く言い放った『ダークピュアイエロー』は既に『ホープレスエンペラー』の力を超えているのかもしれない。感じた事の無い強大な力を前に僅かな絶望と恐怖が生まれていたがそれはあくまで『ピュアレッド』以外の話だ。
「・・・プリピュアから力を奪って強くなる。それってプリピュアを名乗れるの?」
「それを決めるのは最後に立っている者じゃない?」
噛み合わない会話を終えると『ダークピュアイエロー』は有り余る力で拳を放って来たのでとこちらもそれを打ち壊すように攻撃を重ねる。
ばこんっ!!ずどぉぉぉぉおおんん!!
だが綺麗事では如何ともし難い力の差が目に見えて現れると『ピュアレッド』は右拳を大きく弾き飛ばされた後、腹部に追撃を貰って地下の建物を貫通しながら吹き飛んだ。
「『ピュアイエロー』!!あなたの気持ちはわかったわ!!でも、その力は友達を傷つける為のものなの?!『プリピュアプロジェクト』の内容はあなたが一番よく知っているんじゃないの?!」
今度は『ピュアブルー』が説得と同時に間に立ちはだかるがはやり反応は薄く、『ダークピュアイエロー』は軽く首を振りながら溜め息をついていた。
「『ピュアブルー』。戦いっていうのは必ず誰かが傷つくものなのよ?それに今の私は自分が納得のいく戦いをしたいの。」
言い終えた『ダークピュアイエロー』が今度はキックを放ってくると『ピュアブルー』もそれに合わせるがやはり力の差から一方的に吹き飛ばされるだけだ。
「プリピュア。エバーグリーン。インテンション。」
これは仲間達が衝撃を緩和しようと必殺技を展開し、地面から緑色の大樹が顕現すると大きな葉っぱで彼女の体を優しく受け止める。
「悪いけど手加減は出来ないよ?!プリピュアッ!!バンブーブレードッ!!」
昔から武道に身を置いている『ピュアパープル』には戦いの問答など必要なかった。『ダークピュアイエロー』に大きな隙が生まれた所を目掛けて急襲をかけるが全ての能力が向上している彼女には届かないらしい。
運動音痴だった愛美とは思えない身のこなしで鋭い剣撃を躱すと一気に距離を詰めて来て反撃の拳を放ってくる。
「プリピュア!!ファイアレターダントッ!!」
現役プリピュア達もやっと体勢を立て直して真の敵を認知したのか。『ピュアパープル』を助ける為に『ピュアフレイム』が急いで防御壁を張るも緩衝材にすらなっていないようだ。
『ピュアレッド』と同じように吹っ飛んだ後、今度は『ピュアクリムゾンバースト』が『ピュアマグマ』との連携技クリムゾントルネードバースト!を放つがほとんどダメージを与えられていない。
その余裕は痛みを全く感じていない『ダークピュアイエロー』が放った言葉にも表れていた。
「やっぱりね。あなた達は弱い。弱すぎる。でもこれも『プリピュアプロジェクト』の影響なのかもね。」
「あ、あたし達が弱いだって?!い、言っておくけど『ブラッディジェネラル』が、『ピュアレッド』が登場するまでは負けなしだったんだぞ?!」
「だから弱いって言ってるのよ。本当のプリピュアなら例え相手が元プリピュアでも、どれだけ強い相手でも洗脳なんて絶対されないだろうし負ける事なんてそうそうないわ。」
これには『ピュアフレイム』が一番先に反応すると攻撃よりも先に自身の得意とする口撃が『ダークピュアイエロー』の精神に放たれる。
「・・・つまり洗脳されて、自分に自信が持てない『ピュアイエロー』さんはとても弱いのね?」
「そうね。私は弱い。だから洗脳もされたし『プリピュアプロジェクト』に利用されたの。でもやっと望んでいた力が手に入ったのも事実よ?」
どこまでが本心でどこからが洗脳かわからなくなってくる答えに皆がたじろぐ中、瓦礫から飛び出して来た『ピュアレッド』は軽く首を鳴らした。
「最後に聞いておきたいんだけど、もし私達がここで『あなたの苦悩に気が付けなくてごめんなさい。』って謝れば共闘したりしてくれる?」
「あっはっは~そんな訳ないじゃない!これは私だけの戦いなの!」
「だよね?だったら私も、私達も本気で戦うわ。」
今までも十分本気だったのでは?と周囲は目を丸くしていたがそれは大いなる勘違いだ。何故なら『ピュアレッド』の中には既に大きな希望が芽を出していたのだから。
14年前だったら絶対不可能だっただろう方法に辿り着いた彼女はの視線はまず現役プリピュア達に向けられる。
「あなた達の力って熱い魂に呼応するのよね?」
「えっ?あ、うん。そうだよ先生。」
今更すぎる問いかけにむしろ『ダークピュアイエロー』が不思議そうに小首を傾げていたが過去と現在、そして未来を見据える『ピュアレッド』の思考は後悔に縛られた者にはわかるまい。
「今は『ピュアレッド』よ。『ピュアフレイム』、ちょっとこっちに・・・」
「は、はいっ!」
それからこの中で最も知識があるであろう彼女に手招きすると耳打ちで何やら相談を始めたのだから仲間達さえも呆れていた。
「うんうん。わかった。だったら・・・お待たせ『ピュアイエロー』。それじゃ今からあなたの苦悩に対して私が答えてあげる。」
「へぇ~?つまり私に全力で戦わせてくれるのね?そして今まで手にした事の無い本当の勝利と達成感を味あわせてくれると?」
「いいえ。全力であなたを負かしてあげる。」
その発言には羨望の眼差しを向ける『ピュアフレイム』以外が唖然としていたが一番余裕のある『ダークピュアイエロー』はくすくすと笑い出した後、周囲の元プリピュアから更なるエネルギーを吸収してよりどす黒い存在へと変貌していく。
「いいわねぇ。やっぱり『ピュアレッド』は別格だわ。でも殺しちゃっても文句は言わないでね?」
恐らく誰も『ピュアレッド』が勝てると思っていなかった。しかし期待を胸に抱いていたのは彼女が希望の星だからに他ならない。
ばっこぉぉぉんんんっ!!
それでも世の中とはそう甘くないのだ。ましてや『プリピュアプロジェクト』は汚い大人達の日本代表が作り上げた計画である。
音速を超えた速度で移動して空気を破壊する拳が『ピュアレッド』の頬にクリーンヒットすると再び後方へと吹っ飛ぶが今回は更なる追撃を加える為『ダークピュアイエロー』は見えていた足首を引っこ抜いた後地面に思い切り叩きつける。
そして馬乗り状態になると重く禍々しい拳を何度も何度も叩きつけるのだ。
「や、やめてっ?!」
こうなってくると全員がそれを止めに入るが彼女の力は誰にも抑える事が出来ず、最終的には2人の場所だけが大きなクレーターのように陥没していた。
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