表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/92

最終決戦―②―

 完全復活を理解していた仲間達も心配はいらないと思ったのだろう。

「あんまりいじめちゃ駄目よ?」

『ピュアブルー』が軽く忠告してくるとこちらも笑顔で頷く。

「『ピュアクリムゾン』!!目を覚まして!!私達が『ピュアレッド』様と戦う理由なんてないはずでしょ?!」

しかし大切な友人であり仲間の『ピュアフレイム』が叫ぶように悲痛な思いを訴えても彼女の心には届いていないらしい。


「いいや!あるね!!私が、私達こそが本当の『プリピュア』なんだっ!!他の奴は全部偽物・・・私達の活躍を妬む・・・奪う、偽物だぁぁぁぁああああぁあっ!!!」


最終形態になった『ピュアクリムゾン』は熱き嫉妬を炎に変えてこちらに必殺技を放とうと身構える。

ならばと『ピュアフレイム』も受けて立つ構えを展開したのだがそうではない。それは『ピュアレッド』の戦い方ではないのだ。

「『ピュアフレイム』、私を信じてくれる?」

突然の告白にも似た問いかけに一瞬で顔を真っ赤にして硬直していたがこちらが送る真っ直ぐな、純粋な眼差しの奥にある力を彼女も感じたのだろう。

「・・・はい!!」

「だったら一緒に放ちましょう。私の合体技を。」

今は同じ『プリピュア』同士であり、『ピュアフレイム』は誰よりも『ピュアレッド』に憧れていた少女なのだからこちらの使う必殺技は全て網羅している筈だ。


「これで終わりだぁっ!!プリピュア!!クリムゾントルネードッ!バーストォォォ!!!!」


今度は『ピュアクリムゾンバースト』がまるで敵対組織のようなセリフと共に必殺技を放って来るがならばこちらもそれに応じよう。

「いくわよ『ピュアフレイム』!!必殺!!」

「プリピュアッ!!ツインハートブレイィクッ!!スキュアーッ!!」

防御スタイルの『ピュアフレイム』が名前も攻撃手段も完全に再現出来たのは憧れと熱い魂がしっかりと融合した結果だろう。

洗脳され、間違った方向に力を解放した時点で勝ち目はなかったのかもしれない。

左右対称で放たれた2人の拳は巨大な赤と蒼のマーブル模様を彩りながら『ピュアクリムゾンバースト』の必殺技と真正面からぶつかり合う。

そして最終形態から放たれた必殺技にも関わらずその攻撃は均衡を保つどころか一瞬で打ち破られ、ツインハートブレイクスキュアーが彼女の鳩尾に深く突き刺さると眩い光が貫通してから一気に大爆発を起こす。


「はい一丁上がり!さて・・・最後はあなたね?」


気を失った『ピュアクリムゾン』を『ピュアフレイム』に預けると『ピュアレッド』は途中から戦意を喪失していた『ピュアマグマ』に視線を向ける。

「あ、あ、あ・・・・・」

正直このまま一方的に必殺技を放つのは何だか弱い者イジメみたいな形で気が引けたがここは心を鬼にして正気に戻す事を優先しなければならない。

そんな後ろめたさに気が付いたのか、今度は仲間達も闘志を放ってこちらに近づいて来た。どうやらここは4人協力の必殺技で苦痛を与える前に一瞬で決めようと無言で提案してきているらしい。

ところが『ピュアクリムゾン』をその場にそっと寝かせた『ピュアフレイム』も再び戦闘態勢に入ったのだから初代の面々は一瞬あっけに取られたが彼女の協力があれば5人であの技が使える筈だ。


「『ピュアマグマ』、待ってて。今先輩達と一緒にあなたの洗脳を解いてあげるから!」


「よーし!決まりね!いくわよ皆っ!!」

「ひ、ひゃぁぁぁあああぁあぁ?!」

もはややり取りなど必要ない。純粋な心を持つ戦士達はまるで昔から一緒に戦ってきたかのように意思を重ねると同時に『ピュアマグマ』を囲んで両手をかざした。

するとすぐに彼女は何も出来ないまま大きな光の柱に包み込まれる。


「プリピュアッ!!エターナルスピリット!!ライトローードッ!!」


昔はこの技で数々の『アオリンゴ』、今でいう『アオラレン』を浄化してきたものだ。それが世代の違うプリピュアを加えて放てるなんて。

過去の栄光が新しい記憶と経験に上書きされるのをしっかり感じていた『ピュアレッド』は『ピュアマグマ』が崩れ落ちる前に駆け寄って抱きしめる。

「・・・ま、真宝使先生・・・わ、私・・・」

「今は『ピュアレッド』でしょ。大丈夫、後は私達に任せて。」

「・・・そんな訳にはいかねぇだろ!」

正気に戻った教え子との優しいやり取りに突然介入してきたのは他でもない『ピュアクリムゾン』だ。まさか2人で放った必殺技を受けても洗脳が解けていないのか?

「ほむら!!折角あの『ピュアレッド』様が任せてって言ってくれてるのよ?!『ダイエンジョウ』に洗脳されてた私達を救ってくれたのよ?!まずはお礼からでしょ?!」

「うぐっ?!い、今は『ピュアクリムゾン』な?!わ、わかってるよ!でもあたし達だってまだ戦える!その、ここで待ってる訳にもいかないし何か手伝わせてくれよ?!」

一瞬仲間達も警戒したが彼女と付き合いの長い蒼炎 りんかはその物言いに激昂して問い詰めると流石の紅蓮 ほむらもたじたじだ。

『ピュアフレイム』だけは半分以上自力で打ち破っていたような気もするが憧れの存在と出会えた歓喜を考えると間接的には救ったのだろう。


「・・・うん。わかったわ。それじゃ今から『ピュアイエロー』を助けに行くんだけど手伝ってくれる?」


「はいっ!!」

「おうっ!!」

「ふ、ふぁいっ!!」

3人からとても元気な返事が返って来たので安堵した『ピュアレッド』は離れていた2人を手招きして自分達の所へ呼ぶと再びまとめて優しく抱きしめる。


実は先程『ピュアクリムゾンバースト』が放った言葉で大いに目が覚めたのだ。真実を受け入れられなかった事、誰よりも他のプリピュアを認められなかったのは自分自身なのだと。


だから再び変身出来ても、活躍出来てもどこか空虚な心が見え隠れしていたのだ。

14年前に激動の1年間を駆け抜けた後、進学しても就職しても他のプリピュア達が戦っている姿を直視できなかった。それは本来であれば自分の役目だと強く信じていたから。

その大役を取られたくなかった。思い出を失いたくなかった。自分はまだまだやれるのだと、何なら毎年変身して戦ってもいいとさえ考えていた程だ。

しかしそれを教え子の口から聞かされて気が付けたのだ。自分達だけじゃない。彼女達もまた歳を重ねて成長して行く。

そうして伝説の戦士は純粋な心と共に引き継がれていくのだろう。この世に不老不死などが存在しないのと同時に生物というカテゴリーである以上子々孫々までその気高い誇りを、未来を繋いでいく必要があるのだから。


この戦いこそが自分の、自分達の最終決戦となる。


気が付けばかなりの間ずっと3人を抱きしめていたので周りも様子がおかしい事に気が付き始めたようだが『ピュアレッド』の心はこの瞬間気高く成長を遂げたばかりだ。

「・・・よし!ところでどうしましょ?皆で真正面から乗り込む?」

「先生ぇ・・・あたしでももう少しマシな計画を考えるぜ?でもまぁそれが『ピュアレッド』らしさか。」

あまり勉学の成績がよろしくない『ピュアクリムゾン』に突っ込まれると流石に年長者としての自覚が残っていた為か、今度はこちらが照れで頬を紅潮するがこんなやり取りは今に始まった事ではない。

「・・・だったらこうしない?私達4人は真正面から、『ピュアクリムゾン』達は裏手から突撃して内部をぼこぼこにするの。それで『ピュアイエロー』は余裕のある人が助け出す。どう?」

正面突破よりは多少マシな程度の作戦を『ピュアブルー』が提案するとこちらは全員が頷く。何故ならこういった場面では大抵彼女か『ピュアパープル』が作戦を立てて実行に移して来たからだ。

だが教え子達からは無反応だったので気になった『ピュアレッド』がそっと視線を移して確認するとどうやら作戦内容以上に驚く発見があったらしい。


「あの・・・その声・・・それにその顔って、も、もしかして『ピュアブルー』って・・・麗美ちゃん?」


ああそうか。そういえば氷上 美麗は薬で中学生姿に戻り自分のクラスで学生生活を満喫していた。

それが今、全員の洗脳が解けてプリピュアという条件も揃うと中の人間をしっかりと認識出来るようになったのだ。これは自分達も含め、全プリピュア達の能力なのだろう。

「ああ!そ、そういえば私言ってなかったっけ?いや、そもそも元『ピュアブルー』なんて言う機会もないし・・・うん、ごめんね。皆には偽名まで使って騙しちゃってて・・・」

「な、何でもっと早く教えてくれなかったの?!私、『ピュアレッド』様の次に崇拝しているのに!!」

何となく感じてはいたが崇拝と来たか。これは自身のカラーと一緒な部分や当時はクールだった印象からも親近感を抱いていたのが理由らしい。

『ピュアフレイム』が今にも跪きそうなほど喜びと驚きを表していたが『ピュアマグマ』は友情を取り戻せた喜びからか、彼女の方から抱き着いていた。

「でも何で麗美が『ピュアブルー』なんだ?『ピュアブルー』って14年前に活躍してたんだろ?あれれ?」

それを言い出したらここにいる全員がおかしな状態なのだから説明は後回しだ。


「それは全てが終わったら教えてあげる!じゃあ早速行きましょう!!」


洗脳されていた戦士達を全て解放した『ピュアレッド』は教え子が裏手に回るのを見届けた後、真正面にそびえる無駄に大きな扉を拳で思い切り殴りつけて破壊する。

「お邪魔します!!」

再び『ピュアレッド』になった時から明日が来るのを待つつもりはなかった。

今日で全てを終わらせる、その覚悟だけは揺るがないまま『プリピュアプロジェクト』の施設に入るとそこには『ダイエンジョウ』のトップ、『ネンリョウ=トウカ閣下』が闘気を満たして立ちふさがっているのだった。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ