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二人の行方―⑤―

 まさか学校のお昼休み中に戦闘を開始するなんて。元々自由な性格のほむらは敵対組織の力によって完全に抑えが気かなくなっているようだ。

「ぴ、ぴゅあふれい、む・・・来ちゃ、だめ・・・」

元々ソロで十分強い『ピュアダーク』とほむらである『ダーククリムゾン』を相手にピュアマグマが本気で戦えるはずがない。

ピュアフレイムが到着した時には既に決着のついた後だった。

「んで?『ブラッディジェネラル』の居場所、知ってるんだろ?教えてくれよ?」

それでいきなりメッセージを送ってきたのか。ピュアフレイムは納得しつつも状況が非常に不味い事に気が付くと必死に思考を張り巡らす。


このままではピュアマグマも彼女らに攫われかねない。


だったら真宝使 翔子の居場所を教えてさっさと消えてもらうか?そもそも見逃してくれるのだろうか?

力関係からも感情論からも選択肢の限られた中で歯がゆさと悔しさで強く拳を握り締めるがピュアフレイムは軽く溜め息をつくと静かに口を開いた。

「・・・教えたら見逃してくれる?」

「お?流石はピュアフレイム!話せるねぇ!いいぜ!」

「真宝使先生は今ブラジルにいるわ。」


・・・・・


これは少し盛りすぎたか?時間を稼ごうとつい日本から最も離れた場所を指定してしまったが流石に嘘が下手くそすぎたと内心は右往左往していたが結果は良好だった。

「おいおいおいおい。そんな遠い所にいるのか?!勉強が苦手なあたしでさえ知ってるような遠い所じゃねーか?!」

「・・・でもそれなら納得は出来る。何故こんなに探し回っても見つからないのか。」

意外な事に『ピュアダーク』が先に納得してしまったお陰で少しも疑う事無く『ダーククリムゾン』も相槌を打っている。

これは洗脳の影響なのか2人の素直すぎる性格が功を奏したのか。とにかく窮地は脱せたようだ。

「なるほどねぇ。国外か・・・よし、んじゃ今日はそれを本部に持ち帰ってみるか!!」

こうして2人は変身を解くとついさっきまで戦っていたのをすっかり忘れた様子で校内に戻っていく。いくら洗脳されているとはいえその切り替えの早さは見てて悪寒が走った。

「あかね、大丈夫?」

「う、うん・・・稽古で慣れてるから。」

りんかも変身を解いて手を差し伸べるとあかねは強がった笑みを零しながらその手を掴む。

それから2人が近くにいないのを慎重に確認した後、三森 来夢に今し方の出来事について尋ねると意外な答えが返って来た。


それは妖精ホップンの力で守られているから彼らには見つけられられないのだそうだ。


だから真宝使 翔子は彼女の部屋に居候みたいな形で居座っているのか。

「だったら安心だね。」

「安心・・・?全然安心じゃないわよ?!」

確かに『ピュアレッド』いや、『ブラッディジェネラル』はしばらく発見される事はないだろうが戦況は眼も当てられぬほど劣勢なのだ。

このままではピュアクリムゾンも利用されたまま『ダイエンジョウ』の思惑通りに事が運んでしまう。元より『ピュアレッド』の大ファンであるりんかがそんな羞恥を受け入れるはずもなくつもりもない。

そもそも歴代のプリピュア達が積み重ねてきた栄光と活躍に泥を塗るわけにはいかないのだ。なので必死に考えを巡らせる。何かないか?この逆境を跳ね除ける一撃必殺!大逆転!みたいな作戦は・・・


・・・・・


1つだけ、もしかすると彼らの本部を見つけられる方法があるかもしれない。だがそれはあまりにも危険で口に出せる物ではない。

それでもりんかは帰宅した後、もし自分が『闇落ち』してしまった場合は遠慮なく打ち倒すよう手紙を書いてタクトの中にいるフェニコに渡すと眠れない夜を過ごすのだった。








既に3年以上付き合っている司はずっと彼を見つめ続けてきた。


なので最近何か様子がおかしいのにも気付いてはいたがそれを指摘すると今の関係が崩れてしまいそうで言い出せずにいた。

「どうしたんだい?最近元気が無いように見えるけど?」

だが燃滓 投冶も同じだったようだ。彼もまた司と真正面から向き合ってきたのだから様子がおかしいことくらいすぐに見抜けたのだろう。

「いえ、その・・・何でもありません。」

本当は尋ねたい。最近追人君の話題をすっかり聞かなくなったし家に招待してくれる事もなくなった。

眼の奥からは優しさが失われ、まるで別人みたいになっていく彼の身に一体何が起こっているのかを。

「・・・そういえばもうすぐ4回目のクリスマスですね。」

「ああ、そうだね。」

あの夜の事は鮮明に覚えている。最初こそやりすぎたと何日間も羞恥に悶えていたがあの出来事があったからこそ今の関係を結ぶ事が出来たのだ。


自分も元プリピュアだから決めるときは決める。そういう性格であり、だからピンチを幾度と無く潜り抜けてきた。


「・・・投冶さん。最近のあなたからは安らぎを感じません。疲れていらっしゃるのですか?それとも何か困っていらっしゃいますか?」


だからこの日のデートでも司は勝負に出たのだ。もし自分の勘が正しければ必ず力になれるはずだと信じて。

「そうだね。疲れているのは間違いないな。ただ安らぎか・・・それは元々持ち合わせていないからわからないな。」

「そんな事はありません。私はあなたと何度も肌を重ねてそれを感じてきました。追人君の良き母親にもなりたい。だから教えて下さい。投冶さん、私に何か隠してませんか?」

「・・・・・隠し事の1つや2つは誰にだってあるだろう。さぁ、今日はもう帰ろうか。」

完全にはぐらかされた司の脳裏に浮かんだ答えは1つしかない。それは新しい恋人が出来たのだろうという事だ。

それなら少し距離を置くような、冷めたような態度も理解は出来る。と同時にまだ終わったわけではないのに失恋という言葉も胸に突き刺さってくる。


自分の何がいけなかったのか。


司が彼への想いを失う事はなかったし毎回のデートも心から楽しかった。という事は何か知らず知らずの内に彼を幻滅させるような行動を取っていたのだろうか?


エスコートこそしてくれるものの、店から出た2人の間には物理的な距離以上の遠さを感じる。


ここはしつこく食い下がるべきか。いや、そんな事をすれば余計彼に愛想をつかされるか。しかし楽しさを失った彼とのデートは辛くて辛くて堪らないのだ。

「投冶さん。他に女の人が出来たんですね・・・」

遂には心の慟哭が漏れると彼も歩みを止めてこちらに顔を向ける。そしてゆっくりと唇が動こうとした時。


「・・・・・そうだ。」


肯定の言葉を受け取った司は驚くほど冷静になれた。

まずその返事にやっと優しさを感じ取れた事が大きい。そして彼が嘘をついている事も見抜けたからだ。

これは自分しか知らない事だった為当然本人にも漏らしていないが燃滓 投冶が嘘をつく時、若干だが左目の瞼が薄く下がるのだ。

これぞ3年以上付き合ってきた彼女の真骨頂なのだろうが、何故彼がこのタイミングでそんな嘘をついたのかは全くわからない。

「でしたらホテルに行きましょう。」

「な、何故だい?もう君に対する愛情はなくなったと告げたつもりだが。」

「ええ。ですから思い出を下さい。年下彼女の最後の我侭です。」

既に28になる彼女は決して思春期の少女ではない。こうなれば出来る手段を全て行使して何故そんな嘘をつくのかを暴こうと無理矢理腕を組んで引っ張っていく。


「わ、わかった。わかったから。それじゃ・・・あの場所に行こう。」


むきになっている司をなだめつつ、若干の呆れと諦めを覚えた投冶はタクシーを拾うと初めて体を重ねたあのホテルに向かう。

そして偶然にもあの時と同じ部屋へ案内されると2人は無言のまま、恋人同士というよりは取り調べのような雰囲気で睨みあって座ると司は尋問のような動きを見せ始める。


「まず新しい恋人はどんな方ですか?」


「・・・紫堂巡査。君が取り調べを行うには少し階級が足りてないんじゃないか?」

「そんな事はありません。私は結婚も視野にお付き合いさせて頂いてたのですから、いわば妻からの浮気調査だと思ってください。」

これも3年前と同じワインに軽いおつまみを頼むと司は味よりも喉を潤わせる為にグラスを一瞬で飲み干す。

「妻か・・・そういえば私の前妻についてはほとんど話した事がなかったね。」

彼もそれに一口つけるとふと夜景に目をやって呟いた。これは以前彼の家で家族の話題に触れて以降司も意識して逸らしていたのが理由だ。


「私の妻は追人を産んで直ぐ亡くなったんだ。その1年前には兄と兄嫁も亡くなってね。以降は私が甥と息子を育ててきた、つもりだ。」


時折甥の話だけは聞かされていた。最近だと2人で海へ行くという話が出た時も甥になら息子を安心して預けていけると話してくれていたのも記憶に新しい。

ただそれほど立て続けに不幸があったのは流石に知らなかった。最初こそお酒の勢いで全てを聞きだした後3年前のように押し倒してやると考えていたが今回ばかりはそうもいかないようだ。

「だが所詮は呪われた・・・いや、これは人生の選択を間違えた私の責任だろう。警察機関のほぼ頂点まで上り詰めてはみたものの周囲に本気で国を憂う者など誰もいなかったのだ。」

「・・・・・?」

突然話題の路線が変わったので司は若干困惑したが彼の苦悩らしき話の腰を折るわけにはいかない。そのまま次の話が下りてくるのを黙って待っていると投冶は夜景に眼を向けたままやっと重い口を開く。

「元々私がそれなりの良家の出自なんだよ。だから上級国民と呼ばれる者達とのつながりも自然と出来上がっていたしそれらの持つ大きな闇に飲み込まれるのもまた当然だったのかもしれない。」

確かに彼の所作は本当に紳士然としてるし立ち居振る舞いや言動から考えてもその内容は全て真実なのだろう。そして大きな闇に飲み込まれるという部分は恐らく警視総監を辞職した事を言っているのだ。


「国の悪行も『プリピュア』という非現実な存在を立てる事で国民の眼を背けさせてきた。私の親族を犠牲にしてね。」


何故そこでプリピュアの話が出てきたのだろう?と一瞬不思議に思ったが犠牲という言葉は聞き逃せない。

「それはどういう意味ですか?」

口を挟むべきか、などという悩みをすっ飛ばして尋ねると彼はこちらを真っ直ぐに見つめてきてワインを飲み干す。


「『ピュアパープル』。君が14年前に倒した敵対組織『ダークネスホープ』の長である『ホープレスエンペラー』は私の兄だ。」

いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

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