表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/92

二人の行方―②―

 「おっす!」

「おはよ!!」

言われたまま素直に行動へ移せるのも若さの特権かもしれない。翌日2人は早速氷山 麗美に今まで交わしてきた元気な挨拶をしてみるが疎遠な期間が続いていたのもあってか一瞥されただけで終わってしまう。

だが彼女は今とても辛い事情の渦中なのは燃滓先生から聞いていたのでへこたりなどしていられない。

一度は一緒にプリピュアが出来たらとさえ思った友人の逆境に寄り添わない方が絶対に後悔するに決まっているのだから。

りんかも静かに寄り添いはするものの言葉を交わすことは無かったが2人が明るく会話を交わしていた記憶は無いので問題はないだろう。

後は以前のように楽しい時間を共有出来る関係を再び作り上げれば・・・作り上げれば?


ここであかねは冷静に考え直す。


あの頃に戻る為には軽い意識では駄目だ。絶対に麗美の問題を解決しないと前には進まない。

今は一緒にいられるよう務める所から始めて、会話をいっぱいして、でも何も答えが返ってこないので少しへこみながらも沢山質問したり授業や男の子の話題を出したり。

「・・・それじゃ私は帰るわ。さようなら。」

そして初めて出会った頃の蒼炎 りんかみたいな冷たい挨拶が返って来ただけでも3人は後で喜んでいた程だ。

心が通じ合っていた感覚は決して勘違いではない。今の所煙たがられる素振りも見せてないのだから少しずつ、少しずつ距離が再び縮まっているのだと確信する。




ところが現実とは時にどんな物語よりも残酷な一面を見せるものだ。




真宝使 翔子が休養期間の間、『ダイエンジョウ』の動きが全く無かったので4人は学校の文化祭で沢山の思い出を作れたのだが事態は急展開を迎える。

12月の最初に街中で久しぶりの『アオラレン』が登場したのだ。これには危機を救うという気持ちよりも『待ってました!』みたいな感情のほうが優先されていた気もするが皆には内緒にしておかねば。

戦場は駅前の商業施設でどうやらゲーム機の形をしたモンスターらしい。3人は氷山 麗美を退避させた後それを倒すべく変身を済ませるが傍と気が付く。

『アオラレン』を指揮しているのは誰なのか。

もし『ブラッディジェネラル』なら教諭としての復帰が近いのだと推測出来るが、相手が『ピュアダーク』なら全力で戦わないとこちらも大怪我程度では済まないだろう。

「み、みんな!気をつけるッピヨ!何だかとっても嫌な予感がするッピヨ!!」

フェニコも怯えた声で注意喚起をしてくるので全員が最初から全力で戦うつもりだった。しかし見たことのない幹部に皆は眼を奪われる。


「初めましてプリピュアの諸君。」


『ネンリョウ=ツイカ』や『ブラッディジェネラル』のような軍服に近い格好ではあるが大きなマントを羽織った中高年の男性にピュアクリムゾンが反応する。

「あんた、新しい幹部か?!他の奴はどうしたんだ?!」

「我々『ダイエンジョウ』がいつまでも失敗続きの部下を使い続けると思うかね?」

思いもしなかった答えにピュアマグマは一瞬頭の中が真っ白になる。今の言い方だと良くて降格、悪くて処刑なんて意味も考えられるではないか。

(・・・まさか真宝使先生が休んでるのって・・・)


秘密裏に消された・・・いや、いやいやいや!!


燃滓先生が元気だと言っていた表情に嘘は感じられなかった。間違いなく生きてはいるはずだしそう信じたい。では彼は何者なのだろう?

「という事は貴方が新しい幹部ね?」

「いいや、私は『ダイエンジョウ』の最高司令官、ネンリョウ=トウカだ。」

意外すぎる展開に質問したピュアフレイムからも生唾を飲み込む音が聞こえた。まさか組織のボス自らが戦場に出向いてくるとは。

しかし考えてみればもう12月。最終決戦まで2ヶ月を切っていると考えるとラスボスとの対面も決して早くは無い。ただ敵は彼1人に強化が施された訳でもない『アオラレン』が一匹だけだ。

・・・もしやこれはチャンスなのでは?決して罠だと考えなかったのは真宝使 翔子の生存を信じていたからだ。


「だったらここで決着をつける!!行こう!!」


ピュアマグマはピュアクリムゾンとピュアフレイムに気合の合図を送ると3人は一斉に攻撃を開始した。相手がどれ程の強さかはわからないが今の自分達は気力も体力も十分過ぎるほど溢れている。

ならば可能ではないのか?この時期に敵対組織を壊滅させる事も。


「「「なっ?!」」」


ところがそれは中学生故の甘すぎる妄想に過ぎなかった。何故ならネンリョウ=トウカはこちらの攻撃に合わせて縛られた氷山 麗美を盾の様に自身の前にかざしたのだ。

「てっ?!てめぇえええ!!!卑怯だぞっ?!?!」

「何を言う。お前達は誰と戦っているのか忘れたのか?プリピュアの『唯一』である敵対組織『ダイエンジョウ』だぞ?」

彼女を人質に取られては攻撃など出来るはずが無い。このやり方は非常に狡猾で効果的でもあったが同時に最高司令官からは『ピュアダーク』とはまた違った冷酷さも十分に感じ取れた。

これを倒さねば彼らに捕獲された『アツイタマシー』も解放されず、フェニコの王国もまた冷え切ったままなのだ。

3人は裏に回り込んだり不意を付いて何とか氷山 麗美を助けられないかと周囲を跳び回ってみたが『アオラレン』の邪魔も入って思うようにいかない。


このままでは文字通り手も足もでないではないか。一体どうすれば良いのだ・・・


ネンリョウ=トウカの持つ光線銃から出るビームが思いのままに当たり、こちらの戦力はじりじりと削られていく中、3人はただただ困惑していると遂にその時が訪れる。


「プリピュア、シャイニングツリー」


自分達が生まれる前か生まれた頃の映像で何度か見たことがある。それは初代プリピュアの『ピュアグリーン』が使う攻防一体の必殺技で大地に両手を付けば巨大な光の大木が見る見るうちに伸びて行くのだ。

問題は何故そんな太古の技が3人の前で繰り出されたのか、その正体は何者なのかだが、今やらねばならない事を一番に理解したピュアクリムゾンはその大木を駆け上り、視界と動きを封じられたネンリョウ=トウカに急接近した後捕えられていた氷山 麗美を見事に奪還する。

「や、やったっ!!!」

これでやっと反撃に転じる事が出来る。ピュアマグマはつい喜色の声を上げたがそれは一瞬で絶望に塗り替えられた。


ぱあぁぁぁっ・・・!!


ピュアクリムゾンに抱きかかえられていた氷山 麗美の体から黒い光が放たれると彼女の姿は一瞬で『ピュアダーク』へと変身し終える。

そして次の瞬間にはクリムゾンの腕から抜けると腹部に強烈なキックを放って地面に叩きつけていた。

「・・・まずい。」

目の前で起きた事実に思考が追いつかなくてあっけにとられるピュアマグマとピュアフレイムを他所に、成人女性が少し窮屈そうなプリピュアコスチューム姿で飛び出てくると2人に突っ込んでいく。

ところが『アオラレン』の頭頂部に移動していたネンリョウ=トウカが放つ光線銃がその行動を阻害すると今度は『ピュアダーク』がピュアクリムゾンの首を後ろから絞めるような形で人質に取ったのだ。


「さて。今日はこれで十分だろう。引き上げるぞ。」


何もわからなかった。何も出来なかった。ただ彼がそう告げると『ダイエンジョウ』の2人はピュアクリムゾンを連れたまま姿を消し、残った『アオラレン』だけが見境無く街を破壊し始める。

一体どうなっているのだ。いや、わかっていた。わかっていたがその事実が受け入れられないまま棒立ちになる最中でも街を破壊する行動は留まるところを知らない。


「・・・あなた達。プリピュアでしょ?」


絶望で染まった心にその自覚さえ見失っていた2人は自分達に声を掛けられているとさえ認識出来ない。


ぱんっ!!ぱんっ!!!


するととても大人しそうな『ピュアグリーン』はわりと本気で2人の頬を平手打ちした。そこでやっと痛みが介入した事でまずはあの伝説の戦士が自分達の目の前にいる事から認識を始める。

「・・・まずは『アオラレン』を倒す。ピュアクリムゾンの事はそれから考えましょう。」

静かだが芯を感じる言葉にやっと目を覚ましたピュアマグマは悩める気持ちを必殺技に乗せて大地から活火山を大噴火させた後、止めを先輩に刺して貰うと3人は揃ってその場を後にした。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ