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暴かれる事実―④―

 先に動いたのは『ピュアグリーン』だった。

彼女は止めに入るべくネクライトの腕から飛び降りて『ピュアダーク』に攻撃を仕掛けたが文字通り一蹴で跳ね返されるとビルの壁に叩きつけられる。

「・・・邪魔をしないで。」

洗脳されているとはいえ彼女も元プリピュアなのに一切容赦がない。いや、洗脳されているからこそ暴力が洗礼されていると言えるだろう。

人とも思えぬ所業も相まって恐怖で竦みそうになるが全く動かないブラッディジェネラルの痛々しい姿は彼の中の勇気を奮い立たせた。


「・・・『ピュアダーク』。撤収命令を下します。本社に戻りなさい。」


そこで苦肉の策として自身の立場を使った方法を試してみる。すると彼女はぴくりと体を反応させてからやっとブラッディジェネラルから足を降ろしてくれたので思った以上の効果に胸をなでおろした。

「『ピュアダーク』、ブラッディジェネラルを私の部屋に運びなさい。」

ところがまたしても五菱 助平が邪魔をしてきたのだ。ボディーガードに守られながら現れた脂肪の塊が人間とは思えぬ醜悪な笑みを浮かべながら命令を上書きすると『ピュアダーク』は言われるがままに彼女を拾い上げる。

「『ピュアダーク』、今すぐブラッディジェネラルと一緒に『ダイエンジョウ』の本部へ帰還しなさい。」

「はっはっは。無駄だよ。彼女への命令はより上官である者が優先されるのだ。しかしネクライト君だったか?随分大変な事をしてくれたねぇ?」

腹立たしい事実を前に無力さを痛感したネクライトは言葉に詰まったがそれはすぐに払拭された。そうだ、翔子を助けると決めた時から最悪のシナリオも覚悟していたはずではないか。


「でしたら私が命令しましょう。『ピュアダーク』、今すぐ『ブラッディジェネラル』を連れて帰還するんだ。」


最後の手段である力尽くを試そうと今まさに行動を起こしかけた時、『ダイエンジョウ』の長であるネンリョウ=トウカ閣下が突如姿を見せたのは偶然ではない。

彼はネクライトの不審な動きと五菱ビルでの騒ぎを聞きつけてこの場に参上したのだ。

お蔭でこの場面は何とか逃れられそうだが五菱 助平の欲望が阻止された形となったので矛先はネンリョウ=トウカ閣下に向けられてしまう。

「ほう・・・?良いのか?私の邪魔をして?」

「邪魔などとんでもない。今回はまず部下であるネクライトの処分から始めるべきだと考えたまでです。さぁ、一度本部へ戻るぞ。」

叔父があまり見たことが無い程怒りを内包しながらこちらに厳しく告げてくるもネクライトは安心していた。どのような形であっても翔子を助け出す事には成功したのだから。

いつの間にか姿を消していた『ピュアグリーン』の存在も気になる所だが、騒ぎが大きくなりすぎて野次馬達が続々と集まって来たのを機に彼らは一先ず解散を選ぶのだった。




「まったく、何て事をしでかしてくれたのだ。」

本部へ戻り、まずはブラッディジェネラルの治療をと医務室へと運んだ後、叔父の執務室に呼ばれたネクライトは思っていた以上に本気の説教を受けていた。

「しかし叔父さん。ブラッディジェネラルは私の獲物なのです。例え大手スポンサーとはいえそれを好き勝手に扱われるのは納得がいきません。」

「今は閣下と呼びたまえ。」

細かい指摘はともかく、彼も兄を亡くしているのだからこちらの気持ちは十分に理解してくれるはずだ。そして親族というのもあったからか、つい反論するとネンリョウ=トウカ閣下は軽く溜め息をついて口を開く。

「そもそもお前の復讐とはどういったものなのだ?」

「・・・歓喜の絶頂から突き落とす計画です。」

「それは彼女と恋仲になる事も含まれているのかね?」

隠していたつもりがすっかりバレていたらしい。叔父に指摘された以上無言を貫くわけにもいかず、かといってそうだと答えたかったネクライトは何故か言葉に詰まってしまい頷くに留める。


「・・・だとすればとても残酷だな。」


しかし閣下にはわかってもらえたようだ。そうだ。この計画はとても残酷であり、それ以上でなければならない。でないと父を失った悲しみを復讐という形に成就出来ないのだから。

それが彼自身に言っているとは夢にも思わず、重ねて深く頷くとその日は目立った処分も下されずに帰宅を命じられた。

内心ほっとしたような、肩透かしを食らったようなネクライトは退社の前に医務室に寄ると静かに眠っている翔子の隣に腰かける。


「・・・残酷・・・か。」


コスチュームのお蔭で大怪我にはならなかったものの頭部周辺の切り傷は将来の人生を左右しかねない。

そうなれば本当に責任を取るべきか。そんな事を考えつつ大きな絆創膏が貼られて静かに眠る彼女の顔を眺めていた暗人は無意識にその髪を触っていた。








叔父であるネンリョウ=トウカ閣下は雇われ店長的な地位とはいえしっかり権力も保有している。

だから昨日はお咎めなしといった形で収まったのだと勝手に勘違いしていたがそれは暗人の甘すぎる楽観的思考に過ぎなかった。

まず真宝使 翔子がそれなりの怪我を負った事で学校に出向けなくなったのだから臨時講師が必要となる。

結果、早朝に電話がかかって来た暗人は叔父の厳しくも短い命令を素直に受け入れると準備を整えて早速今時乃中学校へ出勤するのだった。


「皆さんこんにちは。本日よりお怪我をされた真宝使先生の代わりを務めます、燃滓 暗人と申します。よろしくお願いします。」


故に処罰の類に入るのだろう。突然すぎる異動?辞令?に内心慌てふためくものの暗人は彼女が治るまでの間、無理矢理赴任させられる事となったのだ。

だがこれは好機とも捉えられるのかもしれない。

「あ、あの!真宝使先生の御怪我って・・・どれくらい酷いんですか?」

何故ならプリピュア達を間近で監視出来るからだ。火橙 あかねが不安そうに手を上げて質問してきたのでこちらも心を落ち着かせてからゆっくりと答える。

「傷自体は大したことありません。ただ、目立つ場所なので完治されてから皆さんの前に戻られる予定です。」

スパイである氷上 美麗のお蔭で今は彼女がピュアマグマであり他にフレイムとクリムゾンが3人一緒に行動しているのも把握済みだ。

つまり戦闘が勃発する度教諭という立場を利用すれば一人ずつ分断させる事が可能となったのだ。これで『ダイエンジョウ』がもっと効率よく『アツイタマシー』を回収していけば更なる・・・


更なる・・・・・


「先生~、更なるって何ですか?」

気がつけば授業中に黒板は更なるという言葉で埋め尽くされていた。

「いいえ、何でもありません。」

そういえば初代プリピュアへの復讐ばかりを考えていて敵対組織である『ダイエンジョウ』の最終目的を把握していない。

一応建前的な目標は『アツイタマシー』を奪って日本を冷めた国に塗り替える事だが歴代シリーズを通して考えると基本的にプリピュア側の妖精達との確執があるはずだ。


・・・いくら考えてもわからない。それも当然だろう。その辺りは全く聞かされていないのだから。


いつの間にかチャイムがなり、初めての授業は翔子以上にへにょへにょのまま幕を閉じるもそんな些細な事など気にしていられない。

復讐の事ばかりで頭がいっぱいだったがもし敵対組織がプリピュアを倒した時など考えもしなかった暗人はいつの間にか植え付けられていた敗北思想を取り除きつつ、学校が終わると翔子の様子を見る為に本部へ足を運ぶのだった。




ところが本部ビルの中に入った瞬間から違和感を覚えた暗人はすぐに駆け出す。いつもの受付嬢がいない事、灯りこそついてはいるが人気が全く感じない事に嫌な予感を覚えたのだ。

彼は無意識のうちに医務室に向かうが当然そこには誰もいない。昨日運び込まれた翔子でさえも。

「・・・・・まさか・・・・・」

考えられる可能性など1つしかない。あの五菱 助平が怪我をしている彼女を無理矢理連れ去ったのだろう。

下衆だとは思っていたがまさかこれ程とは。中に誰も残っていない部分と焦心から導き出された答えは奴によって全員連れ去られた可能性だったがそれを確かめる前にまたしても彼女が姿を現したのだ。


「・・・あなた・・・確か翔子の彼氏だよね?」


全く気配を感じなかった所から静かに声を掛けられると慌てて振り向いた暗人は『ピュアグリーン』によって壊滅させられた可能性も脳内に並べつつ、どう立ち向かうべきかの選択を迫られていた。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

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