知り過ぎた故に―②―
しかし答えに近づく事無く麗美は目を逸らすと愛美の横を素通りしていく。答えが欲しくて思わず手を伸ばしそうになったが今はコンプライアンスの厳しい時代だ。
「おい麗美っ!!あ、愛美さん、じゃあたし達行きますんで!!」
ほむらが軽く頭を下げた後その姿を追いかけると他の2人も続こうと動く。なので愛美は職場で得たスキルを使い閃光のように懐から名刺を4枚取り出すとりんかの手を取って握らせた。
「お願い。何かったら絶対に連絡して、ね?」
「は、はいっ!」
それから去っていく4人の後ろ姿を眺めながら頭の中では混乱していた。あれは間違いなく美麗か美麗に関係ある少女のはずだ。
今の所状況証拠から判断すると彼女が黒いピュアブルー、本名?では『ピュアダーク』というらしいが何故そんな事になっているのか?
というか真宝使 翔子は何をしているのか?!?!
あれ程友人に似た中学生が同じ学校にいるのに話題にすら上がらない。というか最近は誰かにフられた話も気になる人の話も出てこない。
(・・・何か知ってるのかな?)
決して翔子がリア充の仲間入りしているとは考えない愛美はその場で彼女に連絡を入れる。
「・・・あ、もしもし~翔子ちゃん?今学校の前にいるんだけど~今夜飲みに行こ?」
『えっ?!何?!突然過ぎない?!今日はちょっと予定が・・・』
「え~~?翔子ちゃんがフられた時の慰め会もいつも突発的じゃない~?今日は大事な話があるの~だから絶対決定なの~。」
『ぅぅぅ・・・わ、わかったわよ。じゃあいつものお店でいいの?』
「うん~。じゃよろしく~。」
こうして愛美は電話を切った後残る3人にも何とか都合をつけて貰おうと、特に美麗には直接会って話を聞きたいと思っていたがこの日は肝心の彼女にだけ連絡が付く事は無かった。
「お待たせ!でも愛美から招集がかかるなんて珍しいわね。」
定時で上がったのか、まずは一番に翔子が元気よく登場する。
「う~ん。まぁ大したことじゃ無いんだけどね~ところで翔子ちゃんも予定あったんでしょ~?無理言っちゃってゴメンね~?」
「い、いいのよ私は!埋め合わせなんていくらでも・・・そ、それより何の話なの?」
少し不審な部分が気になったもののまずは他の2人が揃うまでビールを片手に軽く歓談を続ける。それから30分もしないうちに司と来夢も席に着くと早速愛美が本題に入った。
「ところで翔子ちゃん。いつの間に男が出来たの?」
「ばへぇっ?!?!」
「え?!それほんと?!今日そういう飲み会?!」
「・・・・・」
彼女は隠そうとしていたみたいだが何千、何万の顧客を持つ愛美の前ではジップロックばりにスケスケだった。なのでまずは気になって集中できない懸念を解消すべく話を振ったのだ。
「やっぱり~あの年下の子でしょ?暗人君だっけ?」
「あぐっ?!?!」
昔から翔子は隠し事に向かない性格をしているなぁと思っていたが何だろう?もしかしてわざとそうしているのかな?言い出しにくいとかじゃなくて話を振って欲しくて演じているのでは?
そう考えてしまう程にわかりやすい反応を返してくれるので愛美も邪推はしつつ思わずイヤらしい笑みが零れてしまう。
「あ?!あの人か!!へ~~~~・・・って事は何?!結婚するの?!」
「・・・・・おめでとう。」
司の発言は翔子が結婚するまでは処女でいたい、初夜で全てを捧げたい、みたいな夢物語を散々言い聞かせてきた為なのだがこれは身から出た錆というか墓穴を掘る行為だったらしい。
「ぇ、ぇっと・・・一応、約束はしてくれてるんだけど・・・」
「・・・・・でも体を許しちゃったんだから責任は取って貰わないとね~?」
「んがっ?!?!?」
「ほぇっ?!そ、そうなんだ・・・翔子も変わったんだね。でもそっか。その人との出会いが大きかったんだね。」
「・・・・・白馬の王子様。」
しかしここまでわかりやすいと鎌をかける方は張り合いが無さ過ぎる。せめてもう少し誤魔化す素振りをしてもらいたいものだが愛美の発言にはしっかり本心もこもっているのだ。
「大事にしてもらって、大事にしてあげてね。」
「・・・・・愛美には敵わないな。うん、大丈夫!」
結局最後まで良い訳らしい言い訳をすることも無くすんなりと認めた後は多少ののろけ話に移行するのかと考えていたがその気配はない。むしろこの集まりが祝宴会になりそうだったので愛美は張本人が酔いつぶれる前にいよいよ本題を持ち出した。
「ところで~この娘ってどう思う?」
まずは写真を見せてみると3人は大体予想通りの反応を見せてくれた。
「あれ?氷山さんじゃない?何で愛美が知ってるの?」
「・・・この子、美麗に少し似てる・・・てかかなり似てるね?」
「・・・・・」
翔子はもう酔っぱらっているのか?といっても写真だけでは判断し辛いのは理解出来る。なので先程盗撮・・・隠し撮りしていた麗美との接触時の動画を見せてみた。
「ああ。この子達仲良いのよ。でも最近怪我しちゃったせいか氷山さんが随分大人しいのよね。」
「あ、この子数日前に絡まれてた子だ。へ~2人は友達なんだ・・・って、え?!」
「・・・・・この子、美麗ちゃんそっくり。」
司と来夢は愛美と同じ感想だ。対して普段からよく接している翔子はその弊害からか、似ているという発想には至らないらしい。
「ねぇ翔子ちゃん。この娘ってもしかして美麗ちゃんの親戚とかかな?」
「え?!そんな話は聞いてないわよ?っていうか・・・確かに似てるけどそこまで考えちゃう?」
「う~ん。愛美が言う事も理解出来るね。確かに昔の美麗そっくりだもん。血縁関係とかあるのかも?っていうか今日美麗がいないのは何で?」
そうなのだ。彼女さえ来ていれば直接問い質す事も出来たのに何故か素っ気ない返信を1つ寄越しただけで以降は全く連絡がない。
なので飲み会の途中、今日の皆の反応に写真と動画も載せて再びメッセージを送った愛美は以降も翔子の様子をずっと観察していたが本当に似ているという感想を持ち合わせていないのだと確信していた。
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