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知り過ぎた故に―①―

 「さ~て。あなたたち~?中学生が大人の領域に踏み込んでくるなんて~?覚悟は出来てるんでしょうね?」


ピュアクリムゾンとピュアマグマが去った後、黄崎 愛美は営業時と違う笑みを浮かべながら女子中学生達にずんずんと近づいて行く。

「な、何ですかあなたは?!け、警察を呼びますよ?!」

「だってさ~?司ちゃ~ん。この子達、あなたを呼んでるみたい~?」

「こら愛美。あんまり怖がらせるんじゃない。」

元伝説の戦士の笑顔の裏に潜む怒りを少女達も感じ取ったのか、既に怯えが見えているがまだ一押ししておく必要があるだろう。

愛美は静かに屈強なボディーガードを自身の左右に並べて更に近づき、その中でも一番汚れた眼をした長身の中学生に恋人のような距離まで近づくと射貫く様な視線を放つ。

「ねぇりんちゃん?背伸びをするなとは言わないけど~中学生ってお金より大切なものが手に届くところにい~っぱいあるんだよ?」

「・・・・・」

「そしてそれは~遅くても二年後には気が付いちゃう。不思議だよね~高校生になった瞬間わかるんだよ。だからこんなくだらない事してないで~もっと他に目を向けよう?」

「・・・年増の僻みかしら?」

「え~?歳は平等にとっていくものだよ~?あなたが私と同い年になった時~一体何を思うんだろうね~?」

次の瞬間、愛美は右手の人差し指を彼女の胸に押し当てながら更に真顔で近づいた。


「子供のうちは大人しく従いなさい。でないと取り返しのつかない事になるわよ?」


とても静かに、そして叱るように告げると木元 りんは固まったまま動かなくなる。その後司が補導の為に全員を連れて行くのを見届けてから愛美は職場へと足を運んだ。


すると途中、駅前を通る為プリピュア達の戦いに遭遇してしまう。

自身も引退した身ではあるが元伝説の戦士だからか。好奇心で後輩の勇姿を少しだけ見届けてからその場を後にしようと考えたのだが敵対している黒いプリピュアを一目見て心が凍り付いた。

(え・・・?あれって・・・ピュアブルーじゃ?)

全身を黒色に染めてはいるものの見間違えるはずがない。華麗に動く様を見て心が当時の輝きを取り戻したのが確たる証拠だ。

(う、うそ・・・何で?美麗ちゃん、まさかまた選ばれた・・・いや、そんなはずはない。)

愛美はこの道で人生を歩み始めた後、自身達にも関わる重大な秘密に触れてしまった。今もこうしてホステスの頂点に君臨し、様々な伝手や情報を手に入れているのもそれを暴く為だ。


プリピュアとは必ず若くなくてはならない。


これにはプリティやピュア以外の思惑がいくつも重なっている。その真実にはもう手が届きそうなのだが最後の砦は流石に頑強で愛美でさえも手こずっていた。

更に美麗は初代プリピュアだ。確かに過去プリピュアだった人物が時を超えて特例で力を取り戻す世代はあったが、これは都合良く利用されただけに過ぎない。

思わず目を奪われていた愛美は覚醒したプリピュア達よりもそれに対抗しようともがく美麗をじっと見つめ続ける。そして最後は力負けして遠くへ吹き飛ばされると彼女はすぐに車を走らせてその場所に向かった。




しかし相手は敵対組織『ダイエンジョウ』だ。


恐らくその幹部かそれに近い扱いの黒いピュアブルーは速やかに姿を晦ましてはいたもののここは世界でも有数の歓楽街。愛美は仕事も忘れて周囲のビルや土地所有者に片っ端から連絡を入れるとその監視カメラの映像を求める。

これで何をしようとしているのかは自分でも分からない。ただ彼女が本当に美麗であり、再びピュアブルーになったのなら世界はかなり浸食されているのだろう。

嫌な予感がしてならない愛美は職場に入りはしたものの心ここにあらずといった様子でも最低限の仕事をこなし、退勤後はお昼過ぎまで情報整理に翻弄されていた。




あれから三日後には黒いピュアブルーの正体がほぼほぼ確定する。


それは公立今時乃中学校二年生「氷上 麗美」だ。あの日の戦い以降足に怪我を負った人物を絞り出し、時間を更に絞り込んでいくと年齢的にも彼女が一番怪しい。

「・・・ここって翔子ちゃんの学校じゃない。」

何という偶然、いや、これは必然なのかもしれない。とにかく愛美はその子の写真と黒いピュアブルーを見比べつつ、その日は放課後に彼女が下校するのを見計らっていた。

すると松葉杖を付く少女の周りには学友だろうか?とても彼女を気遣う3人が一緒に歩いており、接触するかどうか僅かに迷ったが愛美はすぐに足を踏み出す。


「は~い。みんなこんにちは~。」


今日は落ち着いた衣服に身を包んでいたのでいきなり通報される事もないはずだ。笑顔で声を掛けてみると麗美は無表情のまま、他の3人のほうがとても驚いていた。

だが一番驚いていたのは愛美本人だったのかもしれない。何せ氷上 麗美と呼ばれる少女の姿がとある友人の姿に瓜二つだったのだ。


「こ、こんにちは。あの、おい、誰かの知り合いか?」

「え?!わ、私は知らない人・・・かな。」

「・・・・・?!」

紅い髪の娘はあまり人見知りをしない感じではあるが所作からがさつな感じは見受けられる。

一番小さく黄色い髪の女の子はちょっとおどおどした様子がほんの少し昔の自分と重なった。恐らく自分を表現できない引っ込み思案な少女なのだろう。

そして蒼く長い髪をした大人しそうな女の子を見てこちらが先に思い出した。

「あの時は大変だったね~?あれからどう?もうあの子達に絡まれたりしてない~?」

「は、はい!!あの時はありがとうございました!!」

名前も知らない子だったが相手も思い出してくれたのか。その子は間違いなく裏路地で見かけた少女だった。まさか氷上 麗美と交友関係を持っていたのは意外だったがこれを利用しない手はない。

「・・・あっ!ビルの所で襲われていたりんかちゃんを助けてくれた人ですね?!あ、ありがとうございます!」

それから黄色い子も目を輝かせてお礼を言ってくれたのだが『あの時』?周囲に彼女の姿はなかったのでどこか物陰で見ていたのか?それとも後から話を聞かされたのか?

「・・・おお?!見た目が違い過ぎて全然わからなかったぜ!婦警さんと一緒にいた人だね?!あたしからも礼を言わせてくれ・・・ださい!ありがとうございますっ!!」

何故か紅い髪の少女も愛美の事をしっかり認知出来ている。というかあの時の『見た目』を知っているという事はやっぱり近くにはいたのか。

「ううう~ん。いいのよ~司とは友達だから~何かあったら遠慮せず私達に頼ってね~あ、私黄崎 愛美っていうの。婦警の子は紫堂 司、よろしく~。」

友人関係の3人には良いイメージで通っていたらしく、お互いが自己紹介を軽く済ませると後は本丸を残すのみとなった。


「ところで~?そこのポニーテールの娘、脚はどうしたの~?あとお名前も教えてくれる~?」


なので愛美は豪快なストレートを放ってみるが本人の表情は微動だにせず、彼女だけは一言も発してくれない。

「・・・えっと、何か階段で転んだらしいんだよ、です。名前は氷上 麗美なんだけど・・・おい麗美、最近お前おかしいぞ?」

紅い髪の少女は何とか敬語を使おうとしてくれているらしい。その可愛い様子も相まって思わず抱きしめたい衝動に駆られるがそちらは後回しだ。

「ふ~ん。そうなんだ~?もしかして~?その怪我って~この前のプリピュアの戦いに関係ある~?」


「「「えっ?!?!」」」


揺さぶりをかけてみると何故か周囲の3人を大いに驚かせてしまった。いや違う、今はあなた達の反応が欲しいんじゃない。心の中で軽くツッコミを入れて麗美を観察するも彼女に大した変化は期待していなかった。


「・・・プリ・・・ピュア・・・」


ところが良い意味で裏切られるとその声を聞いて愛美の心が揺れ動く。昔から何度も何度も聞いてきたその声、すぐに思い浮かんだ人物は紛れもなく氷山 美麗だった。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

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