知り過ぎても尚―②―
家に帰ってから態蔵に言われた通り、『ブラッディジェネラル』と『ピュアレッド』の右太ももにあるほくろをを自分の目でしっかりと確認する。
そして翌日、あかねは正確な情報のみを冷静に整理して落とし込むと再び苦悩が芽生えてしまった。
『ブラッディジェネラル』=『ピュアレッド』=真宝使 翔子 という結論から自分はどう動くべきか。
(・・・・・・・・・・・・・・・)
「あ、あの?火橙さん?先生の顔に何かついている?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女の授業中、野暮ったい服装に洒落っ気もなくメガネをかけた翔子をじっと眺めていると流石に何かを感じた彼女はあかねに問いかけて来るがこちらの耳はその声を拾えない。
(・・・・・見れば見る程間違いない。それにブラッディジェネラルもなんか先生っぽい所あったし・・・)
「あ、あ、あ、あの?か、火橙さん?」
(でもどうして先生がブラッディジェネラルなんかやってるんだろ?コスプレイヤーだったっていうのも意外過ぎて・・・あ、そういえばりんかちゃんは先生が『ピュアレッド』なのを知ってるのよね?後でどんな人か聞いてみようかな。)
普段と違う様子に翔子もびくびくしていた理由は他にもある。それが敵意だ。相手はこちらの事情など何も知らないだろうがあかねはプリピュアなのだから気が付かない内に若干の敵対心が表に現れていたらしい。
「あかねにしちゃ珍しいな?何だ何だ?先生になんかされたのか?」
ほむらもそれを感じたのだろう。授業が中断されたのを喜んで茶化してくるがこれは笑い事では済まされないのだ。
(・・・・・先生がプリピュアの敵・・・先生なのに邪魔をするだなんて・・・絶対許せない。)
いつもはほむらの発言を一字一句聞き漏らさないあかねはその耳に彼女の声が届く事無く敵意をどんどんと膨らませていくと翔子の顔色も比例して真っ青になっていく。
暴れん坊のほむらより普段は大人しいものの空手というしっかりした下地のあるあかねがブチ切れた方が怖いのもあるだろうが、その情けない姿を見て本当に『ブラッディジェネラル』なのかという落胆も芽生え始めるともう止まらない。
「・・・先生。もっとしっかりしてください!」
「は、はひぃっ!!」
後から考えるとこれ以上ブラッディジェネラルにしっかりされる必要はなかった。対戦成績はほぼ全敗なのだからむしろ手加減か教師の翔子そのままで戦ってほしいくらいだ。
それでも無性に腹が立ったあかねはそう発言した後もずっと彼女を睨み続け、この日の授業はほとんど崩壊したままチャイムが鳴り響いた。
「なぁ。本当にどうしたんだ?」
昼食時間に早速ほむらが明るく問いかけてくるとあかねも一瞬だけ悩んだ。それから言葉を選びながら話を進め始める。
「・・・うん。ちょっとだけ気になる事があったから。ねぇりんかちゃん。真宝使先生って『ピュアレッド』のコスプレイヤーなのは何時から知ってたの?」
「・・・・・・・・・・は??は???は????」
この時の表情と素っ頓狂な声は今でも忘れない。というかこの時やっとりんかの事が少しだけ好きになった。彼女らしくない、冷酷から離れた純粋な驚愕を全身で表現してくれたお蔭で一気に親近感がわいたのだ。
「『ピュアレッド』のコスプレ?何の話だ?」
「夏休み中イベント会場で『アオラレン』が現れたでしょ?その時あそこではコスプレイベントってのがあったんだよ。それでそこにりんかちゃんと真宝使先生が・・・」
「ちょぉぉぉっぉおっと待ってぇぇえ?!」
何故かりんかが話の腰を折って来たのであかねは目に見えて不機嫌な表情を作り彼女を睨みつける。ただその様子は少し面白かったのでイライラはすぐに収まった。
「今大事な話をしてるの。少し静かにしてもらえる?」
火橙 あかねはその根っこに相当なS気質を内包しているのだ。故に時折こうやって顔を覗かせると無意識の内に周囲を威圧してしまうのだが本人は未だ気付いていない。
「は、はぃ・・・」
これには仮面冷酷なりんかもしゅんと大人しくするしかなく、ほむらが目を輝かせて続きを待っているのであかねも本題に入る。
「あの時コスプレ会場でりんかちゃんと真宝使先生が『ピュアレッド』のコスプレをしてたの。で、ここからが大事な話。りんかちゃんはいつから真宝使先生がコスプレイヤーだって知ってたの?」
「・・・えっと・・・その、あの・・・」
「真宝使先生ってコスプレ中はどんな感じなの?あの人もプリピュアが好きなの?」
「・・・あ、あ、え・・・っと・・・」
「おいあかね、ちょっと熱くなりすぎだって。りんかが怖がってるじゃん。つかそれそんなに大事な事か?」
ほむらに諭されてもあかねの憤怒は止まるところを知らない。だがいつも強気な態度のりんかが顔を真っ赤にして俯いている姿を改めて見つめるとほんの少しだけ冷静さが戻って来る。
「・・・あの、火橙さん?は、あの時の私の姿を、見たの?」
「うん。もうバッチリ。とっても楽しそうだったし。でも先生はなんか遠慮気味だったね。」
何故今更そんなやり取りをしなきゃいけないのか。またもイライラが芽生え始めるも次の話題でその行き違いにこちらが驚かされた。
「すぅ~~・・・はぁ~~~~~・・・。ごめん、その前に確認させて欲しいの。私の前にいた『ピュアレッド』さんが真宝使先生っていう根拠は何?」
「・・・・・え?!」
あれだけ至近距離にいた彼女が一体何を言っているのだろう。深呼吸した後から飛び出して来た質問に今度はこちらが素っ頓狂な声を上げる。
「い、いやいやいや!あれはどう見ても先生だったよ?!ちょっと離れた所からみても間違いなくそうだった!!あ、もしかしてりんかちゃんって目が悪いの?」
「普段からコンタクトをつけてるわよ。でもあの『ピュアレッド』さんと真宝使先生が同一人物っていう話の意味が分からない。だって私、『ピュアレッド』さんの事何年も前から見て来たのよ?全然違くない?」
予想とは違う告白に一瞬思考が逸れそうになったがそれだと猶更意味が分からない。以前からその存在を知っていてイベント会場では対面していたのに何故気が付かないのか。
お互いの意見が真っ二つに分かれて無音の時が少し流れる中、麗美はそのやり取りに全く興味を見せる事無くお弁当をもくもくと食べている。
「・・・ん~~~~~よし!とりあえずあたしが確かめてみようか!その『ピュアレッド』の写真ってあるか?」
ほむらが目を輝かせて提案したのであかねもすぐにスマホを取り出すと彼女の写真を用意する。そしてぱっと見た瞬間ほむらは望んだ通りの答えを放ってくれた。
「いやこれ絶対先生じゃん。逆に何で違う人だと思ったんだ?」
「ええっ?!?!ちょ、ちょっと私にも見せてよ!!!」
慌てる姿を見ていつもこういうりんかならもっと仲良くなれそうなのになぁ、と思いながら同じ写真を見せるがここで思わぬ反応が返って来た。
「・・・・・これのどこが真宝使先生なの?」
「「ええええええええ?!?!」」
これには2人して驚愕の声を上げていたが当の本人は嘘をついている様子も無く、きょとんとした顔で小首を傾げている。一体どういう事だ?
「あっ!そうだ!!先生がコスプレイヤーだっていうのを隠したいから口止めしてるのかも?!そうでしょ?!」
「ちょっと?私がそんな安い女に見える?っていうかあなた達こそ何故『ピュアレッド』さんと先生を同一人物に結び付けようとするの?」
「・・・う~~ん。りんかがこんなに上手く嘘を付くとは思えないしなぁ。どうなってるんだ?」
「・・・ご馳走様。皆、そんな話は後にして早くご飯食べないと時間なくなっちゃうわよ?」
最終的には終始口を挟まなかった麗美が醒めた様子で告げる事によりこの話は一旦幕を閉じる。だが残された疑問はあまりにも大きく、そのせいで蒼炎 ほむらがコスプ会場で参加していた事実はしばらく忘れられる事となった。
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