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二人の関係は?―⑤―

 (・・・・・結局来てしまった。)

火橙 あかねから見せて貰った写真が気になっていた美麗は少しの変装でコスプレ会場に到着していた。と言っても別に親友を問い詰めたり咎めたりする為ではなく目的はあくまで事実確認だけだ。

本当なら接触して『教え子にバレないようにね?』くらいは伝えたい所だがこんな場所で偶然の遭遇を装うには何度考えても無理が過ぎる。

なので中に入ると初めて見るコスプレイヤー達の際どい姿や観客たちの熱気から退避するよう日陰に入り、貰ったパンフレットで「プリピュア」ブースの位置を再確認する。

目立たない変装ではあるものの近づき過ぎると身バレの可能性があるし、かといって見つけられないのは本末転倒だ。そこで導き出した答えが遠くから少しずつ物陰に身を潜めつつ接近していく、だった。

その時はこれ以上ない完璧な行動理論だと疑いもしなかったが傍から見ると際どいコスプレイヤー達よりも目立っていたのを本人だけは気付いていなかったらしい。


それから様々なシリーズのプリピュアレイヤー達が目立ち始めるとその奥に1人、『ピュアレッド』のコスチュームに身を纏う28歳現役女教師の姿を捉えた。


遠目だが見間違えようがない。あそこにいるのは紛れもなく真宝使 翔子なのだが驚きはほとんどなく、確認出来た安心感の方が勝っていた。

それよりも何故『ダイエンジョウ』のネクライトが一緒にいるのかの方が気になって仕方がない。いや、確か先輩後輩の関係だとは聞いていたがあの青年、プリピュアの敵対組織に与しているのにこんな場に居て何か思う所はないのだろうか?

しかし周囲を見渡して考えを改める。そこには成人した大人達が現実という殻を破って己の趣味に全力で傾倒しているのだ。そんな世界に現役のプリピュアがいるはずもないだろう。

となると翔子に無理矢理付き合わされているのか?そういえば彼女の事は面倒くさいとぼやいていたのを覚えている。

それにしては体育祭の時と違って随分と自然な、それでいてぽわぽわとした和やかな雰囲気を感じた。それは先輩後輩や友人ではなくまるで付き合って間もない恋人同士のような。

(・・・これは後で探りをいれなきゃだわ。)

本来の目的以上に面白そうな情報を入手した美麗は頭の片隅にしっかりと記した後こっそりと会場を後にしようとする。


ところが彼女の何かを引き付ける体質からか。まるで示し合わせたかのように翔子へ接触する少女を目撃してしまう。

(ん?んんん??)

こちらもほぼ毎日顔を合わせていたのだから見間違う筈がない。それは『ピュアレッド』のコスプレをした蒼炎 りんかだった。ただその完成度は翔子と比べ物にならない。恐らくまだ練度が浅いからだろうが、それはそれで初々しさがあって微笑ましいものだ。

(・・・いやいや?そうじゃなくて・・・あれ?)

先程貰ったパンフレットの注意事項に目を通すと未成年者は保護者同伴なら参加出来ると書かれている。という事は彼女の両親がこの会場に来ているのか?

更に訳が分からないのはりんかがとても少女らしく眩しい笑顔で翔子に接している点だ。学校ではいつも冷酷な表情を浮かべ、教師を侮蔑しているかの行動を取っているのに何故?


(・・・はは~ん。そうか、そういう事ね?)


美麗はあらゆる偶然で非常に価値のある場面に良く出くわすが勘までは冴えていないらしい。なので彼女の出した結論はこうだ。


恐らくお互いが『ピュアレッド』のファンだという繋がりでこのイベントに参加しているのだろう。そして普段はそれを隠し通す為にわざと辛い態度を取っているのだと。


そう考えれば全てに納得がいくと美麗は鼻息を荒げていたが対面している翔子はネクライトの背中に隠れている点を華麗にスルーしてしまう。

そして優秀な彼女の遭遇運は重ねて有益な情報をもたらすのだ。




ちゅどぉぉぉおおんっ!!!!




少し離れた場所から非現実な爆発音が鳴り響くと瞬時に14年前の記憶が蘇る。これはプリピュアの敵が現れたのだろうと信じて疑わない。

(どうしよう?っていうかこれって暗人君の仕業なのかな?)

今日に限っては幹部がこの会場にいるのでそう結論付けるのも無理はなかった。それよりも人々が逃げ惑う中りんかが流れとは別の方向に走っていくので心配になった美麗も後を追う。そして本日二度目の衝撃的な瞬間を目の当たりにしてしまった。


「プリピュア!ブレイジングッ!!」


またしても遠目だったがはっきりとわかった。その懐かしい掛け声は変身の合図だ。そして手にしたタクトが一瞬で蒼い炎に包まれると14年前の自分と姿が重なる。

まさか、と同時にやっぱりという感情が心の中で渦を描く。あかねがプリピュアだったら素敵だろうなと何度も考えていて、同時にその可能性はほむらやりんかにまで波及するのかな?と思っていた。

何せ3人はいつも一緒で仲が良く・・・仲が良く・・・仲が・・・・・

(な、何であの子がプリピュアなの?!)

確かに先程見せていた笑顔は純粋無垢そのものだった。しかし学校では冷酷無比であかねとの仲もあまり良いようには見えない。そう考えると精霊は何を思って彼女をプリピュアに選んだのだろう?

中学生に若返ってスパイ活動を続けていた成果がやっと実り、至上の情報を得たはずなのに喜びは憤りに上書きされる。


だがすぐに認めざるを得なくなった。美麗は確かに見たのだ。りんかの表情には間違いなく純粋に人を助けようという強い決意が現れていたのを。


複雑な気持ちに体も動かなかったがここは元プリピュアとして、先輩として認めるべきか。翔子程ではないにしても僅かにもう一度プリピュアとして戦ってみたかった気持ちも押し隠し、現役の戦士が皆を守ろうと必死に立ち回っているのを見ると一般人に戻った美麗は避難を始める。

(そうよね。時代は変わったんだもの。彼女みたいな子が選ばれたって何もおかしくはないんだわ。)

それでも近くで見届けたかった彼女は運良く敵の攻撃を凌ぎつつ、こっそり見守れそうな場所を見つけるとそちらに駆け出す。するとそこには翔子とネクライトも隠れていて・・・


「チェンジジェネラルっ!!!」


流石に合流するのは不味いと他の場所へ移動しようとした時、親友が妙な掛け声を出すとコスプレイヤー『ピュアレッド』はプリキュアと敵対している1人、ブラッディジェネラルに変身していた。


(・・・・・・・・・・・・待って。待って待って?流石におかしくない?)


混乱状態でも声を漏らさず静かに行動して身を隠せるのは生粋のスパイ体質なのか、元プリピュアの成せる技なのか。確かに彼女の後輩である燃滓 暗人はプリピュアの敵対組織『ダイエンジョウ』の幹部であるが何故翔子も幹部に成り下がっているのだ?

元プリピュアの中で最も正義感が強く、誰よりもあの頃の思い出を大切にしてきた真宝使 翔子。いつも事ある事に『あの頃はよかった~あの頃に帰りたい~』とぼやく翔子。それを具現化する為にコスプレに走った翔子。

そんな彼女がどういう理由でブラッディジェネラルの身に堕ちたというのか?考えてもさっぱりわからないので今は物陰に身を潜めて彼女達の行動も見守るしかない。

(・・・でも確かブラッディジェネラルってかなり強くていっつもプリピュアを蹴散らかしてるイメージしかないんだけど?!)

変身したりんかは未だに1人で『アオラレン』と対峙している。ただでさえメンバーが揃っていない状態にブラッディジェネラルが参戦したらまた今日もコテンパンにやられるのは火を見るよりも明らかではないか。

こうなってくると話は別だ。例えこの会場にやってきたのがバレたとしても親友を止めるべきではないのか?物陰で葛藤している間にも戦況は進んでおり美麗の思考が真っ白になった時。


「ブラッディ!!ジェネラルトルネードッ!!」


意外というよりは淡い期待に応えてくれたと受け取ろう。ブラッディジェネラルは何故か仲間であるはずのモンスター『アオラレン』を一撃で葬ったのだ。

その瞬間、親友は魂までは売り渡していない。正義の心は死んでいないのだと確信したのも束の間、ピュアフレイムと一対一になると彼女はずんずんと距離を詰めていく。

しかし2人が拳を交える事は無く、何やら少しだけ話し込むとブラッディジェネラルが先に去っていった。それから2人のプリピュアが遅れて登場するも彼女達は軽く談笑し終えた後、すぐに美麗の前から姿を消し去るのだった。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

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