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二人の関係は?―③―

 きわどいコスチュームに身を包む可愛い女の子達が沢山いる中でそれらが霞むほどの女性が傍にいるとわかった。それだけでも大収穫だろう。

であれば他はどうでもいい。いや、いいのか?その女性は復讐すべき対象だぞ?と、冷静なもう一人の自分が問いかけてくる。

(・・・今はいいよ。俺も楽しんでるんだから。)

昨夜から考えていた。このまま恋人同士のふりをして、望むのなら結婚だってして、そこからこっぴどく捨てるだけでも絶大な効果があるはずだ。

ただ2人の関係については自信がなかった。本当に良い仲になれたのか?翔子の反応が分かりにくかったのもあるしこちらから結婚の話を持ち出すのは腰が引けた。

それが全て解決したのだ。2人は間違いなく恋人同士なのだとバッチリ理解した。ならば十分に利用してやる。その流れで間違いない。


やっと計画の全容に見通しが立つと心が軽くなった暗人は翔子の楽しむ姿を少し離れた場所で見守る。


そして妙に下からのアングルで写真を撮ろうとする輩がいると何故か腹が立ってきた。しかも1人や2人ではない。

彼らは密集してカメラを構え、ポーズをおねだりしながらシャッターを切る。翔子が楽しそうだからいいのかもしれないがこれは『彼氏』として放置していいのか?

下着ではないにしてもきわどいコスチュームからはインナーがちらりちらりと見え隠れする。それは非常に魅惑的であるのも理解出来る。

問題はそれが誰のものかという点だ。あれは間違っても奴らのものではない。あれを自由にしていい権利は絶対に『彼氏』以外はないはずだ。


「翔子先輩。ちょっといいですか?」


何度考えても感情論からその結論に達した暗人は己の嫉妬心を一切認める事無く彼女に呼びかけると翔子も慌てて駆け寄って来る。

「ちょっと暗人君?!ここで本名出しちゃ駄目ってさっき言ったでしょ?!(小声)」

「あ、すみません。だいぶ時間が過ぎているのでそろそろ休憩に入りませんか?」

「あれ?そ、そうだっけ?さっき始めたばっかりのような・・・」

「いいからいいから。僕達は寝不足な部分もあるのでしっかり体を休めないと。」

レイヤーネームが『ピュアレッド』なのが暗人からしたらややこしくて仕方なかったのでつい名前で呼んでしまったが今回はそれも含めて功を奏したらしい。

欲望丸出しの男達から『彼女』を救った『彼氏』の行動は特に咎められることもなく、翔子も困惑の中に嬉しさを隠そうとはしなかったのだから暗人の機嫌もすっかり直っていた。


そんな恋人同士の間に更なる試練が与えられたのはすぐ後の事だった。




「あ、あのっ!!『ピュアレッド』さんですよね!!わ、私、大ファンで!!今回初めてこのイベントに参加させてもらいましたっ!!」

熱中症対策が万全の休憩所で2人仲良く歓談していると突然後ろから声を掛けられる。非常に緊張した声色と初参加という言葉に翔子が喜んで迎えようと立ち上がったのだが何故か一瞬でこちらの背中に隠れてしまった。

「あれ?どうされました?しょう・・・」

「本名禁止っ!!」

慌てているのは理解したがその理由は分からない。暗人も振り向いてファンの子を確認してみるとどこかで見たことがあるような・・・

(・・・あれ?この娘は・・・)

「あ、ありがとぉ~私もピュアレッドが大好きだよぉ!でも珍しいねぇ~、き、君みたいな女の子が初代推しなんてぇ?」

一向に姿を表そうとしないで受け答えする翔子の可笑しさはさておき、ピュアレッドのコスプレをしている少女はそのままプリピュアを名乗れるほどのポテンシャルを秘めている。

というかコスチュームを代えれば或るプリピュアに瓜二つな彼女は間違いなく翔子の教え子だ。

「は、はい!リアルタイム世代ではないんですけど初代のご活躍を聞いて大ファンになって!!小学生の時はいっつもピュアレッド役をして遊んでたんです!!」

「ほ、ほほ~。わ、わかってるわね~?」

「・・・あの、『ピュアレッド』さん?いい加減ちゃんと姿を見せてあげたらどうです?ファンの子もすっごい目を輝かせてますし・・・」

板挟みで会話を聞いていた暗人がそう促すとピュアレッドのコスプレをしている蒼炎 りんかが一層頬を紅くして喜び始めた。というかこの娘、ピュアフレイムに選ばれる前からプリピュアファンだったのか。

自身も復讐の為初代の情報にはある程度詳しかったが他には興味がなかったので素直に驚く。そして渋々姿を現した翔子は何とかバレないように表情を歪ませていたのだがそれもそれで失礼なのでは?


「やった!生レッドさんっ・・・あれ?『ピュアレッド』さんって・・・い、いえ。何でもありません。あの、握手してもらっていいですか?あ、あと、その、出来れば一緒にお写真も・・・」


「ぃ、ぃぃれすよぉ~」

(なんて声だしてるんだこの人。)

無理矢理のオンパレードに呆れた暗人はりんかと翔子からスマホを預かるとまずは握手の場面からパシャパシャと撮り始める。そして2人並んでポーズを決めた所にもパシャリ。

それからまだ話足りなさそうな蒼炎 りんかと一刻も早く別れたい真宝使 翔子の何とも言えないやり取りが面白くて仕方ない暗人は休憩所の椅子を用意する。

「暗人君?!(小声)」

「いいじゃないですか。休憩がてら若い子のお話も聞いてみましょう?(小声)」

お互いが教諭と生徒の関係なのは知っているがブラッディジェネラルとピュアフレイムという事実は知る由もないのだ。といっても暗人も美麗の情報を整理してある程度確証を持っている程度で断定までは出来ていない。

状況から恐らくあの3人だろうという推論の域を出ていないのだ。であれば直接情報を聞き出せるこのチャンスを見逃す手はないだろう。

「あ、やっぱりちょっと似てる・・・あ、いえ!何でもありませんっ!」

「誰に似てるんです・・・かっ?!」

何となくだがりんかは『ピュアレッド』が翔子に似ていると疑っている節は見られた。なので個人的な興味を満たすべくまずはそこに話題を振ると裏から翔子につねられる。

「えっと、その、私の担任の先生に似てるなって・・・ちょ、直接お会いするまでは考えた事もなかったのに。や、やっぱり実際にお会いするとその、緊張してるからかな?!」

「ということはセーフですね(小声)」

「うるさい!(小声)」

確かにコスプレをしている翔子は教諭の時と違って薄くだがメイクも施している。学校では野暮ったい格好をしている先生がこんな場所で際どいコスプレしてるなんて誰も想像しないだろう。

ただ2人の温度差が激しく、あまりにも会話がたどたどしいので見かねた暗人も潤滑油的な立場で口を挟んでみた。

「えっと、君は今日お友達と来ているのかな?」


「・・・貴方は誰ですか?」


おっと。これは情報通りの冷酷な印象を持った蒼炎 りんかではないか。翔子へ向ける笑顔が一瞬で吹っ飛び、冷たい眼差しは睨みつけるというよりは相手を射殺すものを感じる。

「これは失礼。僕は『ピュアレッド』さんの後輩です。」

そこから瞬時に判断した暗人は『恋人』という単語を伏せる選択をした。ここで翔子との仲を告げても絶対碌な結果にならないだろうと考えて。

「そうですか・・・今日は・・・一人で来ました。」

憧れの人物の関係者だと聞いて少しだけ警戒を解いたのか、りんかは考えながら答えてくれる。少し寂しそうな部分が気になったものの嘘ではなさそうだ。

「そ、そうなの?!あなたまだ中学生でしょ?!」

「あっ?!は、はいっ!!あれ?わ、私自分が中学生って言いましたっけ?」

「あぁぁぁあぁ・・・な、何となくねっ?!見た感じそうかなぁって?!」

後から知ったのだがこのイベント、未成年は保護者同伴が定められていたようだ。ただりんかの両親は忙しく、申込書には直筆のサインと電話での本人確認で何とか参加させてもらえたらしい。

それにしても教諭という職業柄か相手が担任クラスの生徒だからか、いきなり自ら墓穴を掘りそうになったので暗人は思わず顔を背けて笑いを堪える。

「まぁまぁ。いいじゃないですか。それくらい『ピュアレッド』先輩に憧れているのですから、ね?」

「はい。」

フォローを入れたはずの暗人に対しては相変わらずの塩対応だ。この切り替えの早さには感心する他ない。だが裏を返せばそれだけ本気なのだろう。

そこを理解した暗人は2人だけの空間を作る為に退席しようと静かに立ち上がる。




ちゅどぉぉぉおおんっ!!!!




すると妙な爆発音と地響きが伝わってきて次に悲鳴と沢山の避難する人々が押し寄せて来た。

「な、何?!」

「・・・『ピュアレッド』さんも逃げて下さい。」

先程までと打って変わって冷静さを取り戻した蒼炎 りんかが優しく声を掛けると勢いよく立ち上がり人の目が届かない場所へと走っていく。その様子をぽかんと眺めていた翔子も何かを察してこちらに顔を向ける。

「・・・今は休業中ですからね。恐らくまた野生の『アオラレン』が出現したのでしょう。」

折角の変則的なデートを邪魔されたせいで不機嫌さを隠さず吐き捨てるように伝えつつもこれで確信が持てた。あの判断力と行動力は間違いなくプリピュアのものだ。

それから翔子も立ち上がって人目のない場所を探し出したので暗人がややうんざり気味に止めたのだが直ぐに後悔する事となった。

「まさかまた行くんですか?今回はピュアフレイムがすぐ傍にいますし彼女に任せましょう?」


「何言ってるの?!私の年一の楽しみを邪魔する奴を放ってはおけないわ!!・・・って、え?ピュアフレイム?」


恋人同士という関係に発展したせいか彼女の体を知ってしまったせいか。気の緩みからつい口走ってしまったがもう遅い。翔子が不思議というよりは疑惑の表情でこちらを見つめて来ると長い前髪であってもつい顔を背けてしまう。

「暗人君?まさかあなた、プリピュアの正体を知っているの?」

気が付けば目の前まで近寄っていた翔子と小柄な体から発せられる威圧感に内心震えあがりながら、そしてそんな姿でも愛おしいと感じながらどう返答するか悩んでいると例の『アオラレン』は2人のすぐ傍まで近づいてくる。


「プリピュア!!ファイアレターダントッ!!」


海で見た『アオラレン』と違い、会場に現れたモンスターは体をカメラに変化させていた。ただやはり『ダイエンジョウ』の技術が乗っていない為か、その大きさは2メートルにも満たない。

そんな敵がこちらにぱしゃりとシャッターを切るとフラッシュの光がビームとなって翔子らに襲い掛かって来た。そして今、突如現れたピュアフレイムが防御技で防いでくれた所だ。

「ここは私に任せて!!貴女達は早く逃げて、下さい!!」

非常に、非ッ常にプリピュアらしい登場と痺れる台詞に暗人ですら感動を覚えていたが彼女はまた違った様子である。

「・・・行こう。暗人君。」

翔子がこちらの手を取ってきたので一緒に逃げ始めると後方ではピュアフレイム、蒼炎 りんかが1人で戦い始める。

今日は彼女一人でこの会場に来たと言っていた。仲間には連絡しただろうがそれでも残り2人がやってくるのにある程度時間は必要だろう。

ピュアフレイムの必殺技が防御系だというのも時間を稼ぐのに適している。野生の『アオラレン』が『ダイエンジョウ』の生み出した者ではない点を考慮してもここに横槍を入れる必要はないはずだ。


「チェンジジェネラルっ!!!」


なのに彼女は物陰に入った途端変身してしまう。いや、何となくこうなる事はわかっていたが今更出て行った所で何をしようというのか。

そもそもこちらが介入していない『アオラレン』から回収できるエネルギーは少量でその労力に見合わないのだ。効率主義な暗人からすると彼女の行動は本当に無駄な労力だと言わざるを得ない。

「・・・お気をつけて。」

「うん!でも戻ったらさっきの話絶対聞かせてもらうからね?!」

それでも気を使って送り出そうと声を掛けたら怖い台詞が返って来た。こうして暗人は物陰から彼女を見守りつつ、必死で言い訳を考え始めるのであった。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。

あと登場人物を描いて上げたりしています。

よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)


https://twitter.com/@yoshioka_garyu

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