帰還
ダンジョン内時間約2時間後
「ん、ぁれ」
何でこんなところに倒れて……そうだ、勝って安心して倒れてそのままだった。
起き上がるため体を動かそうとすると、全身に痛みが走るので諦めた。
立てるようになるまで何をしていようかと考えて、「ステータス」のことを思いだした。
「ステータス」
―――
【NAME】 瀬戸勇璃
【LV】 42
【ROLE】 有者
【HP】 1274/4200
【MP】 56/315
【STR】 518
【VIT】 524
【INT】 454
【MND】 526
【DEX】 507
【AGI】 687
【LUK】 46
【BP】 30
【SKILL】
・武技
・有者の一撃
・有者の武器
・身体強化
・自動回復
・健康体
・武闘会のワルツ
―――
結構変わってた。
謎だった【ROLE】の欄も埋まってるし、各種数値もいきなり3桁突破してる、さらにスキルの数が減っていた。
「あ、」
少しずつ動けるようになってきて、つい液晶端末を操作する感覚である箇所に触れると、説明のようなものが出てきた。
[武闘会のワルツ]パッシブスキル
戦闘時間が長くなるほどその戦闘中のみステータス数値が上昇する。
これのお蔭で勝てたのだと察する。他のも確認してみよう。
【LV】
この世における強さの指標。
【JOB】
この世界における役割を示す。
[有者]
資格の有る者にのみ権利が与えられる。
【HP】
ヒットポイントの略称、命を数値化したもの。
【MP】
マジックポイントの略称、魔力量を数値化したもの。
【STR】(Strength)
力、物理的な攻撃力などに影響する。
【VIT】(Vitality)
生命力、体の強度や怪我の回復速度などに影響する。
【INT】(Intelligence)
知力、魔法でダメージや一部状態異常の成功率などに影響する。
【MND】(Mind)
精神力、魔法によるダメージや一部状態異常の成功率、抵抗力などに影響する。
【DEX】(Dexterity)
器用さ、クリティカルの成功率や精密動作遠距離攻撃の命中精度などに影響する。
【AGI】(Agility)
素早さ、諸々の速さに影響する。
【LUK】(Luck)
運、彼らの娯楽に関するものにのみ影響する。
【BP】
ボーナスポイント、【LUK】を除くステータスやスキルを操作可能。
つまり能力が可視化され、それを数値として表示しているらしい。
お前はこの程度だと世界に決め付けられているようで気持ちが悪い。
一先ずは個人的な感情は棚に上げ押せる場所を片っ端から探る。
【SKILL】
世界に使用を認められた技能。パッシブまたはアクティブに二分される。
経験で取得する他に、一部のマジックアイテムや【BP】の使用で取得することもできる。また各種【SKILL】には■■機能が備わっているものもある。
[武技]パッシブスキル
戦闘中の動きに補整が入る。
[有者の一撃]アクティブスキル
次の攻撃の威力を強化する。
戦闘中使わずにいると徐々に力が溜まり、発動するとMPと共に全てを消費。
MPと溜めた力が多ければ多い程強化される。
[有者の武器]パッシブスキル
武器による攻撃の威力が増す。
[身体強化]アクティブスキル
身体機能を一時的に強化する。
[自動回復]パッシブスキル
HPやMPが戦闘非戦闘を問わず回復する。
[健康体]パッシブスキル
一部の状態異常になりにくい。
スキルはパッシブとアクティブ、つまり受動的か能動的かの2種類があり、私には受動的(この場合は常に発動される)なスキルが多いらしい。
スキルについて試そうにも、体が動かないのでは意味がないような気がするので保留にした。
そうしてステータス、スキルの活用法を考えながら体の回復を待つこと多分1時間後。
「やっと動ける!」
まだ所々に痛みを感じるものの、動けるようになった。HPも2000とちょっとくらいまで回復していた。
進むため出口へ行こうとすると、倒した怪物の持っていた赤い刀身の大太刀が落ちているのが目に入った。
腕力も然ることながら大太刀というリーチも噛み合わさり、苦戦を強いられた気がする。
人間の身長程もある刀を持ち上げるとステータスのようなものが出てきた。
―――
【ゴブリンチャンピオンの刀】
【スキルスロット】
【スキルスロット】
あるゴブリンが覇者になるまでを伴にした刀。覇者に成る道中で憑いた血飛沫は、刀身の芯から染めている。
―――
説明の通りならこの大太刀は妖刀の類で持つことを避けたいのだが、背に腹は代えられないので、持って進むことにした。
走っていると、前方に1体のゴブリンチャンピオンが現れる。
足を止めずに大太刀を構え、身体強化を発動する。
確かに、力が漲ってはいるがこれだけでは倒せない、ので最後の一押し。
「[有者の一撃]」
そうしてスキルの名を口にした途端、手が強く輝き出しその光は大太刀へと伝わる。
その輝く大太刀で怪物を斬る。
[レベルアップ]
目の前で光となるゴブリンチャンピオンを無視し、足を止めることなく先に進む。
◆
再び扉の前に立つ。
ここに辿り着くまでに何度も戦闘はあったが、傷を負うこともなく立ち止まらずに辿り着くことができた。
扉に手を伸ばす。
体はまだ万全ではない、と痛みで知らせるが、深呼吸一つでそれも無視する。
再び扉に触れ開く。
初めて入った部屋とは違い、明るく、そして何倍も広い。
そんな空間には1体の緑の怪物がいて、玉座を余らせて座り退屈そうにこちらを見ていた。
恐らく、いや確実にあの怪物が部屋の主だ。
今まで倒してきた緑肌の怪物たちとは明らかに格が違う、背格好は人間のようなのに纏う気配はまさに正真正銘の怪物。
無意識に体は震え、身体強化を発動していた。
口の端を押さえ、大太刀を構える。この部屋に入った瞬間から戦いは始まっているのだから。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇
◇◇◇
◇◇
◇
◆◆◆
〈三十層のBOSS討伐を確認〉
[緑の巣窟ダンジョン]クリア!
特定条件の達成いをか確認!報酬のランクアップ!■失敗?!〒々〆回目の確認………。成?功!ダンジョンしょうめつまで!…。……………………、…残り30.0秒…29.9秒…
〜報酬を受け取り後、このダンジョンは消滅します〜
なんだコレ、バグり散らかしてやがる。あ〜メンドクセー。他のやつも見て回らなきゃ駄目っぽいな。は〜、だから俺はもう少し後の方がいいって……まぁ同僚の愚痴は今じゃねぇか。
な〜んでこいつはこいつで生き残っちまったんだろうな〜、死んでりゃもう少し楽に処理できたのに。まぁ気絶してることだし起きてるよりは楽だな。いろいろ面倒だからっと……丁度いいのあったわ、報酬系は全部あれに入れてと……これでよし。後は…ステータスもイジっとくか、改竄はメンドーだが同僚の奴らにバレるほうが面倒だ。LV89か、初日にしては高すぎるな、なら……17くらいにしとくか。
あぁ面倒だ、他はこんなことがねぇといいなぁ。
◆◆◆
◇
◇◇
◇◇◇
◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
知らない天井だ。
「あっ!やっと目覚めた?」
この声は……。
「大丈夫?なにがあったの?体に違和感は?私のこと憶えてる?」
……私のことが心配なのはとても伝わるけど、そう矢継ぎ早に質問されても、起きたばっかりじゃ答えられないから。
「だい、じょぶだよ、八重」
彼女の名前は澤縁八重。同じ警察署に所属する先輩警察官、歳が近いのもあって気軽に相談できる友人のような関係だ。
「全然大丈夫そうじゃないな〜。けど本人がそう言うのであれば……。瀬戸勇璃さん、貴方に取り調べを行ってもいいかな?」
今後とも是非。
サイレント修正:(2/9)