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ウイニングボール  作者: Miyabi
1/1

新監督

私立東陽学園高校―

東陽学園の硬式野球部は全国制覇を成し遂げる強豪。しかし、同時に入部するのも狭き門。毎年15人しか東陽学園に野球推薦で入学できない。そのため、推薦から漏れた“新”高校球児は同じ学園法人の学校への入学を勧められるのだ。だが、どの高校の推薦を受けられるかはランダムに決められているという。

他の部活は既に練習を始めている。サッカー部なんか準備体操も終わっている。なのに、野球部部員の大部分が日陰となる場所で談笑している。俺たち新入部員16人は沈黙のままだった。素振りなどを熱心でやっている先輩は10人ちょっと。野球部は57人部員がいると顧問の中原先生から聞いていた。だが、この有様だ。遠くから見ていても分かる。


「おい、松山。こんなんじゃ話になんねえ。野球部辞めて他のクラブチームとか探そうぜ。」

隣りにいた晴弥が話しかけてきた。俺は俯き、うなずこうとした瞬間、


「野球部!全員集まれ!」


という声がグラウンドに飛んだ。そういえば、中原先生が「新しい監督が就任する」とか言ってたな。俺らも急いで声のする方にダッシュしていった。


「えーと。これが全部員かな?」

“新監督”は意外と若かった。

「いや、今いないやつも居るので全員ではありません」

新監督はその言葉に頷き、話し始めた。

「こんにちは。私は今日からこの青葉学院の監督を務める野村史彦と言います。みんな宜しく。」

宜しくお願いします、と言ったのは20人くらいか。他の人達は挨拶もせず、隣の人と喋っている。と、監督は


「突然ですが、私は青葉学院を甲子園に導くために監督に就任しました。今から軽くテストを行い、見込みがない部員は退部してもらいます」


…退部?


そんな突然でいいのか、退部って。他の部員も困惑している。しかし、構わず野村監督は続ける。

「この部の、キャプテンは?」

と、前で手を上げた人がいた。

「あ、僕です。キャプテンの鈴木です。」

その声を認めると、

「うむ。分かった。今からテストを行う。準備しろ」


い、今から?まあ、別にいいんだけど。


5分後、生き残りを賭けたテストが始まった。


「よーし。じゃあまずはノックからだ。皆守備位置について」

俺は一応ピッチャーとして入部しているのでマウンドに居ると邪魔になるということで、ベンチの方で見ることとなった。


すぐに、ノックが始まる。ボールは寸分も違わず狙った所に放たれている。ファースト、セカンド、サード、ショート、レフト、センター、ライト、そしてキャッチャー。それぞれのポジションで打球の方向を変え、それが一切ずれたりしない。これで能力の是非が一目瞭然だった。談笑していた部員は全く取れなかった。が、熱心に練習していた人はきちんと捕球する。各ポジション5分くらいでノックを終了。あっという間だ。

野村監督はこの後も淡々とバッティング、ピッチングなどを見、1時間位で大体のテストを終わらせた。


「はい、それではテストの合格者を発表します。名前を呼ばれた人は明日の16時からミーティングがありますので必至の用事がない限り出席してください」

そして、合格者が発表された。


次の日、ミーティングが行われる場所に向かうと、半分くらいの人が席についていた。一緒に来た晴弥とともに座る。全員が揃うとまもなく16時になり、野村監督が入ってきた。全員が居ることを確認して話し始める。


「じゃあ、これからミーティングを始めます。ここに集まってもらった32人は今日から“新生野球部”の部員です。まずは一人ひとり自己紹介から。それじゃ…キャプテン宜しく」


と、一番前に座っていたキャプテンが立ち上がり、前に出た。

「キャプテンの鈴木亮汰です。ポジションはセカンド、好きな食べ物はラーメンです。宜しくお願いします」

キャプテンが座ると、監督が

「まあ、こんな感じで一人ずつ自己紹介してね」

と軽い口調で言う。その後、残りの31人も自己紹介を済ませると再び監督が前に出た。


「みんな、ありがとう。では、早速だが青葉学院は今度の春季県大会に出場することになった。では、背番号を発表する。」と言い、前の黒板に紙を貼った。


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        2022年神奈川県春季大会ベンチ入りメンバー

     背番号 ・ 氏名 ・ ふりがな ・ (学年) ・ ポジション 投・打

       1 飯田夏樹 イイダ ナツキ     (3) 投手  左・左

       2 芦江優 アシエ ユウ       (3) 捕手  右・右

       3 鈴木晴弥 スズキ ハルヤ     (1) 一塁手 右・右

       4 鈴木亮汰 スズキ リョウタ    (3) 二塁手 右・左(主将)

       5 小原峻太郎 オハラ シュンタロウ (3) 三塁手 右・右

       6 川島達稀 カワシマ タツキ    (3) 遊撃手 右・左(副将)

       7 石井和哉 イシイ カズヤ     (3) 左翼手 左・左

       8 菊池政哉 キクチ セイヤ     (3) 中翼手 右・右

       9 出口勇斗 デグチ ハヤト     (3) 右翼手 右・右

       10 櫻井湊 サクライ ミナト     (2) 投手  左・左

       11 松山智陽 マツヤマ トモハル   (1) 投手  右・右

       12 小野寺風馬 オノデラ フウマ   (2) 捕手  右・左

       13 井上裕介 イノウエ ユウスケ   (1) 一塁手 右・右

       14 後藤和希 ゴトウ カズキ     (2) 遊撃手 右・右

       15 佐藤翔太 サトウ ショウタ    (2) 中翼手 左・左

       16 林優作 ハヤシ ユウサク     (2) 左翼手・三塁手 右・右

       17 佐野洸平 サノ コウヘイ     (1) 投手  左・左

       18 守山直樹 モリヤマ ナオキ    (2) 投手  右・右



                予定打順


  1 石井 2 出口 3 川島 4 飯田 5 鈴木晴 6 小原 7 鈴木亮 8 菊池 9 芦江


                                  以上


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…ん?

俺も入ってんの?!というか、下級生が多い。3年8人・2年6人・1年4人。しかも、晴弥は背番号3、一塁手でスタメンだ。野村監督は暫く皆の反応を見た後、


「春季大会は以上のメンバーがベンチ入りする。だが、ベンチ入りできなかった部員もベンチ入りメンバーとの差は殆ど無い。夏にはひっくり返っていることもあるだろう。ここに居る32人全員が大会に出場するチャンスがある。夏までは後3ヶ月しかないんだ。全員で頑張っていこう。あと、練習メニューなど私からみんなに伝えておきたいことをまとめたプリントを配布するから、それを読んでおいて」


俺らは「ハイ!」と一斉に返事をした。なんか、ここならもっと野球が上手くなりそう。不安が自信へと変わった。

皆様読んでくださり誠に有難うございます。毎日の更新はできないかもしれないですが、マイペースに頑張っていきたいと思います。

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