ほしいものさがし
12月になると子どもたちはソワソワする。
息が白いよ!
雪はいつ降るかな?
サンタさんはプレゼントくれるかな?
でもボクは12月がちょっと苦手。
「たかしはクリスマスプレゼントに何を頼むの?」
最近、お母さんはこればっかり聞いてくる。
「わからない…」ボクはうつむきながら答えた。
「ほしいもの、探しておいてね。」
「うん…」
これもお決まりのやりとり。
「ボクのほしいものって…何だろう…」
遠慮しているわけじゃないけれど、ほしいものがすぐに思いつかない。
ボクの12月は"ほしいもの"探しから始まる。
ブロック、変身ベルト、ぬいぐるみ…
友だちはみんな"ほしいもの"が決まっているみたいだ。
「先生はサンタさんに何をお願いするの?」
「サンタさんは子どもたちのところにしか来ないのよ。でも、もしお願いできるならみんなが元気でいられますように、かな?」
「たかしくんは何を頼むの?」先生は優しい顔でボクの答えを待っている。
「まだ決まってない…」なぜだか涙がこみ上げてきた。
「たかしくん、どうしたの?」先生はボクが泣き止むまで静かに待ってくれた。
少し落ち着いたボクはサンタさんへお願いする"ほしいもの"が見つからないことを先生に話した。
「じゃあ先生と一緒にたかしくんの"ほしいもの"を探そっか!」
「たかしくんは何をしているときが楽しい?」
「遊んでいるとき」
「どんな遊びが好き?」
「サッカー!」「でもボールはもうあるの…」
「そっかぁ、ボールは持ってる…ってことは家でもよくサッカーするんだね」
「ううん、最近お父さんのお仕事が忙しいからできてないの」「お父さんと遊びたいなぁ」
「それだよ!」
先生がいきなり大きな声を出したのでボクはびっくりして飛び上がった。
「"お父さんと遊びたい"って今のたかしくんの素直な気持ち、サンタさんなら叶えてくれるよ!」
「ものじゃなくてもいいの?」ボクはドキドキしながら聞いた。
「今年は特別。先生の分もたかしくんのお願いに使ってあげるからきっと大丈夫!」先生は自信満々に答える。
幼稚園の帰り道、
「サンタさんへのお願い決まった?」とお母さんが聞いてくる。
「うん…お父さんと遊べますようにって…サンタさん叶えてくれるかな?」ボクは不安げにお母さんの顔をのぞきこむ。
「うーん、良い子にしてたらね。」そう答えるお母さんはなんだか嬉しそうな顔をしていた。
そしてクリスマス当日。
目を覚ますと外は一面真っ白になっていた。
夜のうちに大雪が降ったらしい。
「たかし、メリークリスマス!遅いじゃないか。」
「この雪じゃサッカーはお預けだけど、雪だるま、雪合戦、そりすべり、たくさん遊べるぞ!何から遊ぼうか!」