ゲームの世界へ②
「ログインアカウント確認、ゲームリアルオンラインにログインします」
機械アナウンスが流れて意識がどことなく途切れて、新しい意識が降り立つようなイメージが起こる。
そして背中に感触が戻った。
ここまでは聞いていた通りだな。
それにしてもこのふかふかのベッドはなんだ…
そうリアルオンラインはゲームにログイン、ログアウトする際は実際のリアルとリンクするために寝転ぶ必要がある。
それがテントやこういう宿などであってもだ。
そして今いるこの場所はおそらく、どこかの部屋だろう。
目を開けて回りを確認する。
あきらかに今までいた僕の部屋とは大きさからして違うことがわかる部屋だ。
というかでかすぎるような気がする。
うん、思っていたのと違う…
どういうことだこれ?
疑問に思いつつも体を起こすと、ようやく部屋の全体像がわかった。
そこはなんていうのだろう、本などででてくる部屋だ。
それもかなり主人公からすれば、ここにいるのはそう…
「ってヒロインポジション?」
思わず自分の服を見てツッコミをいれる。
そう。
この部屋の感じどことなくお城の中にある一室でこの展開。
僕は男ということから、王子ポジションで最強だと思った。
思っていた…
この服装を見るまでは…
再度見直しても、着ている寝間着だろうか、それは見間違えることはなく女ものだ。
えっと、どういうこと僕はもしかして間違えられてる?
そんなバカな…
このゲームはリアルにより近くするというコンセプトから容姿はリアルと同じで、その容姿からゲームでの役割が決まってくる。
ということはなるほど、僕の顔と体つきがよっぽど女性に思えたんだね…
「でも、こんな仕打ちはひどい!」
そう叫んだときだった、思いっきり部屋の扉が開いたのは…
そこから現れたのは、メイド服に身を包んだ綺麗な女性だった。
後ろでポニーテールに結った髪が特徴的でどことなくほんわかしたというのだろうか、イメージが似合いそうなメイド女性だ。
戸惑う僕をよそに、その女性は部屋に入ると一礼をする。
「マヤ様。お待ちしておりました。」
そしてそんなことを言われた。
何かおかしいと思い僕は思わず質問する。
「えっと、僕の名前は真也のはずですけど」
「いえ、マヤ様です。マヤ・ノイヤー様ですよ」
「なんだと…」
そこで、まさかの可能性を思いつく。
僕は自分のプレイヤーネームを漢字で登録した。
読み仮名などは打っていない。
そのため、この容姿のせいで名前が勘違いでマヤってことになった?
確かに前に何回か、女性キャラでゲームをスタートするとき、マヤという名前にしたことがあるけど、このゲームでしなくてもいいじゃないかと思う。
そうこのゲームではプレイヤーを一度作ってしまうと消去して作り直すということができないのだ。
これはリアルでもゲームでも体は一つしかないかららしい。
それはわかるけど、これは酷いよ。
あれかな、運営に言えば許されるパターンなのかな?
そんな考えが頭の中をぐるぐると回っているときだった。
メイドさんがいつの間にか近くまで来ていて、顔を覗きこんでいたのだ。
「ひゃ」
「どうかされましたか?」
「い、いえ…」
思わず変な声が出てしまったのを恥ずかしく思いながらも、なんとか答えつつも、とりあえずこの状況をなんとかするのが先だということもあるので、僕はプレイヤーのみがつけている腕輪に手をふれた。
ピコンという軽い音とともに、手元に表示されるのは自分のプレイヤー情報だった。
体力 100/100
気力 100/100
筋力 3
技力 6
魔力 13
防力 5
耐力 8
速力 15
心力 0
称号『王女』
精霊の加護『水』
なるほど、これが僕のステータスか…
心弱すぎない?
でも他の人のステータスを知らないからこれが高いのか低いのか今一つわからない。
やっぱり聞いていた通りレベルシステムはないのか…
それはリアルに近いようにするため、レベルが上がると成長するというのを無くしたのだ。
その代わりに、ゲーム内で一定のアクションを起こすことにより能力値が上がるらしいので、どのタイミングで上がるのかが気になるところではある。
そんなことを思いつつも、いつの間にか放置していたメイドさんのことを思いだしたのはどこからか、荒い息遣いが聞こえてきたからだった。
慌ててその元凶であるメイドさんの方をみると、頬が赤く高揚しており、どことなく目も潤んでいるところから、エロさを感じていたが、それと同時に口の先から涎のような見えて冷静さを取り戻すとともにむしろドン引きした。
それに気づいたのかメイドさんは自分の豊満な体を抱きしめると、恍惚な表情で言う。
「放置プレイからの、蔑む瞳とは…もうさすがですご主人様」
「ええ」
「ああ、そのドン引きぐあいも素敵」
ああ、なるほど。
このAI変態さんだ…
僕はそれを理解するとともにこのゲームがすでにバグっているのではないのかと不安になったのだった。




