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JK浦島物語  作者: MEGU
7/7

届け! 私の想い

 家に戻った私は悠人をあの浜辺に呼び出した。

 すでに日が暮れ、道路の明りがほのかに白い波の姿を浮かび上がらせる波打ち際近くに立ち、目を閉じる。

 ザーっと言う波の音と、時折道路を走る車の音だけが聞こえてくる空間に身を置くと、緊張で自分の鼓動がいつもより少し早く、強く打っているのが感じ取れる。

 大きく息を吸い込み、静かに心を落ち着かせる。


 悠人が誰を好きだって構わない。

 私の気持ちを自分の言葉でちゃんと伝えなきゃ、何も始まらない。

 そう自分に言い聞かせながら、悠人の部屋で猫で過ごした泡沫うたかたの時を思い出す。


 やがて、闇の中近付いてくる人の気配を感じた。

 目を凝らしてみる。

 私が猫の姿の時に見たのと同じ部屋着に上着だけを羽織った服装をした悠人が駆けて来ていた。


 あれはただの幻や夢ではなかった?

 すぐに家を飛び出してきてくれた?


 そんな事をぼんやりと考えている内に悠人は私の目の前までやって来ていた。


「どうしたの?

 急に呼び出すなんて、何かあったの?」

「ううん。

 来てくれて、ありがとう。

 話したいことがあったの」

「話ってなに?」

「あのね、私ね」


 そこで、言葉が詰まった。

 勇気を私にください。

 どこにいるとも、いえ、いないかも知れない神と言う不確かな存在に心の中で、そう祈った。

 悠人の目を見つめ、大きく息を吸い込むと、膨らんだ胸が、なんだか想いを吐き出さずにいられなくさせてくれた。


「悠人くんの事が好きなの!」


 言った。猫と言う仮の姿の私ではなく、私自身の姿、私自身の言葉で伝えた。

 私の言葉に、悠人の目が大きく見開いた。

 届け、私の想い……。


-完-


主人公の告白、実ったのかどうか、不明の結末ですみません。

バッドエンドはあり得ませんし、ハッピーエンドもなんだかなぁと思ったので、この終わり方にしました。

そして、お気づきの方もおられると思いますけど、この物語の「猫」とは本当の自分を隠した彼の好みに合わせた偽りの自分の姿です。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

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