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JK浦島物語  作者: MEGU
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泡沫の夢の終わりの時

 大好きな悠人の足に頭を乗せたまま眠ってしまっていた私が目を覚ました時、部屋の中は少し薄暗くなっていた。

 悠人は相変わらず、私の横でスマホをいじっている。

 特に女の影は見当たらない。

 私が耳にした、悠人に好きな子がいるなんて言うのは、ただの噂に過ぎないのかも知れない。


「ふぁぁぁぁ」


 大きな口を開けて、あくびをしてから、手足を思いっきり伸ばした。

 そんな私の姿を悠人が、微笑みながら見ている。

 悠人は手にしていたスマホをベッドに置き、私を抱きかかえると、膝の上に乗せ、頭を撫で撫でし始めた。

 本当に猫好きらしい。私が元の私に戻ったとして、こんな風にかまってくれたりやしないはず。だったら、このまま猫でもいいかもなんて思ってしまいそう。


「大好き、悠人」「ニャオニャオ、ニャオ」


 こみ上げてくる想いで、叫ばずにいられない。

 悠人は軽く私の頭を再び撫でてくれた。

 うれしい。

 そんな事を思いながら、悠人に目を向けた時、悠人の視線はスマホに戻っていた。


 私の大好きって言う気持ちは悠人には届いてなんかいやしない。

 ちゃんと言葉に出して伝えなければ、伝わる訳も無い。

 このままでもいいかもと思いそうになっていたけど、なんだか今の状況は虚しい気がしてきた。

 そんな事を考えている時、スマホが鳴った。


 スマホの画面に目を向けると、女の子からの着信だった。


「平山みゆき」


 それは私の親友の名だった。

 悠人が好きなのは、みゆき?

 みゆきは私が悠人の事好きだと言う事を知っている。

 裏切られたの?

 だったら、やっぱりこのまま猫でいて悠人にかわいがってもらう。

 そして、悠人に近づこうとするみゆきを引っ掻いて、邪魔してやる。

 そんな思いがこみ上げてきそうになる。


「あ、平山?

 どうしたの?」


 下の名前ではなく、上の名前で呼んだ。

 私の思い過し?

 じっと、悠人を見つめ、耳を澄ます。


「あ、江崎くん?」


 みゆきも、上の名前で悠人を呼んだ。もっとも、私も心の中でだけ下の名前で呼んでいるのであって、面と向かって下の名前で呼んだ事などない。


「今日、まどかと会ってない?」

「横にいるのばれた?」、「ウニャウニャウニャン?」


 そんな訳無いのに、思わず声を出してしまった。

 私の鳴き声に悠人がちらりと視線を向け、頭を撫でてくれた。


「いや、会ってないけど。

 なんで?」

「まどかのお母さんから、連絡があって、まどかがどこにいるか知らないかって。

 何かあったみたいで、探しているみたいなの。

 今日ちょっとした事があったので、もしかしたら江崎くんに会ったんじゃないかと思っただけ」

「いや、会ってないけど。

 スマホで連絡着かないのか?」

「スマホはまどかの部屋に置いたままだって」

「いなくなったって事か?

 行きそうな場所は?」

「よくあの子、砂浜で考え事しているから、今砂浜に来ているんだけど、いないのよ」


 悠人は私がいるにもかかわらず、すくっと立ち上がった。

 私よりも、まどかの事が気になるの?

 いや、まどかって私だった。

 私の事を気にしてくれているの?

 そんな視線を向け、見上げてみる。


「分かった。

 俺も探してみるよ」


 そう言って、スマホを切ると私を抱きかかえた。


「ごめん。

 ちょっと出かけるから、君はどうする?」


 そう言うと、悠人は部屋着の上に上着を羽織り、部屋のドアを開けた。

 私の事を心配して、着の身着のままで、私を探しに行ってくれる。

 そんな風に思うと嬉しくて、悠人の足元に駆け寄り、ついて行って、家を出た。


 外はすでに暗くなっていた。

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