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シドとシノの大冒険  作者: レイン
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まるで無邪気に遊ぶ子供のように

「とりあえず僕が敵の中で一番厄介な相手を引き受けるからさ。だからそれ以外の相手を頼むよ。ん?やっぱり、不安かな?まあ、そうだろうねー。こんなのはたから見たらおかしな行為にしか映らないしねぇ。」


仲間達のそのまなざしを見て、彼は察した。だから敢えて先んじてそう口にした。


「いえ、ジハード様のなさる事です。私達は疑うべくもありません。ただ、信じるのみです。」


「はっはっは。それは、何とも嬉しい限りだよ。……ワガママを言って、すまないね。……でも、ワガママを言ったからには、絶対に勝つからさ。」


「ジハード様が決着を付けたいとおっしゃる方は、それだけさせるほどに、影響力を持つという事なのですね。」


「僕の、憧れだからねえ。それに、もし彼を越えたいと願うなら、戦いはフェアで、そして、1対1じゃないとダメなんだよねー。……彼を越えられたとき、きっと僕は人類の中で1番強い人間になるだろうね。」


「それは……ジハード様が戦う相手が、人類で1番強いという事でしょうか?」


「少なくとも僕はそう思ってるよ。……そんな相手とこれから戦うんだ。武者震いすら零れるよ。」


「……ジハード様。我々は、信じております。あなたの勝利を。……どうか、ご無事で。」


ジハードは、自らシドとの決戦の舞台を作り上げた。


たとえもっと効率よく相手を倒せる方法がいくらでもあったとしても。


彼もシドと同じ。あくまで、個人同士での決着を望んでいるのだった。


そしてそれを制する事で、彼の大きな目標を達成する事にもなる。


「(……何をしてくるのか、想像もつかないけど、今度こそ正真正銘の本気に違いない。……やっと、試す事が出来る。僕がどれだけ君に近づく事が出来たのか。)」


彼の広義での目標はガイアルラ皇帝の使命を全うする事。だが彼個人としての目標は……


シドを越える事。


「……なんて言って、意外と来なかったりしてね。ははは。」


……だが、彼は来た。何故なら、彼も完全なる決着を望んでいたから。


ならば互いに惹かれあうのは必然。


……


「出し惜しみなしだよ……僕がどれだけ君みたいに強くなれたのか今!はっきり分かる!!ライブソニック!!!!」


「……ッ!!初っ端からかよ……!!」


これまで何度か戦ってきた時とは気迫がまるで違う。のらりくらりと適当に流そうとするそれではない。


これはまさに、殺し合い!


「くそッ!!!」


いっそ俺は奴の攻撃を避けてみる事にした。思い切り横へと飛ぶ。


「そんな体勢で次が躱せるとでも!?サンダーウィップ!!」


「げっ!!」


意外とイケるもんだと思ったのもつかの間。今度は横一線に薙ぎ払うような電撃が襲い掛かってくる!!


「仕方ねえ……おらっ!!」


飛びながら大地へと剣を突き刺す。


「ぬあああッ!!」


「シド様!!」


……直撃。俺の体に電撃が流れる。


「……っくううううッ……!!!」


「……」


「……く……くっくっくっく……!!」


俺は、思わず笑ってしまう。


「へっ……とうとうてめえの技、受けきったぜ。」


「へえ。流石にちょっと見せ過ぎちゃったかな。まあ、僕と戦ってそんなに長く生きてられる相手そうそう居なかったから考えもしなかったね。」


どうやらこのマントに加えて、更に地面に電撃を逃がす事でダメージは大幅に軽減できるようだ。少々ビリッと来た程度で動くのに何の支障も無い。これなら……


「ぶっ殺す!!」


俺は一気に距離を詰めて接近戦を仕掛ける!


「ようやっと……だね、まともに剣を交わし合えるのは。……と言うか、あの時別れて以来じゃないか。」


「無駄口叩く暇なんて……やらねえよ!!」


「……」


思い切り斬りかかる俺に対してジハードは上段に受ける構えを見せる。


上等だ。真っ向から……ぶち抜く!!


「死ねやああああッッ!!!」


「ッ……!!!」


明らかに苦戦の色が顔に浮かぶ。


奴は俺の全力の一撃をどうにか両手で受け止めようとする。しかしここまで加速と勢いがついた俺の剣をそう簡単に弾けるもの……


「……レイジングフラッシュ!」


「……あ?」


刀身から、光る閃光。……気が付いた時には、またしてもあの激痛が俺の体を苛む。


「ぐああッッ!!!……かっ……はっ……」


「あっけない……幕引きだねッ!!!」


「!うおおおおッッ!!!!」


一瞬体の自由が利かなくなるが、それでも全身の力を込めて後方へと飛ぶ。……それでどうにか最悪は免れた。奴の剣は空を切る。


「言ったはずだよ。これは本気の手加減なしの勝負だって……だから、簡単には逃がさない!!」


「……ぬッ……!」


……当然追撃を加えてくるか。……体勢を整えながら俺はどうにか体を起こす。


「くそっ!!」


だがまともに撃ち合ったらまた至近距離のアレを食らってしまうのでやむを得なく距離を取る。……ちくしょう。しくった。


「……シド。そろそろ本気で来て欲しいな。防御は鍛えて来たのかも知れないけど防御ばかりで攻撃がおろそかになってるなんて事、ないよねー?……それに、最初の技を耐えきったからってあれが僕の全部だとは思ってないよね。まだ火力の高い技は幾らでもある。……それに君は耐えられるんだよね?」


「……無駄口ばかり、叩きやがる。どこが手加減なしだよ。んな事言ってねえでさっさとかかってきやがれよ。」


「本気の君と、僕は戦いたいんだよ。……本気の君を、越える事が出来て初めて僕は自分の頑張りを認められるんだからね。」


「……くだらねえ。」


本当に、くだらない。


こいつの弁では、俺が居ないと自分の努力すら認められないと言う事になる。


……本当に、アホだ。


「……いいだろう。もうちょっと本気出してやる。」


舐めてかかっていたわけではないが、いつもよりも更に自分の中の刃を滾らせていく。


「……たまに君はそんな目をしてたね。……その目をした時の君は、とにかく強かった。憧れたんだよ、そんな君に。」


「……行くぞ。」


颯爽とジハードの元へと走る。……奴の剣の方向に注意して。


「使えるものは全部使う。ビートストライク!!」


……それは、寸分の狂いも無く、剣先から放たれる。


「だから、剣先に注意を払っていれば、直撃を避ける事は可能だ!!」


無論ある程度の距離を保っている状態のみその躱し方は可能。至近距離ではかなりシビアだろう。


「でも、離れた所から僕を倒す手段でも!?」


「それはねえな。てめえを投擲なんかで仕留められるとは思えねえ。てめえを仕留めるには一撃ぶち込むしかねえ。」


「……君が何をしでかすのか、見せてもらおうか!」


「上等だ!」


俺は思い切り剣を振りかぶる。こんな場所からではとても敵に斬撃を加える事など出来ない。それでも構わず俺は振りぬく。


「どらあああッッ!!!!」


「……!!」


勢いに乗って剣は俺の手を離れて行き、見る見るうちに奴の元へと近づいて行く。


「……まさか言った傍から、自分の言った事を破るなんてね!本当に型破りな君らしい!」


無論こんな攻撃当たるはずも無い。


「これで君は武器を失った。……さあ!どうしてくれるんだいこれから!?ライブ……!!!」


だが、徐々に気が付いてはいた。こいつを撃つためにうってつけの存在に。


……それは、剣自身。


いや、剣でなくても物体のある物であれば何でもいい。


「ソニック!!!!」


「おらああッッッ!!!!」


「!?」


ジハードが見せる驚愕の表情。それは何もない所から瞬時に剣が現れた事。そして俺がまたも剣を放り投げて来た事にだろう。


「てめえにはまだしっかり見せた事は無かったな。……こいつが俺の力だ!」


俺へと襲い掛かろうとする雷に対して剣はひた向かって行き、やがて衝突する。


だが、実体のある剣が形を持たぬ雷に本質的に負けるはずが無く、剣は形を維持したままに雷を切り裂いていく。


「……おっと……流石に、全部は消しきれねえか。」


俺の元へと辿り着いた一部の電気が体を走るが……どうと言う事は無い。


「ちょっとビリッとは来るが、可愛いもんだぜ。」


「……その剣を見たのは初めてじゃないけどね。君がジャスティナと戦っている時も使っていた。まぁ確かにあの時は遠くからだったからしっかりってわけじゃなかった。けど、おかげさまでよく分かったよ。出したり消したりできるおかしな剣だってね。」


「強い剣を持ってんのが、てめえだけなはずねえだろうが。その魔剣とやらよりこっちの剣の方が数億倍は強いぜ(ちょっと言い過ぎ)。」


「シド、友人として1つ言っておくよ。たった1度攻撃を破ったからと言って全て見切った気になるのが君の悪い癖だ!!」


ようやく、巨大な城が自ら動き出す。ジハードはこれまで俺の攻め方をうかがいながら隙を見ては電撃を放つ戦い方をしていた。


それがとうとう自発的にこちらへと向かってくるまでになった。誘い込んだ。


「だがなあ、そうはいかせねえんだよ!どらあッッ!」


「っ……!」


俺は目にも止まらぬ速さで剣を出しては投げ、出しては投げを繰り返す。


「本当に手段を選ばない戦い方は君の十八番だ!くッ!!」


相手をけん制しつつ、敵の雷を防ぐ戦法。


俺がいくら近寄ろうとこいつは電撃一発当てるだけで俺を跳ね除ける事が出来る。だからこそやるべきは遠くからこいつを疲弊させる事なのだ。


「そらそらそらそら!!」


「……!!!本当に……しつこいね!!!」


実像のある剣に対して奴が出来る事は避けるか受けるか。だが、重量があり加速もかかっている剣をまともに受け止めるのがいかに腕に負担をかけるかなど分かりきっている。だから基本的にそんな投擲はかわすのが一番いい。奴はそんな事を繰り返しながら俺へと距離を詰めてくる。


「けど俺が下がれないと誰が決めた!はっはっは!!」


そう、俺はその場から動けないわけでもなんでもない。奴が詰め寄るよりも俺が投擲をしながらも後ろに下がる方が距離が長いのだ。よって奴との距離は縮まらない。


「剣をそんなふうに使うなんて、全く……!剣はブーメランじゃないんだよ!?」


「んな事分かってるわ!こんなもん適当だ適当!当たらないようにせいぜい気を付けるんだな!!」


「……本当に……君って奴は!!」


……俺はふと、ガキの頃のような思いに包まれている事に気が付いた。


……戦いの最中にこんな感情が、生まれるのはおかしい事だろう。


だが、どこか、楽しい。殺伐とした殺し合いと言う感情では無く、ただ純粋に、目の前の相手とじゃれ合っているかのような。


……勘違いでなければ、ジハードも、そんな表情を浮かべているように見えた。


「これはどうだい!!?ツイン……ソニック!!」


2振りの斬撃。即ち2対の雷。


「ネーミングセンスが相変わらずのままじゃねえか!分かりやす過ぎんぜ!」


例え2つになったとて、俺へと向かってくるのは変わらない。変わらずに俺は同じ行動を繰り出す。


「……気持ちさっきよりはピリッとしたが、それでも大した事ねえなぁ!」


「ははは。数を増やせばダメージも増えるわけだね。了解したよ。」


「てめえの頭の中なんてお見通しだ。次は3つで来るか?」


「もちろんだよ。努力と言うのは1つ1つ積み重ねていく事だからね。2つでダメなら3つ。3つでダメなら4つ。それを繰り返すだけさ!」


「そんなら技名はトリプルソニックか!?」


「……トリオン・レイザー!!!」


「ちょっとカッコつけてんじゃねえぞ!!」


「パッと頭の中に浮かんだ技名が君と同じセンスだなんてちょっと嫌じゃないか!」


……けど、こいつらしい。


本当に真っ直ぐなバカだ。


俺なら通じなかったら他の手を考えるところだが、こいつは自分の積み重ねた物1本を信じて俺へと向かって来ようとする。


自分自身を信じる力をこいつは持っている。いや、努力によってそれを培ってきたのだ。


「何個束ねても……俺には効かねえ!!」


「……だね。」


すると奴は飛翔する。


「空中に逃げたか!だが、格好の的だぜ!」


「ライブソニック!!」


「無駄だ!!」


またも俺は剣を投げつけて雷をガードする。


「……?」


一転、奴の剣先は俺へではなく、空へと向き変る。


「シド。……僕の雷はね……」


俺を見下ろしながら、奴は呟く。


……剣先から放たれた光は明後日の方向へと向かって行く。


その意味不明な行動の意味に、瞬時に思い当たるべきだった。


「があッ……!!!」


……剣で背中を突き刺さんばかりの衝撃。……あまりにも俺の背中は無防備だった。


「曲げられるんだよ。」


「……そ……そうかよ。」


どうにか叩けたのはこの減らず口。マントのおかげか、倒れないようにする事は出来たが、奴に大きな隙を見せる事になる。まだ奴は空中にて俺を攻め込むだけの時間的余裕があった。


「この隙、見逃さない。……終わりだ。スピア・ザ……ライトニング!!!」


「……!」


……空中だと言うのにとんでもない加速を付けて剣と共に俺へと向かってくる!……かわせるかかわせないかと言うと……厳しい。


「(……一か八か、カウンターを……)」


頭の中で想像しても、失敗に終わる可能性の方がはるかに高かったが、やらないより、マシだった。


俺は意を決して体に喝を入れて剣を……


「え、えーーい。」


「「!?」」


命を取り合っている緊迫したこの最中に間の抜けた声。俺もジハードも一瞬呆気にとられる。


……そして、その声が聞こえた方向から何やら長い物が俺達の方へと向かっているのが見えた。


「(……これ、あいつの杖じゃねえか。)」


「……技のセットアップが……くッ!!!」


それに気付いた時には、ジハードが己の技を解除して、その杖を切り払っていた。杖は音を立てて転がっていく。


「ああ。私の杖が。」


「……シノちゃん……どういう、つもりなのかな。」


確実に決めるつもりで放ったであろう技に茶々を入れられたのが流石に気に障ったのか、心中穏やかでない顔でジハードはシノを見る。


「どうもこうもありません。見ての通りです。」


「……決闘に横やりを入れるのは、あまり褒められた事じゃないね。」


「ジハードさん、勘違いしています。……私は最初に言いました。私達は、負けません、と。」


「……ああ、言ってたかもね。」


「ジハードさんの相手は、初めからシド様と、そして私です。」

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