この場所にて、君を待つ
俺達がそこへたどり着いた時には、そいつは何やら虚空へ向けて剣を構えて立っていた。
「……何、してやがるんだよ。」
「訓練だよ。ここは戦闘場だからね。」
「何も振り回さずにか。それで訓練たぁ笑わせるぜ。」
「実際に体を動かす訓練は、正直たくさんやったし、それよりも、君がどういう手を打つのかを頭の中でシュミレーションした方が勝ちの目もグッと増えると思ってね。それにしても、早かったね。僕はまた制限時間ギリギリにでも来るのかと思ってたよ。時間にルーズな君の事だからね。」
「はっ……勝手に抜かしてろ。そんな事より、こんな殺風景な場所が死に場所でいいんだな?」
ゴーバスの闘技大会で戦った時ぐらいの広さはあるものの、誰も見ていないし、辺りには何にもない。ただの、戦う為だけの空間でしかない。
「君にとっては殺風景かもしれないけど、僕はここで色んな人たちと戦ってきた。そんな時間を過ごして来て今の僕があるんだ。……散るつもりは無いけど、決して不釣り合いな場所ではないね。」
「なら、十分だ。」
俺はマントをはためかせながら、剣を出す。
「てめえとの因縁もこれまでだ。……ぶっ殺してやる。」
「僕が勝ったら、約束は守ってもらうよ。シノちゃんもね。」
「ジハードさん、私達は、負けません。……絶対に、あなたに勝ちます。」
俺が言うまでも無く、シノは当たり前の言葉を口にする。
「本当に、威勢のいい子だね。見た目と違って。……じゃあ、始めようか!!!」
俺は俺の過去に決着を、奴は奴の未来の為に。
それぞれの賭けた物の重さは違えど互いに背負う物がある。
後は、そいつをどこまで貫けるか。
そして、どっちが強いか。……ただ、その一点だけだ。
……
「さて、レーグレースに向かうわけですが、いったいどのような勝算があるのですかな。」
「あ?そんなもんまた同じ様に攻め込めばいいだろ?」
「バカか貴様は。さっき使ったのと同じ手がすぐに通用するはずがないだろうが。戦いを舐めているのか。」
「それに、あれほどの時間魔法を撃つにはもう私の魔力が足りないのですよ。さっきのはあくまで一時的に魔力が増幅されていたから出来ただけです。加えてレーグレースはさっきの拠点よりも更に守りは強固です。……さて、どうしますかな?」
「そうよねえ……大体レーグレースはもう敵の城の超近くだもんね。……生きるか死ぬか、本当に紙一重って感じだわ。」
「心配いらん。レーグレースを落とす必要はない。俺が全部片付けてやる。」
「戯言の様にそんな言葉を繰り返しているが、いったいどういう意味なのだ。」
「仕方ない。教えてやろう。秘策を。レーグレースにはジハードの野郎が居る。奴を倒しちまえば敵は一気に総崩れになって自然と戦いは終わる。何せジャスティナを捕えてその後に今度はカラリーサ達が倒した奴らに加えてペレストロイカまで捕えたんだ。向こうは正直あっぷあっぷなはず。そこに来てとうとうジハードの野郎まで捕まったとなれば流石の敵も降伏せざるを得ないだろう。」
「……色々と突っ込みたいところがあるのですが……レーグレースにジハード将軍が居るという情報は一体どこから。」
「ジハードさん本人が言ってました。そこで待つと。」
「……いったいどれほど信憑性があるのでしょうな……」
「罠の可能性だってあるのではないのか?」
「まあ、のこのこと、バカ正直に行く奴も、そうそう居ないけど。」
「貴様は喧嘩っ早い。それを逆手にとって待ち伏せされている可能性は大いにあるだろう。」
「そりゃあるだろうが、だったらなんだ。攻めずに後ろ向け後ろですたこらさっさと帰るのか!」
「そういう戦略もありますな。……1つお聞きしたいのですが、ジハード将軍に勝つ術はあるのですかな。」
「無くてこんな事言うか。」
「……1度ならず何度も負けている姿を知っているので、正直不安なのですよ。」
「考えなしに勝てる相手では無かろう。これまでは向こうの容赦があったり隙を付いて逃げる事が出来たから命があるようなものだ。……気を抜けば、命を容易く失うのだぞ。」
そんな事、百も承知だった。
戦場に立つうえで当たり前の事。ジハード相手でなかったとしてもいつもその覚悟だ。
「……次に嘘を付いたら、流石に何らかの処分を下しますが、よいですかな?」
「隊長!」
「……まあ、上手く行けば儲けものでしょう。この破天荒さが上手く転んでくれる事を祈りましょう。」
「最初からそう言ってればいいんだ!」
「……ふむう。……しっかり勝てるのだろうな。」
「と言うか、誰も彼も、私の事、忘れ過ぎ。」
「……そうだわ!ノノノンが居るじゃない!まさに秘密兵器よ!もっと早く言ってくれてればよかったのにー!」
突然テンションをあげだしてアグリアはノノノンを抱えて回り出す。
「確かにあの封縛魔法ならば、ジハード将軍の隙を付く事が出来るやもしれませんな。」
「もち。というか、その為に、わざわざここに来たまである。手柄は、いただき。」
「な!……ちょ、ちょっと待て……確かにお前が居たら簡単に倒せそうな気もするが……そしたら俺の活躍の場が……」
「何をこの期に及んで言っているのだ貴様は。」
「戦いがさっと終わるならばそれに越した事は無いだろうが。」
……確かに、組織として見たらその通りなのだが、俺は納得できなかった。
何故なら俺はラズリードの人間としてヤシャマのジハードと戦いたいというわけではない。
ただ、俺として、奴を倒したいのだ。
「……と、とりあえず、お前は少し控えてろ。俺が万が一どうにも出来なかったらお前の出番だ。いいな。決定。」
「……と、言ってるけど、どうしたら、いい?まあ、私は、別にどっちでも、いい。こいつがやられても、それは仕方ない。お墓の前で、拝むぐらいは、してやってもいい。」
「……」
誰もが俺にこいつはアホかという視線を送っていた。そりゃあ、楽して勝てるなら普通そうした方がいいに決まってる。命がかかった戦いならもちろん。
……だがしかし、それでも俺は……
「シド様は、ちゃんと勝ちます。だから、信じてください皆さん。」
「シノ……」
「それに、私も見てますから。もし危なそうだったらすぐにノノノンさんに助けを呼びに行きますから。それはもう猛ダッシュで。」
「シノ……」
「それは、信じているのか?信じていないのか……?」
「無論私はいつだってシド様を信じていますとも。」
「……仕方ありませんな。まあ、好きなようにやってもらうとしますか。ただ、命の管理だけはご自分で行ってください。」
「……」
まーたシノに助けられてしまった。……まあ、俺が適当に支離滅裂な事を言ってシノが常識的な事を言ってフォローをするのが俺達の形式だ。
……あんにゃろうは、俺がきっちり殺してやるのだ。
……
「んで、戦闘場ってどこだ!?」
レーグレースに突撃したものの、肝心の戦闘場の場所が分からない。
「とりあえず手当たり次第に探してみましょう。」
「「痛みを忘れるな!!」」
「手当たり次第に探してる暇もねえぞ!おらッッ!!!」
無論ここは敵の中枢。ところ構わず敵の襲来である。
……
「とりあえず無理をせず、命を大切に行くとしましょう。……1時間ぐらいは様子見ですな。付かず離れずを保つように。」
……
とりあえず俺が奴と戦って音沙汰が無くなったら次へと移行する腹づもりらしい。
「シド様。そのマント、素敵ですね。」
何をのんきな。
「戦闘中に褒めるな!!」
万が一にもシノがその辺の雑兵に負ける事は無いと思うが、それでもやっぱり目を離せないのは確かであった。こういうボケた所なんかを見たりすると特にそうだった。
「そう言えばシド様、倒した相手から場所を聞くのはどうでしょうか。」
「アホな事言って……」
「……」
少し考える。……あれ、それ、いい方法じゃないか?
「そういう事は早く言え!!」
妙案だった。
「おいコラてめえ!戦闘場はどこだ!?」
「……き、きさ……ま……が、ジハード様が言っていた……男……か?」
「ジハードが言っていた男……?」
「……いいだろう……戦闘場は……向こう……だ……」
息も絶え絶えになりながらもそいつは笑みを浮かべて俺に方角を指し示す。
「……ジハード様に……完膚なきまでに……叩き潰されるが……いい……ふ……ふはははッ……!!……が……」
……最後に血を吐いて、息絶えた。
「どうやら、敵の方々は私達がジハードさんの所へ来る事を知っているみたいですね。」
「あの野郎が教えてたんだろうな。……けっ。」
俺は指示通りの方向へと進む。
……カラマ達はこれが奴の罠なのではないかと言う風に考えても居たが、奴の性格的にそれは無い。
奴は相手の裏をかくような事はする奴だが、あそこまで言い切った言葉に嘘を交える様な事はしない。
多分馬鹿正直に1人で待ち構えているに違いない。そこに例えば俺が10人。数百人を連れて行ったとしても奴は仕方ないなあ、の一言で済ませようとするだろう。それでも勝つ自信があるのだろうが……
「それじゃああいつに勝ったとは言えねえ。……俺が真っ向から潰す。」
「……シド様は、ジハードさんの事、嫌いなんですか?」
「男だぞ。問答無用で殺すに決まってるだろ。」
「でも、昔の知り合いなんですよね……?」
「……関係ねえ。知り合いとかどうとか言う前に、あいつは俺の敵だ。だから戦う。そして、殺す。」
「……もし、出来る事なら、分かりあいたいです。……ジハードさんとも。」
「無理だな。」
「無理、ですか?」
「負けたあいつが、そんな自分を許せるとは思えねえ。」
きっと奴はもし負けたら、潔く散りたいと願う人間だ。
俺からすればクソほど真面目な大バカ野郎でしかない。
……
「僕は、君みたいに強くなりたいんだ。」
……
奴が下らない事を言っていた事をふと思い出す。
「(んなくだらねえ事考えてるから……てめえはバカなんだよ。)」
そしてどうにかこうにかやっとこさ、それらしき場所を見つける。
「……この道だけ、敵が全然居ませんね。」
建物の中には誰も居ない。
「あいつの事だ。人避けもさせてあるんだろ。他のだれにも邪魔させないようによ。」
奴も出来る事ならばサシでケリを付けたいと願っていたのだろう。その点に関しては俺と同じだ。
そして、開けた場所へと出る。
……
俺達がそこへたどり着いた時には、そいつは何やら虚空へ向けて剣を構えて立っていた。
「……何、してやがるんだよ。」
「訓練だよ。ここは戦闘場だからね。」
「何も振り回さずにか。それで訓練たぁ笑わせるぜ。」
「実際に体を動かす訓練は、正直たくさんやったし、それよりも、君がどういう手を打つのかを頭の中でシュミレーションした方が勝ちの目もグッと増えると思ってね。それにしても、早かったね。僕はまた制限時間ギリギリにでも来るのかと思ってたよ。時間にルーズな君の事だからね。」
「はっ……勝手に抜かしてろ。そんな事より、こんな殺風景な場所が死に場所でいいんだな?」
ゴーバスの闘技大会で戦った時ぐらいの広さはあるものの、誰も見ていないし、辺りには何にもない。ただの、戦う為だけの空間でしかない。
「君にとっては殺風景かもしれないけど、僕はここで色んな人たちと戦ってきた。そんな時間を過ごして来て今の僕があるんだ。……散るつもりは無いけど、決して不釣り合いな場所ではないね。」
「なら、十分だ。」
俺はマントをはためかせながら、剣を出す。
「てめえとの因縁もこれまでだ。……ぶっ殺してやる。」
「僕が勝ったら、約束は守ってもらうよ。シノちゃんもね。」
「ジハードさん、私達は、負けません。……絶対に、あなたに勝ちます。」
俺が言うまでも無く、シノは当たり前の言葉を口にする。
「本当に、威勢のいい子だね。見た目と違って。……じゃあ、始めようか!!!」
俺は俺の過去に決着を、奴は奴の未来の為に。
それぞれの賭けた物の重さは違えど互いに背負う物がある。
後は、そいつをどこまで貫けるか。
そして、どっちが強いか。……ただ、その一点だけだ。




