ギンガVSジハード
「うああああッッ!!!」
「重厚そうな見た目に反して……速いねえッ!!!」
よく言う……思い切り飛び掛かっても将軍はスッと避けてはすかさずこちらへと斬撃を繰り出してくる。
普通ならば、距離を取るところだけど……僕だって今のこの体を活かした戦い方がある!
「……!!」
両腕をクロスさせて剣を受け止める!!
「……!」
将軍も流石に体で剣を受け止めるというのは予想だにしていなかったのか、少したじろぐ表情を見せる。僕はと言うと少々の衝撃はあったにせよ外的ダメージは0。そして再び瞬時に攻撃に移れる!
「くらええッ!!!!」
両腕をそのままに僕は足を振りかぶり、勢いをつけて相手に回し蹴りを叩き込む!!
「ぐぅぅぅッッ!」
僕の一撃は完全に脇腹を的確に捉えた。さしもの将軍も初めてここで大きく顔を歪ませ、勢いよく吹き飛んでいく。
「……よし……行けるぞ……!」
その時コアさんから声が届く。
「(ギンガさん、油断は禁物です。相手はまだ電撃を使って来ていません。あの電撃に対する決定的な対策法は未だありません。あれによって状況は簡単に変わってしまいます。)」
「(……そうだよね。……後は、あの電撃が来た時に成功するか、どうか……)」
本当なら追撃したい気持ちもあったのだが、僕はコアさんの言葉に従い相手の様子をうかがう事にした。しばらくの後、将軍は体を起こす。一応僕の攻撃のダメージは通っていたようで、若干よろめいている。
「……げほっ……こんなまともなダメージっぽい攻撃を受けたのは相当久しぶりだね……まいっちゃうなぁ、鎧君、本当に人間なのかい?」
人間だ。と言う事は出来ない。
「……そんな事より、今のダメージは決して無視できないはず。このまま戦えばじきにこちらが優勢になります。」
「……ふふふ。確かにこの場だけなら……そう見えるかもしれないね。」
妖しい笑みを浮かべる将軍。まるで策があると言わんばかりの……
「君達の部隊がこれまで首都ガイアルラへ向けて進軍してきている事を当然こっちは分かっていたんだよ?……そして、その進路上にこのアーガインの町がある事も。そして、そこを通る必要があるだろうと言う事……」
「……!!まさか……」
「待ち伏せは、容易だよねえ。……パターンは2つ。この場所に全軍で攻めて来るか、それとも少数で攻めて来るか。君達は後者を選択したわけだけど、果たして君達の仲間の兵士達は……今どうなっているのかな?見た所ここに来たのは部隊の中でも実力者ばかり。そんな君達を欠いた状態で、果たしてどれだけ戦線を維持できるだろうね。」
……エッケルノさん達が、危ない。
「……ならすぐにあなたを倒してエッケルノさん達を助けに……!!!」
「させないって。その為に……僕がここに居るんだって。……ライブソニック!!!」
「!!!」
そしてとうとう将軍の雷が僕に向かって放たれる。
……ここが、勝負の……時……
僕は、オーバーキラーの能力を使う。
攻撃 100→0
速度 100→0
防御 100→300
全てのパラメーターを防御へと振り分ける!!
「……っぐ……ぐうううッッ……!!!」
……体中に走る、衝撃。
どうやら……ここまでしても……やはり将軍の技を防ぐ事は出来ないようだった。
「……だけどッ……」
それでも……さっきよりは、全然マシだった。僕はそのまま戦闘態勢へと移行する。
「あれれ?さっきはあんなに効いてたのに、この短期間で何があったのかな?……それとも、あの女の子が鍵を握ってるのかな?」
そのどちらも、正解だった。
「(ギンガさん。どうやら、あの電撃はギンガさんが防御パラメータを最大にすれば大きく軽減出来るようです。」)」
「(うん。今身を持って実証できたよ。……それでも大概痛いけどね……)」
だけどその場で倒れこんで動けなくなる事が無いだけでも大きい事だった。
「(本来ならばギンガさんの体は100のダメージを10程度まで軽減できるはずなのですが、おそらく敵の技のダメージはそれを大きく上回る物のようですね。)」
「(……割合軽減じゃなくて、絶対軽減って感じなのかな?)」
100のダメージなら限りなく0に近い位に減らせるけど、そのダメージが例えば1000とかだったら100とか軽減したとしても900近いダメージなっちゃうって事だろう。その程度減らしても焼け石に水だよね……
「(ですがギンガさん、電撃のダメージは決して無視できるものではありません。ここで決着をつけると言うのは困難だと判断します。)」
「(……かも知れない。それに、エッケルノさん達の所へ急いで戻らないと!)」
「随分と、呆けてないかな?サンダーウィップ!!」
……考えもまとまらぬうちにまたも電撃が……!
「ぐっ……ぐうううッッ……」
速度も最低まで落としてしまっているせいで僕は全く身動きできず、ただダメージを受けるだけだった。確かにこんな状態じゃ勝つ事なんて出来ない。
……けど、それでいい。僕の目的は勝つ事では無いのだから。
……ただ、耐えるんだ。……そして少しでも時間をッ……
……
「……グラフィカさん、そろそろ、動けるんじゃない……?」
「……どうにか……行けるかもしれんッ……!!」
「アタシも……走るぐらいならたぶん……」
シノが戦い、その戦いを引き継いで今ギンガが戦っている。その両方の時間は、俺達の体をある程度回復させるには十分な時間だった。
「あ……アグリアさん、大丈夫ですか……」
「……見てたわシノの戦い。流石ね。」
「てれてれ……でも、あんまり、時間は稼げませんでした……」
「十分だッ……とにかく急ぎここから去って隊長達と合流するッ……」
「……シド様、立てますか?」
「……当たり前だ。……ぐっ……!」
……が、まだ半分ってレベルだな。こんなんじゃまともには戦えない。
「けど、将軍がアタシ達を黙って逃がしてくれるとは思えないんだけどね……」
「……」
今でこそギンガと戦っているから少しばかり注意が逸れているが、流石に走って逃げだせば後ろから追撃してくるのは間違いないだろう。
「私が引きつけます……」
「シノ……」
「あのビリビリはこのマントがあればほとんど防げます。それで皆さんはエッケルノさんの所に……」
「……」
提示したその方法は確かに一番妥当性が高いものだった。この中で奴の電撃をほぼ受け付けないのはシノだけなのだから。
……だが、この中で一番非力であろうシノにそれを押し付けると言うのは俺を含め誰もが出来る事ならば避けたいと顔が語っていた。
「うっ……あああああッッ!!!!!!」
そんな葛藤の中、大きな叫び声に顔をやると、ギンガの奴が倒れこむ瞬間が見えた。
「ギンガさん!!」
「……」
奴はそのまま、動かなくなっていた。
「いやー……鎧の彼、凄くタフだったねぇ……そして、そっちは逃げる相談中だったかな。」
ギンガから目を離し、とうとうこちらへと標的を定めるジハード。
「……まずいわね。」
「……」
「シノちゃんと鎧の彼にうまーく時間を稼がれちゃったか。……でもまあ、また痺れさせちゃえば、同じだよねえ?」
不気味に揺らめくジハードの剣。それからいつまたあの電撃が発射されてもおかしくなかった。
「……どうしてだ。」
「?」
ふと、頭によぎった疑問。
「最初に俺達に使ったあの技……どうして、タリホーの戦いで使わなかった。」
「……」
町全体を攻撃出来てしまう程の規模の技をバンバン使えばあそこまでヤシャマが劣勢になる事も無かったかもしれない。
なのにそうしなかった。
「何故だ。」
「……さあて、ね。あんまり気が向かなかったから、じゃないかな?」
……違う、きっとそこには何らかの理由があったはず。
……きっとあれだけの技には制限があるのだ。じゃなきゃ今この瞬間だってアレをぶっ放せばいいのだから。
「気にしても仕方のない事だよ、シド。……何故ならここで、君達とはお別れだからね。……全員、もう一度倒れててもらおうかな。……レイジングフラッ……」
「っ……!!!」
奴が剣を構えこちらへ向けて技を放とうとするその瞬間、倒れていたギンガが目にも止まらぬ速度でジハードの背後へと回り込んだのだ。
「ッ……!!鎧の君……まだ立ち上がれたのかい……?」
「……くっ……ううっっ……!!!み、皆さん今のうちに……!!」
ギンガはジハードを体全体を使っておさえこもうとする。
「やれやれ仕方ないね。」
そう言うととてもめんどくさそうにその拘束を振りほどき、ギンガに向けて剣を振り下ろした。
「ッ……!」
その攻撃は、ギンガの頭部の一部を抉り取った。屈強な鎧と化した奴の体を、砕いたのだ。
「うっ……ぐううううううッッ!!!!」
「ギンガさん!!!」
あの装甲は今や奴の体の一部に他ならない。と言う事は相当の痛みが体に駆け巡っているはず。
「くそがッ……!」
どうにか加勢に加わろうにも体に力が入らない。武器を握るぐらいは出来るかもしれんがそれでは話にならなかった。
「なかなかいい手ごたえだったね。……さて……」
再びこっちへと振り返ろうとするジハードだが、ギンガがそれを制す。
「うあああああッッ……!!!」
「ッ……ちょーっと流石にしつこ過ぎるかな。」
「ギンガさん……!もう……」
「……ぼ、僕は、大丈夫です……だから、急いで皆さんはここから逃げてくださいっ……!!」
「そんな……仲間を置いてけって言うの!?」
……そんな事をすれば、1人残ったギンガがどうなるか分かりきっていた。
「僕をッ……信じてください!僕は絶対に……大丈夫ですからッ……!!!」
「……」
その言葉は、嘘偽りない物に聞こえた。
「……っ……お前ら、さっさと行くぞ!」
「し、シド様!!」
「そんな……ギンガ君を見捨てるなんて……そんな事……」
「……このまま全員犠牲になったら元も子もねえだろうが!」
「……その、通りだ。……急ぎ、ここから離脱する。」
「……!!グラフィカさんまで……!」
「……ここで逃げなければ、5人共死ぬ。……急げ!!!!」
「ッ……」
アグリアとシノはまだ覚悟を決めきれていなかったが、その一喝を受け入れる。
「……目の前でみすみす逃がすなんてしたくないんだけど……ね……」
「……ぐっ……ぐうううううッッ……」
今もなお、ギンガは身を呈してジハードの動きを封じている。
「……行くぞ!」
俺は、ジハードに背を向けて走り出す。1秒でも早く、奴から遠ざかる為に。
「……ギンガ君……!!……ごめんっ……!!」
きっと皆、心の中に後ろめたい気持ちがあっただろう。……けど、そんな感情を持つ事すら出来ない程に、俺達はただ、走るしかなかった。
とにかく敵の射程圏内から逃れるために、ただ、ただ、走る。
……弱い者には、そんな選択肢しか、選べないのだ。
……
とりあえず、シドさん達の姿はここからは確認できなくなった。
「……うわあ……まいったねー、本当に逃がしちゃうなんて……」
「……」
「けど、まあ、ここで鎧の君を倒せるんならいいかな?そういう事にしておこう。……ライブソニック!!!」
「……が……あッ……」
……流石に、もう、限界だった。
さっきはわざと倒れて隙を作った所に速度に能力を振り分けて将軍の背後に回ったのだ。
……出来たらそのまま倒せれば言う事無しだったんだけど、やはりそこは上手く行かない物で体に力が入らなかったのだ。
そして今度は演技じゃなく、倒れこむ。
「……黒い鎧……たしか、クノッサルで目撃されてた正体不明の謎の人物……だったかな?」
「……」
言葉を返す力も、無い。
「正体も目的も分からないからだいぶ厄介だったけど、どうやらこれまでみたいだね。……ヤシャマの未来の為に、消えてもらおうか。」
……少しでも……少しでも注意を僕に引き付け続ける。そうすれば、シドさん達がそれだけ逃げおおせる事が出来る……
「終わりだ。鎧の君。」
……そう言って、将軍は倒れた僕に向けて最後の一振りを……
「(……コア……さん……!おね……がい……!!!)」
「(はい、ギンガさん……!)」
……その刹那、刃が僕を捕らえる事は無く、僕の体は、コアさんによってあの遺跡へと引き寄せられた。
「……ギンガさん!」
「……ありがとうコアさん……けど、体が動かないや。」
「待っていてください。今すぐ修復作業を行います。」
「……うん。ごめんね。」
……そのまま僕の意識は落ちる。
……
「……狐につままれたようなってこういう時に使うのかな……?」
突然の出来事に面食らうのはジハード。後ほんの一瞬でギンガを倒せたと言うところで標的は跡形も無く消え去ってしまったのだから。
「……あの女の子が消えたのと、同じからくりかも知れないね。……うーん、ちょーっと予想外な事ばっかりだったかなぁ。……僕も、何と言うか、未熟だね。」
ジハードは遊んでいたつもりは無かったが、結果から見たら命を奪えた相手をみすみす逃してしまったようにしか見えなかったのだ。
「結局自分の事ばっかり優先して、ダメだね。やっぱり僕は、英雄なんて肩書、向いてないのかも知れないなぁ。」
自嘲気味にそう呟く。
「……フォニカ、オルテナ……今頃、何をしているんだろうね。元気で居てくれてると、いいんだけどね。」
彼は戦場の中で、ふと思い出した彼女達の事を、想う。




