表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シドとシノの大冒険  作者: レイン
425/1745

シノVSジハード

「君が居なくなってから、僕達はそれぞれ違う道を歩み始めた。」


「そうかよ。良かったじゃねえか。」


「……あの時と僕はなーんにも変わらない。ただ、君より強くなるためにただ努力し続けた。それしか、術を知らなかったからね。……あの時この町で君と交わした約束が、いつか果たされる時を待って……」


「……その成果が……これだってのか……!」


「それは、少し違うよ。僕はあくまで純粋な剣の勝負で君より上に立ちたいのさ。この力はまた別の為の力だよ。この魔剣……ベータレイザ。この力は僕が仕えるガイアルラ様の為の力だからね。」


「誰かに尻尾振って……てめえは満足かよ。」


「傅くに値すると僕が決めたからね。……今の僕にとって最優先なのはこの戦争に勝利する事、だから本当はこんな無駄口叩かないで殺すべきなんだけど……どうしてもそうは出来なくてね、僕もやっぱり人の心を捨てられないんだよね。」


こんな奴といくら言葉を交わしても無意味だ。


とっとと片付けるのが一番……


「ぬっ……ぐううッ……」


……くっ……今すぐにでも立ち上がってやりてえのに……体が言う事を聞かない……!


以前と比べればまだマシなのはおそらくシノがよこしたこのマントのおかげだろう。こいつのおかげで他の人間と同程度ぐらいのダメージには収まっているような気がするが……どうやら今回ばかりはそのダメージ量が甚大なようだった。


「……多分無理だよ、立ち上がるのは。」


……俺の思いついた手段を使うにはあいつが雷を撃ってくるタイミングを見計らう必要があった。不意打ち気味で撃たれては流石に対応の手立ても無かった。


それにまさかここまで広範囲に撃てるなんて想定しているものか。


「くっ……」


だが、誰もが身動きが取れずうずくまっている中、ただ1人立ち上がる姿があった。


「……あーあ、言ってる側からこうなっちゃったねえ。」


「シ……ノ……」


「……ぐ、お前……立てるのか……?」


「……私は、頑丈なのが、取り柄ですから……ぬぬぬ。」


シノはいち早く体の自由を取り戻し、武器を手にしながら立ち上がったのだった。


「シノちゃん……だったかな。ああ、それともキュート仮面ちゃんかな?」


「そのどちらも正解ですッ……ですが出来れば後に言った名前は忘れてもらえると助かります……」


「あの時も思ったけど、正直言って一番この中では容易く落とせそうな気がするのに、実際は一番努力してるって事なのかな?」


「……私はそんな頑張り屋ではありません。……ただ、少々体が丈夫なだけです!」


「……じゃあ、体が丈夫な君はどうするのかな。僕と、戦うつもりかい?」


「もちろんです。」


「……前に戦ったから分かるはずだよ。君では僕には勝てないって。それとも、この短期間で猛特訓でもしたのかな?」


「……シド様、そのマント、私に貸してくれますか?」


元々お前のだろうと思ったが、わざわざ断りを入れるのがシノらしい。


「……勝手に、持ってけ。」


そして俺の言葉を受けてシノは俺のマントを取って自分の身に纏う。


「これで準備オッケーです。……さあ、いざ尋常に勝負です。」


「……負けるつもりは無いけど、油断も禁物だね。いいよ、やろうかシノちゃん。君の勇気に応えよう!!」


いかにも正々堂々オーラを出しながら野郎はシノと対峙する。


……くそ、とっととこの体が動けば俺の編み出した秘策であの電撃はどうにかなるってのに!


「先手必勝です。たあっ。」


襲い掛かるが……当たらない。


「おっとと。レディーファースト……は、済んだね。」


「……レディーセカンドチャンスです。てやー。」


襲い掛かるが、もちろん当たらない。……流石に今回ばかりは相手が悪い。シノでは9分9厘勝てない。


……だが、勝てないかも知れないがそれでも手はある。


薄くだが、俺の記憶に残っているこいつがあの時とさほど変わっていないのならば……


「武器を、弾かせてもらうよ!」


「ッ……」


……多分、そうだ。


「シノ!!武器を絶対に手放すな!!」


俺はシノに向けて叫ぶ。


「……!分かりました……!」


ジハードの一撃をシノはどうにか受け止める。力の入れ方から見ても受け止めるのが限界だろう……


だが、それでいいのだ。


「っ……むむむむ……!!!」


「ありゃりゃ、参ったね……いい助言をされちゃったようだ。」


やっぱり、野郎の根っこの部分は大きく変わってはいないのだ。


「……女性の体に何回も傷を付けるのは、やっぱり気が引けちゃうよね。……だから、ただ一撃で、痛みも与えないように逝かせてあげたいんだけどなぁ。」


……こいつは、敵と言えど女に対してそこまで強く攻め立てる事は出来ないのだ。


奴が女に手をかける時は抵抗する術を失くした所になるだけ痛みを感じさせず一撃で命を奪うやり方を選ぶ。


それがこいつが自分に課したルールであり、こいつの女に対する本気の戦いだった。


「けどシノちゃん、今の一撃を何度も何度も受けて果たして耐えられるかな?」


「……自信はありません。だから、シド様の言葉を信じてただ武器を離さない事にだけ意識を集中します。」


「……シド様……か。なるほどね。そろそろさっきの一撃から5分になる。もう5分シノちゃんが耐える事が出来ればあるいはあの中の誰かが体の自由を取り戻す事もあるかも知れないね。もっとも……簡単にそうさせたりはしないんだけどね!!」


「うっ……!!!くっ……」


少しずつ攻撃のアクセルを加速させていく。普段そうそう変化しないシノの表情にも若干の焦りが現れる。


「そして、使えるものは何でも使うよ。……ライブソニック!!」


「!!」


猛攻の間隙に奴は剣から雷をシノに向けて放つ!あの距離で躱すなどどんな人間でも不可能だった。


「シノ!」


「さあ……これでどうかな!!!」


電撃にて生じる隙を付いて奴は斬りかかる!


「……っ!!」


……だが、シノは瞬時にそれに反応して、すんでの所で防御する。


「……おや?……この間はもうちょっと隙が出来たと思ったんだけどな?」


「……そうですね。ですが、今のは大丈夫でした。……だから……まだやれます……!!」


シノはほとんどあの電撃のダメージを受けていなかった。それどころかほぼ無反応だった。けど、考えてみればありえない話では無かった。


「(……あのマントか!)」


元々シノにはあの電撃の効きはそこまででは無かった。それに加えて今は電撃を軽減するマントを付けてるんだ。無効化するぐらいの防御性能を持っていても不思議じゃない!


……役に、立ってんじゃねえかよ。……もっと自分に自信持っていい程に。


「(……あいつがあれだけやってんだから……俺もとっとといいとこ見せなくちゃならねえってのに……!!)」


だが、非情にもまだ体は立ち上がる事すら出来なかった。……マントを付けていなかったらどうなっていたのかとゾッとする。これでもまだマシな方なのだ。


……自分自身で何でもどうにか出来ると思っていた。だが、今の現実はシノに託すしか俺の未来はない。


……俺はそのみっともなさに、自分の体をぶちのめしたくなった。


……


「ぐ……」


体に、力が入らない……こんな感覚、この体になってから初めてだった。今まで魔法攻撃を受けたってこんなにはならなかったのに……!


「(……さ……ん……)」


……薄らと、何か聞こえる……


「(ギン……ん……)」


……一旦意識を集中して、その言葉に耳を澄ます。


「(……ガさん……ギンガさん……!)」


「(!コアさん……!)」


「(ギンガさん……私の声が届いていますか?)」


「(う、うん。)」


「(先ほどから何度も呼びかけていたのですが、どうやら通信を阻害する何かの要因によって回線が不安定になっていたようです。)」


「(もしかしたら……電気かも知れない。さっき思い切り浴びたから……)」


機械物に電気は厳禁だものな。って、自分を機械って……


「(ギンガさん、今の状況は……?どうやら戦闘中のようですが……)」


「(……情けない事に攻撃を受けて身動きが取れない状態だよ。)」


そう、こんな悠長にしている場合ではない。目の前でシノさんが戦い続けている。


「(さっき電気……と、言いましたか?……ギンガさんの体は、魔法攻撃をほぼ遮断する事が出来る装甲を持っています。ですから本来ならばダメージを受けるはずはありません。)」


その通り。僕は魔法のダメージをほぼ受けない。それはこれまでの戦いで分かっていた。……だから、妙なのだ。


「(……もしかすると、その電撃は魔法攻撃と若干異なる何かなのかも知れません。……もっと、概念的な攻撃の可能性があります。)」


「(……概念的?)」


「(例えですが、相手に対して必ず一定の割合のダメージを与える様な技だったとしたらギンガさんの体にダメージを与える事は不可能じゃないかも知れません。あくまで軽減であり、無効化ではないですから。)」


「(……コアさんが言うなら、そうなのかもしれない。……けど、それじゃあ打つ手がないって事じゃないか……)」


「(ギンガさん……)」


「(コアさん……!今すぐ僕が立ち上がれる方法は何か無い?今シノさんが1人で戦ってるんだよ!オーバーキラーの能力でも何でもいいんだ!戦う力が……)」


「(ですが、立ち上がれたとしても同じ攻撃を受けてしまえばまた行動不能になってしまいます。)」


「(……コアさん、僕の考えを聞いて欲しい。)」


僕は頭の中で描いている方法を彼女に伝える。


「(……ギンガさん、その方法ではギンガさんの体に負担がかかってしまいます。……修復不可能な傷を負う可能性もあります。)」


「(……分かってる。だけど……目の前で誰かが犠牲になるのを見るなんて僕は嫌だ。……誰かを守る為に、出来るだけの事をしたいんだ。……だから、お願いだよ。……この体を、今一度立ち上がらせて欲しい……!!)」


「(……)」


思いついたばかりの行き当たりばったりなやり方。けど、それしか思いつかないなら、今はこれがどうあっても最良……そう、思うしかない。行動しなければ勝手に時間は進んでいってしまうのだから……


「(……分かりました。ギンガさん。)」


「(コアさん……)」


「(……ギンガさんの体の状態を元に戻す事は、可能です。実は私、何かギンガさんの役に立てればと思い、新たなシステムを構築していました。それが、緊急修復システム、バックアッププログラムです。)」


「(バックアップ……)」


「(これを使用すれば、ギンガさんの体を完全な状態へと戻す事が出来ます。……ただ、このプログラムは1つしかホールドしておく事が出来ないので今回使えるのも1回です。)」


「(1回……それで、十分だよ。)」


……後は、どうにかやって見せるしかない。


「(コアさん、それを……使って欲しい。)」


「(分かりました。……ではギンガさん、今、そちらに行きます。)」


「(……え?そちらにって……)」


その言葉を一瞬考えた時には、僕の傍らにコアさんが居た。


「!!こ、コアさん!!?」


「……このシステムを起動するには、私がギンガさんに接触していなければならないという欠点があるのです。そして、完全修復が完了するまで1分程時間を有します。では、システム起動します。」


……言うまでも無くここは今、戦場の真っただ中。という事は、コアさんの身も同じく危険であることを示す。


「……?おや、戦いに集中している間に初めて見る女の子が居るね。」


「……!コアさん……」


……そりゃあ、気付かれる……敵だって急にこんな可愛い子が現れたら……ってそんな事言ってる場合じゃない!


「何か怪しげな動きしているようだね。……仕方ない、シノちゃんの相手は一旦保留に……」


「させません……!!」


「……少しは休んでもいいんだよ?シノちゃん?」


「……普段頑張っていない分、今ぐらい頑張らないと……みんなに怒られてしまいます。」


……どうやらシノさんはこっちの意図を察してくれてか、注意を自分に引き付けようとしてくれていた。


「……後、30秒です。」


「……コアさん、ごめん。」


「?どうしてですか?」


「……君に、頼ってばかりだからだよ。……僕の力が弱いから……こんな強い体になっても……君をこんな危ない目に合わせる事をしなくちゃ、僕はもう1度戦う事が出来ない。……情けないよ。」


……結局僕では与えられた力をうまく使いこなせない。


「……私は、誰かを守る為に一生懸命なギンガさんを、カッコいいと、思います。」


「……コアさん……」


「……頑張ってください。……危なくなったら、私がギンガさんを……」


「スピア・ザ・ライトニング!!!」


「ッ!!!」


話に気を取られているその瞬間には、もうこちらへ向けてそれが放たれていた……


……守りたいのに……後……ちょっとなのにッ……!!!


……


「ここで……私……乱入……ですっ……!」


……そして僕は助けるでなく、また、助けられる。


「……わーお……シノちゃん、やるねえ。」


「シノさん……!!」


シノさんはその身を呈して、電撃から僕らを守ってくれたのだった。


「うっ……今のは……ちょっと、ビリッとしま……した……」


……こんな頑張りを見せられて、やらないわけにはいかなかった。


「ギンガさん!」


……その瞬間、体に自由が戻った。


「!!いける……これなら!!」


「あちゃあ……鎧の彼、立ち上がっちゃったか。これはシノちゃんの粘り勝ちだね。いやー参った参った。」


「ギンガさん!」


「ありがとうコアさん……僕はもう大丈夫!コアさんはまたあの場所に!」


「はい。……ギンガさん……頑張ってください!!」


そう言って彼女は再び消える。


……彼女の言葉に、僕は幾千の応援に勝る力を感じた。


「……突然現れたと思ったら、そんな消え方するなんて、摩訶不思議な女の子だったね。あの子の応援で勇気百倍って感じなのかな?」


「……ギンガさん……すみません、日ごろの運動不足がたたったせいか……もう少し時間を稼げればよかったんですが……」


シノさんは、十分に戦ってくれた。今度はこっちが応える番だ。


「ここからは、僕が相手をします。シノさんは少し離れててください。」


「それではすみませんが、お願いします。すすす……」


よろよろとした足取りでシノさんははける。


「……しょーがないね。思ったよりシノちゃんがタフだから、先に鎧の君から相手しようかな。その見た目通りにきっと強いんだろうねぇ。……けど、僕の相手にはだいぶ遠い感じかな。」


「……僕はオーバーキラー。」


自分でそう呼ぶ事で、改めて今の自分を自覚させる。


「……ジハード将軍……覚悟っ!!!」


……コアさんが僕を救ってくれたこの力で……


オーバーキラーの力で……


僕は、守る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ