黒鎧の魔物(けっこうお喋り)
「どりゃらららららら!!!」
「いやいや。こいつは大量大量だねッ!!!」
「ついてこれるか?」
「はい、大丈夫です。」
「なら、いい。」
たった三人だというのに見る見る現れる敵をなぎ倒していく……圧巻だった。
前のモンスターをシド様とアグリアさんが一気に蹴散らし、脇道からやってくるのはカラマさんが瞬く間に倒していく。……ついてはいけるけど……それで精一杯。
「ふっふん。あっという間にB3だ。」
「流石にあんだけの大ぼら吹くだけあって、口だけじゃないね。」
「ったりまえだ。おっと……おらよッ!!!」
「大盤振る舞いじゃないのッ!!いくらでもかかってきなさいなッ!!」
「……賑やかなものだ。」
「賑やかは嫌いですか?」
「……時と場合による。」
「そうですか。」
ちぎっては投げちぎっては投げ、モンスターの死体がそこらじゅうに並んでいく。これだけで依頼三回分ぐらいになりそう……
「この階か?下行きの階段どっちだ?」
「……向こうだ。分かっていると思うが、手強い。せめて貴様の命と引き換えに倒してくれるとありがたい。」
「ふん。どんな奴でも余裕だっての。」
「じゃ、行こっか。」
・・・・・・・・・
鎧。全身を鎧に包み込んだ魔物。それは階段にて待ち構えている。誰が来ようと、その行く手を阻むため。命を奪うため。
「……」
次なる標的と、邂逅する。
「あいつが鎧野郎か。」
「……3mぐらいありますけど……」
「巨人に比べたら可愛いものだ。」
「見るからにボスって感じね。……流石に骨折れそう。」
……
「人間共か……寄ってたかって戦えば何とかなると思っているならさっさと逃げるんだな。」
「あ?こいつ喋んのか?」
「……結構高レベルって事よね。はー……骨折れるわ。」
「まあ、ここまで来たぐらいだからそれなりには戦えるんだろうな。」
「邪魔だからどけ、どかないんなら殺す。」
「……ふっ……威勢のいい奴だ。だがその威勢もすぐに吹き飛ぶことになる。」
「先手必勝だあああ!!」
思い切り飛び掛かって剣を振り下ろすが……その巨体に見合った大きな剣がそれを弾く。
「……軽いな。まあそれが全力なんだろう?なら人間、お前の負けだ。」
「舐めんなよ、今のなんて10%も力出してねえ。」
シュッ!!
「たあああッ!!」
隙を与えずにカラマの苦無が目標へと向かい、アグリアが一気に詰め寄るッ!!
「……ふんっ……」
だが再び大剣が横に薙ぎ払うと苦無は全て明後日の方向へ飛ばされる、アグリアもあまりの威力に危険を感じバックステップで後方へと距離を取る。
「ひえぇ……そうよねえ……ってか巨体の割に結構速いんじゃない?」
「……だから困っている。」
「人間は変わっていないな。愚かだ。今ので勝てる見込みが1%でもあると思えたか?」
……まるで人間の本質でも知っているかのような言い方をする。
「自分達が強いとでも思っていたのかもしれないが、それは本当に強い者がお前達を見逃していただけだという事に気付くがいい。ちょっとした気まぐれで人と魔物が分かたれただけなのにお前達はまた自分達の身分も忘れて増長する。お前達はどこまで行こうと魔物以下の弱者でしかないのだ。現にこの私にすら勝てはしない。私などせいぜい全体の真ん中のレベルでしかない。身の程を知れ。そして、消えろ。」
「ひそひそ(……なんか長々語ってるぞ。)」
「ひそひそ(まあ、それは語らせておけばいいと思うけど……実際問題どうするのよ?……結構強いよ?)」
「ひそひそ(……倒す手段は今のところ思いつかん。)」
「ひそひそ(あの、どうして動いて攻撃してこないんでしょう。)」
「ひそひそ(あの階段を守ってるからだろう。)」
……階段を守るのが最優先だからそこを離れない、って事だろうか。
「ひそひそ(じゃあ、倒さないで、脇をすり抜けていけばいいんですか?)」
「ひそひそ(それじゃあ帰ってくる時また鉢合わせちゃうじゃない。)」
「ひそひそ(!おお!!分かったぞ!!囮作戦パート2だ。)」
「ひそひそ(パート2ですか?)」
「ひそひそ(二手に分かれてあいつの両脇をすり抜けて行けばどっちかは行けるだろう。妙案だ。)」
「ひそひそ(……攻撃された方はかなり危険だと思うのだが?)」
「ひそひそ(命と引き換えにでも、助けるって言ってなかったか?)」
「ひそひそ(……もちろんだ。)」
「(……いやあ、流石にそれだけじゃ危ないでしょうが……しょうがないなあ……)」
……
「よーし!!作戦は決まったぞ鎧野郎!!」
「……ひそひそ話は見えない場所でやった方が気分を害さずに済むぞ。」
「害すまでが作戦だっての!!行くぜッ!!」
「……ッ。」
下に進むだけならば、どちらかが進めれば御の字だ。シドとシノは右を、アグリアとカラマは左を狙って走り出す。
「あれだけ考えて……これかッ。」
魔物はまだ手のうちなど、全く見せてはいなかった。
「ふうぅぅぅぅ………」
大きく広範囲へと横の薙ぎ払いを行う体制へと移行する……繰り出されれば右も左も関係なく剣はシド達を捕えるだろう。
「(うわぁ……なんか出そうとしてるよ。みんな気付いてるよね?……まさか気付いてないわけ?お気楽すぎでしょうが……)」
シドも、シノも、カラマも主君の為に速度は落とさない。
「終わりだ……消えろ。」
「あーもう……ほいっ!!」
古典的だが……煙玉だッ!!
「!!?煙かッ!!」
「冒険家には必需品の奴~。」
漂う煙に視界を阻まれた中、アグリアの声が響く。
「……」
だが、それでも構わず技を解き放つ。……全員とはいかなくとも、ある程度巻き込めれば十分。それにどうせ上へと戻る時に再びここを通らなければならないのだから。
一気にッ!!放ッ……てないッ!!?なんだこの体を奪う物はッ!!何かに体を拘束されるッ……
「ぬああッ!!!!」
力を振り絞りそれの支配から逃れる。
だが、一瞬の時間差が生まれる。技のタイミングを大きくずらされッ!!脇をすり抜けるには十分なほどの時間を与えてしまうッ!!
煙に囲まれながらも剣を振り回すが、もう、標的の姿はない。
……視界が晴れた中見えたのは、自らを縛り付けた網に、鉄製の鎖だった。
「……何とも搦め手ばかりで来たものだ。小賢しい……だがまあ、その小賢しさが、人間がここまでになった原因か。自分達の得意な物を駆使してくるのは、良い事だ。……ふふ。」
力では自分を倒すことなど到底出来はしない。ならば力でない部分で立ち向かう。そんな当たり前の事だが、どこか気持ちのいい心境が残る。
・・・・・・・・・
「はっはっは!!見たかあの鎧野郎。デカい図体して大したことない奴だぜ。」
「いやいや、今のアタシが居なかったらヤバかったからね?ってかアイテム三つも使わせて!!貸し三つ分ぐらいだからね?」
「細かい事気にすんな。褒美がザックリ出るんだからそれでいくらでも買えっての。」
「ようやくカラリーサ様を……助けられる。」
運よく鎧のモンスターをすり抜けて階段をひた走り、とうとうB5、一時的に私も生活していたフロアへとたどり着いた。……相変わらずモンスターが多い……
「……私はカラリーサ様達を助けに行く。」
「はいはい~。じゃあここで待ってるから~。……ええいッ!!!」
「……もうひと踏ん張りですか……えいえい。」
……ただ、地下から魔物が湧いているにしては、数が若干少なくなっているような気がしないでもない。……どういう事なのだろう……
・・・・・・・・・
いつ終わるともしれないシェルターでの生活に、とうとう終わりを告げるものが、現れる。
「ッ……カラマッ!!」
「……長らく、お待たせしました。さあ、行きましょう。」
「結構、遅かった、待ちくたびれた。」
「……すまん。色々あった。……みんな、無事ですか?」
「……貴方のおかげで、今、こうして生きていられています。私達は、無事です。」
「……何よりです。」
……だが、その顔が浮かない顔をしているのは隠せない。大切な主君の事だから、分かる。
「もう外大丈夫なの?」
「いや……厳密にはまだ大丈夫ではない。だが、脱出するには今しかない。」
「いえカラマ……私は、ここからは……」
そこに続く言葉は、なんとなく、分かる。
「……皆の事を思って、ですか……?」
「……」
……こくりと、頷く。
自分だけのうのうと生きていて、皆を見捨てて行く事に耐えるのは、辛い選択でしかない。そう思っているのだ。
「……やはり、カラリーサ様も、同じ事を思っていたのですね。離れていても、気持ちは同じでした。」
「カラマ……?」
「私の力の及ばなさが、皆を死なせてしまったのだと、とても後悔しました。そんな自分がこの先生きて行く事を、自分自身が許しません。だから、カラリーサ様。ここから、出ましょう。皆の、仇を撃ちましょう。そして……そして……」
……
「私と一緒に……彼女達の元へ、行きましょう。」
「……カラマ……」
「あなただからこそ、きっと自分自身を許すことなどきっとできないと思っていました。やっぱり、あなたはとても優しい。私は、ずっとあなたに寄り添い続けます。この世でも、あの世でも。」
「……ありがとう。カラマ。……皆の仇を、とりましょう。……ついて来て、くれますか。」
「言われるまでもありません。」
「……私達は……」
「二人は、生きて、未来を繋いでください。罪を背負うのは、私達二人だけで、十分です。」
「……」
「二人だけで、行っちゃう、そんなの、そんなの……そんなのッ……」
置いてきぼり……そんなの嫌だ。でも……この二人の重い決意を……止められない……嫌でも……それを受け入れるしか……出来ないんだ。私達は……私達も、一緒に……
「だーーー!!!遅いぞーー!!!いつまで何やってんだ!!!」
溜めていた涙もどこかに吹き飛んだ……デリカシーゼロか!!!
「大事な場面に何しに来てんのよこの最低男はー!!!!!」
「何しに、来た、死ね、封縛、封縛、封縛。」
「うおぉッ!!!馬鹿野郎!!俺だ俺だ!!!」
「あんただからでしょうが!!!必殺ッ……大旋風ッ!!」
「いてぇ!!!!」
「……何故、あなたがここに?……ここへは二度と訪れないという約束では……」
「お前らを助けに来たに決まってるだろうが!!いてて、体が動かん……」
「……カラマ、本当、ですか?」
「いえ、嘘八百です。」
「な!?」
「……と、そう言えたら、良かったのですが……一応、本当です……協力なくして、ここまでは来れませんでした……」
「……ノノノン、とりあえず封縛を解きましょう……」
「ええ……ちっ……命拾いしたな。」
・・・・・・・・・
「シノさん……また逢う事になるとは……」
「また来てしまいました。不可抗力と言うもので……」
「……そちらの方は?」
「アタシはアグリア、まあ冒険家よ。よろしくね~。」
「……では、魔物が大量発生した原因を調べるためこの遺跡へとやってきて、そこでカラマと協力してここまで来た、という事で間違いないですか?」
「そんな感じです。おおむね。」
「……そして奇妙なことに、B5階の魔物が居なくなった、と。」
「厳密には出てこなくなったって感じ。次々倒してったんだけど、ある時次が出てこなくなっちゃたんだよね。まあだからとりあえずここに来たってわけ。で、いきなりなんだけどなんで魔物がワラワラ出てきたわけ?」
「……私達にも分かりません。下の階から巨人が現れたと思ったら、魔物達の群れが……」
「あの巨人は、どこに居るの?」
「外で暴れまわってるらしいよ。」
「……あいつ、許さない、殺す。」
「何にしても、魔物の大量発生は止まった、と言っていいのでしょうか?」
「かも知れませんが、それでもB6は確認するべきだと思います。全員で。」
「原因が分かれば、次起こるのも防げるかもしれないしね。」
話はまとまった。B6へ行き、モンスターが発生した原因を突き止める。
それにしても、どうして急に出なくなったのだろう……まあ、私が考えても仕方ない事だ。気にしない。




