至極当然な和気藹々
「へへぇー……そうなんだなぁ。あ、その靴オシャレ!」
「最初に褒める部分が足元ってのはいかがなものなのかしら☆」
「おしゃれは足元からって言うじゃんか。ま、それじゃなくてもパルは確かにちっこくて可愛いけど。」
「あんたもあんたで会ったばかりの相手にそこまで馴れ馴れしくするもんじゃないわよ?私は社交性抜群だから良いものの、人見知りするような人だったら機嫌を悪くするわ。」
「そうかなぁ。大体みんなこの感じでオッケーだし、良いんじゃない?」
「それはあんた達がそう思ってるだけでしょうに。」
「じゃあパルは嫌がってるの?」
「私は別に何とも思ってないから極論どーでもいいのよ、この場を適当にやり過ごせれば☆」
見てると相も変わらず歯に衣着せぬ物言い。ある程度内面を知ってるならともかく初対面の相手がこんな言い方をされたらどうしたってカチンと……
「へへぇー……そうなんだぁ。あ、その靴オシャレ!」
「……なんで話題がループしてるのよ。」
「おしゃれは足元からって言うじゃんか。ま、それじゃなくてもパルは確かにちっこくて可愛いけど。」
「全く同じトーンで同じセリフ喋るんじゃないわ☆私はあんた達みたいに話の通じない相手はそんなに好きじゃないかしら☆」
「そうかなぁ。大体みんなこの感じでオッケーだし、良いんじゃない?」
「……ちょっとあんた達、いい加減やめなさいなそれを。」
「じゃあパルは嫌がってるの?」
「……」
適当にからかって相手を煙に巻いていたかと思えば自分が変な空間に迷い込んでいた感覚は一体いかがなものなのだろう。あいつは話が成立する相手となら自分のペースに持っていけるんだろうがそんなものお構いなしの常識が通用しない相手にはこのようになってしまうようだ。
「二人共実にパルと馴染んでいるな。パルも喜んでいる。」
「何急に出て来て勝手な事言ってんのあんたは。」
「ねえねえケイ聞いた?パル喜んでるって。(にやり)」
「え、ほんと!?嫌がってない?喜んでるの?」
「そっちはそっちで勝手な解釈しないの☆あんたらが来たぐらいで私がどうして喜んだり……」
「わーい、これでもう名実ともにお友達だー!」
「勝手に友達関係を押し付けられるのは不愉快かしら☆てか……あんたも大概マイペースだわね……こいつと一緒で……(ちら)」
「?パルは私がマイペースだと言うのか。パルがそう言うならきっとそうなんだろう。」
「マイペースは良い事だー!そしてマイペース同士は似た者同士!」
「そうなの?じゃあ私エリアルさんともお友達?」
「さん付けなどしなくて構わない。むしろ気さくに呼んでくれた方が嬉しい。ケイ。」
「わぁぁあ……うん!!えへへ、今日だけで一気に友達が2人も増えたよエル!」
「いやぁ、めでたいめでたいよね。」
「……そうやって私の与り知らない所で勝手に話を進めて……そういう所がマイペースだってのよ……」
「「お友達ばんざーい!」」
「うむうむ。」
……上手くやってるなぁ。あっという間に打ち解けやがってからに。
「(……んで?こっちは?)」
「あの、つかぬ事をお聞きしても?」
「?ええ。」
「見たところとても頭が良さそうにお見受けしました。」
「……そんな事はありませんよ。人様に自身の頭の良さを誇れる程などでは全く……」
「その謙遜の仕方が既に知的です。実は相談と言うのは……どうしたらもう少し頭が良くなれるかと言う話なんです。」
「……はぁ。」
「と言うのも私達4兄妹なのですが、一応ポジション的に私が参謀役をやっています。けれど……私は見た目ほど頭が良いわけでは無いのです。」
「……どちらかと言えば、確かに頭脳派なように見えますね。」
「きっとこのメガネのせいだと思うんです。そして私の顔も確かにインテリ系ではあります。けれどそれが悲劇でして……メガネはただ視力が悪いからつけているだけ……落ち着いているように見えるのは他の3人が感情豊かな為に私があまり目立たないだけと言う……」
「……何となくいろいろな悩みを抱えていらっしゃるのは分かりました。つまるところ、ご兄妹の皆さんの為にもっと頑張りたいと……?」
「……!私の言いたい事がそんなに的確に言葉に出来るなんて……やはりあなたは私と違って真の頭脳明晰です。」
「……先ほども言ったように私は決して頭が優れているわけではありません。ただ……多少色々な相手と関わる機会があり……その経験を元にあれこれ喋っているだけなんです。知識……とは少し違いますね、きっと。」
「……こんな私でも一応年上ではあるんです。もう少しシャキッとして立派な所を見せないとと思うんですが、どうしても所々上がってしまったりしてドジを踏んでしまうんです。せめてそれを表情に出さないので精いっぱい……肝心の結果はお粗末なものです。」
ふうん、見えてないだけで実は結構考えたりしているんだな。
「こんな事であったばかりの方に聞くのもおかしな事なのですが……私はどうしたらいいんでしょうか。」
「……気負い過ぎない事だと思います。」
「気負い過ぎない……?」
「きっと、責任感が強いあまり、どんな事をこなすのにもプレッシャーを感じてしまっていませんか?」
「……そうなんでしょうか。」
「誰でも出来るような簡単な事をやる時に失敗したらどうしようなんて不安に思いませんよね?けれどそれを不安に感じる人も居ます。みんな出来ているからこそ自分が出来なかったらどうしようと。」
「確かにそういうのは……あります。」
「二つを比べた時にどちらが間違いと断じる事は出来ませんが……私は何事も無く卒なくこなしてしまう方が良いのではないかと思います。精神的な負担の面を考えてもそうですし、何より些細な事を気にしない事で他の事に集中出来るからです。多くの懸念を抱いて行動するとどれも中途半端になりがちです。」
「……おっしゃる通りです。確かに私はあれこれ手を出そうとしてどれも上手くいかないような面があります。」
「性格的に難しいかもしれませんが……もう少し自身の肩の力を抜いて、物事を軽く考えてみても良いのかもしれません。失敗しても構わないような事に関してはそこまで思い悩まない事。そしてそうする事で生まれた余裕をもって絶対に失敗してはならない事に一生懸命に当たる……と、言葉にしてしまうのは簡単ですが……やろうと思って実行するのは難しいものですよね……私もそうです。」
「……いえ、そんな事ありません。おっしゃっている事の意味……よく分かりました。私がどうして失敗してしまうのか……それは注意力が散漫だったから。だからこそ、本当に大切な事に集中した方が良いという事ですよね。」
「……私の言った事が決して正しいというわけではありません。せいぜい参考程度にでも留めておいてください。何より大切な事は、大切な事は自分で決める……と言う事です。」
「自分で決める……」
「自分で悩んで……そして決めた事だからこそ、守ろうと思えるんです。人に言われた事をただ鵜呑みにして従うのには限界があります。多くの方の話を聞き……その上で自分の考えを持つ事が強い意志になるのだと私は思います。」
「……」
「……私の方こそ、会ったばかりの方に随分偉そうな事を言ってしまいましたね。」
「……もし良かったら、私にもっともっと色々な話をしてくれませんか。」
「……え?」
「あなたの話を聞いていると、これまで自分の中でモヤモヤしていたものが無くなっていくような感覚があるんです。ご迷惑でなければお話を通して私はもっとあなたから学びたいんです。私の知らない事、足らない事、もっと良く出来る事……たくさん。」
「……私で良ければ、全然構いませんよ。ただ、固い話ばかりでも少し根を詰めてしまいますし……少し、リラックスした話も交えながらと言うのはどうでしょうか。同じ同性同士ですし、美味しい食べ物やファッションの話などしながら……」
「は、はい!」
……凄い、こっちもまとまってる。エルムの言葉に深く感銘を受けたのか、アイの奴が尊敬混じりの眼差しを浮かべているのがよく分かる。何なら師弟関係のような何かすら生まれそうになっている。
「(思えばあの3人は最初に出くわした時にあんな騒動を起こした事で第一印象が悪い所からスタートした。にもかかわらず今では俺達や町の奴らの中に違和感なく馴染んでいる。元々人付き合いのセンスは高かったのだろう。)」
町をジャックした時のシノが悪い人達じゃ無さそうと評した言葉は、間違いでは無かったのだな。
「(……と、言いつつも、流石にあのバカは喧嘩でもふっかけておお揉めしているに違いない。)」
……の、割にはイマイチやり合ってるような騒がしい感じが無いのが気にかかるが、俺はそっちを見る。ちらりと。
「へぇ、それじゃあこの場所で7人でねぇ……大した話じゃねえか。そんでもってお前はリーダーなんだろ。」
「今は名前だけだけどな。みんなからもそう認めてもらえて……そして自分がそれを胸に掲げられるぐらいの男になりたいんだ。」
「その心構えがあるんなら……今でも十分、リーダーなんじゃねえのか?」
「……全然なんだよ。ついこの間も俺だけ大怪我してみんなに迷惑かけちまうしな。みんなを守るどころか……守られてばかりだ。」
「……人数は違うが、俺も少なからずリーダーみたいなもんをやってるではある。リーダーをやるからには……他の奴らは傷つけさせたくないって気持ちもな。」
「……同じだ。俺一人が傷付く事で済むならどれ程良いか……けど、現実は辛いから俺が傷付くと……みんなも傷付く事になる。」
「だから自分だけは絶対に倒れちゃいけねえ。仲間を守る為に。」
「……だな。」
「……へへ。」
……なんか、分かり合ってる感が出てる。
「……あんた、なんか熱いな。」
「んなこたねえよ。普通だ。俺からすりゃ6人もの仲間の命を背負って懸命に戦ってるお前の方がよっぽど熱く見えるぜ。」
「こんな俺でも、大切に想ってくれてるからさ。その想いに報いたいんだ。もちろん悪い意味じゃなくさ。ただ命を捨てるんじゃなく、認めてくれたこの命を精一杯活かして出来る事をやり尽くしたい。」
「出来るさ。会ったばっかの俺が保証してやる。」
「……変に説得力あるなぁ、それ。」
「どこに向かってんのか互いにわからねえが、それでも頑張っていこうじゃねえかって話だ。」
「……そうさな。俺もまだまだ道の途中だ。」
……目を疑う。
「ねえねえシド。あれが男の友情って奴なの?」
「……」
男同士で育む絆なんてむさ苦しいものと無縁な俺にはそもそも理解しがたいが……おそらく一般的に言われているそれなのだろう。
「だとしても……短期間過ぎるだろ……」
俺が知る限り絆なんてものは物の数分程度で生まれるようなものでは無いはず。あれか、お互い単純バカ過ぎるからか……?考えるでは無く直感で判断しているからそんな事になるのか。
「(なんにしたって……結局俺以外上手く打ち解けてんじゃねえかよ……)」
俺など一応ここに来たのは4回目にもなるというのに未だこの居心地の悪さを味わい続けている。
上手い事話し相手がバラけてしまった以上、そこに入っていくのも変な話……ならば俺は俺とて残っている話し相手と……
「あら?そろそろ私とお話する?」
「……」
考えを読まれたかのような絶妙なタイミングで、呼びかけられてしまう。
「……編み物は良いのかよ。」
「別に編みながらでもお話出来るもの。」
「……」
別にタンザナイトと話して時間を過ごしても良かったんだが……俺は敢えてフェリアの座っている席の向かい側に座る。
「……」
「そんな顔しないで、もっとリラックスした方が良いわ。余り者同士お話でもしながらね。」
「……好きで余った奴と、そうでない奴は同じじゃねえだろ。」
フェリアは別にどこに混じったとしても何も問題など無かったのだ。だが彼女はワザと輪の中に入る事を避けてか、最終的に編み物に興じていた。
……その意図は、あるいは俺がこうなる事を予期していたのではないかとすら思ってしまう。
……俺がこの空間で、孤立する事を分かっていたから……
「……」
目の前に居るこの女は、俺にとってどこか違うベクトル上に存在する。
美人とかそういう枠組みでは無い……もっと何か別の……人と動物ぐらいハッキリと分かれた何か違う人種……そんな風にすら、思っている。
誰からも好かれるであろう女と……誰からも好かれない男。
「(……話の波長が、合うはずも無い。)」




