表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/114

銃撃戦


 その日の夜には、骸骨達はプレーシャに潜入に成功した。

 と、言っても、人に化けて町に普通に入っただけだが。

 ロンバルディア兵が偵察しているだろうからと、用意していた言い訳も必要がなかった。

 もしかして全滅しているのかと心配になる程に、静かに呆気なく町に入れた。

 

 夜の町を歩いて進む。

 骸骨はそのままルイ王になり。

 サルギン達は少年の姿で着いて行く。

 その後ろは、体格の良いデブが一名、のそのそと……ロリスだ。


 町は静かだった。

 夜だからだけでは無い、エルフに囲まれて閉じ込められた状態が続いたのだ。

 町の皆も疲弊しているのだろう。

 出会う人も、スレ違う者も居ない。

 そんな中を、広場を目指して進む。


 そして、いざその広場。

 無数のテントが建ち並んでいた。

 ロンバルディア兵だ。

 そのテントの中にはしっかりと生きた人の気配も有る。

 

 ウムと、頷いたルイ王。

 その中の一番奥のテントを目指した。


 

 

 夜のベルガモ防衛戦線。

 塹壕の縁にもたれて、外を覗く俺。

 酷く冷える夜だった。

 初夏も近い筈なのに、雪もちらつく。

 今晩の監視兵の当番に立候補したのだが、少しばかり後悔していた。

 寒過ぎる。

 だが、初日の夜にいきなりの夜間監視任務……兵の集まりが悪すぎて言い出した俺は仕方無いと諦めるしかない。

 実際、数名しか居ないのだ。

 俺の見える範囲も全く居ない。

 そして、敵の姿も全くに見えない。

 分厚い雲のせいも有るのだが……月も隠れて真っ暗闇だ。

 ここに戦線を引いてのすぐに敵も来ないだろうと、の思いも有り眠気に負けて欠伸まで出る。

 

 そんな俺に突然後ろから声を掛けてくる。

 「サボってる?」

 見れば、ジュリアとアルマだった。


 「真面目に監視……やってるよ」少し、間が空いたのは欠伸を誤魔化すために空気を顎で噛み砕いたのだ。


 「こんなに寒いのに、寝たら死んじゃうよ」と、ジュリアがコーヒーを渡してくれた。

 ジュリアの入れたコーヒーは温かくて美味しい。

 有り難うと、受け取る。


 「それ、アルマが入れたのよ」と、アルマにニコリと微笑んだ。


 「そうなの?」と、すすり。

 「うん、ジュリアの入れたコーヒーと同じくらいに美味しい」

 

 「それは、私のコーヒーは美味しいってこと? 基準がわからない」そう言いながら笑う。


 「そう、美味しい」両手で抱える様に持ち、暖を取る。

 実際に美味しいのだ。

 マリーがコーヒーを入れると、なんだか薬臭いし。

 コツメのはやたらと甘い。

 シグレのは、薄すぎてアメリカンを通り越して、他所の国迄行ってしまっている。

 と、そこまで考えて、唸ってしまう。

 あれ? 基準が悪すぎる?

 相対的に美味しいだけ?

 ……。

 これは、アインシュタインもビックリだの真実。

 思わず笑って誤魔化した。


 と、アルマが光だした。

 おいおい、夜間監視中に、スキル蛍火は駄目だろうと、注意しようとしたらば。

 そのアルマ、天を指差す。

 いつの間にかに雪もやみ、綺麗な満月が出ていたのだ。

 アルマの光はそれを反射してのモノだった。


 その月明かりを利用して、敵陣を覗く。

 やはり、何も無い、敵も居ない。


 もう一度向き直り、コーヒーをすすった。

 そして、タバコに火を付ける。

 

 そんな俺の代わりにアルマが敵陣を覗いてくれる。

 アルマも優しい。

 コツメとマリーは今頃、大イビキだろうに。


 と、塹壕の壁に張り付いていたアルマが滑り落ちる。

 背が足りないからと、よじ登って居たようだ。

 もう一度、よじ登る。

 しかし、雪に濡れた土はやはりに滑りやすいのか、すぐに落ちていた。


 二人して、そんなアルマを笑ってしまう。


 むくれたアルマ、よじ登り切ってしまった。

 塹壕の壁の上に立ち、敵陣の方を睨む。

 月に光る鎧のアルマ、仁王立ちなので目立ちまくる。

 

 思わず笑いながらに。

 「敵が居たら撃たれるぞ」


 その、言葉の瞬間。

 カンと、アルマの頭が吹き飛んだ。

 そして、すぐに火の玉が身体を飛ばす。

 バラバラに為り、塹壕の中に散らばるアルマを見て、ジュリアが背中のライフルを構えた。

 

 俺は、バラけた鎧を寄せ集め組み立てる。

 頭がない。

 頭、頭と探すアルマ。

 その頭、塹壕の外に弾き出されていた。

 それを取りに行くには危ないが、と、躊躇しているとアルマが取りに、外に飛び出した。

 カン!

 胴に当たる音。

 そして、すぐ横からパン!

 ジュリアが応戦していた。

 何度か撃たれながらも頭を取り返したアルマ。

 とても情けない声で。

 ――キズが着いた――

 と、へこみながらに塹壕の底に座り込んでしまった。


 「後で、直して上げる」

 ジュリアがそう言いながらも、応戦を続ける。

 

 ソコに、マリー達が駆け付けてきた。

 流石に音で、起きたようだ。

 塹壕の横から走ってくる。

 その先に、安全に入れる溝が掘ってあるのだ。


 そして、ジュリアの弾筋を確認して、グレネードを斜めに構えて撃つ。

 ポンと、音をさせて爆弾が弧を描き飛んで……爆発した。

 

 「もう少し奥で右」ジュリアの指示が飛ぶ。


 もう一度、撃つマリー。


 ドカンと、爆発音。

 

 「発光弾は無いのか?」俺の声に。


 頷きながらに撃つ。

 今度は、少し上で爆発して光を放つ。


 「見えた!」と、同時に撃つジュリア。


 ソコに、爆弾を筒に押し込んでいたマリー。

 「どこ?」


 それに答える様に、後ろからコツメが火の玉を撃つ。

 火炎の術……とは言わずに。


 その火の玉、目に見える速度で進み爆発した。


 「私も見えた!」マリーがグレネードを連射しだす。


 連射? どうやって?

 と、見ればその後ろでグレネードに手を突っ込んでいるシグレとムラクモがいた。

 

 「どお? 信長戦法よ!」ニヤリと笑いながら、打ち続ける。


 ちょっと違う気がするが……。

 確か、打ち手ごと交代するんじゃ無かったか?


 そんな事はどうでも良いか。

 俺は、ジュリアの横に並び。

 「予備のライフルは無いのか?」

 その側に敵の弾が着弾した、跳ねた土が頬に当たる。

 

 それに答えて。

 「ライフルは駄目、構えながら弾を込めないと、敵を見失うから」

 そう言いながら、素早くボルトアクションをして次弾を込めて撃つ。

 幾つも、敵の弾が飛んでくる。

 ジュリアのライフルの放つ発光に狙いを付けられているのか?


 「スコープでも有れば完璧にスナイパーだな」思わず、声が出た。


 「スコープって……何?」撃ちながらのジュリア。


 「遠くを覗ける、照準の為の望遠鏡?」望遠鏡って言葉が通じるのかはわからないが。


 「良くわからないけど……造る!」


 「望遠鏡は後で教えるわ」マリーが撃ちながら。

 マリーは、塹壕の底から撃っているので、近くに着弾は無いようだ。


 「しかし、銃の撃つ光は、夜は危険だな」

 また、近くに着弾した。


 「確かにそうね」

 「でも……発光は魔法の光だから、消せないのよね」マリーもそれに気付いて居るようだ。


 「でも、お陰で敵も見える」弾を込め、撃つジュリア。


 ソコに士官達が頭を下げて現れた。


 ジュリアの銃を見る。


 そして、弾ける敵の弾の着弾に驚く。


 「これは?」

 大佐も目を剥いていた。


 「魔法銃だ」

 「外の国では、当たり前の武器だ」


 大佐の近くに着弾する。


 「頭を下げろ、当たれば死ぬぞ」


 それを聞いて、全員が縮こまる。


 マリーがグレネードを撃った。

 弾ける爆弾を見て。


 「それは?」


 「爆弾を撃つ魔法銃よ」と、ニヤリと笑う。

 「他にも、もう少し連射の効く中距離の魔法銃も有るわよ……買う?」


 「売ってくれるのか?」

 少将も震える声で答えた。


 「幾ら位……必要?」撃ちながら。


 「有るだけくれ!」


 この実戦で、この武器の有効性が肌で感じられた様だ。

 もちろん、敵の脅威も。

 そして、撃たれたアルマのキズを見て、その威力も。

 ミスリル銀の鎧にキズを付ける事の出来る武器だと理解した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ