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魔法銃


 さて、その頃俺は。

 魔法学校の女子の方の校長先生と会っていた。

 と、言っても会いに行ったわけじゃない。

 この騒ぎを聞き付けて、駆け付けて来たのだ。

 とても、恐ろしい形相で……。


 「これは……一体何の騒ぎなのです?」

 明らかに、声音に怒りの感情が乗っている。


 その校長先生の後ろ、開けっ放しの扉から、先程のお風呂場に居た女の子達も覗いていた。


 そして、目の前には、怒られるとオロオロしながらに慌てるマリーが居た。

 その脇には、そんなマリーを見守っている、ピンクの私服と黒い私服の可愛い女の子が二人。この部屋の住人なのだろう、そんな雰囲気が感じられる。

 

 「この村は、すぐに戦場になる」何も言えないマリーに変わって俺が答えた。

 「大臣が、村の外に兵士達を連れてきた」

 敢えて、軍隊とか解放作戦とかの単語は出さない。

 大丈夫だとは思うがパニックは避けたい、この手の見た目の女性はヒステリックなりそうに思えたからだ。

 

 「国も……狙いは、大陸間弾道魔法……ですか……」眉間を寄せて呻く。


 俺の予想よりも冷静で賢い様だ。

 話せばわかり合える、なんて事を言い出さない。

 だいたい、もしそうなら根本的に戦争等は存在しなくなる。

 まあ、どだいエルフ達にはそれは端から通用しないのだが。

 意志疎通の方法が違い過ぎる。

 

 「まあ……それも有るだろう、否定はしない」実際にルイ王の目的なのだから。


 「そして、あなた達も兵士と言うわけですか……」


 「俺自身は、戦えないがな」しかし、回りの者を見れば、フルメタルアーマーに剣を携えたゴーレム、弓兵のジュリア、刀を持ったコツメ、槍のカエル達がそのまますべてを物語っている。

 

 「で、その戦えないと言う貴方は何故ここに?」


 「マリーが世話になった様なのでそのお礼と、恩返しだ」

 「誰も、死なせない為に来た」


 「ここを貴方達で守ると?」

 「戦えない貴方がソレを?」


 「先生……その人はお医者様です」

 先程の助けた女の子が、校長の背後その扉から覗き込む様にして。

 「溺れた私を治療してくれました」


 「回復魔法の使い手ですか……」

 そうは見えないとでも言いたげだ。


 「いや、魔法ではない……スキルだ」正確にはスキルに付帯するペナルティなのだが。

 それも違うか……アンテッドに対する攻撃スキルだな。それの副産物?


 少し考えて、俺達を見渡す校長。

 「貴方は、ネクロマンサー?」

 マリー達を指差し。

 「この子達はゾンビなのですか?」


 いきなり核心を言い当てた。

 「何故、そう思う?」


 「治癒がスキルで」

 「ゴーレムを従えて」

 「この中でも一番に強そうに見える、成人男性が戦えないと言い切りました」

 「それに、当てはまるモノを、ネクロマンサー以外には思い当たりません」

 

 成る程、相当に知識が有るのだろう。

 城に居た王とその回りの者とでは、格が違う様だ。

 ここが魔法学校だと言うのもその知識を深くしているのか。


 俺は、頷いて。

 「この子達はゾンビでは無い」正確にはマリー以外はだが、それは言わなくても良いだろう。


 ジッと、マリー達を見て。

 「そうですか」


 「なんなら……ゾンビにしてやろうか?」

 「永遠の命と若さが手にはいるぞ」


 扉の向こうがザワついた。


 「冗談でも辞めてください」俺を睨み。

 そして、背後の生徒達を睨む。

 「あなた達もゾンビに成りたい等とは考えないように」


 「悪かった」謝り、頭を下げる。

 「俺は、ネクロマンサーだが……人を殺すのは好きじゃ無い」

 「目の前で、死なれるのも嫌だ」


 「それは……ネクロマンサーとしては致命的ですね」少しだけ、微笑んだようにも見えたが、気のせいか?


 「でも、外のエルフ達はとても強いですよ」

 「離れた位置から正確に弓で狙撃してきます、近付くのも容易では無いでしょう」

 「見た所……遠距離攻撃は、そのお嬢さんだけの様」

 「ゾンビで有るならまだしも……生身では……」


 とても敵わない、か?

 確かに……そうか……。

 コツメの魔法も遠距離ではなく、どちらかと言えば中距離だし。

 以前に見たタウリエルの攻撃は確かに早く、正確だった。

 エルフ兵はそれと同等かそれ以上と考えるべきだろう。


 フム……。

 何か、手を考えないといけないか。

 

 そんな俺を見てか、校長が。

 「着いて来て下さい」

 そう言って部屋を出た。


 

 連れて来られたそこは、実験室の様な部屋? 雰囲気が理科室と共通する何かが有る、そんな場所。

 

 「ここでお待ちなさい」校長は一人、もう1つ奥の鍵の掛かっていた部屋に入る。


 そして、出てきたその手には銃が握られていた。

 俺達の世界では、先込め式のマスケット銃の様に見える。

 拳銃よりも若干に長い等身、2倍か3倍か? で先がラッパの様に拡がっている。

 ライフル銃以前の代物だ。

 しかし、撃鉄が見当たらない。

 見た目は明らかに銃の様だが。


 「これは、魔法銃です」

 ソレを俺に手渡した。

 

 片手では構える事も出来ない程の重さが有る。

 

 「弾は?」


 その問いに首を捻り。

 「魔法銃は魔法を発射します」

 「適性、詰まりは一定以上の魔力保持者ですが、が撃つ事が可能です」


 俺は、左手で支えながらに構えてみた。

 右手のグリップの辺りに小さく魔法陣が光出す。

 俺は、撃てる様だ。


 それを、ジュリアに渡す。

 ジュリアも撃てる様だ。


 今度はコツメがそれを奪った、が。

 コツメが構えても、魔法陣は光らない。

 魔法が使えるコツメでも魔力が足りないのか。

 これは、使用者が限られる様だ。


 「魔法銃はまだ、歴史が薄いので改良の余地が有ると思いますが、それを発明したフェイク・エルフ達は皆が撃てる適性を持ちますので何時に成るかはわかりませんが」


 「それは、この形を見ればわかる」今、構えた印象は火縄銃の様だ、ユックリ魔力を蓄えて、初めて撃てる単発式の銃。

 その火縄銃を撃った事も無いのだが。


 「でも、こんなの初めて見た」

 今度はマリーが構えてみる、撃てる様だ。


 「魔法銃が発明された時はもう既にこの国は他国との接触を避ける様になっていましたから」


 「鎖国でか、戦国時代に鉄砲伝来に驚かされた日本の様なものだな」


 「この国以外の国はこれの存在は知っている様です」


 「それは、そうだろう」

 「国交の無い国に、わざわざ教えてやる義理も無いだろう」

 「明らかに兵器なのだから」


 「でも、エルフ達は持って居なかったですよ」ジュリアが、視線は魔法銃に釘付けのままで。


 「エルフは特性上、弓の方が合って居るからです」


 何で? と、首を捻るジュリア。


 俺は、わかった。

 「銃は直線で攻撃するものだが、弓は曲線だ」

 「詰まりは、銃は撃つ者が敵に体を晒して狙い撃つ」

 「しかし、弓は狙いさえ付ければ、斜め上に撃っても良いだろう? 自身は体を晒す事も無くにだ」

 「そして、エルフは繋がっている、誰か一人が敵を見れば全員が見て無くても狙い撃てる」

 「だから、エルフの主武器は弓なのだ」


 「わかった」マリーも頷いた。

 「繋がる事の出来ないフェイク・エルフは、その弓に対抗する為にも、より強力な武器を発明したのね」

 「魔力は飛び抜けて高いと言う部分は、フェイクでも同じだから、これに成った」

 手元の魔法銃を見るマリー。

 「でも、私達にも、使い難くそうね」と、コツメを見た。


 随分と悔しそうにしているコツメ。

 マリーとジュリアが使えて、私だけ? そんな顔だ。


 「なら、改良すれば良いのでは?」

 「ジュリアなら、同じモノが造れるだろう?」


 頷いたジュリア。

 「でも……改良って……」

 そして、考え込む。


 「先ず、魔力の込め方を変えよう」

 「使用者の魔力依存ではなくて、銃に魔力を持たせれば?」

 「カードとか魔法の証文とかは、その物が魔力を持っていたろう?」


 「でも、それだと……魔法を撃つ程の魔力を……銃に」

 マリーから銃を受け取り、細部を確かめる様に。


 「銃にが駄目なら、弾の方にか?」


 「あ! それなら出来るかも」マリーが、何かを思い付いた様だ。

 マリーも元の世界の人間なのだから、弾を込めると言う方が理解しやすいのだろう。


 ジュリアと頭を合わせてブツブツと相談し始めた。


 それを脇で眺めているコツメ。

 最近は、チョッとでも難しい話だと思ったら参加しなくなる。

 そのせいか、ここのところ影が薄い。


 そんなコツメを呼んで、頭を撫でてやった。


 「ナニよー……馬鹿にしてる?」

 「それともイヤらしい事考えた?」

 俺の顔を睨んでコツメが言った。


 頭はそのまま、俺の手も退けずに。


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