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待ち伏せ


 俺は、ゼクスが掘ったと言う狭いトンネルの中を進んだ。

 

 先頭はそのゼクス。

 次がマリーでシルバとアルマが続く。

 その尻を見ながらセオドア……。

 アルマがチラチラ後ろを気にしているが。

 鎧の尻など見ても楽しく無いだろうに。

 しかし、セオドアの顔はニヤケている様にも見えてきた。

 そう見えたのは仕方ない、コレがセオドアの趣味だと断定しておこう。


 次は、カエル達が続く。

 そして、コツメと来てジュリア。

 最後は俺。


 ピーちゃんとロイス、そして土竜は大き過ぎて通れそうも無いので置いてきた。

 突撃組だ。


 大臣に関しては、はなから戦力外なのでそのまま留守番。

 今、無理をさせても意味は無いので、帰ってからの仕事に期待しよう。


 そんな事を考えながらに薄暗い中を這うように進んでいると、ついついジュリアの尻に頭をぶつけてしまう。

 その度に、振り返り俺を睨むのだが……ワザとじゃない。

 確かに……ちょっとボリュームの有るジュリアの尻は柔らかくて気持ち良いのだが……。

 断じてワザとでは無いので、そこは信じて欲しい。

 俺の目線は……辿らない様にもお願いしたい。


 そう頷いた時にまたジュリアの尻に頭をぶつけた。

 振り向いたジュリア。

 それに、俺は小刻みに首を振る。

 じーっと睨むジュリア。

 俺は、吹けない口笛を吹こうとやってみた。


 「着いた見たいです」睨みながら。


 「そ、そうか」

 そう返事を返した、その時ジュリアの方から尻を俺の顔に押し付けてきた。

 柔らかい……。

 等と考える暇も無く、大量のお湯が俺達を押し流す。

 ジャバー……。

 そして、マリーの叫び声がこだまする。


 「ちょっと、足、足」


 何事かと遠目でソレを見れば、確かに裸の女の子の下半身が、開けた穴に詰まってバタバタさせている。


 「お風呂の底を抜いた時に、流されて詰まっちゃったじゃない、どうすんのよ!」

 マリーがゼクスを怒鳴り付けていた。

 

 だが、今はそんな事は後回しだと思われる。

 バタついていた足が、静かに、だらーんと力無くぶら下がっている。


 「その子……溺れて無いか?」


 その一言にマリーとゼクスが大慌てで、その足を押し戻す。

 が……しかし、ビクッとも動かない。

 

 「押して駄目なら……引いて見るのは?」

 そう言ってすぐに、またお湯がきた。

 ザバー……。


 また、押し流された俺達。

 しかし今度はお湯はそのままで、トンネルの中は完全に水没してしまっている。

 トンネルに入り込んだ水の量が多すぎた様だ。元々、狭いトンネルなので容量はたかが知れている。


 これは……まずいんじゃ無いか?


 急いで、出ようとジュリアの尻を押して、水中を進む。

 息が苦しくなってきた。

 ジュリアの体から力も感じ無く為っている。

 酸素! 空気! と肺が悲鳴を上げる。

 あ! ……これは駄目だ、と……俺もブラックアウトした。

 

 

 次に意識が戻った時には、湯気の籠るタイル張りの天井が見えた。


 俺の脇にマリーが座り込み、ペッペッと唾を吐いているのが見える。


 ああ……マリーが人工呼吸をしてくれたのか……と、ボーッとマリーを見る。

 マリーと目が有った。

 その瞬間、おもいっきり頬っぺたをひっぱたかれた。


 「ちょっと! 早く起きなさい!」えらい剣幕だ。


 何事かと、起き上がり辺りを確認すると、すぐ近くで裸の女の子達が固まって何かを覗き込んでいる。


 そこへ、マリーが俺を引っ張っていき、女の子達を掻き分けその中心へ。


 見れば、ソコには、裸の女の子がグッタリと倒れている。

 初対面だが、その下半身には見覚えが有る。

 さっき、詰まっちゃった子だ。


 「この人、医者の様なモノなの……ソコを開けて!」と、俺を見たマリー。


 それに頷いて返して、その子を診察した。

 診察と言ってもなで回しただけだが、しかし、それで肋骨が折れているのはわかった。

 そこを力を込めて叩く。

 すぐに骨は繋がった様だ。

 だが、意識は戻らない。

 肺を横から叩いて見る。

 口から水を吹き出した。

 ツイでに頭も何回か叩いておく。

 脳酸欠でも起こしているかもと用心の為だったが。

 ソレが効いたようだ、女の子は息を吹き替えした。

 

 余程に恐かったのだろう、大声で泣き始める女の子。

 それにつられてか、側に居た子も泣き始めた。


 そして、皆で俺にお礼を言いながらにお辞儀をするのだが。


 「それは……いいから、服を着ようね」と、忠告の積もりが……。

 何故か、叫びと共に目の前の女の子に木桶でおもいっきり殴られてしまった。

 そしてまた、やっぱり……ブラックアウト。

 


 今度、目覚めたその場所は、やたらに低い天井だ。

 手を伸ばせば触れそうだと、ぼんやりと腕を動かした。

 ああ、二段ベッドか……と、ボケた頭が動き始める。


 「起きたようね」マリーが覗き込んで来た。


 「ここは?」


 「私のベッドよ」

 「何日かしか居なかったけど」


 「作戦はどうなった?」


 「突撃はまだよ、明日の明朝に作戦開始よ」


 さっきのトラブルで、少し延びたのか……。

 ちょっと……鼻の下が伸びるハプニングだったが。

 作戦事態に支障は無いだろう。

 

 等と勝手に解釈していたのだが、それはどうも違った様だ。

 後から聞いた話なのだが、エルフ兵が村を囲む様に塹壕を掘り待ち受けて居たのだった。

 ご丁寧に、草でカモフラージュして見え難くしていたのだ。


 

 俺達がトンネルに向かったのを見て。

 「行った様だな」頭目がルイ王に、即する様に声を掛けた。

 いつ突撃するのかと、問い掛ける様に。


 「うむ……」素っ気なく返して、村を見詰めるルイ王。


 「やはり、少し待って……中からの攻撃とタイミングを合わせるのだろう?」

 自分も配下の盗賊達も何時でも飛び出せる、そう言わんとしての問い。

 

 「……やはり、おかしいのう」首を捻るルイ王。

 側に居る、連絡様に置いているカラスに向かって。

 「もう一度、偵察をしてきてくれんか?」

 「今度は、行きは高く、返りは低く飛んで見てくれ」

 

 「偵察はさっきもしたろう」頭目がいぶかしむ。


 「うむ……しかしのう」目線は村の手前すぐをジッと見ていた。


 数匹のカラスが指示通りに飛んで帰ってくる。

 が、その一匹が弓矢で撃ち落とされた。

 その矢は、何も無い様に見えた丘の斜面、真下から放たれていた。


 「な! 何処から!」頭目が呻く。


 「奴等、斜面を利用して、細い溝の様な塹壕を掘って待ち構えているようじゃの」目線は切らずに。


 その捕捉を、側のカラスが告げる。

 「草の背丈と合わせてカモフラージュされて居る様です、上空からも確認出来ません」姿は、ミニ・ルイ王で。

 

 「良くソレを見抜いた……」と、ルイ王を見ながらに呟いた頭目。


 「なに、奴等の主武器は弓矢じやからな、待ち受けて……引き付けて撃つ」

 ニヤリと笑い。

 「わしなら……そうする」


 「流石は闘将……」


 「それに、そこまでの草原を見よ、所々に草の背丈が変わっておるじゃろう? アレは、草を結んで足に絡ませ走れ無くする為じゃ」

 

 頭目も草原を凝視して。

 「確かに……良く見れば、その様な……」


 「弓兵の効果を上げる為の仕掛けじゃ」

 「それも見えたのでな」と、頬だけで笑った。


 「では……どうすれば良い?」


 「今からでは、すぐに暗くなるじゃろう?」空を指差し。


 「夜襲か?」


 「いや、朝を待つ」


 「何故?」

 「弓兵なら、暗闇は狙いが定まらなく為って、威力が半減するのでは?」


 「それも、手立てが有るのじゃろう」

 「でなければ、待ち伏せに成らん」

 「大方……照明魔法か……草原の中に火を放てる仕掛けでもしておるのじゃろうのう」


 「ソレを言い切れる根拠は?」


 声を出して笑ったルイ王。

 「わしならそうする」


 そして、頭目に。

 「土竜を呼べ」

 ニヤリと笑い。

 「わしらも塹壕を掘るぞ」

 「塹壕戦と言うモノを貴様にも、エルフ共にも見せてやろうぞ」


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