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チビッ子ゴーレム現る


 ダンジョンでの初戦は何とか成った。

 大勝利とも、言って良いと思う。  

 のだが……しかし。

 コツメには小っ酷く叱っておく。

 単独行動はリスクが在りすぎる。


 取り敢えずの危険は取り除けたので、蜂の索敵。

 その、報告では。

 モンスターはもう居ない。

 そして洞窟の先も無い、行き止まりラシイ。

 ダンジョン間違い?

 突撃! 隣のダンジョン? とか?


 その事を骸骨に告げるのだが。

 そんな事は無い、と否定された。


 後は、隠し扉か? トラップか?


 取り敢えず、周囲を注意深く確認しつつ、奥のドン付きまで行ってみる。

 

 ヤハリ、何も無い。


 今度は、反対側のドン付きを調べて見よう。

 何も無ければもう終わりにしよう。

 その先の俺も……何も無くなるが……。


 戻りつつ、考える。

 あの村で暮らすか?

 人の良さげな村長さんだったし、平和そうだ。

 城下町は? 見たことも無いので、一度見て見るか?

 イヤ! あの王も城の人間も俺をモノの様に扱い、棄てた奴等だ。

 近くには居たくない。

 少し旅でもして、永住出来そう所を探すか、な?


 な?


 「! なぜ?」

 目の前に突然に魔物が現れた!

 

 二本脚で立つ太ったデカいコウモリ1匹と、もっとデカいムカデ3匹だ!


 もう、この通路には居ない筈なのに、だ。

 が、疑問は後回しにしなければ成らない。


 その魔物達がイキナリ遅い来る。

 

 コツメが肩口の肉を、ムカデにカジリ取られた。

 

 ソレを見たカエル♂が、ムカデに取り付き

 ――早く! 旦那の所へ――


 ――コツメ! 大丈夫だよ、旦那様は、不思議なチカラをお持ちだからね――


 そして、蜂達。

 ――緊急出動! 我が隊は大コウモリを牽制しろ――

 ――コツメ兵の救出の援護だ――

 ブブブブッ!

 

 コツメを引き摺って来たカエル♀、そのままの槍を構えて俺達を守る。


 ソレを確認した骸骨が走り出る。

 骸骨は……強かった!

 どの魔物も一撃で両断、真っ二つだ。

 一瞬の出来事で終わった。


 総ての魔物を倒した骸骨がコツメの前にかが見込む。

 他の者も同じに。心配そうに覗き込み。

 そして、俺の顔を見る。

 

 頷いて。

 痛い!痛い!と、泣き叫ぶコツメの、肉の抉れた肩を、力一杯殴り付けた。

 血が吹き出すのは止まった様だが、肉はまだエグれたままだ。

 コツメの懐に手を突っ込み、ナイフを取り出し。

 傷口に突き立てた。

 少し肉が盛るのが見て取れた。

 泣き叫ぶコツメ。

 何度も切り付け、突き刺す。

 その度に、叫びを上げて暴れる。 

 そんな、コツメをカエル2匹で抑え付けさせて、また切り付ける。

 気絶するコツメ。

 しかし、切られた痛みで眼を覚ます。

 何度も……何度も……。



 俺は魔物のスキルを取り出していた。

 コツメは気絶したまま。しかし、肩はもう大丈夫だ、傷一つ無い元の状態。


 骸骨はそのコツメの顔を静かに見詰めている。

 

 蜂達は、独自の判断で飛び続けて警戒を怠らない。


 カエル達は俺の側に張り付いている、ボディーガードのつもりなのだろう。


 ムカデのスキルは(麻痺毒)

 蜂の隊長を呼び、スキルの持ち主を決めさせた。

 隊長は、自身を外し、副隊長3匹を選んできた。


 コウモリは(吸血)コレは、血を吸うのでは無く生命力を吸う様だ、つまりは攻撃しつつの回復か。

 コレは隊長に渡した。


 「今の魔物は……何処に居たんだろうか?」独り言のつもりだったのだが。


 「ワカランのう、イキナリ現れた様にも見えたが」骸骨が返した。


 そんな骸骨に「この先の、進むべきか?」と、尋ねる。


 「その先に居る者が、答えを知っているかも知れん」


 「ソレは、行くべき……という事か」


 「会うべきじゃな」大きく頷き「後は、ワシが先陣を勤めよう」

 

 と、その時。

 ゴゴゴゴオウと大きな石を引き摺る様な音が辺りに響き渡る。


 直ぐに蜂からの連絡。

 左右に別れた2分岐の所、T字路の真ん中が突然に開き十字路に変化した、と。

 そして、その新しく出来た通路から、白っぽい泥粘土の様なモノで出来た小さな子供サイズのゴーレムが出てきた。

 ボヤーっと光を放って、周囲を少し明るく照らしている。


 すわっ! 魔物かと身構えた。


 のだが。

 そのゴーレム、ペコペコ挨拶しながら此方に近付いてきた。

 「あのー、失礼ですが」寝ているコツメを指し「魂の勇者様ですか?」

 

 ? 自分を指差し。

 「多分……俺だと思うが?」


 「オット」俺の方に向き直り「失礼しました」お辞儀「てっきり、下僕だと勘違いしてしまいました」


 「うん! 失礼だ」そう見えたなら仕方無いが……口に出さなくても良くないか?


 「さて、魂の勇者様。我が主様がお呼びです」今、出て来た方を指し「コッチ」

 ヒョコヒョコと歩きだす。


 俺が、寝ているコツメを背負おうと振り向いたら、骸骨が既に背負っていた。

 

 「行くかの」構わん、ワシに任せろ。と、多分そんな表情をしている積もりなのだろうが……肉が無いので、ワカラン。

 そのまま、チビッ子ゴーレムに着いて進む。


 俺達も、慌ててその後を着いていく。



 新しく出来た道に入って直ぐに2体の槍を持ったスケルトンが、立っていた。

 一瞬、緊張が走った。

 が、「おぅ、久方ぶりじゃのう、元気でおった様で何よりじゃ」骸骨の知り合いらしい。

 そのスケルトンが、そのまま隊列に加わった。

 一応は、警護の積もりらしい。

 が、久し振りに会った骸骨3人、挨拶から、あの頃の話、世間話と、花が咲いている。

 チビッ子ゴーレムの発する光を下から浴びて、この世の世界とは、思えぬ光景を造り出している。が、聴こえてくる会話は、病院の待合室で聴かれる様な話で、オドロオドロしいのは全くの見た目だけだった。

 あの頃の話には、少し興味をソソられたが、今一、良くワカラン。昔一緒に闘った上司と部下……そんな関係らしい。

 その間、どんどん下へ下へと地下深くに降りていく。


 ぼやっと光るチビッ子ゴーレムのお陰で足元も不安が無い。ランタンの灯り以上だ。

 ふと、時計を見る……闇に光る文字盤……チビッ子ゴーレムの光かたと、強さは違うが同じに見える。

蓄光? の強力版?


 通路っぽい洞窟を抜け、縦に長い開けた場所に入った。

 上の方、見えない暗闇から大量に水が落ちてくる、その水はまた見えない崖下に落ちて消えていく。

 辺りは水しぶきと霧で視界が悪い。夜眼のスキルもコレは駄目な様だ。

 辛うじて滝の側に石の橋が見える。欄干も無く濡れそぼった石の橋。滑って落ちれば確実に死ねる。

 

 その橋を平然と進むゴーレム。


 「きゃっ」骸骨の背中で、コツメが目を覚ました。

 顔に掛かった水を拭いながら、夢うつつのままで骸骨の後頭部を凝視している。

 そして、「ギャー」

 しかし、今回は気絶はしない。このギャーは、骸骨を見てのギャーと、橋の下を見てのギャーとが混ざった様だ、ココで暴れたり気を失うと死ぬ、ソレを理解してのギャー。


 橋を渡り切ったのを何度も確認してから、飛び退いた。

 ゼーハーと息を切らしながら刀を抜くコツメに。


 「お前を助けたのは骸骨だぞ」と、たしなめた。


 渋々と言う感じに刀を納める。


 ソレを横目に少し進んだ所に大きな扉があった。


 「もうすぐ着きますよ、騒がないで下さい」チビッ子ゴーレム。


 扉を開けた。その中から灯りが漏れ出る。


 中へと進む。

 コツメがブスッとして最後に続いた。

 

 イキナリ景色が変わった。

 俺には、とても見慣れた景色、白っぽい壁紙、リノリウムっぽい廊下、天井には蛍光灯、まるで何処かの病院の廊下。

 イヤ、病院その物だ、古くなり掠れてはいるがソレっぽい文字も見える。

 何百年も立つ古い建物を綺麗に大事に使ってる、そんな感じだ。

 元の世界に戻ったのかと一瞬錯覚し、イヤそうでは無い、と確認し……。


 その廊下を、白衣を着たチビッ子ゴーレムとはまた違うチビッ子ゴーレムと、ナース服を着た骸骨とが、此方を気にする事無く、忙しなく行き来している。

 

 そんな、動揺と驚愕の中で立ち尽くす俺の背中を、コツメがつついた。

 振り向くと、随分と先に進んでいるチビッ子ゴーレムを指差している。


 慌てて後を追う様に、着いていく。


 幾つか有る扉の1つ、奥まった所に有るソレを開き。

 「着きました。この部屋です」と、先に入るチビッ子ゴーレム。


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