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敵のアジト


 ローディの町も、早朝だけだからでは無いだろう、ここも人が居ない。

 町の造りも雰囲気もパヴィアと同じに感じる。

 観光でも見るべきモノも無い、そんなところ。

 だが、はなから観光が目的ではない。

 俺達は、骸骨が捕らえられているその建物に真っ直ぐ向かった。


 町の裏手、二階建ての普通の民家。

 トラックは町の外に停めて、ここまで徒歩だ。

 流石にアレは目立ちすぎると置いてきた。

 

 目的の家と通りを挟んだ裏路地に潜み……様子を伺う。

 その屋根には、カラスが止まりこちらを見ていた。

 

 「この建物の、地下です」俺の肩に乗る、小さなロイドに化けたカラス。


 「奴等は何人居る?」


 「地下には三人」

 「一階と二階はそれぞれ十人程、ネズミ達の調べです」


 もう既にネズミ達は侵入済みか。

 カラス達は、町の上を飛び辺りを警戒。


 「ただ……回りの建物のうち幾つかは怪しそうです」

 「その確認は取れていませんが……」


 「伏兵が居る可能性が有るのか?」頭目が後ろから。


 「なにぶん……目印は黒ずくめ、だけですので」


 それはそうか、顔もわからない。

 ただ、骸骨が居るこの建物に潜むヤツは、黒だという事だ。


 さて、どうしたものか……。

 ロリスの幻影召喚は、使わない方が良いだろう。

 街中に、明らかな魔物がウジャウジャ現れたら、大騒動に成るだろうからだ。

 カラスにしてもネズミにしても同じで、そのままで闘うのはやはりまずい。

 ピーちゃんはジュリアが背中に乗っていれば、ギリギリセーフだろうが……建物の中ではそれは意味がない。

 サルギン達も含めてゴーレムに化けて貰うのが良さそうだ。


 「何時、突入する?」頭目が目線を建物の入り口に固定したまま。

 「人の居ないこの時間を逃せば……後は夜を待つしか無くなるぞ」


 流石にその通りなのだろう、いくら寂しい町だからといって、昼日中に突入劇では騒ぎになるのは必至。

 しかし、今すぐの突入は、アルマを先頭に狭い建物の中をゴリ押しで進む事になるだろう。

 人質は、骸骨なのだからそれを気にする必要も無いのだが……。

 斬られようが、刺されようが既に死んでいるのだし。

 それが修復出来る範囲なら問題無い。

 実際にそうなったら、そのまま死体の振りでもしていてくれれば良い。

 

 問題は、修復出来ない範囲の攻撃だ。

 人だと思い込んでいる骸骨にはそれを使う事は無いだろうが。

 突入する方に対する反撃は躊躇なくに使うかもしれん。

 詰まりは、魔法攻撃だ。

 火、氷、雷はコツメを見ていても、アルマやゴーレム達なら大丈夫だと言えそうだが。

 爆散系の魔法攻撃が有るのなら致命傷に成るかも知れない。

 エルフ王が言っていた大陸間弾道魔法の爆散系は大規模過ぎるが、それの元に為ったであろう魔法は存在するはずだ。

 そう考えると。

 相手側に魔法使いが居ると……厄介だ。

 低レベルか高レベルなのかでリスクが違い過ぎる。そして、それは本人に聞くか対峙するまでわからない。

 昨夜の照明魔法は、光を長時間に爆散させているモノとも考えられる。

 実際、コツメはそれが使えないので、魔法使いとしてのレベルはそれ以上か?


 「何を躊躇って居るのかはわからないけど」俺の顎の下から、コツメと団子に為って覗いて居たマリーが。

 「誰か来たみたいよ」と、建物の入り口を差す。


 男が一人、食料品が入っているであろう紙袋を抱えて、扉をノックしていた。

 程なく開かれる扉。

 その男は直ぐには中に入らず、通りの奥に居るであろう者に手招きをしている様だ。

 その呼ばれた者は、俺達も見知った顔だった。

 タウリエルだ。


 「あのバカ……」マリーが呻く。

 「大方、あの黒ずくめに囲まれる前に迷子になって、事件を知らずに近くの者に助けを求めたのね……」

 

 成る程、ゲロを吐きにそこいらをウロ付いて……迷子か、有り得そうだ。

 そして、近くに居た誰かは、黒ずくめの確率が高いだろう。

 タウリエルは、奴隷でも何でもないから、念話も出来ない。

 少し離れただけで、状況がわからなく為ったのだろう。


 「でも、あの時の明かりは凄かったよ、魔法の……」コツメが。


 「タウリエルよ……それを見ても」

 「ワア、綺麗……」

 「って感じで、呆けていたんじゃ無いの?」


 一々、ありそうだ……。

 

 「でも、マリーが言っていた様に直ぐに会えたね」声を殺して笑うコツメ。


 「私達の敵に、ペコペコ挨拶しているけどね」

 

 「迷子を助けて貰った相手は、無条件で信じちゃうもんね」


 「タウリエルは道がわからなく為った時は、必ず悪い方、ダメな方を選択してしまう様だな」

 

 「本当、良く今まで生きてこれたわね」と、俺の言葉を肯定する様に。


 「そう言う才能を持った人って……たまに居るよね」

 「でも、結局は……何とか、上手い事に成っちゃうんだけどね」


 その言葉に、俺とマリーが、じいっとコツメを見た。

 確かに、そんな感じの才能って……有るようだ。

 目の前のこいつは、その選択自体を考えて無さそうだが……。


 「しかし、参ったな」頭目が、その下らない話をぶったぎった。

 「人質が増えた様なモノだぞ」


 「タウリエルはただ感謝していただけだが」俺も頷く。

 「黒ずくめの連中は、あの場所に居たタウリエルを俺達とは無関係等とは思わ無いだろうしな」


 「これは、暫く……様子見か?」頭目も頷きながら。


 「あのう……」ジュリアが、最後尾から声を掛ける。

 「こんな所に、大勢で居る……私たちって」

 「目立ちませんか?」


 その場の自分達を見渡して。

 狭い路地に、団子に為って通りを覗く俺達。

 俺とその下にコツメとマリー。

 背後からは頭目、その後ろはカエル二匹にゴーレム達にサルギンにロリス。

 カラスとネズミは数えないにしても、本物の大臣に……最後尾にピーちゃんとジュリアが居る……。


 「怪しすぎですよね?」ジュリアが。


 「確かに……」

 「一旦、バラけよう」頭目が仕切り出す。


 「ジュリア、大臣を連れてトラックへ」

 「ムラクモとシグレとロリスで護衛してくれ」

 

 「そうだな」

 「町から少し離れれば、ロリス軍団もピーちゃんも本気で戦っても大丈夫だろう」

 ムラクモとシグレが居れば、安心も出来る。

 「しかし、実際に襲われたら、戦うよりも逃げる事を優先しろよ」

 

 それに頷いたムラクモ達。


 それを見て、頭目が。

 「サルギン達でここに残って見張りを続ける」


 「わかった、それ以外は俺とだな」

 「離れよう」

 そのまま、路地の奥に行った。

 反対側から抜けて町を歩く。

 その時、チラリと振り返ったらば、頭目達は見えなくなっていた。

 サルギン王の幻想空間だろう、見事に消えていた。

 

 


 暫く辺りを、それとなく歩く。

 目的の建物から離れすぎないように気を付けながら。

 あくまでも、観光客でもを装いながらに。


 しかし、若干1名は……完全に観光客だったが。


 「なんだか、美味しそうな匂いがしない?」

 「焼きたてのパンの匂い」ニコニコと鼻を鳴らしながらのコツメちゃん。


 「あんた、もう少しだけ、緊張感を持ってよ」マリーがそう注意するのだが。

 そのマリーの鼻も鳴っていた。


 「何処かな?」気にしないコツメ。


 「あっちじゃない?」と、指差すマリー。


 緊張感はどうした?

 

 と、二人して走っていった。

 その後ろをアルマが追いかける、ガッチャン、ガッチャン……。


 アルマはパンは喰えないだろうに……。


 まあ、観光客に成りきって居るのは確かだし……誰が見てもそう見えるだろう。

 怪しまれるよりは……ヨシとしておくべきか。


 と、目の前にパンが出された。

 今、買ってきたモノだろう、それをマリーから受け取って齧る。

 旨い!

 焼き立ては、やはり旨いものだと貪っていると……。

 勢い、喉に詰まらせむせかえる俺にコツメが飲み物の瓶を渡してくれた。


 それを見た、マリーが。

 「緊張感!」と、俺に指摘した。

 

 おい!

 

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