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ギリギリ


 小さいロイドに成っているカラス「やはり、居ました」

 「草影に隠れています、ネズミが発見しました」


 「ネズミ?」思わず聞き返した。


 「カラスが一匹づつ、ネズミを掴んで飛んで居たのです、どうしても、飛びながらでは見えないもので」


 流石だ。

 小さいロイド、カラスだが本物のロイドと遜色無い。

 カラス界では絶対に男前だ。


 「前回の襲撃の時の半分程の人数を確認したそうですが……仕掛けますか? 勝てるとは言えませんが……牽制と時間稼ぎ位なら」


 「イヤ、まだいい」その言い方だと、カラスもネズミも生き残れないと踏んでの事だろう。

 ギリギリ間に合うかも知れないのだ、無駄な犠牲は避けよう。

 「後どれくらいの時間が有ると思う?」


 「馬車は一時間程……日が落ちるのは三時間でしょうか……私達は、このペースで、四時間です」


 「その一時間、奴等は待つかどうかだな……」


 「前回は、寝込みを襲うつもりだったのだから……同じやり方なら、待つでしょう」マリーが横から。


 

 

 そして、一時間後。

 「馬車が止まったそうです」今は、小さいロイドは常に俺の肩に乗っている。

 「丸太の前です」


 「奴等は?」


 「まだ動いて居ません」

 

 「俺達は後三時間か……」



 

 日がおちてきた。

 昼間も薄暗いのだが、今はもう真っ暗だ。

 

 「まだ動きは有りません……しかし、準備は整った様です」


 合図待ちか。

 後一時間は動くなよ。



 しかし、後もう少しという所で、奴等は動いた。

 

 「馬車が囲まれました」

 「でも、妙ですね、馬車側に動きが有りません」

 

 「どういう事だ?」頭目に「馬車には一応は警護も乗っているのだろう?」


 「大臣と御付きをのけても四人だ、いざと為れば、その御付きも出るだろう筈だ」

 

 「両者とも、静かです」


 「嫌な予感がしますね」本物のロイドが呻く。


 「黒いローブの男が一人出てきました」

 「前回の男です」

 「馬車に無言で近付きます」


 「警告も無しにか?」


 「はい」

 「馬車から、誰かが出てくる様です」

 「しかし、奴等に張り詰めるモノは有りません」

 「皆、ただ見ているだけです」

 声のトーンが一段下がる、カラス。

 「先頭は大臣です」


 「警護の人選を間違えたな」頭目が吐き捨てた。


 ああ、俺にもわかった。

 裏切り者を乗せていたのだ。


 「次に降りて来た兵士が大臣に槍を突き付けています」


 「俺が先に行く」と、セオドアが飛び出した。

 ムラクモもその後を追う。

 

 木々を利用して一気に加速していく二人。


 「カラス達に伝えろ」

 「攻撃だ」


 「大臣が人質になっていますが……」躊躇するカラスに。


 「構わん、やれ」


 「わかりました」と答える。



 俺達は到着と同時に飛び出した。

 セオドアとムラクモは、うまく裏を突いた様で、既に何人かは倒している。

 カラスとネズミは奴等を完全に包囲していた。


 「大臣は気にするな!」

 「一気に叩け」俺は叫んだ。


 その声に、ローブの男が怯んだのが見てとれた。

 

 頭目とロイドは、一瞬俺の顔を見たのだが、直ぐに気勢を上げて盗賊ゾンビを率いて全線に躍り出た。


それをジュリアが弓で援護する。


 「アルマ! ゼクス! シルバ!」

 「馬車迄、積めろ」


 その声に反応した槍の男、いったん馬車に大臣を押し込み自分も逃げ込む。


 「ジュリア、馬を狙え!」

 「馬車を逃がすな!」


 直ぐ様反応して、射ぬく。

 その場に崩れ落ちた馬、二匹。


 後は殲滅するだけだ。

 前回の半分なのだから、それも早くに終わるだろう。

 が、

 俺の考えよりも早くに終わった。奴等はまた逃げ出したのだ。


 カラスに「ローブの男をネズミに追わせろ」と、指示を出す。

 「後の者は放っておけ」逃げた所で、どうせローブと落ち合う筈だ、追うのは一人だけで十分だ。



 そして、俺達はその場に残された馬車を囲む。

 

 俺は、一人で前に出た。

 そこまでは、ローブの男と同じだが。

 「おい! 出てこい」声を張り上げた。


 「……」反応が無い。


 「コツメ……馬車に火を放て」


 「え!」俺の顔を見て、皆の顔を見るコツメ。


 「構わない」頷き「やれ」


 「わかった」小さく答えて、馬車に向けて呪文を唱える、今回ばかりは火炎の術とは叫ばない。

 それでも、火の玉は馬車の後ろの端に当てていた。


 小さい火が馬車を舐め始める。


 「おい! 此方には大臣が居るのだぞ!」中からの叫び声。


 「それが、どおした」

 「出てこ無いなら……そのまま焼け死ね」


 「なんて奴等だ!」慌てて飛び出す槍の男。もちろん大臣も一緒で、槍を構えたままで。


 その槍の男に、俺は見覚えが有った。

 「久しぶりだな」

 「俺を、覚えているか?」


 「……」何を言っているのかわからない様子。


 「俺がこの世界に召喚されて、最初に会ったのがお前だ」

 「大臣は、王の右か? それとも左に居た方か?」

 そう聞いてはいるが、その答えは知っている。

 俺が覚えている、左に居た大臣だ。


 槍の男の顔色が変わった。俺が誰だかがわかった様だ。


 「おい! 早く大臣を殺せ」

 「躊躇するなよ」ニヤリと笑ってやった。

 「殺す為に槍を向けているのだろ?」

 

 顔面蒼白の男に。


 「お前も、直ぐに殺してやる」

 「それとも、俺にしたように生き埋めがいいか?」

 「生き残れるチャンスが有るかも知れないぞ」

 

 槍の先が振るえている。


 「仕方無い」ジュリアを見て「大臣を射ぬけ」

 そのジュリア、ロイドを見ている。


 「ロイド……構わないよな?」

 「この世界では、眼には眼をだろう?」


 少し考えて「あなたは、もしかして最初から?」


 「イヤ、チャンスが有ればいいな……くらいかな」

 「まあ、本命は王だがな」笑ってやった。


 「少しだけ待って」マリーだ「殺すのには反対しないは、ただ少しだけ聞きたい事が有るのよ」


 「だとさ」

 「少しだけ長生き出来そうだな」

 「死に場所はソコ、それは変わらないがな」


 「貴方は、誰に唆されたの?」

 「大臣を殺しても、貴方にメリットは無いでしょう」


 返事は無い。


 「そう」

 「もしお金なら、ちゃんと現金で貰ったのでしょうね」

 「カードだと、犯罪者は使えなく為るから」

 「数字の所が赤く成るのよ」

 「知ってた?」

 

 槍を構えたままで、懐からカードを出し、眼を剥いた。


 それは、ゾンビ達も同じだった、その場の全員がガードを凝視して居る。


 ――嘘よ―― マリーの念話だ。

 ――ただ、ココはまだ銀行の支店が無いから圏外なのよ――

 ――犯罪者じゃ無くても、皆、使えないの――


 その場の全員が、ホッと胸を撫で下ろしカードをしまう。

 頭目以外は。

 その頭目、額から汗が噴き出していた。

 まさか、宿代をカードで払う積もりだったのか?

 ……。

 可哀想に……。


 「ついでに言うと、国外でも使えないわよ」

 「大臣を盾に亡命を考えて居たのなら、それは出来ても」

 「あなた、無一文よ」

 「まあ、あなたにお金を渡したその人物もその事は知っていた筈」

 「うまいこと、騙されたのよ」笑った。

 「だって」指を指して大笑い「銀行が無いもの、使える分けないじゃない」



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