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幌車の中の少女


 盗賊達の死体を見下ろし。

 「殺しちまったな……」


 「気に病む事は無い」死体を蹴飛ばし「正当防衛じゃ」


 「この世界にも、そんな法が有るんだ」


 「眼には眼を……刃には刃を……じゃ」腰の剣を叩きながら「魔物の居る、こんな世界だからこそじゃ」

 幌車の回りを見渡し「そして、魔物に襲われて主の無くした持ち物は、次に見付けた者のモノじゃ」


 「魔物に襲われた者?」盗賊達を差し。


 「魔物に襲われた者じゃ」骸骨は……蜂を指差した。


 「サルベージ法まで在るのか」と、呟きつつ。

 幌車に近付く。


 陰に隠れる様にして、二匹のカエルを見付けた。

 そう言えば、居たな。


 「ゲコッ」槍の刺さったカエルを庇う様に鳴く。


 ドウしたモノかと思案していると、骸骨が。

 「貴様が、もう一度、その槍を刺して遣ればドウじゃ」


 「あ! そうか……成る程」


 ソレを聞いたカエルは、一段、鳴き声を上げ。

 庇う手に力を込めた。


 骸骨がそのカエルを無理やり引き剥がす。


 俺は、槍を掴み。

 刺し直して。

 抜く。


 「ゲコ! ゲコ! ゲコ!」骸骨に捕まえられたカエルが、騒ぐ。


 「ゲコ!」刺し直した方のカエル。

 自身の胸の辺りを擦り「ゲコ?」立ち上がる。


 「ゲコ?」


 2匹のカエルは抱き合って……喜んでいるのか?

 「ゲコ」

 「ゲコ」

 と、鳴いてうるさい……イヤ、会話しているのかな?

 それが、一段落着いたのか。

 2匹揃って、俺の前に立ち、深々とお辞儀をした。

 そして、地面に何やら描く。絵? 記号?


 「奴隷印……じゃな」覗き込む骸骨。


 「奴隷印とは?」

 

 「魔法の契約じゃ、奴隷となり貴様の保護下に入る、勿論ペナルティ付きじゃ、貴様に危害を加えようとすれば、酷い事に成る」

 「このモノ達は、貴様に奴隷にしてくれと、頼んでおるのじゃ」


 「奴隷って……それは」手を顎にやり、考える。


 「してやれば良かろう」

 「このモノ達、擬人は、奴隷でないと人間の街にも入れん」

 「喋る事も出来んのだから」

 「1度、人間の暮らしをしたモノに、元の野生の様な生き方は……もう無理じゃ」頷きそくす。


 「しかし」


 「このモノ達の主人を、貴様等が殺したのじゃから……責任も在るじゃろ」地べたに倒れた盗賊達を指差す、骸骨。


 「………………」少し考へ。

 「わかった」頷き「今から、お前達は俺の奴隷だ」

 「これで良いのか?」骸骨に。


 「奴隷の魔法印を打ってやれ」


 「魔法印?」


 「貴様なら、ソレが出来る筈じゃ」

 「蜂達を召喚した時の呪文の、後半部分じゃ」

 「街の奴隷商人にでも頼めば、ソレをしてはくれるが……金が掛かる」

 「貴様ならタダだし……第一、出来る者がココに居るのに意味がない」高笑い。


 出来るのか? と、カエル達に眼をやると。頭に(ししゃ召喚)と出て、続けて呪文が浮かんだ。

 「出来るんだ」


 


 ――有り難うごぜーますだ、ご旦那様―― 槍の方は雄だった。


 ――このご恩は、奴隷として正心誠意尽くさせて貰います―― コッチは雌だ。


 ツガイだったのか!

 しかも、喋った!

 いや、蜂達と同じか! 繋がったと言う事か。


 そして、蜂達にも挨拶をしている。

 俺を通してだから、とてもウルサイ事に成っている。気にしない様にしよう。ドウにか成るものでも無さそうだ。


 倒したモンスターの1匹の側に寄り(ウリボークン)スキルを浮かび上がらせる。

 何時もよりチョッと大きな、光る珠。


   [スキル(格闘)]


 「あ! スキルの名称? イヤ、内容か? が、わかる」


 「貴様のレベルが、上がったのじゃろ」


 「おおッ! 俺も成長していたのか!」


 「するじゃろ」

 「貴様の使役している、蜂達が闘ったのじゃから」

 「因みに、奴隷でも、眷属でも同じじゃぞ」カエルを見て。


 俺も、カエルを見る。

 「この格闘スキルはカエルにヤル」と、手招き。

 

 もう2匹のウリボークンからも出し、カエル2匹で分けた。

 

 「1つ余るなー」

 蜂を見るも、サイズ的に意味が無さそうだ。

 骸骨には、今更か……。

 俺は……ヤッパリ意味が無い気がする。投げ飛ばして回復? 絞め技で回復? ナンだソレは。


 保留とか、何とかは……無理か? と考えた時、頭に浮かぶ。


   [スキル固定化結晶]そして、呪文。

 取り込む時は、口に含む、らしい。ソレも頭に浮かんだ。使用法まで。

 

 今までとは明らかに違う! 頭に浮かんだモノまで変化している。

 これも成長か?


 手の中に、結晶が転がっている。

 「スキル結晶だ……これは、保留と持ち運びが出来て便利だ」飴玉の様で「若干……ベトベトするけど」


 と、カエル♀が幌車に走り、ポーチを持ってくる。


 ――私の私物の化粧道具です―― 頬を赤らめ、油取り紙を1枚。


 飴玉の様に成った、スキルをポケットに入れて。

 その他のモンスターからも、スキルをだし、結晶化。


   [パッシブスキル(斧)]が、1個。


   [パッシブスキル(槍)]が、2個。


   [アクティブスキル(威嚇)]が、1個。これは、イノキングから出た2個目のスキル。


 「複数のスキルが出る事も有るんだ」


 「ソレは、貴様のレベルも上がっておるし、イノキングのレベルのせいでも在るじゃろな」

 「で、二つ目は何が出たのじゃ?」


 「威嚇」紙に包んだソレを指す。


 「威嚇か! ソレは成長させると、ワシの持っておる威風堂々に成るぞ」


 「ほう!」早速に口に放り込む「二ッガー!」

 苦すぎる結晶を口から吐か無い様に気を付けつつ。

 カエル♀に槍を、♂には斧と槍の2つを渡した。お前達も苦しめ。

 しかし、帰って来た言葉は「甘い」だったり「旨い」だったりした。

 ソレゾレ、味が違うのか? 擬人だから味覚に差が有るのか?

 クソー!


 今度は、盗賊供のスキルだ!

 

   [パッシブスキル(日本刀)]脇差しのボスだ。

   [アクティブスキル(イカサマ)]これも。

   [アクティブスキル(夜眼)]これは、役に立ちそうだ、その場で貰っておく事にする。

   

   [パッシブスキル(ナイフ)]盗賊2番手?

   [アクティブスキル(投擲)]ナイフとは、別なのか。

   [アクティブスキル(スティール)]盗賊らしいスキルだ。

   [アクティブスキル(ジャグリング)]こいつは、4個も出た。


   [アクティブスキル(基礎攻撃魔法―火)]下ッパ。

   [アクティブスキル(基礎攻撃魔法―氷)]普通に、魔法だ。

   [アクティブスキル(基礎攻撃魔法―雷)]やはり、コイツが一番強いだろうに……。

   [アクティブスキル(投擲)]また、4個目だ、コレは薬を投げたスキルか? やけに正確に飛んだワケだ。 

 計11個のスキル。


 飴玉にしたうちの1個は、俺。投擲を貰っておこう。後方に居て、闘えない俺でも薬投げが出来れば役に立てるだろう。

 薬が、有れば……だが。


 後の10個は、蜂とカエルで、と、思ったのだが……。

 駄目なようだ。


 「人間のスキルは魔物には無理なのか……」


 「亜人、獣人なら、だいたいは大丈夫じゃ」

 「人間―亜人―獣人―擬人―魔人―魔物」

 「順番の2つ隣迄と言う事じゃな」


 「フム……獣人が一番得だな」

 「魔物以外全部だ」


 「ソレを言うなら、アンテッドは全部じゃぞ」

 「死んでは居るが、人間であり、モンスターでもある」

 「まぁ……相性が合えばの話じゃが」

 「スキルは有るのに、使えんって事もあるしの」

 「まぁ、貴様もアンテッド扱いじゃがの」


  

 残りのスキルは結晶化して、置いて置く事にした。

 合計10個だ。


 「話している間に、出発の準備も整ったようじゃぞ」


 見ると、カエルが幌車の前と後ろで待機している。

 倒したモノの装備品もシッカリ積み込んでだ。

 その中から、手斧と槍を、ソレゾレに手渡してやった。

 とても感激している様だが。所詮は魔物の持ち物、タカが知れているだろうに。

 

 

 幌車に乗り込む。

 中は、意味の有るのか無いのかワカらない、雑多の物で溢れ帰っていた。

 乗れなくは無いが、汚な過ぎる。

 必要無いモノは、棄てる事にする。

 

 早速に、汚ない毛布を引っぺがす。

 と、その下に……。

 小綺麗な格好をした少女が気を失って倒れていた。

 足首には、鎖が見える。 


 「貴族の娘でも誘拐していたか?」


 「そのようじゃの」


 「鍵は? 無いのか?」足輪の部分、南京錠を手に取り。


 「見当たらんのう」辺りを見渡し。

  

 ――旦那様、私供も探して見ます―― おずおずとカエル♀。

 ――私はこの中を探すから、アンタは外のアイツ等の懐を探ってきて――

 ――ホレ! 早く―― カエル♂の尻を叩く。


 頷くカエル♂。

 外へと飛び出した。


 暫く後。

 

 ――旦那……見付かりませんでした―― 2匹揃って、申し訳無さげに。

 

 「そうか……」

 どうしたモノかと思案ゲにしていると。


 手斧を前に、一歩出るカエル♂。

 

 ――先程、頂いたスキルと斧で、アッシが何とかしてみましょう――

 そう言うと、カエル♂は、少女の足の前に屈み込み。

 振りかぶり、一閃。

 金属音と火花。

 見事に鍵を叩き壊した。

 

 「お見事」骸骨が手を叩く。


 おずおずと下がるカエル♂。

 

 その時、何だか少しへこんで居るようにも見えた。

 良く見ると、手斧の刃が欠けた様だ。

 今度、何処かで手に入れて、くれてやろう。


 「よくやった!」と、カエルに声を掛けてやり。

 目の前の気絶している少女の頬を軽く叩いて起こす。


 目を開けた少女。

 俺を見て、後ずさる。

 

 少女に、声を掛けようと口を開く前に。


 「なんじゃおぬしわ」俺を指し。

 「ここは何処じゃ! 何処へ連れていく」声が震えている。

 「ワラわをどうする積もりじゃ」

 「殺すのか? 辱しめか?」涙眼だ。

 「嫌じゃー! ワラわを返せ! 屋敷に戻せー」鳴き叫ぶ。


 この喋り方、誰かに似てるな?

 しかし、うるさい。


 「騒ぐな」と、声を掛けようとした、その時。

 カエル♀が水と果物(ミカン? らしきモノ)を持って、少女の前にやって来た。


 何処から、そんなモノをと見ると。

 樽と、その横に木箱。開いた箱の中にはパンや果物が見える。

 長旅でも無さそうだったのに、エラくシッカリ準備したものだ。

 イヤ、この世界ではこれが当たり前なのか……モンスターの襲撃もだし。囲まれて身動き出来ない、と、言う事も在りそうだ。


 「ワラわに、近寄るなカエルの化け物」

 「アッチへ行け」



 ――………………………………――


 「そう、邪険にせんでも良いでわ無いか」

 骸骨がミカンを取り、噛る。

 「旨いぞ……」スカスカの骨の間から、果肉と汁がボトボトこぼれ落ちる。

 

 ソレを見た少女。

 ギャっと小さく叫び、また、意識を失くした。


 「なんとも失礼な奴じゃ」

 「ワシが話し掛けて遣ったのに……その、最中に寝るなゾ」首を降りつつ。


 イヤ、寝たんじゃ無い。ソレは気絶だ。

 ミカンの果肉と汁が、肉片と血にも見える。中々にグロい絵ズラだぞ。


 「フム、まぁ良いワ……静かに為ったのジャからの」

 「しかし、あの盗賊達」木箱と樽を見て「エラく、大層に準備をしたものじゃの」

 「余程の心配性か?」高笑い。


 前言撤回、この用意は普通はシナイ、と。


 「味もせんワイ」と、食べかけのミカンを外へと放り投げた、骸骨。


 そりゃそうだ。舌も無いのに。


 程なく、「きゃ」声……。


 ?


 その後、ドカンと音がし。

 外の後方、草村の中に火柱と煙。


 「フム! ナニやら物騒じゃの」

 「新手の魔物か?」

 「早々に出立した方が良いジャろうの」


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