ややこしすぎる
さて、一応は解決だと、出発の準備を始めた俺達。
今一、後味が良くないが……ロリスの時もそうだが、悪意の無い魔物も居るのだとちゃんと理解しておこうと、改めて思う。
魔物じゃ無くて、魔人なのかな? それともホボ擬人なのか?
と、サルギンの方を見た。
橋の真ん中にサルギンだかりが出来ている。
なんだろうと、近付けば。
マリーが何かを配っていた。
「いい? もうイタズラは駄目よ」そう言いながらに小瓶を渡す。
その小瓶、見覚えがある。確か防腐剤だ。
みんな頷きながらに飲んでいた。
その中に居たサルギン王が俺に気付いて近付いてくる。
――実は、頼みたい事があるのじゃが――
「なんだ? 言ってみろ」
――我らの祖先に、伝説の王が居るのですが……―― と、対岸の方を指差し。
――その王、夜な夜な墓場から抜け出しては、通り掛かる者にイタズラをするのです――
――得意の人間のお婆さんに化けて――
「もしかして、背の低い男を探していた? あれか」
――そうです―― 頷き ――霊力が高いのか、死んでもなをイタズラが辞められん様で――
――今回も、その王と一緒になってイタズラを始めた者が事の発端と成っております――
あの婆さん、死んだサルギンが化けていたのか……あれ? じゃ……幽霊?
背中が、ゾワゾワしてきた。
――で、頼みたい事なのですが――
――その王を、起こして貰いたいのです――
「起こす?」
――あなたなら、ソレが出来よう?――
――どうせ夜な夜な勝手に出てくるのじゃから、起こして、出来ればそのまま連れていってくれんかの?――
なんだ? 迷惑でもしていたのか?
厄介払いか?
――わし等は……その、ここからは離れたくないので……出来ればその王だけで、勘弁して欲しいのじゃが……無理じゃろうか?――
ああ、代わりの者をと、言う事か。
元々、ここの者を連れて行く積もりも無かったが。
その話に乗っかっておこう。面倒臭いし。
「いいよ」
「セオドア、頼めるか?」
と、対岸の墓場まで運んで貰った。
真ん中、奥に一段大きな墓がある。
その墓を指差し、サルギン王に確認。
頷いたのを見て。
その前で集中。
うん、誰か居る。呪文を掛けた。
その墓の前の土が盛り上り、割れ、崩れて骸骨が這い出してきた。
サルギンの骸骨、人の子供位の背丈、背中にはヒレもある、が、それ以外はそのまま猿の骨か?
――うお、久し振りの昼間だ、眩しい―― カタカタと動く骸骨。
――ご先祖様、お願いが有ります―― 今のサルギン王が骸骨に膝ま付く。
――この者を王の王として使えるに当たりまして、我が偉大なる王の中の王のあなた様にこの者、王の王の従者をお願いしたいのです――
なんだろう、ややこしい……そんな話だったか?
――この者が王の王なのか……うん確かにワシも使役しておる様だ――
――それが王の中の王の使命と為れば仕方のない事なのか――
――良いぞ、わかった――
伝説の王は、軽いな。
――では、ワシからも一つお願いがしたい――
――ワシの従者を一人付けて貰えぬか?――
――王の王の従者に従者ですか?―― 今のサルギン王。
――どの様な者をお連れしますか?―― 少し、困り顔にも見える。
――うん―― 少し歩いて ――この者かな?―― と、墓の前に立ち指差した。
それを見てホッとする今のサルギン王。
――王の王よ―― 俺を見て ――お願い出来ますか?――
頷いてやる。サッキからややこしすぎる。
呪文を唱えた。
――ここは―― 地面から這い出した骸骨が辺りを見渡し。
――おお、イワナクイ―― 骸骨の方の王が抱き付いた。
その骸骨を見て ――サルギン王、私はヤマメクイです――
――イワナクイは、そちらです―― と、王の墓の反対側を指した。
――あ! 間違えた―― ソッと上目使いに俺を見る。
ハイハイと、呪文を唱えた。
――おお、久し振りだのう、イワナクイ―― 仕切り直した骸骨。
――これはお久しぶりです、サルギン王こと、アマゴクイ様――
――で、私をお呼びになったのは何用ですか?――
――ウム、この度、この者サルギンの王の王に付いて行く事に成ったのだが、ヌシも一緒に着いて参れ――
――左様で―― 頷き ――ご一緒致しましょう――
――あの―― ヤマメクイこと、間違えた方の骸骨 ――私は……―― 元サルギン王のアマゴクイを見て、イワナクイを見て、現サルギン王を見て、俺を見た。
元サルギン王は俺を見る。
「いいよ」
結局は三人の骸骨を連れて行く事となった。
イセオ湖を後にして、森の中の。
トラックの中は大騒ぎだ。
「私に化けるのは辞めなさいよ」叫び声。
見ればマリーが5人。
あれ? 指を折って数える、1人多くないか?
本人、多分これと、指差す。
アマゴクイ、伝説のサルギン王、迷う指。
イワナクイ、その従者。
ヤマメクイ、そのオマケ。
あと1人のマリーが居る。
誰だ? もう一人着いて来たのか?
「ぬふょほう、悩んでおるのう」偽マリー1号。
「数えていましたね」偽マリー2号。
「ヒントはサルギン族は3人のままです」偽マリー3号。
「こら、バカ言うで無い」偽マリー1号。
「大丈夫です王様、まだわかっておりません」偽マリー2号。
「ウキー」偽マリー4号の口を寄って集って押さえ込む。
「ウキー?」
「その若干デカイ私は、ロイスよ」と、液体を霧状にして振り撒いた。
「強制変化解除薬よ」ニヤリ「今、造ったホヤホヤ」
それを掛けられた4人は各々に戻る。
「くわー、面白いとこじゃったのに」悔しがる元サルギン王、アマゴクイ。
「そんなモノを造ってしまうとはお見それしました」頭を下げたイワナクイ。
「でも、ちょっと卑怯な感じするよね」ヤマメクイ。
「ウキー」ロイス。
ロイス……そのウキーはなんだ、お前は普通に念話で喋れるだろう。
あ、そうか、念話じゃバレるから、ウキーか。
……。
イヤ、そんな事じゃない!
「何故、ロイスが化けられる?」
「俺はサルギンから1個もスキルを取って無いぞ」
「フフン、ワシがくれてやったのじゃ」
「サハギンの王ダケが持つスキルの下賜です、自身の能力等を配下に分け与えるスキルです」イワナクイが捕捉してくれた。
「スキル猿真似は、そうやって皆に配るから、皆が持っているの」凄いでしょう、と、ヤマメクイ。
ああ、そうか。
同じ高等スキルを全員が持ってるのは、本来不自然なのか。
それだけサルギンは人に近いのだな。
「その猿真似」コツメが「私も貰ったけど、駄目だった」チョッとガックリ。
「私達も貰いました」コツメが3人、だがもうわかった。カエル達だ。
フードからもちっちゃいジュニアが飛んで出る。蜂達にもか。
ピーちゃん、カラス、ネズミもだ。
サイズは変えられ無い様なのですぐわかる。
「基本、魔物向け見たいね」
「例外も居るけど」と、外のバスを差す。
運転手がリリーに成っていた。フローラルか? でも何故にリリーだ。
「フム」頷き「わかった」
「これからは、変化は禁止だ!」
こんなもの、ややこしすぎる!
「やり過ぎればPVが減る!」拳を握って上を向く。
?
「PVってなに?」全員の合唱。
なんだろう……俺もわからん……。
「さー?」と、首を捻った。
ごめんなさい。
今回、遊び過ぎてしまいました。
ここで謝罪致します。
土下座~!