表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/114

ソレゾレの居場所

 

 当面の目標は定まった。

 が、肝心のヤツの居場所がわからない。

 次に動くのを待つしか無いのか。



 と、客が来た。

 ルイ家の総出だ。

 百合子を呼びに来たらしい。

 ソフィーが百合子に声を掛ける「一緒に学校に行こう」


 「学校?」思わず。


 「まだ子供だから、学校に行かないとね」テレーズお姉さんが優しく。


 「百合子も行けるのか?」


 「私が一緒に行って、手続きをしてきます」俺に「宜しいですよね」と、テレーズ。


 「もちろん」考えもしなかったが、ソレは大事な事だ「宜しくお願いします」

 「どんな学校なんだろう」異世界の学校なんて想像もつかない。


 「錬金術師エリー様が創った学校です」

 「私も、その卒業生です」ニコニコとお姉さん。


 「錬金術の学校?」


 「そのコースも有りますが」妹を見て「私も妹も、普通科です」


 「エリーって、確かマリーの弟子だったよね」


 「そうよ」後ろからマリー。

 「私も、着いていっていい?」

 「百合子には、錬金術師のコースを進めるわ」


 「まあ、マリーちゃんも学校に?」


 「入学は、しないわよ」勘違いしないでと、言いたげだが。お姉さんは間違いなく勘違いしている。


 「じゃ、一緒にいきましょ」ニコニコ。

 「ローザちゃんも一緒よ」ニコニコ。


 そんな、お姉さんに不安を感じたのか「ジュリアちゃんは?」と、ジュリアの手を握る百合子。


 「じゃ、私も着いて行きます」百合子の手を握り返してやる。


 「でも、ジュリアちゃんは入学出来ないわよ」ニコニコ。

 コレは勘違いじゃないな、その上のレベル……天然だ!


 「ああ、皆で行ってきな」手を振り「俺はロイドの所に、行ってくる」

 仕事を貰いに行こう。

 まだ、あれから金を稼いでいない。

 ため息が出る。


 「では、私と一緒に」ルイ家の当主。



 

 冒険ギルドも保険ギルドも朝から大いに賑わっていた。

 そんな中、ロイドを見付け、声を掛ける。

 「寝れてるか?」


 「お陰さまで」頭を下げた。

 「新人達が頑張ってくれています」


 見ると、数人が忙しそうに動き回っている。


 「で、本日のご用向きは?」


 「時と空間の勇者の動向は……わからないよな?」本題の前の世間話のつもりだったのだが。


 「生憎と……」と、一人の男を呼び「この者に探らせましょう」

 「情報については専門家です」


 情報の専門家なんかが居るのか。

 「新聞屋か?」


 ロイドと当主の耳がピクリと動いた。


 「新聞……とは」


 「情報を紙に書いて、売るんだよ」

 「1枚幾らかで、な」


 「ほう……」考え込むロイド。

 「ソレは、興味深い話です」

 「情報の売り買いは、普通に有りますが、ソレは1対1での事」

 「わざわざ紙にとなると……錬金術で複数枚にして、売る……」

 「1対複数」

 「リリーさん、紙に書いた物を複数枚に出来る錬金術は有りますか?」


 「はい、印刷ですね」急に振られたのに焦る事なく「初歩です」答える。


 頷いたロイド。

 当主を呼び「お話が有ります」

 

 それに頷く当主。

 「奥へ行こう」と、二人して消えた。


 おい! 俺の本題は?


 その場に残された俺は、リリーに「なんか……仕事無い?」


 その問に、営業スマイルで返すだけ。

 ニコニコ。


 

 仕方が無いので、商人ギルドに出向く。と言っても向かいの建物なのだが。


 ここも、賑わっていた。

 主に、銀行の方だが。


 そして、ここにも数名だがゾンビが居るようだ、カウンターの奥で忙しいそうに仕事をしている。

 その中の1人を、適当に捕まえて。

 「頭取は何処か?」

 返事は下を向きつつ作業をしながらに……階段……上、と、手だけで返された。

 コレは、ここの流儀に成っているのか?

 なんとも、無愛想な事だ。

 まあ、なにかを言っても仕方無い。

 俺は、黙って階段を昇る。


 頭取はスグに見付けられた。

 廊下の端で、ムラクモとナニやら話している。

 近付いて、聞く耳もなく聞いてしまった。


 「では、宜しくお願いします」頭取。


 ――では、行って参ります――


 「何処へ行くんだ?」思わず声を掛けた。


 「ドワーフ村迄、買い付けを頼んだんですよ」

 「商人ギルドの方の仕事です」


 ――アッシも、ちょいと小遣い稼ぎをと、思いまして―― 苦笑いのムラクモ。

 

 俺も笑って返す。


 ――行けませんでしたか? それとも、何処かへ行かれるおつもりでしたか?――


 「イヤ、構わないよ」頷き「暇な時は、好きにしてくれて良い」

 相変わらずに、敏感なヤツだ。

 仕事を先に取られたとの思いが顔に出たか?


 ――そうですか―― 多分、笑って。

 ――でわ、これで失礼致します――


 後ろ姿を目で追っていると。


 「では、私にご用でしたか?」


 「……」うーん、用は、もう取られたし。

 「隣で、ロイドとルイ家の当主が新しく新聞を始める相談をしていたぞ」適当に誤魔化した。


 「左様で」頷き「でわ、私めもその話混ぜて頂きませんと」と、足早にその場を去る。


 ソレを見送り、ポリポリと頭を掻いた。


 

 

 結局、仕事は取れず屋敷に帰った俺は、何時もの場所で煙草に火を着けた。

 暇だ。

 ……。

 あれ?

 俺……居場所が無い。

 俺って、役立たず?

 ……。

 駄目じゃん!


 呆然と成り座り込んでいる俺の側にカラスが飛んで来た。

 ――盗賊ギルドからの連絡だ―― と、カラスは告げる。


 「何か有ったのか?」工事はまだ暫く掛かるだろうに。


 ――今度、隣国で大臣クラスの会談が行われる事に成った――

 ――日程は、まだ未定だが、それに先立ち先遣隊を送る事に成ったのだが、その先遣隊の影武者として隣国に行く――


 「影武者?」首を捻り「何故?」


 「戦争が怖いのよ」マリーが、いつの間にかに帰っていた。何故かロイドも一緒だ。


 ――そうだ、正規の先遣隊に何か有った時に……問題に成る――


 「影武者なら切り捨てれば良いのよ」

 「その者等は、盗賊が成り済ました者だと言ってね」

 「場合によっては、我が国の不穏分子を退治してくれて感謝する……ぐらいまで言えば、当面の戦争は回避できるでしょ」


 ――何も起こらなければ、正規の先遣隊と交代だ――


 「ソコまで危ないのか?」


 ――その隣国は、剣と盾の勇者を召喚したと噂に成っている――

 ――ソフィーでの事を横槍を入れたと勘違いしているその国だ――


 「俺達のせいか」


 ――ソレも有るが、ソレを思わせるモノがその国には有るんだ――


 「戦争好きな民族でも有ります」ロイドだ。

 「自国を世界一の大国と思い、世界の警察を自認しております」

 「が、ソレも昔の話……今は自国の利益が最優先です」


 「その国が、使者を呼びつけたのか」


 ――そうだ、ソレも大臣クラスをな――


 「で、何故ここにロイドが居る?」今更だが。


 ――俺が呼んだんだ、今回の仕事はロイドを使いたい――

 ――影武者と支援隊の2つに分けて影の方は俺が、影の影の方をロイドに任せたい――


 「待って」マリーが口を挟んだ「それ、逆の方が良いんじゃない?」

 「ロイドの方が役人っぽいもの」


 ――成る程――


 「それに、荒事に成るのは影の影の方でしょ」

 「影武者の方は逃げる事を最優先にしないと」

 「無事で居る事が一番に大事な事なのだから」


 ――確かにそうだ――


 「ついでにだけど、その影の影の方は私達がやるわよ」


 え! そうなの?


 マリーは俺に向き直り。

 「その剣と盾の勇者に会いに行きましょう」

 俺の怪訝な表情を汲み取り続ける。

 「大丈夫よ、あたし達と同じ転生者なのだから、話は通じるわよ」

 「それに、帰れる方法を知ってるって言えば、聞かない筈がないわ」

 「仲間に引き入れましょう」

 

 「その仕事は俺達でも出来るのか?」


 「そんなの、ややこしい部分はロイドにお任せよ」ふん「決まってるじゃない」


 丸投げか……。

 と、ロイドを見ると、仕方無いですねと顔と態度で示した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ