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平和な三人


 俺達は入って来たルートを逆行し、ピーちゃんの待つ部屋の扉を開けた。


 ――お帰り―― ピヨピヨ。


 「ただいま」ピーちゃんを見る「おとなしくしていたか?」


 「え?」ジュリアの声。久し振りに聞いたチャンとした声、一言だけど。


 「?」

 見ると、ジュリアが震えながらにピーちゃんを見ている。


 俺も見た。

 あれ? ピーちゃんって喋れたっけ?


 「この子、ゾンビに成ってない?」マリーが目を細めた。


 成っていた。

 紛れも無くゾンビだ……。

 「どおして?」


 ――んとネ、ソコに居たおじさんに後ろから刺された――


 ソファーに座って居たオッサンが消えている。

 何処にも居ない。


 ――ピーちゃんがね、おとなしく寝ながら待っていたの―― 身振り手振り? 羽振りで説明を始めた。

 ――おじさんに寝ててもいいかって聞いたら、いいよって言うから寝てたの――

 ――その時はまだピィーってしか言え無かったけど、多分通じた――

 ――そしたら、ブスーって、ピーちゃんの背中から剣で刺したの――


 コイツ良く喋るなぁ。

 ってか、自分でピーちゃんて……。

 ……………………じゃ無い。

 「あの親父!」

 「人の良さそうな顔をしてナンて事をしやがる」


 「下の奴等もアイツに殺されたんじゃないか?」頭目、眉間にシワが寄っている。

 ピーちゃんの背中の切り口を確認して。

 「背中から心臓を一突きだ」

 「躊躇った様子もない……殺し慣れてる」


 ピーちゃんはその間も喋り続け。

 ――でね、でね、そしたらそのおじさん―― 

 1段と大きく、ビックリした仕草で。

 ――突然に身体が光だして――

 ――急に、ちょっとだけ若く成ったの――

 ――不思議~――


 「ちょっと」マリーが「ソレほんと?」


 ――ピーちゃんは嘘言わないよ――


 「なんだ? 何か知って居るのか?」


 「あの男! 時と空間の勇者よ」言い切った。

 「このダンジョンもアイツが創ったのね」


 「なぜ?」そう言葉に出し、思い出したマリーが言っていた事を。

 「魔力の回復の為か……」


 「そう、下の死体もアイツが殺ったのよ」

 「この場所」少し考えて「棒を引き摺った男の子が居た場所でしょ」

 「あれは、転生魔法の範囲を描いて居たのよ」


 「ダンジョンを創れる? 呼び出せる? のか」

 「厄介なヤツだ……」


 「貴方ほどでは無いけど……アイツも最弱の部類よ」

 「自身の攻撃手段はセイゼイ、店売りのスキル位よ」


 「だが、この切り口は」頭目が改めてピーちゃんの背中を見る。

 「随分とレベルが高い様にも見えるが……」

 「何十年かは修行した、そんな感じだ」


 「時と空間の勇者は、永遠の命を持っているに等しいわ」

 「私より古い転生者な筈は無いからその後スグなのかも……」

 少し考え込み。

 「或いは、剣の勇者のスキルを奪ったか」


 「スキルを取り出すスキルを持っていると?」


 「勇者のメインスキルは、勇者なら簡単に奪えるのよ」

 「ただ、トドメを刺すだけで良いのよ」


 「なら、俺も……」


 「ソレは、辞めといた方が良いわ」

 「勇者のスキルは、デメリットも必ず付いてくる」

 「それに、魂の勇者は攻撃自体が無理じゃない、そんな貴方が強力な攻撃スキルを持っても意味有る?」


 「しかし、マリーの爆弾で攻撃出来てる」

 「投げるは」ウーン「良いのか?」


 「身体から離れれば良いのかも?」

 「ソレとも爆弾みたいな、少し複雑なモノだからか……かな」マリーも考える。

 「今度、試しに槍を投げて見て」


 「そんな事よりも、今はその殺人鬼勇者じゃ無いのか?」頭目の指摘。


 確かにそうだ。

 悠長に議論をしている暇はない。

 まだ、何処かに隠れて俺達を狙っているかも知れない。

 「蜂とカラス達に告げる、索敵開始だ」


 蜂達が四方に飛んだ。

 一方のカラスは一鳴きして、ダンジョンのカラスと交信したようだ。

 ――ダンジョンには、居ないようだ―― と、告げてきた。

 ――ダンジョンの外も探らせよう―― と、目の前のカラス。このカラスがリーダーのようだ、おそらく一番最初のゾンビカラスなのだろう。

 

 「ああ、頼む」


 そのほぼ同時に、ダンジョンから無数のカラスが飛び立った。

 

 ――この付近には確認出来ず―― 蜂達の報告。


 ――森の中に、剣を携えた男が入って行ったと、連絡が入った――


 「森? ここから一番近い森だと、王都の逆方向で相当に遠いぞ」頭目だ。


 スキルの高速飛翔か? カラスもやたらに速いぞ。

 

 ――黄色に黒の斑点模様のトカゲに乗って、高速で移動していた様だ―― カラスが捕捉する。


 「トラックで追いかけたとすると? どうだ」


 「見失なければ、半日程で追い付けられるだろうが……」


 「森の中だと、カラスも無理か」


 頷く頭目。


 ――別の者からも連絡だ――

 ――数名の一団の中に剣士が居て、コチラに向かって来ている様だ――


 「ソレは、多分……冒険者だな」頭目の見解。

 「痺れを切らして、ダンジョン討伐に出たのだろう」


 ――他にも、何人かを見付けた様だが――


 「そうか、カラスはあの野郎を知らないのか」

 「見ていたとしても、若返る前だろうし」

 多分……最初のトカゲ乗りが本命なのだろう。

 「よし、引き上げさせろ」カラスに告げる。


 「そのカラス、なかなかに使えそうだな」

 「盗賊ギルドにも何匹か紹介してくれ」

 ギルドだったのか!


 確かに、遠距離通信、言語短縮、画像記憶のスキルを使ったのだろうカラス、電話代わりにも使えそうだ。


 「いいか?」カラスのボスに尋ねた。


 頷くカラス。


 「それと、ここに来る者はゲストとして扱ってくれ」

 「死なない様に観察して、危なそうなら助けてやって欲しい」

 「もし、ココで余裕そうなヤツだったらば、少し怖い思いをさせてやってくれ」ニヤリと笑う。


 カラスもニヤリと笑った。

 ――そう言う遊びは大好きだ――

 ――良いアトラクションを見せてやろう――

 

 


 そして、街に戻った俺達。

 盗賊共は、ダンジョンからそのままギルドの里に帰った。

 俺とカラスとネズミの一匹づつとマリー以外は屋敷に戻る。

 俺達は一度、冒険者ギルドを覗く事にした。

 

 それまでの帰り道の事。


 ジュリアがピーちゃんを見てずっと泣いていた。

 ソレを鬱陶しく感じたのかマリーが怒鳴る。

 「いい加減に泣き止みなさい」


 「グスリ……でも、死んじゃったの」涙と鼻水でぐちゃぐちゃにして。


 「今、動いて喋れてるじゃない」キー。

 「それじゃ駄目なの?」


 「でも、でも……ゾンビに成っちゃった」グシグシ。


 「アンタ! あたし達に喧嘩売ってるの!?」立ち上がってわめき出す。


 「二人共、煩くて鬱陶しいよ」コツメがボソッと。


 キッと睨む、マリーとジュリア。


 そのまま三人の三つ巴の肉弾戦が始まった。


 確かに鬱陶しい、狭いトラックの中で暴れるなよ……。


 「だいたい、ジュリアはチビの癖に巨乳って」と、コツメ。


 羨ましいかったのか。


 「コツメちゃんだって、アホな癖に一番背が高いじゃない」ジュリアのコンプレックスか?


 「アホじゃないわよ、アホなのはマリーよスグに忘れ物するし」

 「つるペタだし」

 「パンツも履いてないし!」確かに、もう買えるだろ? 言えば買ってやるぞ?


 「アンタ達は若いんだから、年長者の言う事を聞きなさいよ!」今、見た目で一番若いのはマリーだが。


 そのマリーの服の裾がはだけた……また、大事な所が丸見えだ。

 そのマリーがコツメの胸をはだけさせた。確かに貧相だ。

 コツメも負けじとジュリアの服を剥ぐ。ポロリとこぼれた胸を見てまたヒートアップ!

 「屁が臭いのよ!」

 「アンタの爺さんダメダメじゃん」

 「ロリババア!」

 「間抜けなエセ忍者!」

 「爆弾しか造れない駄目錬金術師」

 「役立たずの引き籠り鍛冶師」


 せめて口喧嘩か取っ組み合いか、どちらかにしてくれんかな?

 アルマはオロオロし始めるし。

 ゼクスはボーっと見ている、面白いのか?

 面白いけど。

 シルバはと、見るとセオドアと話していた。

 この二人……誰が勝つかを掛けてやがる。

 俺も一口乗ろうかな?

 ムラクモとシグレは普通に世間話か? もう飽きたのだろう。

 しょっちゅうだものな。

 蜂達もカラス達もピーちゃんでさえ全く興味を示さない、元魔物組には普通の事なのかも知れない。


 そんな束の間の平和な光景が帰り道の間にズッと続いた。

 ホント平和だ。

 貧乳と巨乳と大事な所がチラチラと見えるが……平和だ。


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