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三つ巴


 取り敢えず、皆で固まって中央を目指す。

 先ずは敵を知らなければ。

 蜂達に命じて索敵開始だ。


 ――旦那、上です―― ムラクモがビルの上を差す。


 見れば、一匹のカラスだ。


 ――敵発見、ビルの中に無数の熱源反応あり―― コチラは蜂だ


 そちらは見えない。

 どちらもほぼ同時だった。


 「カラスが魔物か?」遠すぎて良く見えない。

 「ビルの中にも潜んでいるのか?」


 ――敵、移動速度、高速、追尾できず――


 「建物の中ではカラスはそんなに早く移動出来るとも思えん」頭目「コレは、別だな」と、半月刀を両手に構えた。

 二刀流か?

 ソレを合図にそれぞれが武器を出す。剣に刀に槍にナイフ、すりこぎ棒。


 「詰まりは、二種類か……」


 建物の影で何かが光った。

 そこへコツメが火の玉を打つ。

 炎の明かりがボヤっとその場を照らす。

 

 それに反応したのかカラスが一鳴き。

 カァー。

 しかし、そのカラスは動こうとはしない。


 また、コツメが打った。

 今度はビルの地下に続く駐車場のスロープ脇。

 黒い何かが影の闇の中で動いた様に見えた。


 「まずいな……」頭目が呻く「上を見ろ」


 カラスが増えていた。


 「アッ!」コツメが叫ぶ「今、見えた」


 「何処だ?」


 「最初に打った場所」

 「ネズミが居た」


 「もう一度打て」


 頷いたコツメが打つ。

 ボヤっと照らしたが、何も居ない。


 「二度目に打った場所のスロープの奥を打て」


 火の玉が駐車場の中へと飛んでいく。


 突然、ソコからネズミが一匹、飛び出してきた。

 ちょっとデカイ、猫程のサイズだ。


 それにカラスが反応して鳴き声を上げて、一羽が飛び立つ。

 見上げると、空には無数のカラス。


 「セオドア、石化だ」カラスを指し。


 「ぴよー」上を向いて。


 バラバラと普通のサイズのカラス、数匹が落ちてきた。

 ソレでもまだ、大量に飛んでいる……イヤ増えている。


 石化して、落ちたカラスを盗賊ゾンビ達がトドメをさしてまわる。

 それを見たカラスの群れが急降下し始めた。


 「ぴよー」セオドアの二度目。


 急降下中のカラスの中で、運の悪い奴等が、その勢いのままにアスファルトに叩き付けられる。

 その音と死骸に反応して、影に隠れていたネズミ共が一斉に飛び出してきた。

 大量に群れている。


 「マリー、爆弾は?」


 「無いわ」


 「なぜ?」思わず。


 「寝癖が気になって、直してたら……造るの忘れた」


 「バカー」コツメが叫んだ。その影でジュリアが小さく頷く。


 「今から造るわよ」鞄をひっくり返し中のモノをぶちまけながら。


 しかし、ネズミもカラスも待ってはくれない、唯一の救いは三つ巴状態。

 ネズミはカラスと俺達に、カラスはネズミと俺達に、俺達はカラスとネズミに、もっと簡単に言えば近くの敵にだ。


 アルマが1人飛び出した。

 そのアルマにネズミがタカる、が、固い鎧だ全く歯が立たない。

 ソコにコツメが氷手裏剣を連射する。

 

 セオドアは蜘蛛の糸でビルを支点に飛び回る「ぴよー」と、叫びながら石化と細剣でカラスを叩き落としながら。


 蛙達とゴーレム達も固まりながら次々と倒していく。

 ゾンビ共はほっといても強かった、頭目を筆頭にコチラも次々と。

 闘えない俺を守りながらだ。


 だが、ソレ以上に数が多い。多すぎる。

 一向に減る気配がない。


 「ムラクモ、倒したヤツを俺に寄越せ」


 スグにムラクモ自身が俺の所に来て、舌を飛ばした。

 引き寄せたネズミに呪文を掛ける。

 そのネズミ、むくりと起き上がりスグに攻撃に参加する。

 次はカラスだ。


 その合間。

 「爆弾1個」と、俺に手渡したマリー。


 その爆弾を起き上がったカラスが飛び上がって掴み、適当に密集している所に落とす。

 爆風でネズミとカラスが四方に吹き飛んだ。


 俺は次々に呪文を掛ける。


 マリーも負けじと爆弾を造る。


 徐々にだが、形勢がコチラに傾いてきた。

 ネズミもカラスもゾンビ化して強く成っている様だ。

 イヤ、倒していくから強くなっていくのか?

 どちらにしても、一対一では確実に勝てる。

 問題はその数なのだが……。


 しかし、ソレも時間が解決してくれる筈だ。

 続々と増えるゾンビネズミとゾンビカラス。

 

 だがソレを待つつもりもない。

 「セオドア」

 「ビルとビルの間に粘着糸を張りまくれ」

 「空からの攻撃を遮断しろ」


 わかったとばかりに、飛び回る。


 「蜂達は糸に絡んだカラスに毒張りだ」

 

 「粘着」ポンと手を叩くマリー。

 また、何かを造り始めた。


 丸い玉だが、爆弾とは違うようだ。

 もっと早く大量に作れている。

 ソレを俺に手渡して。


 「出来るだけ遠くに投げて」


 頷いておもいっきり投げた、ソレは空中で破裂して粘りけの有る糸の様なモノが四散した。

 それにネズミ共が絡まり身動き出来なく成っている。


 「ドウ」胸を張るマリー「名付けて、納豆爆弾よ」

 「しかも、強燃性」ニマッ。

 「コツメ、火を着けて」


 その場が爆発するように一気に燃え上がりネズミを焼いた。


 「どんどんいくわよ」

 納豆爆発の大量生産に取り掛かるマリー。


 ソレをゾンビカラスに任し、俺も引き続きゾンビの大量生産。

 辺りは納豆の糸だらけ。

 ゾンビだらけ。


 壮観だ!

 思わず声が出る、

 「フッ……ハハハハハハ……」

 「ネズミ共もカラス共も、みんな食い尽くせ!」

 「焼き尽くせ……」

 その言葉を最後に意識が飛んだ。

 とてもいい香りと共に。




 目が覚めると俺は、やっぱりグルグル巻きにされて、転がされていた。

 その場所は、そのままダンジョンで、皆で俺を囲んでいる。


 「魔物は?」


 「粗方、倒したわ」マリーが答える。


 「ネズミの通りそうな所に納豆爆発の糸を張って隔離した」頭目だ。

 「カラスはセオドアの糸で降りて来れない」

 「後は、新人ゾンビ達に任せとけば、十分だ」

 そう言いながらもジッと俺を見ている。

 今、危険なのはアンタだと、言いたげな目だ。


 「俺は、もう大丈夫だ」

 「少し高揚しただけだ」


 一番近くに居たマリーが俺の目を確認して。

 「セオドア、ほどいてあげて」


 「良いのか?」躊躇するセオドア。


 「暴れても、この中で一番弱いのだから大丈夫でしょ」

 「その時は、取り押さえればいいのよ」


 「確かに」笑いながセオドアが糸を解く。


 同じく確かに……奴隷印で命令しても、しっかりと意識を持ったコイツらには抵抗されてしまう、拒否される。

 最弱の勇者は、伊達ではないか……。

 

 ゆっくりと立ち上がり。

 そこらの適当なカラスの死骸からスキルを取り出した。

 声真似、遠距離通信、言語短縮、画像記憶、急降下攻撃、高速飛翔の6個だ

 その全部を蜂達にやる。

 セオドアにも急降下攻撃と高速飛翔コレは使えるのかはわからんが……。

 ムラクモには急降下攻撃、前に一度ソレらしい事をやっていた。

 ネズミ達に声真似、遠距離通信、言語短縮、画像記憶。


 次にネズミ。

 繁殖力、短縮寿命、夜眼、ウオーク、出っ歯再生、ミニマム、高速移動。

 役に立ちそうも無い。

 取り敢えず、ウオークと夜眼と高速移動をゴーレムとゾンビ達に。

 ミニマムは、蜂達とカラスにやった。



 ほとんど適当だ。

 誰も欲しがらないから、相性の良さげなのを配っただけ。

 ネズミもカラスも死骸はソコいらじゅうに有る。

 俺はポケットから出した煙草に火を着けた。


 少し落ち着いた。


 辺りを見渡す。

 今はもう静かだが。

 ヤハリ転生者の死体が痛々しい。

 ソコはもう死の街だった。



 そして、ダンジョンを出る事にした。

 ネズミとカラス、それぞれ5匹づつ連れて、残りはここの掃除を任す事にする。

 

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