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保険ギルド


 保険ギルドの話を聞いた会長。

 目を輝かせて言った「素晴らしい!」

 「今すぐにでも、1つお願いしたい」


 「何か、保険を掛けたいモノが在るのか?」


 「はい、職人ギルドの在るドワーフ村まで買い付けに行きたいのですが」

 「ドワーフ村までの道中、どうしても危険なダンジョンを通らねば行けません、しかも徒歩に成ります」渋い顔で「そんなわけでマトモな仕入れが出来ていないのです」

 「保険が保証してくれるので有れば是非にお願いしたいのです」


 お? コレは。 


 「あのダンジョンのおかげで」主が続けて「私も職人ギルドの会長と話が出来ずに困っておりました」

 「会えないので、その運営もままなりません」溜め息「開店休業状態で……」


 「成る程、その保険2つ共に俺が受けよう」ラッキー。

 「買付のリストを作ってくれ」商人ギルドの会長に。出来るだけ平静に言う。

 「職人ギルドの会長を連れて来れば良いのだろ、ツイでに出来る」ルイ家の主に頷いてやる。楽勝だ、もう既にダンジョンは攻略済みだし。


 「有り難うございます」先にルイ家の主が決断した「金貨10枚でお願いしたい」


 「失敗すれば金貨100枚の保証で良いな?」それに頷く主。

 

 「では、商人ギルドとして、私共は金貨100枚でお願いしたい」


 「大きく出たな」保証は1000枚か! 払う事には成らんが。


 「そんなお金が有るのなら、さっさと家賃を払いなさい」マリーが小声で。


 「ソレは」口ごもる会長「コレは商人ギルドとしての依頼でして……」


 「わかっているわよ」チッ。


 「買付の代金は先払いでお願いしたいのだが」会長を見て「ソレで良いか?」


 「はい、直ぐにでも用意致します」


 「で、職人ギルドの会長は誰だ?」ギルドマスターのルイ家の主に「村長か?」


 「イエ、村長の兄の方です」


 「私のお爺ちゃん……」ジュリアだ。


 「アンタ居たの?」マリーが叫ぶ。


 俺もビックリ。

 いつの間に。

 「しかし、あの色ボケの呑んだくれの爺さんが、職人ギルドの会長とは」その時点でギルドの運営もまま成らんと思うのだが。


 「あの性格ですが、仕事に関しては中々に遣り手です」主が答える。


 「人望も無さそうだが?」ソレでも?


 「その部分は、弟の村長が引き受けてくれますので」


 人望が無いのは認めた!

 何処へ行っても、何をやってもブレ無い爺だ。


 「で、ナニ?」遠巻きにコソッと立ってるジュリアに。


 「……」モジモジ……グズグズ……。


 「ナ、ニ?」片耳に手を当てて、語気荒く。


 「お客様です……」……。


 「誰?」


 「フローラルさんです」


 「?」少し考えて「ああ、アイツね」ポンと手を叩き「待たせておきなさい」


 フローラルな香りの腐ったゾンビは、いつの間にかにフローラルさんに成ったらしい。


 「はい~……」そそくさと消えようとするジュリア。


 「あんたん家にまた行くから着いて来なさいよ!」そんなジュリアの背中に投げ掛けた。


 「はい~……」ビクッと肩を振るわせ返事を返し、小走りに出て行った。


 「話の邪魔をしたわね」手で即し「続けて」


 「今のは、カエサル殿のお孫さん?」主が俺に。


 「わけ有って、預かっている」


 「ほう」頷く主「と、言う事はもう既にドワーフ村へは行かれた事がある、と」


 「ああ、行って、帰って来た」


 そう頷いた俺に、会長が残念そうな顔をチラリと見せた。

 大方、途中で俺が死ねば保証金と奴隷解放で一石二鳥と考えて居たのだろう。

 丸わかりだ。

 小狡い事を考える。


 「魔法の証文を頼む」と、マリーに声をかけたのだが。


 「ソレは、私が」と、リリーが前に出た。


 「出来るのか?」


 「彼女は里の錬金術師なのです」ロイドが代わりに答えた。


 この場で盗賊団とは言えないから、里と表現したのか。


 「しかし、錬金術師って結構居るのだな?」


 「そうですね」頷き「能力はピンきりですが、メジャーな職業の1つです」と、リリー。

 「私は、御先祖様にエリーと言う名の錬金術師が今して、その覚醒遺伝で産まれた時からスキルを持っています」

 「御先祖のエリーは、あの有名な錬金術師マリー様の弟子でした」


 「ほうソレは、凄い事です」感心する主。


 「爆弾錬金術師のマリーの弟子」ビックリ顔の会長。


 俺は、マリーを指差して「ココにその本人が居るぞ」


 「?」な顔のその場の全員。


 「大錬金術師マリーなのだから、長生きしたり若返ったりは簡単みたいだぞ」

 また、適当な事を言ってみた。


 「爆弾錬金術師ってのが気になるけど」頷き「私がそのマリーよ」

 「エリーは確かに弟子の1人ね」

 

 「本物!」声を揃えて、合唱。


 「マリー様! 是非に私も弟子にしてください」マリーに頭を下げて頼み込むリリー。


 「良いわよ、でも先に魔法の証文を造って見せて」と、羊皮紙と、ペンを主に要求した。

 いつもの肩掛けカバンを持ち歩かないとと、突っ込みたいが、その返事は予想が付く、黄色い色がお洒落じゃない……だ。


 ソレを受け取ったリリー。

 すらすらと文字を書く。

 「始まりは、前金を受け取ってからで良いですね?」


 頷く一同。


 「完了はどうしましょう?」


 「私の依頼は」主の方「ドワーフ村からドワーフ村への往復で目的地をココの屋敷でお願いしたい」


 「私の方は」会長「商人ギルドの敷地内で商品の確認後と、言う事でお願いします」


 その2枚を書き上げソレゾレに渡し署名を即す。

 署名された羊皮紙の一番下に、ロイドが確認したと署名をした。

 その間にリリーが床に魔方陣を描き上げ、依頼者と仲介者の署名の入った羊皮紙の証文を順に魔法を掛ける。

 淡く光ってコピーの様なモノが出来た。

 そのコピーの方、魔法の証文をロイドに、原本を依頼者にと渡す。

 魔法の証文の作り方は初めて見たが、えらく簡単に出来た。

 

 マリーを見た。

 しっかりと頷いている。

 リリーの証文は合格の様だ。


 「出発は、何時になさいますか?」主の質問に。


 「俺は、何時でも構わない」と、会長を見る。


 「では、明日の朝にお金を保険ギルドでお渡しします」会長だ「ソレでよろしいですか?」


 その問いに、3人で頷いた。



 さて屋敷に戻るとローブのフードを被ったフローラルが待っていた。

 相当に退屈したのだろう、立ったままで寝ていた。鼻チョウチン付きでだ。

 器用な奴だ。


 「おい!」と、肩を叩いて起こす。


 パチンと、鼻チョウチンが割れて強烈な匂いを放つ。外側は消臭剤のおかげでフローラルだが、中身は腐ったゾンビそのままなのかやたらに臭い。

 「ああ、やっと帰って来た」


 「何のようだ?」

 「何か在ったのか?」


 「いや、大した事じゃない」

 「兄貴からの伝言だ」

 「上の者からの呼び出しが有った、日取りは後程に連絡する」

 「だってさ」


 「成る程」頷いて「わかった、と伝えといてくれ」


 「じゃ」手を振り「帰る」と、フローラルは出て行った。


 ソレを見送り「この世界、電話が無いから不便だ」


 「確かに」頷いたマリー「今度、研究してみようかしら」


 「作れるのか?」


 「さー」そんなのやってみないとわからないわと、言いたげに。


 「ウワ!」そこにコツメが帰って来た、隣の屋敷に遊びに行っていたのだろう「ナニ? この匂い、臭い……」


 君の屁も臭いがな……。

 

 「さっきまで、フローラルが居たのよ」


 「何で?」


 「伝言を持って来たんだ」


 「ソレは、フローラルじゃ無きゃ駄目なの?」


 「いや、誰でも良いと思う」


 「じゃ、何でよー」


 「たぶん」鼻を鳴らして「頭目の嫌がらせ……だろ?」


 「ブー」屁ではなく、口を尖らせた。

 



 翌朝、保険ギルドの在る冒険者ギルドに赴いた。

 俺とマリーの二人でだ。

 

 その建物は城の入り口の前の噴水広場のメイン通り側の角に在った。

 その向かい、通りを挟んだ角が商人ギルドの建物だった。

 

 歴史を感じさせる建物に入り窓口へと向かう。

 入ってスグのロビーは閑散としていた、まるで活気が無い。

 冒険者風もチラホラと居たが、皆一様に暗い顔だ。

 理由はすぐにわかった。チラッと見掛けた冒険依頼の掲示板に依頼が無いのだ、仕事が無ければ金になら無い、殆んど日雇い労働者の様な生活をしている冒険者にとっては、コレは辛いだろう。

 ただ腕っぷしダケの冒険者には潰しも効かないだろうし。

 俺ツエ~では食ってはいけない。

 旨く保険ギルドが軌道に乗れば良いが……。

 

 ロビーの奥、正面には幾つも受付が並んでいる、冒険者ギルドの受付なのだが、1つを残して総てが閉まっていた。

 そんな中、保険ギルドの受付が見付からない。

 キョロキョロと辺りを見渡していると、後ろから声を掛けられた。


 「コチラです」見ると、黒い背広姿のロイドが居た。

 その指す方、左の奥まった所に扉、そのノブに小さな看板が掛かっている。

 

 「看板、もう少し考えた方が良いわよ」マリーも同意見の様だ。


 「はい、既に発注しております」ム、このイケメン仕事が早い。昨日今日なのに。


 扉を潜ると少し小さな部屋。

 奥に窓口が1つ、手前に机と椅子が一組と、その奥にまた扉。

 その奥の部屋に通された。ソコも机と椅子ダケの簡素な造りだ。

 その椅子の1つに既に会長が座っている。

 目の前のテーブルには、皮の巾着袋が大小2つ置かれている。


 俺達もその向かいに座った。

 

 「では、契約です」ロイドが魔法の証文と皮袋を俺に渡し、別に皿の上に置かれた手数料を自身で受け取った。

 「買い付けリストはコチラです」ソレも俺に差し出す。魔法のリストだった。


 金貨100枚の袋と金貨500枚の袋……。

 重すぎる。

 「銀行でもれば良いのだが……」思わず口が出た。


 その何気ない言葉にスグに反応した商人ギルドの会長。

 「銀行とは?」


 金に絡む事なら儲けもと、敏感に感じ取った様だ。


 「金を預り、そのやり取りを代行してくれるシステムだ」

 「ただ、預かる事もある」

 「その預かった金で投資をしたり、貸して金利で儲けたりだ」


 「その話」真剣な眼差しで「詳しくお聞かせ願いませんか?」


 やはり、儲けの言葉に反応した。


 あと1人モット反応したモノがいた、マリーだった。


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