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コカトリスな鶏


 蜘蛛達がゴキブリを追い払ってくれたのだが、マリーとコツメとジュリアはトラックの中で丸まって座り込んだまま動こうとはしない。

 

 時折、肩を竦めては、背中を小刻みに震わしている。

 戦闘の興奮が覚めた今、生理的嫌悪感に襲われているのだろう。

 暫くはそっとしといてやろう。


 俺は、無数の死骸から適当に選びスキルを出す。


    [パッシブスキル(嫌悪)]

    [パッシブスキル(醜悪)]

    [パッシブスキル(夜更かし)]

    [アクティブスキル(悪食)]

    [アクティブスキル(加速)]

    [アクティブスキル(蛍火)] 

 

 結構、イロイロ持って居るのだな。

 その殆どが要らないが。


 蜘蛛五匹には、悪食、夜更かし、加速、蛍火を。

 蜂達とゴーレム達には、加速と蛍火を。

 それぞれに与えた。

 

 シルバが早速に試している。

 ――スキル! 加速――

 何も起こらない。

 ソレを見ていたゼクスは歩きながら。

 ――加速――

 ほんの一瞬消えて、少し前に跳ぶ様に現れて歩く。

 テクテクふっテクテク、そんな感じだ。

 レベルが上がればもう少し跳ぶ距離? 加速の距離か? が、増えるのかな?

 

 ――蛍火――コレは蜂の隊長だ。

 腹がボヤッと光る。

 こんなの持って居たのか?

 何の役に立つんだ?

 

 イヤ、そう言えば元の世界のゴキブリも夜中に見ると黒光りして見える、もしかしてアレもスキルだったのか? コレか?


 ナンてな。


 アレ?そう言えばムラクモ達が居ないな?

 この加速をヤロうとしたのだが見掛けない。

 仕方無いので幾つか飴玉にして、ポケットに入れた。


 「さて、君達」ゴーレム達と蜘蛛達と蜂達に「仕事だ」ビルを指し。


 全員が頷いた。


 ゴーレム達はビルの壁を壊し初め、蜘蛛は瓦礫を糸で繋いでスロープを造る。

 蜂達は辺りの警戒をしているモノと、腹を光らせ誘導をしているモノとに別れて動き回り始めた。

 もちろん、ゴーレム達に最後の壁は残す様にと指示を出す。

 アノ巨大鶏がその向こうに居るのがわかっているからだ。

 

 やはり、夜中にコッソリが一番の方法なのだろうと思われる。

 鳥なのだから、夜は目が見えない筈だし。

 しかし、ソレだとドワーフ村との行き来が難しく成る。

 やはり、何とか倒すべきか?

 今の俺達で倒せるのか?

 イヤイヤ、そんな無謀な冒険は避けるべきだろう。


 一端、トラックに戻り、荷室で車座の三人に告げる。

 「夜まで待って、コッソりとダンジョンを抜けようと思う。だから今のうちにシッカリ寝ていてくれ」


 その言葉に三人は、一斉に俺を見た。


 「アンタ! ナニ言ってるの!」マリーが血相を変えて。

 「夜、駄目よ」ブルっと震えて「夜は、アイツ等の時間なのよ!」


 その他2名も首がもげても構わない、ソンナ勢いで頷いた。


 「イヤ、しかし」2度と見たくないと言う気持ちなのだろう。それは、わかるが。

 「あの鶏がなぁ」


 「アンなの倒せば良いのよ」語尾荒く、吠える様に。


 「勝てるのか?」と、言う問いに答える積もりは無いとばかりに、立ち上がった三人は、その勢いのままに外に飛び出して行った。


 慌てて後を追う。


 マリーの指示が飛ぶ。

 「コツメは偵察、鶏を確認してきて」

 「ジュリアは蜘蛛達と相談して、鶏を押さえ込める網を蜘蛛の糸で作って」 

 「私は……強力な毒を造るわ」頷き「皆! イイ?」


 コツメとジュリアが頷いて、そしてソレゾレに走り出す。


 俺は独り置いてけぼり。




 暫く、ボーッと、中断した造りかけの通路を見ていると。

 バイクの音が遠くで聞こえてきた。

 どうして? と、見ると。

 交差点からコチラに向かって走ってくるハーレー。

 運転しているのはシグレだ!

 革ジャンにハーレー。

 何処からか? BGMが聞こえてくる気がした。

 ダダダだっだー♪ダダダだーだー♪たーーたた♪たーたー♪


 「ロックだ……」思わず呟く。


 「ヘビメタでしょ」いつの間にか隣に居るマリー。

 「鋲付きの革ジャンにあの化粧」


 「あ! イヤ、何故運転出来る」マリーを見ながら、シグレを指差した。


 「知らないわよ」鼻を鳴らして「アンタが何かしたんでしょ」


 何か?

 「あ! バイクにゴーレム召還の魔法を掛けた」目を見開き「アレか?」

 試しに、トラックに呪文を掛けて見た。

 「マリー、運転してみてくれ」


 「出来ないわよ」

 地面に座り込み、魔方陣を描きながら、適当な返事。


 ――旦那、旦那、アッシが運転してもイイですかい?――

 シグレの後ろから、バイクを追いかけて来たムラクモが手を上げた。


 「ソレは、後でね」マリー。

 ソレを合図か、全員が集まって来る。

 

 「鶏はすぐ目の前で、寝てた」コツメの報告。


 「その上に両崖を利用して、クモの巣を張ったわ」

 ジュリア……普通に喋って居る。

 「繋がっている崖の部分を壊せば、真下に落とせる」

 

 「私も、コンビニから取ってきた殺虫剤で、毒を造った」マリー。

 「ジュリア! 皆の武器に定着化させて頂戴」と、毒のビンを渡す。


 受け取ったジュリアは直ぐ様、作業を開始。

 コツメの刀、カエル達の槍にゴーレム達の剣とランスを順番に素早く。

 その作業は魔方陣を描き、魔法の炉を出現させて、毒の薬と合わせて焼き上げる。

 そんな感じだった。

 

 「準備は良いわよね」


 「待って」俺は、ポケットからスキル飴玉を出して、ムラクモとシグレに渡す。


 ――旦那……コレは?――


 「加速だ、ほんの少しの間早く動ける、そんな感じのスキルだ」


 ――有り難う御座います、頂いておきます――

 二人して口に放り込む。


 「ヨシ! 始めよう」


 全員が頷く。


 ジュリアはムラクモに抱えられてビルの屋上へ移動する。

 蜘蛛達は既に鶏の上の蜘蛛の巣で待機している。

 残りの者は、先程にゴーレム達が作ったスロープを使い建物の中、残した壁の扉の前で構える。


 先ずは、俺がソッと扉を開ける。

 反対側の壁が無いそのすぐ前に鶏の尻尾が見えた。デカイ尻だ。


 最初にその扉をクグったのは蜂達だ。


 次にゼクスとシルバ。


 その次に入ろうとしたコツメを止めて、シグレを送る。コツメは最後だ、絶対にジッとしてられない、そう言う奴だ。


 そして、アルマが音を立てずにユックリと、じっくりと、そーっと入る。カチャン。

 

 ソレを見ていたコツメがイライラし始めた。

 

 扉から半分まで出たアルマ、次の一歩をユックリと出す。カチャン。

 また一歩。カチャン。

 

 身を乗り出すコツメ。


 カチャン。まだ脚が扉に残っている。

 刀に手を掛け、放すを小刻みに繰り返すコツメ。


 カチャン。


 ……。

 

 ドンガラガッシャン!

 アルマを突き飛ばしてコツメが走り出した。

 そのまま、合図も待たずに斬り込んでいた。


 「あ! アノ馬鹿」マリーの叫びも結構デカイぞ!


 「攻撃開始だ! ヤレ」と遅れて合図を出す前に、既に鶏は起き上がりコチラを向こうと動き出す。


 突然の出来事に皆は右往左往。


 そんななか「毒を……」と、言い掛けたマリーが固まった。石化だ。

 

 そんなマリーを扉の陰、部屋の外に引き戻し。鶏の視線を外して石化を解除。


 少し落ち着いたのか、皆はソレゾレに攻撃し始めた。

 シグレの槍。

 シルバの大剣。

 その前に立ち、盾を構えるゼクス。

 アルマは……コケた拍子に外れた頭を探していた。


 「セオドア! 巨大化だ」1人、扉をクグり損ねてオロオロしているセオドアを掴み、ゼクスと鶏の間に投げ込んだ。


 切れて壁の無い部屋に入ろうと首を突っ込んだ鶏を下から膨らんだセオドアが天井に挟んで押さえ込んだ。

 セオドア自体も部屋に挟まれて、詰まってか? 身動き出来ない格好だが。

 

 「そのまま押さえ付けろ」


 シグレがそのセオドアを登り、天井とセオドアの隙間から見える鶏の頭を槍で突く。


 「セオドア! 糸は出せるか?」


 ――出せる、手は外に出ている―― 声は出せない状態だからか? 念話だ。


 「糸を鶏に絡ませろ」


 ――わかった――

 ――あ! イヤ、その必要は無いみたいだ――

 ――外から、巨大化した蜘蛛達が糸を絡めてる――


 突然に、スポッと鶏の首が消えた。外へ抜けたようだ。

 セオドアだけが、部屋に詰まっている。


 「セオドア! 元に戻れ」


 開ける視界。

 鶏は半分ほどを糸で絡め取られて蜘蛛達に押さえ込まれていた。


 俺は、扉から飛び出し、もう一度セオドアを掴み鶏の腹に目掛けて投げた「腹に掴まれ」


蜘蛛達を見て「そのままセオドアごと糸を巻き付けろ」


 鶏と蜘蛛がゴロゴロと転がり、その度に糸が巻かれて絡まる。

 完全にセオドアが見えなくなった頃を見計らって。

 「セオドア! 巨大化しろ!」


 ――! わかった!――


 糸の隙間からセオドアの身体がはみ出して、鶏を押さえボンレスハム状態に成った。

 完全に身動き出来ない、鶏とセオドア。

 そして、腹を押された鶏は呼吸も出来ない状態。

 熊の縫いぐるみは元々に呼吸はしないので、コレで詰みだ。

 

 ユックリと、窒息を待つ事にする。


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