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売られたジュリア


 「ドナドナドーナドーナ売られて行くよー♪」コツメが歌ってる。

 その前でジュリアが滝の様な涙を流していた。


 マリーはとはいうと、証文の数字を確認してニンマリ。

 ジュリアに結構な値が着いた様だ。

 ソレでも、まだまだ残金がタップリ残っていると、村長に告げていた。

 その内に回収に来るから用意しとく様に、と。


 そして今は、ジュリアス・カエサルの墓に向かっている、村の裏手の崖の上だ。

 マリーの最後の用事だと言う事だ。金以外の事だが。

 案内はジュリア……なのだが、泣き止まないので一向に進まない。


 「コツメ、その歌はもういい加減に辞めないか?」もう何度目かの注意。


 「だって、額の赤い札」指差して笑ってる。


 ダァーっと涙の音が大きく成った。


 「いい加減、諦めたら?」マリーの素っ気ない一言。


 ダァパー。


 「鬱陶しいわね」

 「で、どっちにするか決めたの?」


 そのどっちとは、ジュリアの所有権を、俺にするかマリーにするかだが、ソレをジュリア本人に決めさせてやるとマリーが告げたのだ。

 つまり、俺の奴隷かマリーの奴隷かだ。

 そりゃ、泣くよな……。

 しかし、額の差し押さえの札を消すにはそれしか選択肢が無いと言う事なので、決めるしかない。

 コツメがジュリアをイジメているのは、その選択肢に自分が入っていない事が気に入らないらしい。

 だが、それも仕方の無い事、ジュリアはマリーの借金のカタで、そのマリーの持ち主が俺と言う事に成っている、やはりソコにコツメは入って来ない。


 因みに新人ゴーレム達三人、中身の無い鎧を含めては俺の配下に成っている、そのうち二人は元はマリーの支配下だったが、魔核? 人工魂を取り除いて新しく俺が召喚したので俺と言う事に成ったらしい。

 実際問題、ドッチでも良いのだが。ゴーレムだし。


 しかし、ジュリアとなると話が違ってくる、亜人のドワーフとは言うものの見た目はチッチャイ女の子だ。


 「やはり、どうにか解放は出来ないだろうか?」どうにも可哀想だ。


 「無理ね」にべもなく「差し押さえの札をぶら下げっぱなしで一生を過ごさせる積もりならソレでも構わないけど」


 「イヤ、ソレは」もっと可哀想だ!

 「俺じゃ無くてマリーの奴隷にするとなると、ソレはどうやるんだ?」

 俺だと、一生どころか、死んでも奴隷のままだ。


 「何処かの街へ行って、奴隷印を打って貰う事になるわね」

 

 「ソレだと、普通に解除、解放は出来るんだろ?」


 「すぐに解放は出来るけど、証文がどう判断するかはわからないわ」


 「証文が判断するのか?」ソレはまた凄いな? どう成っているのだろうな。


 「魔法の証文って、大昔からあるけど良く出来てるのよ」

 「魔法で造り出す紙に、シンプルな魂を込める……塗り込むかしら、」

 「錬金術師の小遣い稼ぎに良く造ったモノだわ」


 「錬金術師って行政書士、見たいな事もするのか」


 「そうね、ソレも仕事のうちよ」


 「じゃ、奴隷印も?」


 「ソレは奴隷省の仕事」

 「生きた魂を縛るのだから、疑似魂を扱う錬金術師とは少し違うのよ」

 

 「省? 商?」


 「省よ、国の管轄」

 「国に認められた司祭、宗教のね、が国の機関に出向して奴隷を管理するの」

 「その下に、奴隷商が入る形」


  「専売公社見たいなモノか」


 「そうね、どうしても奴隷を扱うと、犯罪に結び付き易いから、その防止も兼ねて……」

 「表向きわね」


 「ん? と、言うと……ホンネは?」


 「ソンナの決まりきってるじゃない! 税金」

 「お金よ!」最後のセリフには、思念を滲ませていた気がした。


 「あれ? 生きた魂を扱う?」

 「司祭って、俺と同じ?」


 「な、分けないじゃ無い」

 「貴方はネクロマンサー、司祭とは真逆の存在よ」

 「まぁやれる事は近い様にも見えるけど、力の差が歴然よ」


 「でも、考えて見れば、錬金術師も近いんじゃないか? ゴーレムを作ったり」

 

 「ん? バカにしてる?」

 「錬金術師に魂は扱えないわ」


 「赤い水晶の」


 「あれは疑似魂」

 「ただ似せて造ったダケのモノ」

 「だから、成長もしない……レベルも上がんない」


 「え! そうなの?」と、コツメと遊んでいるゴーレム達を見る。


 「あのモノ達はちゃんと成長するわよ」

 「貴方が……本物の魂を入れたから」


 ふーん。無邪気に遊ぶゴーレム4人とコツメ。

 その横でキセルを吹かしながら、シグレと何か話ているムラクモ。


 ジュリアは、1人でポツンと体育座り。

 

 「どうするんだろ?」


 「さぁ……本人次第ね」


 そのジュリアにコツメが近付き話かけ始めた。


 また、苛め始めるのかと見守るも、今度はそうでも無いらしい。

 ジュリアがコツメの話を頷きながら聞いている。

 コツメが俺を指差した。

 どうやら俺の話らしい。


 ジュリアがゆっくり立ち上がる。

 変なリズムでコッチに歩いて来た。

 額の札もあって、そのまんまキョンシーみたいだ。

 

 俺のすぐ前に立ち、震えながら頭を下げた。


 「アンタ……それで良いの?」隣に居たマリーが念を押す。


 「……ハァィ……」声も震えてる。


 「チャンと理解して、考えた?」


 「……ハィ……」小さく頷くジュリア。


 「だってさ」マリーが俺に小首を傾げて手で促す。


 「良いのか?」躊躇う俺に。


 「本人が決めた事だから、その決断に報いてやりなさいよ」


 「本当に良いんだな? やり直しはきかないぞ?」今度はジュリアに聞いた。


 頷くジュリア。


 「わかった」呪文を唱える。

 光る魔方陣がジュリアを包み込む。

 その後ろでコツメが一瞬、ニヤリと笑うのが見えた気がした。



 額の赤い札が無くなったジュリアの案内で、ジュリアス・カエサルの墓の前までやって来た。

 村が一望出来る一番高い場所だった。


 手を合わせるジュリア。

 

 少し嫌な予感がしたので先に言っておく。

 「カエサルの召喚は絶対にしないぞ」宣言だ。

 

 「あのスケベハゲの召喚なんか何が有っても頼まないわよ」


 「そ、そうか……」一安心。


 「スキルを取り出して頂戴」


 「な、そんな墓荒らし見たいな事は出来ん!」ジュリアを指し「人の気持ちも考えろ!」


 「そのスキルを全部、ジュリアに継承させるのよ」

 「カエサルの気持ちを考えたら、自分の子孫が、無理矢理に奴隷にされて、魔物の出る旅に連れ出されるのよ」俺を指差し「自分のスキルが少しでも助けに成るなら本望じゃない!」ドーーーン。


 「イヤ……しかし……」気圧される俺。


 「ジュリアを奴隷にしたのはアンタよ! 責任とりなさい!」ド、ドーン。

 そしてジュリアに向き直り「アンタもそれで良いわよね?」


 「ぇ……ぁ……」言い淀むジュリアに。


 「良いわよね!」下から睨むマリー。


 無理矢理に頷かされたジュリア。


 「ほら、本人も良いと言ってるわよ」

 

 なんか、無茶苦茶だな……。


 「ほら、早くヤんなさいよ」俺に妙な圧を掛けて「ほら!」


 「わかったよ」頷き「やるよ」

 スキル召喚の呪文を唱えた。


 出て来たスキルは幾つも在った。


 金工、木工、石工の基本職。

 武器、防具、アクセサリーの全装備。

 ウォーク、スイム、夜目、遠目、鑑識眼、食識眼、料理師、罠師、魔法のポケットこれらは冒険者のスキルか。

 加速、加力、避力、硬力、スタミナ、増幅、自動回復、戦闘系だな。

 ウワバミ、色魔、暴食、イカサマ、威嚇、逃げ足……駄目なヤツだ。


 「ひぃ、ふぅ、みぃ……」数えだすマリー。


 「全部で28個だな……」首を振りつつ「いらないヤツも有るが」


 「さぁ、全部を取りなさい」マリーがジュリアを急かす。


 まてまて! 慌ててウワバミと色魔と暴食とイカサマを飴玉にする。

 と、言うか、その4つを飴玉に変えるのが精一杯だった、ギリギリ間に合った感じだ。


 後の残りは全てジュリアの中に吸収された。

 

 威嚇と逃げ足は間に合わなかったが、これらはそんなに実害も無いだろう、威嚇は俺も持っているし……。


 「さ、帰るわよ」マリー「今度は何処へ行くの? やっぱり城下街?」


 「そうだな、1度、城下街に行くか」頷き「例のお嬢様の御屋敷に呼ばれてもいるし」懐から羊皮紙を出した。

 

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