表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/114

落少女注意


 盛大に燃えるクモの巣を、裏通りとビルの裏口を駆使して回避し、出口、反対側の道に続くビルを見つけ出し、異世界の廃墟のダンジョンを抜ける。

 その間、別の魔物とは遭遇していない。

 あの蜘蛛達が食ってしまったのか? 追い払ったのか?

 どっちでも良いのだが、俺達にはラッキーだ、もう暫くは魔物はいらない。

 お腹いっぱい。

 

 そんなこんなで、ダンジョンを攻略した俺達は、ドワーフ村を目指す。

 残念な事に、徒歩でだ。

 あそこの車を、ダンジョンから出す方法が見付からなかった。

 出口はヤッパリ、何処かのビルのスッパリ切れた一室。

 本当に……残念だ。


 等と考えながら、峡谷の底の様な道を歩く。

 つまりは退屈なのだ。


 「コツメの忍術、アレは凄いなー」

 一人でニタニタしながら歩くコツメに声を掛けた。


 「チィっ」マリーの舌打ち。


 「凄いでしょう」気にせず、刀に電気を帯びさせて。

 「雷電斬り!」やって見せる。


 「ああ、ソレじゃない、氷のヤツだ」


 「氷手裏剣?」と、今度は氷のナイフを造り出す。


 「そうソレ! その氷はどうやって造ってるんだ? 汗とか? コツメの体液とか?」


 「何ソレ、そんな分けないじゃん、空気中の水分を集めて凍らせてるの」


 「ほう、氷魔法はそんな事も出来るのか」


 「氷手裏剣!」しっかり訂正してくる、こだわりか?


 「少し見せてくれ」と、氷のナイフを取り……そして、舐めた。

 「おおおお、冷たくて旨い」

 

 旨い事やるわねと、マリーが「チョッと……私にも頂戴よ」


 「いやー」っと、もう1本造って自分で舐め始めた。

 「本当、美味しい」


 「チィっ」


 そんなやり取りをしつつ、3日歩いた。

 峡谷を抜け、草木一本も無い荒野を通り、やはり岩肌の剥き出した山を登る。

 その間、町はおろか村1つ無く、それどころか人っこ一人出会わない。

 魔物もダンジョンから離れると途端に弱くなる。


 「この山よ」ヘトヘトの泥々のマリー「やっとよ……あと一息」

 

 「ここらで休もうか?」


 山の麓、コレから始まる山登りにウンザリしつつ、適当な岩に腰を落とした。


 剥き出しの山肌からパラパラと小石が転がり落ちてくる。

 パラパラ……。

 バラバラ……。

 ゴロンゴロン……。

 少し大きめの岩が足元で止まった。


 「危ないな、落石注意の看板が要るんじゃ無いのか?」


 「きゃー」

 ゴロゴロ……ズサー……。


 「落少女注意の看板も必要見たいね」


 マリーの座っている目の前に、少女が転がり落ちて来た。


 「チョッと、大丈夫?」


 返事が無い。

 絶賛気絶中。


 「う~ん」俺を見て「治療してあげなさいよ、大した怪我でも無いけど傷だらけだし」


 「へーいい」

 適当な返事を返して、うつ伏せにベチャっとひっくり返った少女を起こし、表裏満遍なく平手打ちした。


 柔らかい女の子の感触、少しポッチャリしているのか? 着痩せしていて分からなかった、胸も大きめだ。

 ついでに顔のホコリも払ってやった。

 長い黒髪の綺麗な顔をしている。


 「起きないね?」コツメが覗きに来た。


 「コツメ、氷」と、手を出す。


 その手に、ハイっと氷を乗っけて、「どおするの?」


 「こうする」と、少女の口の中にねじ込んだ。


 ゲホッ……ガホッ……。

 咳き込みながら眼を覚ます少女。


 「雑ねえ」


 「大丈夫か?」マリーは無視して少女に声をかける。

 

 少女は俺の顔を見て、素早く距離を取り極力小さくなりながら「xxxxぃxx、ぁxxxぉxxぃxx……」


 「はっきり喋りなさい! 聞こえないわよ!」


 マリーに怒鳴られた少女、ビクッと身体を震わせて「有り難うございます」聞き取れはしたが、ソレでも小さな声。


 「やれば出来るじゃない……随分と短く成ってる様だけど」マリーはソレでも十分としたようだ。


 「そ、それでは、失礼いたします」ボソボソと言い、少しづつ後ろ手に離れて行く。


 そんな少女に「待ちなさいよ」呼び止めるマリー。

 「あなた、ドワーフでしょ」と、近付いて行く。


 マリーよりほんの少し大きい位の背丈だ。


 「はい!」裏返っている。


 「私達、ドワーフ村に行きたいの」キッと睨み「あなた、案内しなさい!」


 「はイー……」スケバンに睨まれた小学生見たいに成っている。

 そのスケバンの方は、10歳の子供なのに。


 「あんた、名前は?」わざと、ドスを効かせてる?


 「ジュリア・カエサル……です」名前を聞かれただけで、キョドりスギだ。


 「カエサルですって?」マリー、目が怖いぞ。

 「ジュリアス・カエサルって知ってる?」


 「御先祖様です……村の英雄です……です」


 「あんた! ジュリアスの子孫?」ギロリ。


 「はイー……です……です」


 「ちょうど良かったわ、あんたん家に用事よ」

 「連れて行きなさい!」


 「え……えー……エー」


 「えっ、じゃない」

 「つ、れ、て、い、き、な、さ、い」


 ジュリアと名乗った娘、半泣きだ。


 「マリーちゃん、もうチョッと優しくしようね」俺に出来る精一杯の優しげな声で「ジュリアちゃんも、怖くないよ~……大丈夫だよ~」自分で自分が気持ち悪くなる。




 マリーはジュリアを半ば強引に引っ張り、先を急ぐ。


 「ジュリアスが英雄ですって? 信じられない」

 ブツブツ言いながら。

 「子孫? 確かに生きては居ないか何百年も経っているし」

 まだブツブツ。

 「あのスケベのハゲが英雄?」

 ブツブツ。

 「ブツブツ……」

 ブツブツ。


 そのブツブツを聞いたジュリアが不思議そうにしている。

 まるで、会った事がある様だと。

 しかし、ソレを質問として、マリーには聞けない様だ。


 教えてやるか?

 マリーが何百年も昔の人間だって……。

 辞めといた方が良いか、ゾンビだってわかってしまう。

 俺がネクロマンサーってのも一緒に。

 その2つは普通に考えて、他人に知られない方が良い事だろうし。

 う~ん。


 「チョッと、何をブツブツ言ってるのよ」マリーに言われた。マリーに。


 「ところでジュリア、あんたは何で落ちてきたの? ドワーフは鉱山とか崖とかは得意な筈でしょ」


 「……あ……う……え」時間が掛かりそうだ。

 

 「ドワーフってそうなんだ」


 「あと、炭鉱も得意でしょ」


 「はイー」


 「ハイじゃ無いわよ」

 

 イライラし始めたか? わかるけど

 

 「だから! 何で落ちてきたのって聞いてるの」


 「あ……う……」何だかわからない言葉と、何だかわからない身振り手振り。


 「あー」コツメが「成る程」と、頷いた。


 「わかるのか!?」


 「崖で鉱石を採取しようとしていた時に、魔物と出くわしたんだって」


 ジュリアがコツメを見て、ウンウンと小刻みに頷いた。


 アレで何故? わかる!


 「魔物?」眉をひそめるマリー。


 ジュリアがおどおどと指差した。


 全員が見る。


 「何も居ないじゃないか」

 皆もソレに同意する。


 「あう……あう……」言葉には成っていないが、ジェスチャーは大きく成ってきた。


 「姿を消せる……トカゲ? って言ってる見たい」翻訳するコツメ。


 だから、何故わかる?


 ――敵3体発見! 前方スグに透明化にて潜伏中――

 ――攻撃許可を求む――


 ン!? もう一度、良く見る。

 小石が規則的にパラパラと落ちてくる、歩いた振動でか?


 「見えない……」


 ――熱源反応有り、目視確認出来ず――


 蜂のピット気管でわかるのか……厄介そうだ。


 「蜂部隊につぐ、攻撃を許可する威力攻撃を開始せよ」


 ブブブーン。


 「私達は?」コツメ。


 「お前達は……一旦待機だ、見えない敵に飛び込むのは危なすぎる」


 「蜂達だけで勝てるの?」


 「わからん、戦況が見えん」目を凝らし「せめて何か目印でもあれば」


 コツメが地面の砂を掴み投げた。

 ほんの一瞬砂がトカゲの形に成るが、地面の色と同化してスグに見失う。


 「駄目か!」


 「良いアイデアだと思ったんだけど」コツメが悔しそう。


 「ああ、イヤ良いアイデアだ!」

 セオドアを見て、「蜘蛛の糸だ、巻き付けられないか?」


 ――まだ、こんなだ――手から出た蜘蛛の糸が足元に落ちて溜まるだけ。


 「飛ばせられないのか……」ウーン「イヤ、ソレで良い」

 「蜂に命じる、特殊任務だ精鋭を三名選出せよ」


 ブーン。スグに飛んできた蜂に。

 「この糸をトカゲに巻き付けろ! 行け~」


 糸の端を掴んだ蜂が飛んでいく。

 セオドアも理解したのかどんどん糸を出す。

 蜂達も、戦線を維持しつつ、順々に糸を掴み巻き付けていった。


 スグにトカゲは糸で形を露にされた。


 「ムラクモ!」


 ――ハイ! 旦那!――


 カエルの舌で一匹を引き寄せ、その場で袋叩き。

 マリーまでソレに加わっている、持っている武器は……スリコギ棒?

 暫くすると、トカゲの透明化が解けた、緑色の体色をさらしてノビている。

 倒したようだ。


 「次! 2匹目」マリーがムラクモに指示をだす。


 ――ハイさ~――


 二回目の袋叩きが始まった。


 調子に乗ったマリーは、一番近くでポカスカやっている、スリコギ棒が一番短いのだからそうなるのは仕方が無いのか。


 「マリー! 危なくないか?」


 「大丈夫よ!」ポカスカ、馬乗りに成り。


 そして、案の定、弾き跳ばされて来た、俺とジュリアの足元に。

 

 「ブべっ!」服がはだけて、プリっとした桃色の尻丸出しで。

  

 「可愛い……」その尻を見た、ジュリアの感想。


 キッとジュリアをヒト睨みして、また戦線に走りより、袋に加わった。




 終わってしまえば呆気ない。

 姿さえ見えればソンなものなのか、弱い魔物だった。

 

 そのトカゲ3体を足元に、スキルを出す。

 


   [アクティブスキル(消音)]が、3個。

   [アクティブスキル(透明化)]が、3個。


 フーン……少し考え。

 ムラクモにシグレにセオドアかな? と、三人を呼びスキルを渡した。


 「どんなスキル?」コツメが興味津々。


 「透明化でしょ」マリーが分かりきった事をと。


 「ソレと消音だ」補足する。


 「あらー、忍者っポイわね~」コツメを見て「残念ね~」


 「あ! 私が欲しかった! ずるーい」慌てるコツメ。


 「あんた、元々無理でしょ、獣人なんだから」


 「ウー……」とても悔しそうだ。


 ソレを見るマリーの目が笑ってる。


 


 「さて、邪魔モノも居なくなった事だし、ジュリア、早く案内しなさい」


 そのジュリアはセオドアと何やら話をしている。

 セオドアの出す糸を見て、感心していた。

 人と話すのは苦手な様だが、ぬいぐるみのセオドアとは普通に話せる様だ。

 ……。

 ……!?


 「セオドア! 話せるのか?」


 「ン! 話せちゃイケないのか?」セオドアが方眉を上げつつ。


 「イヤ、ずっと念話だったから」何故?


 「そっちの方が楽だからだよ」


 「それだけ?」


 「ソレだけじゃ悪いか」

 

 「ゴーレムだから喋れるわよ」マリーは知っていた様だ、さも当然と。


 さいですか、肩を竦めて「セオドア、ジュリアに道案内を頼んでくれないか」


 


 ジュリアとセオドアを先頭に暫く山を登ると頂が見えてきた。

 そんなに高い山でもなかった様だ。

 その頂の向こうに黒い煙が数本上がっているのが見える。


 「あの煙は?」


 セオドアがジュリアと何か話し「村の熔鉱炉の煙だとよ」通訳か?

 

 「熔鉱炉?」


 「ドワーフは鍛冶が得意な種族だからでしょ」

 「鉄工、ガラス、革、木工、その他もろもろ、造るモノ全部だけど、特に鍛冶師が多いわね」


 「職人の村か」

 

 と、頂きにたどり着き、村を見渡せる様に成った。

 !

 見覚えのある景色。

 建物は低いが、ビルだ、そのビルから煙が出ている。

 元の世界の町。


 「ダンジョンじゃ無いよな?」


 「大丈夫よ、昔に私と仲間達が作った村よ」


 「え?」


 「魔物を倒して、結界を張ったの」ジュリアを見て「その娘の御先祖様とか言うジュリアスに頼まれてね」

 中央の違和感のある建物を指し。

 「魔光式の結界よ」塔のような、太い煙突の様な建物。

 「その時の料金をまだ貰ってないのよ」

 ニヤリと笑い。

 「キッチリ回収させて貰うわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ