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ダンジョン攻略


 ――で、俺に何をさせたい? 何をさせる為に呼び出した?―― ぶっきらぼうに言い放つセオドア。


 「イヤ……」考えていなかった。

 マリーを見る。


 「先ずは、荷物持ちね」背中のリュックを地面に置いた。

  

 そのリュックを面倒臭そうに背負い……立ち上がらない。

 結構、踏ん張って、頑張っている様だが、一向に持ち上がらない。


 ――こんな重いもの持てるわけないだろ!――

 リュックを蹴飛ばした。その仕草がマネキンを蹴飛ばした時のマリーにも似ている。

 ゴーレムにする直前の出来事が、何かの関係でもアルのだろうか?


 「使えない奴ね」マリーの見る目が変わった。可愛いから小憎たらしいに。

 「チッ!」舌打ちまでした。

 

 「いいじゃん、可愛いんだし」と、抱き付くコツメはぶれない。

 

 ――触んな!―― その腕を振りほどこうと暴れるが、そんなに力も無いのかモガクだけ。


 「お姉ちゃんと一緒で、戦闘要員ね」頬をスリスリ「忍者にしてあげる」


 戦闘でも役に立たんとは思うが……スキル次第なのかな?

 まあ、お姉さん気取りのコツメに任せておこう。

 マリーは俺にブツブツ文句を垂れてるし……もっと、使えるのを造りなさいよとか、役立たずとか……。




 ――旦那、しかしここは凄い所ですね、真っ直ぐに切り立った建物がズラっと並んで……それにアレ――

 路上に乗り捨てられた車を指し。

 ――小さいけどタイヤが付いてるって事は、アレは車ですかい? イヤ……でも……引き手がないな……押すだけ?――


 その質問に頷いてやる。

 「アレは自動車って言って、自力で動くんだよ……引く必要も、押す必要も無いんだ」

 そう答えながら近付いてドアに手を掛ける。

 開いた。

 そのうえ、ルームランプも着く、バッテリーが生きている様だ?

 中を覗くと鍵も付いてた。

 動くのか? と、キーを捻ると、セルが回る音と、スグにエンジン音。


 「やっぱり……」マリーの声。


 「何がだ?」


 「その車、動かせるんでしょ」


 「え? まあ免許は持ってる」


 「そう言う事じゃ無いわ、普通は動かないのよ、この異世界に転生した途端に動かなく成るの」

 

 「動く様だぞ」ハンドルを叩き。


 「ソレは貴方だけね」首を振り「私じゃ動かせなかったもの」


 「ふうん……何故?」半分以上は自分に問い掛け。


 「多分よ、スキルね」頷き「この異世界の総てがスキルを必要とするの、魔法も武器も、貴方の召喚も、カエルが幌車を引くのだってそう」

 一息付き。

 「私が、この世界に転生した途端に、元の世界の総ての機械が動かなく成ったの……腕時計もよ」


 自分の腕時計を見た、針は動いてる。


 「でも、貴方の腕時計は動いてる、不思議だったの……エレベーターもそう、貴方が近付いただけで動き出した」


 「そのスキルを俺は持っている、と」


 「魂の勇者の固有スキルだと思うわ、道具にも機械にも魂かソレに類する何かが有って、ソレを呼び起こすのか? 新しく魂を込めるのか? そんな感じなのだと思う」


 「八百万の神々ってヤツか?」


 首を捻り考え込むマリー。

 「チョッと違う様な気もするけど……そうなのかしら」

 チラリとセオドアを見て。

 「ゴーレムの召喚も、魂の無い人形に魂を込めるって事は……その簡易版? イヤ……その逆か、自身の回りのモノに魂を自然に発現させる能力を発展させたのがゴーレム召喚?…………」

 思考が堂々巡りを始めた様だ。


 「まあわかった、俺はそんなスキルを持っていて……もしかするとそのスキルを持った者が他にも居るのかも……で、良いか?」助け船でも無いが、その堂々巡りを切ってやることにした。


 ウーンと唸りながらも、頷くマリー。

 何かが引っ掛かる様だ、自分の考えの中に、喉の奥に刺さったトゲの様なモノがありソレが気に為ってしょうがない感じか。


 「先を行こう」と、大通りを指して歩き出す。

 マリーの頭が茹で上がる前に。


 先頭はムラクモ……あれ?


 「ムラクモ、その胴鎧は?」


 ――へい! 旦那、さっきコツメに貰ったンでさ――

 と、鎧の腹を叩く。


 ン!? と、コツメを見れば、黒いスカートに白いシャツ……マネキンが着ていた服だ。

 いつの間に!


 「コツメ、その服……」


 「可愛いでしょ、コレ貰っといた」


 「前の服は?」


 「アレ、肩の所が破けてるから、捨てたー」


 「ソレ、魔法が一切掛かってないから、防御力は無いわよ、わかってる?」

 マリーも今、気が付いたのか。


 「可愛いからいい」と、ズンズン歩いていく。


 俺とマリーは顔を見合わせて、お互いに諦めた。

 本人が良いと言うのだから仕方がない。

 



 大通りに出る。

 角にはコンビニ。

 その斜め向かいにガソリンスタンド。

 ソチラの方向はスグに崖の壁。

 反対側は普通にビジネスビル。

 その先に交差点らしきモノ、白い何かに覆われて良く見えない。


 「イヤーン、何これ……クモの巣?」コツメが頭に付いたソレを払っている。


 「うん、蜘蛛ね」マリーの視線の先には一匹の蜘蛛。

 

 「サイズはチョッと大きいが、蜘蛛だね」猫? 程の大きさ。

 「蜂の兵士達よ、殺ってしまいなさい」指示をだす。


 ――了解! 全軍戦闘開始せよ――

 ブブブーン。


 先ずは、遠距離からの針り飛ばし攻撃。

 そして、近付いての毒針の直接攻撃。

 何時もの攻撃パターンなのだが。


 「毒が効いてないわね」


 「マリーにもそう見えるか?」


 「蜂達も、毒が無ければ攻撃力はたかが知れてる感じだし……どおする?」


 「こうするの」

 コツメが、ソッと背後に回って切り着けた。

 サクッ……。

 蜘蛛は腹の体液をぶちまけて事切れた。

 

 「あら、楽勝ね」フーンと、マリー。


 一撃か! 

 コツメが強く成ったのか?

 蜘蛛が弱かったのか?

 等と考えながら、呪文を唱える。


 スキル召喚。


   [アクティブスキル(蜘蛛の糸)]が、1個。

   [アクティブスキル(巨大化)]が、1個。


 巨大化?

 何だソレは……。


 「チョッと、早くした方が良いわよ」慌てたマリーの声。


 数匹の蜘蛛がこちらに走ってくる。


 「お! おお、じゃコツメは無理か」

 「ムラクモ……」

 

 と、言い掛けた時に、コツメが。 

 「セオドアにあげて」

 と、セオドアを引っ張って来て、スキルに押し付けた。


 「ほら、もう近いわよ、戦うか逃げるか決めないと」


 「戦うか……」と、言おうとしたその時。


 一番奥のチョッとだけ大きい蜘蛛が、突然に巨大化した。

 柴犬ぐらいのが一気にマンモスサイズ……実際に、マンモスは見た事は無いが……とにかくデカく成った。


 「逃げた方が良さそうだ!」


 「何処に?!」


 背後は崖の壁、来た道はコカトリス。

 あ! 逃げ場がない!


 「コツメ! クモの巣に火を着けて!」マリーが叫ぶ。


 「蜘蛛の糸は、不燃性だ! 溶けるだけだ」

 ……イヤ、良い考えか!

 何か燃えるモノで蜘蛛自体を燃やせば。

 あの蛇の時の様に……。

 何か……。

 「ビルの中……イヤ、ガソリンスタンドだ」


 「全員で時間を稼げ!」

 そういい放ち、俺はスタンドに飛び込んだ。

 給油中の車が一台、その奥にタンクローリーが停まってる。

 その脇に洗車用のバケツ、ソレを掴み、給油中のノズルを抜きバケツへ。


 「動け! 出ろ」ノズルトリガーを引いた。

 勢い良く出るガソリン。


 バケツに半分以上を溜めて、皆の所へ走って行き、蜘蛛の集団の先頭に投げ付けた。


 「コツメ! 火を着けろ!」


 「え? 何に?」刀を振り回しながらの返事、わかってない。


 「今投げたガソリン……液体にだ」


 「え? え? 水に?」


 「着くから、着けろ!」


 コツメの足元まで流れて来たガソリンに、半信半疑で火を放つ。

 小さい火の玉が、ヒョロヒョロっと飛んで……。

 一気に燃え広がった。

 

 しかし、火力が弱い。

 足留め程度にしかなっていない。

 アスファルトにコンクリートでは燃えるモノがない。

 もっと何か……。

 

 スタンドに取って返し。

 タンクローリーに乗り込んだ。

 キーを捻りエンジンを掛け、強引にバックする。

 車体が軽い、あまりガソリンは積んで無いのか? スタンドに補給した後か?

 ソレでも少しは、タンクローリーの少しなら結構な量の筈だ。

 道路の真ん中まで出し、外に出て、タンクのコックを開ける。

 ドボドボと流れ落ちるガソリン。

 運転席に戻り、ハンドルをシートベルトでくくりつけ。

 アイドリングでゆっくり加速させて、飛び降りた。

 タンクローリーは勝手に走り、徐々にスピードを上げて、交差点のデカイクモの巣目掛けて突き進む。

 途中、火の上を跨いだ時にその火を貰い、走ったその場所を火の海にしながらだ。


 「凄い事をするわね! 昔に見た映画見たい」


 多分、同じ映画を俺も見た。


 「そのまま、クモの巣をぶち破れ!」


 だが、蜘蛛の糸は強かった。

 勢いのソコソコ付いたタンクローリーを完全に受けためたのだ。

 止まったその場で燃え上がる。

 

 火の付いたクモの巣からは、焼けた蜘蛛がバラバラと落ちながら出てきた。

 結構な数だ、その殆どが即死で、生き残ったものも炎を纏いながらにもがき死んでいく。


 が、目の前の数匹と巨大な蜘蛛は、まだソコに居た。

 若干焼けてはいるが、致命傷には成っていない。

 

 「やるしか無いのか……」


 と、先頭の蜘蛛に氷のナイフが刺さった。


 「忍法! 氷手裏剣!」背後でコツメが変なポーズをキメている。

 その手には、氷のナイフが出来つつある。


 「凄いな! コツメ、いつの間に!」


 「今、急に出来るように成った」へへへーん。


 「蜘蛛を大量に焼き殺したからよ! キット!」マリー。


 一気にレベルが上がったのか?


 今度は、ムラクモが手斧を構えながら、舌をビルの上に飛ばして自分自身を空中へと引き上げてからの、蜘蛛目掛けての落下斬り! 豪快な技だ、自身の体重と落下スピードとで手斧の威力を倍増させてる。


 シグレは槍を構え真っ直ぐに突撃。うん、シンプルだが力強い。


 蜂達は、蜘蛛にたかり生きたまま食い始めた。コレは……ゾンビ技か?


 雑魚蜘蛛を一気に一掃する。


 最後の一匹、ボス蜘蛛にはセオドアが立ちはだかった。


 ――巨大化ー!――

 

 ボス蜘蛛と同サイズにまで大きく成る。


 「おおおお! コレは凄いな!」


 睨み合う両者。


 ボス蜘蛛がジリジリと左に回る。


 ソレに対してセオドアも合わせるように右に。


 一陣の風が吹く。


 先に動いたのは蜘蛛。


 ソレに合わせたセオドア。


 がっぷり四つ!


 息を飲むマリーとコツメ。


 一瞬の出来事だった。

 背負い投げ1本!


 蜘蛛がだが……。


 セオドアは簡単に投げ飛ばされていた。


 「この! 役立たず!」叫んだマリーに、うん……同意。


 「セオドアのカタキじゃ、いざ尋常に、勝負、勝負」と、刀を構える。

 

 おーい、まだ死んじゃ居ないぞー、コツメ君。


 が、コツメの技は凄かった。

 

 「雷電斬り!」刀に電気を帯びさせて斬り付ける。


 斬られた蜘蛛は痺れて動きが止まった。麻痺か!

 ソコを全員での袋叩き。


 最後は、タンクローリーの爆発で終わった。

 

 その爆発には、意味は無いとは、思うも……多分、必要なモノなのだろう。


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