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夢の国


 俺達は、夢の国に足を踏み入れた。


 コツメとジュリアがはしゃぎ出す。


 だが、ソコはやはりに死体だらけだった。

 それを見たマリーも大騒ぎだ。

 自分の下半身をどれにするのかを選んでいる様だ。


 そんなに簡単に、取って付けれるモノなのかとも思うが、本人が出来ると言うのだから……出来るのだろう。

 

 「これなんか、どうだ?」側に転がる、女性の死体。

 「美人で細身だから、サイズ的にも合うのでは?」


 その女性をジット見るマリー。

 「駄目よ」プイっと首を振る。

 「処女じゃ無いみたいだからイヤ」


 うーん、そんなのどうでも良いじゃん。

 そう思ってはいけないのかな、大事な事なのか?


 「じゃ、どれにする?」適当に投げた。


 両手を使い、腹の鉄板をカシャカシャいわせて歩き回るマリー。

 そこいらの、死体の顔を覗き込んでは、また歩く。


 幾つかの死体を見て、迷いながらも決めた様だ。


 「これにするわ」と、小柄な死体を指差した。

 「ゼクス、トラックまで運んで頂戴」


 頷いたゼクス、それを担ぎ上げて運び出した。

 

 その後をマリーが着いて行く。

 

 トラックに乗り込みしなに「絶対に覗いちゃ駄目よ」そう言って、キッと俺を睨んだ。


 頷いた俺は、暫く外で待つ事にする。

 その間に、ネズミとカラスに偵察をさせて。

 蜂達には、周囲の警護も兼ねて飛び回らせた。


 コツメとジュリアには単独行動は禁止と釘をしっかり刺しておくのは忘れない。




 その頃、大臣達はプレーシャに到着していた。

 着いて間無しにルイ王が大臣を押し退けてバスに乗り込んで来る。


 「河津が現れよった!」

 「今すぐ、わしをそこへ連れていけ」と、捲し立てた。

 

 困惑した大臣。

 「私は……」


 「おぬしは、補給を済ませてユックリと帰って来れば良い」

 「どうせ、この戦争は敗けじゃ」

 「出来るだけ遠回りして、南から王都に戻れ」


 そして、河津と聞いて、呆けていた頭目も目を覚ました。

 「時と空間の勇者か!」

 振り向いて、盗賊ゾンビ達に気勢を上げる。

 「勇者狩りだー!」


 「おおお!」ゾンビ達の叫びにバスが揺れた。


 大臣だけをバスから追い出し。

 補給部隊の馬車を押し退けて動き出す。


 別れ際に。

 「ロリスとサルギン達は置いて行く、戦力としては十分の筈じゃ上手く使え!」と、ルイ王。


 「えー!」と、サルギン達。

 露骨にイヤな顔をして、ブーたれだした。

 

 ロリスは普通に頷いて居る。

 多分、何も考えてない……そんな顔だ。


 そんな者達を置いてバスは南に走り去る。


 残された大臣達は、深い溜め息と共にそれを見送った。

 

 

 

 小一時間程待っても、トラックからマリーは出て来る気配もない。

 

 ジュリアとコツメは側に在った土産物屋で何やら物色している様だ。

 ここには河津が居ると言うのに、なんとも呑気な……緊張感の欠片も感じられない程に、はしゃいでいるのがわかる。

 しかし、その河津はカラスとネズミの探索の網に掛からないのだ。

 何処かのアトラクションに入り込んだか?


 通信用のカラスのリーダーを呼び出しロイドに連絡を取る。

 「河津が見付からん」


 すぐに返事が来た。

 「いえ、まだ居る筈です、周囲の何処にも抜け出した様子が見られません」


 成る程、ロイドは回りの警戒をして確認しているのか。


 「ロイドは今、何処に居る?」


 「私は、ヴァレーゼの町に居ます、ソコからカラスを使ってダンジョンを監視していました」


 「わかった、そのカラスはこちらで貰うぞ」

 そう言って、小さいロイドでは無く、化けているカラスに頷いて見せた。


 カラスは一瞬、化けを解いて頷いて返し、また化けた。


 「わかりました」ロイドも頷いた。

 「私も向かいましょうか?」


 「イヤ、来なくても良い」

 「それよりも、王都に向かってレイモンド達の脱出の手助けを頼む」

 「じきに、王都も戦場に為るだろうから」

 「孤立しそうに為ったときに、外からの手が必要に為るかも知れない」


 「お願いします」カラスがそのレイモンドに化けた。

 「もう既に、北と南に敵兵が黙視で見えています、何時攻めてきてもおかしく無い状況です」


 「レイモンドか? 百合子達はどうした?」


 「無事に合流出来ました」

 「他にも、ルイ家の三人と商業ギルドの会長の家族も一緒です」


 「みんな、無事なんだな?」


 「はい、盗賊仲間達、全員で護衛を兼ねて逃げる算段をしているところです」


 「ただ、逃げる方向が西にしか無いのが問題です」

 

 そうか……東に逃げてもすぐに竜の棲みかで行き場が無くなる。

 西だけを空けているのは、多分わざとだろう、王都民の逃げ道を残して王都を空っぽにしてから攻める積もりか。

 だが、それだと大群衆に為るだろうから、下手にパニックにでも為れば、子供達が危ないと言うところか。

 

 「王都の様子はどうだ?」


 「まだ、パニックには成っていませんが……皆が逃げる準備を始めています」


 「今すぐ、王都を出ればどうだ?」


 「その積もりでは居ますが……何処まで行けば良いのか?」


 成る程、レイモンドですら不安に成る程なのか……。


 「やはり、今すぐロイドに迎えに行って貰おう」


 カラスは今一度、ロイドに成り。

 「わかりました、今すぐに向かいます」


 カラスが今度は骸骨に化けて。

 「急いだ方が良いぞ」

 「一方向だけを空けているのは民にパニックを起こさせる戦略だ」

 「民が逃げ始めたのを待ってそこに攻め居る」

 「そうすれば、逃げ出そうとしていた者が我先にと動き出す」

 「そうなれば、王都の軍は身動きが出来なくなる」


 「パニックをわざと誘発させるのか……」


 「そうじゃ……ワシならそうする」

 「守る方は自国民じゃが……攻める方は関係が無い」


 成る程、敵は飛び道具を使う……狙いなど定める必要もなく撃てば良い。

 人間の盾としても使えるわけか。

 詰まりは、城壁などは簡単に越えられると考えて居るのだな。

 まあ、城壁内にも人に近い成りのエルフが複数人も潜伏しているのだろうから、それも造作も無いのだろう。

 

 カラスがロイドに成り。

 「急ぎます」

 

 そして、今度は一瞬、ネズミに成りそして、ゴーレムに化けた。

 「河津を見付けました」

 

 「何処だ?」ネズミが見付けたと言う事は、やはり建物の中か……。


 「中央の城の様な建物の中です」


 あそこか!


 「今から行く、見失うなよ」


 ゴーレムは頷いた。

 

 レイモンドとロイドの話はそこで終わりだ。

 後は、上手くやってくれる事を祈るしかない。

 それよりも、今は河津だ!

 チョロチョロと鬱陶しいし、それに元の世界に帰れる方法を聞き出さなければいけない……知っている筈だ。



 俺達は、マリーだけをトラックに残して、ソコに向かう事にした。


 隣を歩くコツメとジュリアは頭に丸い耳を着けているのだが……。

 それでも、顔は真剣だ。

 辺りの警戒はしっかりとしている。

 俺も、もちろん蜂を飛ばして警戒を怠らない。


 しかし、回りを見る限りもう生存者も居ないように見える。

 すべてが死体だ。

 カップルも家族連れも、友達同士も……皆が背中から斬られている。

 それは、河津がここに居る意味も、既に無いと言う事だ。

 なのに、グズグズと留まる理由は……やはりに俺か?

 

 

 細長い城が見えてきた。


 「アルマ、ここからは先頭を頼む」

 ヤツは、剣が相当に達と聞いている、剣の勇者でも喰ったのか?


 頷いたアルマが前に出る。

 その頭には、耳の飾りが着いたカチューシャが乗っかっていた。

 アルマ……お前も……。


 そして、ゼクスとシルバもその後に続いた。

 やはり、頭には耳が有る。

 ……。

 もしかしてと見れば、カエル達の頭にも有った。

 俺以外、全員じゃないかと、呆れてしまった。


 そのムラクモの武器が白く光るハルバートに変わっている。

 斧と槍の合体した様な武器だ。

 もちろん、銃剣付きも持っている。

 シグレの方は、銃剣付の突撃ライフルだけに為っていた。

 槍のスキル持ちだから扱い易いのだろう。


 そして、背後からはピーちゃんと土竜も着いてくる。

 その頭には耳は無かったのが少しホッとさせられた。

 土竜の背中にはセオドアが仁王立ちで細剣を構えて乗っていた。

 この場所に一番似合うヤツだ。

 その頭には……丸い耳が……は、元々か。

 熊だものな。

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